「高度専門職」「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の違いとは?

2020年11月11日
石澤扶有子 (監修)
行政書士事務所リーガルプランニング
申請取次行政書士、特定行政書士。大手IT企業で初の法務専任者として入社後、法務担当課長、グローバルコンプライアンス担当マネージャーを経て独立。20年以上に渡る企業法務の知識と経験を活かし、主に企業やスタートアップを対象に外国人材の受入れ支援、契約書の作成・レビュー、創業支援、事業承継(M&A)などを行っている。 http://www.legalplanning.jp/greeting

近年、日本政府は、大卒ホワイトカラー外国人労働者や、さらに高度な技術や専門知識を持つ外国人(高度外国人材)の受入れに積極的です。在留資格取得者も年々増えています。就労を目的とする在留資格で特に多いのは、「技術・人文知識・国際業務」です。ここでは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」と、様々な優遇措置を受けられる「高度専門職」の違いについて説明します。

参照:総務省「高度外国人材の受入れに関する 政策評価書(令和元年6月)」p.1
厚生労働省「国籍・地域別在留外国人数の推移(令和元年6月末現在)【第二表】」
厚生労働省「我が国で就労する外国人のカテゴリー」

学歴や資格を持つ外国人材のための在留資格

・人手不足解消ではなく、経済成長のため

 日本の少子高齢化・人口減少を背景に、労働者不足解消を目的とした在留資格「特定技能」が新設されました。しかし、「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」などの大卒ホワイトカラー外国人材や高度外国人材受入れの目的は、労働者不足解消ではありません。日本国内でイノベーションを起こし日本の経済成長を押し進めることによって雇用を創出する目的で設けられた点が大きな特徴です。「技術・人文知識・国際業務」の整備と「高度専門職」の新設は、いずれも2014年(平成26年)の入管法改正で行われました。

参照:総務省「高度外国人材の受入れに関する 政策評価書(令和元年6月)」p.1
出入国在留管理庁「外国人IT人材の在留資格と高度人材ポイント制について」p.1

・技術・人文知識・国際業務ができた理由

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、就労目的の在留資格です。大きな区分では「専門的・技術的分野」になります。主に大卒ホワイトカラーや技術者が、その知識や技術を使い、日本で働くための在留資格が「技術・人文知識」です。語学教師や通訳・翻訳、デザイナーなどの外国人特有な又は特殊な能力を活かした業務が「国際業務」にあたります。在留資格「技術・人文知識・国際業務」で働く外国人労働者は毎年増加し、2019(令和元年)6月末時点で256,414人になりました。

参照:厚生労働省「我が国で就労する外国人のカテゴリー」
厚生労働省「国籍・地域別在留外国人数の推移(令和元年6月末現在)【第二表】」

・高度専門職ができた理由

在留資格「高度専門職」は2015年に新設された在留資格です。知識や技術など高い基準を満たす外国人材を日本に呼び込み、長く日本で働けるように、日本政府が特別に定めた優遇措置のある在留資格です。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得した人の中でも、条件を満たせば「高度専門職」に在留資格を変更できます。

この制度は、2008年(平成20年)、「高度人材受入推進会議」で基本方針が定まりました。2014年(平成26年)に入管法が改正され、さらに2017年(平成29年)に開催された未来投資会議、「未来投資戦略 2017―Society 5.0の実現に向けた改革―」では、経済成長を目的とした高度外国人材の受入れ拡大が提言されています。この流れを受けて「高度専門職」で働く外国人労働者も年々増加し、2019(令和元年)6月末時点で13,038人になりました。特に、自然科学・人文科学分野の専門的知識を活かし働く「高度専門職1号(ロ)」の外国人材が多くなっています。

参照:出入国在留管理庁「高度人材ポイント制とは?」
首相官邸「高度人材受入推進会議」
出入国在留管理庁「入管法が変わります」
首相官邸「未来投資戦略 2017―Society 5.0の実現に向けた改革―」p.98
厚生労働省「国籍・地域別在留外国人数の推移(令和元年6月末現在)【第二表】」

技術・人文知識・国際業務

・技術・人文知識・国際業務の定義

在留資格「技術・人文知識・国際業務」で認められる活動は、次の3つです。

日本の公私の機関との契約に基づいて行う、以下の①〜③のどれか

①理学,工学その他の自然科学の分野に属する、技術もしくは知識を要する業務

②法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する、技術もしくは知識を要する業務

③外国の文化に基盤 を有する思考若しくは感受性を必要とする業務

ただし、医療、研究、教育、教授、経営・管理、芸術、報道、法律・会計業務、企業内転勤、介護、興行については、別の在留資格がありますので「技術・人文知識・国際業務」に含まれません。

