不法就労とは何か?

2020年08月07日
井上通夫 (執筆)
行政書士井上法務事務所
熊本県出身。福岡大学法学部法律学科(憲法・行政法専攻)卒。大学卒業後、日本信販株式会社(現三菱UFJニコス)入社。その後、福岡の大手学習塾勤務(国語・英語担当)。平成18年度行政書士試験合格。平成20年7月に福岡市内で行政書士事務所開業。現在、相続・遺言、民事法務(内容証明、契約書・離婚協議書作成等)から公益法人(財団・社団法人)業務まで幅広く担当。 http://gs-inoue.com/

外国人が不法就労で摘発されたというニュースを度々耳にします。不法就労によって、外国人本人が不利益を被るだけでなく、雇用している会社にもペナルティが科される可能性があります。ここでは、不法就労とは何か、不法就労の現状、本人及び会社に科されるペナルティ、退去強制(強制送還)について、詳しくご説明します。

不法就労の種類

不法就労には、大きく分けて次の3つの種類があります。

まず1つ目は、「不法滞在」です。文字どおり、法律に違反して日本に滞在することです。例えば、外国人が観光目的で日本に滞在する場合、滞在期間が15日以内であれば、パスポートだけで入国し、滞在することができます。

しかし、この滞在期間を過ぎても、日本から出国せず、そのまま滞在し続ければ、法律で認められていない滞在となりますから、「不法滞在」となります。そして、滞在したまま就労すれば、不法就労ということになります。

2つ目は、就労が許可されていない外国人が就労する場合です。外国人が日本に在留するための資格(在留資格)は、全部で29種類ありますが、その全てで就労が認められているわけではありません。

29種類の在留資格のうち、就労が認められているのは、外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能講習の17種類です。

また、身分・地位に基づく在留資格は、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4種類ですが、この在留資格には活動の制限がありません。つまり、この在留資格を持っていれば、就労できることになります。

残りの6種類の在留資格(文化活動、短期滞在、留学、研修、家族、特定活動)については、基本的に就労できません。もし働けば不法就労となります。ただし、留学生の在留資格を持つ外国人は、「資格外活動許可」を得ることで、1週間28時間以内(長期休業期間の場合は、1日8時間以内)であれば、アルバイトをすることができます。

3つ目は、在留資格の範囲を超えて就労する場合です。先程ご説明した17種類の在留資格では、就労できる範囲が決められています。もし、「興行」の在留資格を持つ外国人が、勝手に大学で教えた場合には、在留資格「教授」に該当する就労をしたことになりますから、不法就労ということになります。

このように、明確に仕事の内容が在留資格の範囲を超えている場合、または職種を変えたにもかかわらず、在留資格変更許可や資格外活動許可の手続きをしていない場合には、不法就労となるのです。

不法就労者の推移

出入国在留管理庁が2019年12月に発行した「2019年版出入国在留(白書)」によると、2019年の不法在留者数は、74,167人です。

最も多い国が、韓国で12,766人、2番目はベトナムで11,131人、3番目が中国で10,119人です。その後に、タイ、フィリピン、台湾と続きます。

2015年と2019年の不法滞在者の増加率を比べてみると、1番はベトナムで、2,453人から11,131人に増加し、増加率は454%、2番目はインドネシアで、1,258人から3,323人に増加し、増加率は264%となっています。

ベトナムの増加が目立っていますが、この背景には、近年ベトナム人の技能実習生、留学生が増加したことにより、相対的に不法在留者、不法就労者の増加につながったものと考えられます。

また、韓国、中国の不法在留者が上位に来ていますが、これは、観光目的で日本に入り、そのまま帰国しないで日本に在留することが原因と考えられます。

一方で、在留資格別で、不法在留者の数を見てみます。2019年の1番は「短期滞在」で47,399人、2番目が「技能実習2号ロ」で5,318人、3番目が「留学」で4,708人となっています。

圧倒的に「短期滞在」ビザ取得者が多いですが、これは短期で日本に入り、そのまま在留資格の変更などをしないまま、日本に在留することを表しています。ただ、4番目の「技能実習1号ロ」ビザ取得者は、2019年に4,015人ですが、2015年に1,799人でしたから、増加率は233%で、増加率では1番でした。増加率を見れば、「技能実習生」、「留学生」が目立ちます。

不法就労と刑罰

日本に在留する外国人が、在留資格で認められている活動の範囲を越えて就労した場合には、200万円以下の罰金に処されます。それだけでなく、日本から強制的に退去させられ、その後は、過去に退去強制の処分を受けた外国人は10年間、それ以外の外国人は5年間、日本への上陸は拒否されます。

また、在留資格を持たない外国人を雇った会社にも、「不法就労助長罪」という罪に問われ、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金、あるいはこの両方の罰則が科される可能性があります。

この罪に該当する具体的内容としては、雇用していた外国人が不法就労だった場合等ですが、雇う会社が不法就労であるとは知らなかったとしても、罪から免れることはできません。ですから、外国人を雇う場合には、その外国人が持っている在留資格を十分確認、調査する必要があります。

強制送還とは?

日本にいる外国人を強制的に、本国に返すことがあり、これを「強制送還」と呼んでいます。ただし、入国管理法など正式には、「強制退去」という名称ですので、以下の説明では、「強制退去」とします。

まず、日本政府の判断で日本を強制的に出国させられる以外に、日本に在留する外国人自らが日本を出国するケースがあります。そのためには、次の5つの要件全てを満たす必要があります。

  • 外国人本人が、速やかに出国する意思をもって、自ら出入国在留管理官局に出頭したこと
  • 当該外国人の行為が、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと
  • 当該外国人が、日本入国後に窃盗罪などの罪により、懲役または禁固に処せられていないこと
  • 当該外国人が、過去に退去強制歴などがないこと
  • 当該外国人が、速やかに日本から出国することが確実に見込まれること

自ら出国することになりますから、日本から出国するための費用は、外国人本人が負担することになります。

次に本題である「強制退去」の流れをご説明します。

日本に在留する外国人が、資格外活動を行っている、あるいは在留期間を過ぎても日本に在留する、いわゆるオーバーステイなどの不法行為が発覚した場合には、外国人本人が自ら出入国在留管理局に出頭します。

その後、入国警備官による違反調査が行われます。ここでは、違反の事実を調査することになりますが、身柄の拘束はありません。さらに、入国審査官が出国命令に係る審査を行います。ここでは、当該外国人が、出国命令対象者か否かを書面で審査することになります。

そして、出国対象者と判断された場合には、主任審査官が「出国命令書」を当該外国人に交付します。その後、当該外国人が、本国に送還されるという流れです。

送還されるための費用は、原則的に外国人本人の自費負担となりますが、様々な事情で自費負担することが難しいと判断された場合には、国が負担することになります。

なお、出入国在留管理庁が2019年12月に発行した「2019年版出入国在留(白書)」によると、2018年の強制退去者数は、16,269人です。事由別で見ると、「不法残留」が最も多く14,353人、次いで「資格外活動」の476人、「刑罰法令違反」の460人となっています。

また、国別で見ると、ベトナムが最も多く4,395人、次いで中国の4,185人、タイの2,101人となっています。近年、入国者の数が激増しているベトナムが1位ですが、2014年の強制退去者数が953人でしたから、実に461%の伸びということになります。