不法就労助長罪とは?防止する方法を外国人を雇用する企業に向けて解説

2021年09月10日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

不法就労助長罪がどのような刑罰なのか、詳しく分からない方もいるでしょう。実は、外国人を雇用する企業には、不法就労助長罪に問われるリスクが常にあります。「うっかりしていた」「知らなかった」が通用しない、大変重い罰則です。このコラムでは不法就労助長罪の内容や該当するケースを解説しています。このコラムを参考にして、不法就労助長罪に問われる状況を防ぎましょう。

 

目次

  1. 不法就労助長罪とは?
  2. 企業が不法就労助長罪に問われるケース
  3. 企業が不法就労助長罪に問われることを防ぐ方法
  4. まとめ

不法就労助長罪とは?

不法就労助長罪とは「出入国管理及び難民認定法」に規定されている、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりした人が問われる罪です。以下で詳しく説明します。

不法就労活動をさせた事業主が問われる罪

不法就労助長罪は、外国人の不法就労活動を助長した事業主が問われる罪です。なお、事業主以外にも外国人の不法就労をあっせんした人材紹介会社や、不法就労活動の手助けした人も罪に問われます。不法就労活動とは、日本での就労が許可されていないのに働いたり、決められた範囲を超えて働いたりすることです。

罰則の内容

不法就労助長罪の罰則は「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科する」と法律で定められています。初犯でも重大な過失が認められれば、懲役刑に処されることもある重い刑罰です。実際に、飲食店などで外国人を不法に働かせたとして、初犯でも執行猶予付きで懲役刑の判決を受ける事業主も多くいます。

知らなかった場合も罪に問われるので注意!

不法就労助長罪は「知らなかった」では済まされません。なぜなら、出入国管理及び難民認定法で「前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」と定められているからです。法律でも定められているように、過失がないと判断されたら罪に問われないこともあります。たとえば、企業が然るべき確認作業を行っていたのにも関わらず、外国人の偽装行為などにより見抜けなかった場合は、罪には問われません。

e-GOV法令検索
出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号) 第七十三条の二

企業が不法就労助長罪に問われるケース

企業が不法就労助長罪に問われやすい事案には、外国人に在留資格外の仕事をさせたり、就労してはいけない外国人を働かせたりするといったことが挙げられます。

在留資格外の仕事をさせる

外国人が日本に滞在するために有している在留資格には、活動に制限のあるものが多くあります。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有して通訳者として働く外国人を、建設作業員として継続的に働かせることは許されていません。継続的に働かせたい場合は、外国人の在留資格を建設作業が許可されている「特定技能」に変更する必要があります。在留資格の活動範囲について詳しく知らないままでいると、不法就労助長罪に問われる可能性があるので気をつけましょう。

不法滞在者や退去強制手続を受けた人を働かせる

不法滞在者や密入国者、退去強制手続きを受け日本を出国しなくてはいけない外国人を働かせた場合も、不法就労助長罪に問われます。在留カードやパスポートを確認しないまま雇用すれば、日本にいるべきではない外国人を雇ってしまうことも十分考えられるでしょう。また、雇用している外国人の在留資格の期限が過ぎ在留資格が失効した場合、外国人は不法滞在者になるので注意が必要です。気づかずに継続して雇っていると、企業が不法就労助長罪に問われる可能性が高くなるでしょう。

就労の許可を受けていない外国人を働かせる

外国人が持つ在留資格には、働くことが許可されていないものがあります。「短期滞在」「留学」「家族滞在」「文化活動」などの在留資格を持つ人は原則日本で働くことができません。なお、「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ外国人は「資格外活動許可」の手続きをすることにより、決められた範囲であれば就労ができます。資格外活動許可を取っていない上記の在留資格を持つ外国人を働かせると、不法就労助長罪に問われるので注意が必要です。

企業が不法就労助長罪に問われることを防ぐ方法

企業が不法就労助長罪に問われないようにするには、できる限りの対策を取る必要があります。企業に過失がないと認められれば、罪に問われる可能性が少なくなるためです。企業が不法就労助長罪に問われるのを防止する、具体的な方法を以下で紹介します。

在留資格カードやパスポートの確認の徹底

在留カードやパスポートの原本を確認することは、雇ってはいけない外国人を雇用するのを防ぐために有効な手段です。コピーだけでは偽装が見抜けないので、必ず原本を手に取って確認します。在留カードに記載されている「就労制限の有無」や、カード裏面の「資格外活動許可欄」を確認するようにしましょう。また、在留資格によっては在留カードだけではなく、パスポートに貼付されている「指定書」を併せて確認した方が良い場合もあります。

在留資格制度の基本を理解する

企業側が在留資格制度の基本を知らないと、故意なく不法就労助長罪に当たる行為をしてしまう可能性が高くなります。在留資格や外国人の就労に関しては、入管法や関連法令で細かく定められているので、初めて外国人を雇用する企業は、基本知識だけでも知っておきましょう。。特に、在留資格ごとに許されている活動範囲に関しては、しっかり学んでおくべきでしょう。

在留期限を外国人に定期的に確認する

雇用している外国人の在留資格がいつのまにか失効し、不法滞在者になっているのを防ぐために、外国人に定期的に在留期限を確認しておくと安心です。本来、在留資格の更新については外国人本人も気を配っています。しかし、忙しさや特別な事情で忘れてしまうことも無いとはいいきれません。定期的に外国人に確認することにより、在留資格の期限が過ぎてしまうのを防げます。

外国人雇用の専門家に依頼する

不法就労助長罪に問われるリスクを回避するためには、外国人雇用の専門家に依頼するのも有効な方法です。入管法は複雑な部分が多く、初めて外国人を雇用する企業がスムーズに手続きを進めるのは至難の業です。費用はかかりますが、行政書士や弁護士に外国人の雇用に関する業務を依頼することで、不法就労助長罪に問われるリスクを大きく減らせます。

まとめ

企業が不法就労助長罪に問われるのを防ぐためには、在留カードやパスポートの確認や、入管法を正しく理解するといった基本的な対策が重要です。対策を怠ると有罪判決を受け、業務や経営に大きな影響を及ぼす可能性があるので、十分注意しましょう。