参照:出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の下欄

・技術・人文知識・国際業務の要件とは

「技術・人文知識・国際業務」をはじめ、外国人労働者を雇用する場合、不法就労を防ぐためにも在留資格取得の要件を満たしていることを確認する必要があります。「技術・人文知識・国際業務」の取得には、学歴や実務経験などの細かな要件があります。日本で就労する業務と学歴や実務経験が関連しているかどうか審査され、採用する事業者側も、雇用の必要性や日本人労働者と同等の業務内容や報酬であるか審査されます。

参照:法務省「外国人を雇用する事業主の皆様へ 不法就労防止にご協力ください」
出入国在留管理庁 「留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン (令和元年12月改定 )」

高度専門職の高度外国人材ポイント制度とは

・高度外国人材ポイントとは

 「技術・人文知識・国際業務」で就労予定の外国人材は、高度外国人材ポイント制度を利用し、在留資格「高度専門職」を取得できる場合もあります。在留資格「高度専門職」を取得するには、高度学術研究、高度専門・技術活動、高度経営・管理活動の3つの分野で、それぞれ70ポイント以上になる必要があります。

 高度外国人材ポイントは、「学歴」、「職歴」、「年収」、「研究実績」などの項目ごとにポイントが加算されます。ポイント加算の方法は、各分野によって加算基準や点数が違いますので注意が必要です。さらに、ポイント加算にはボーナスポイント制度があります。日本政府が指定する外国の資格を保有し、または表彰を受けたり、一定以上の日本語能力がある場合など、ポイントが加算されます。日本政府が日本経済の成長発展のために必要な事業に関係する場合も加算されますが、高度外国人材ポイント基準は日本政府の方針で変更される可能性があります。どの項目が何点になるかについては、公式サイトなどで最新マニュアルを確認することをお勧めします。

参照:出入国在留管理庁「ポイント評価の仕組みは?」

・高度外国人材のメリット(優遇措置)

日本政府は、高度外国人材の人数を増やすだけでなく、高度外国人材に長く日本で働いてもらえるように様々な優遇措置を定めています。具体的に言うと、第一に、複数の在留資格にまたがる業務ができるというメリットがあります。原則として、外国人労働者が決められた在留資格外の就労をすることはできません。しかし、一定以上の高度外国人材ポイントを満たし、高度専門職1号の在留資格を取得すれば、研究と経営など複合的な在留活動ができます。さらに、高度専門職2号の場合は、ほぼ全ての就労が可能になります。第二に、在留期間が長いというメリットがあります。高度専門職1号なら「5年」、高度専門職2号になると「無期限」になります。第三に、配偶者の就労が可能というメリットがあります。その他、一定の条件があるものの、親の帯同や家事使用人の帯同も認められるなど、長く日本に滞在するための優遇措置があります。

参照:出入国在留管理庁「高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度」

・高度外国人材の目標受入れ人数

日本政府は、高度外国人材を多く受け入れるため、2017年に閣議決定した「未来投資戦略 2017」と「経済財政 運営と改革の基本方針 2017」で、高度外国人材の受け入れ拡大の目標人数を決定しました。2022年末までに2万人の高度外国人材の認定を目指しています。2019年(令和元年)6月末現在、在留資格「高度専門職」で働く外国人材は13,038人となっています。政府の目標受入れ人数にはまだ及ばない状態です。

参照:総務省「高度外国人材の受入れに関する 政策評価書(令和元年6月)」p.1
厚生労働省「国籍・地域別在留外国人数の推移(令和元年6月末現在)【第二表】」

新型コロナウイルス感染症流行による入国制限

新型コロナウイルス感染症の流行により、外国からの入国制限が行われています。「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」の在留資格の保有者も、大きな影響を受けています。特に問題となったのは、日本ですでに働いていた外国人労働者が一時的に出国(帰国)した場合、日本に再入国できるかどうかです。2020年(令和2年)7月には、新型コロナウイルス感染症対策本部で在留資格保持者などの入国・再入国の方針も検討されました。現時点においては、一時帰国中の在留資格保有者は「特段の事情が認められ上陸を許可した者」として、「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」の在留資格の保有者が少しづつ再入国しています。

参照:首相官邸「新型コロナウイルス感染症対策本部(第41回)」
出入国在留管理庁「新型コロナウイルス感染防止に係る上陸審査の状況(令和2年8月11日~8月16日)」

まとめ

日本政府は、イノベーションによって日本経済を活性化し、日本国内の雇用を生み出すため、大卒ホワイトカラー外国人材や高度外国人材の受入れに積極的です。入管法を改正し、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を整備し、「高度専門職」を新設しました。特に、「高度専門職」は様々な優遇措置がありますので、要件に該当する場合は、積極的にご検討ください。「技術・人文知識・国際業務」、「高度専門職」ともに審査基準が細かく、また今後変更も見込まれていますので、常に最新情報を確認することをおすすめします。