アジアの外国人労働者市場の変化とは?企業が取り組める対策まとめ

2020年11月11日
佐藤俊介 (監修)
行政書士佐藤事務所
法科大学院修了後、法律事務所で事務員として勤務した後、行政書士開業。現在は、相続・遺言関連業務、契約書等の作成、建設・不動産関係の許認可申請業務等を総合的に取り扱う。 http://gyosei-sato.com/

アジアの外国人労働者市場では、少子高齢化が進んでいることや最低賃金が上昇していることを考慮した上で、外国人を雇用していく必要があります。

今回は、アジアの外国人労働者市場の生産年齢人口の変化から、国内企業が取り組むべき外国人雇用対策について解説します。

生産年齢人口の変化

アジアの生産年齢人口は、どのような変化をとげているのか紹介します。また、日本の生産年齢人口についても解説します。

・アジアでは少子高齢化が進み始めている

アジアは1970年代以降、生産年齢人口の増加に伴い順調に経済成長していましたが、次第に出生率の低下率が増加しています。

経済産業省の資料によると、2015年に人口増加のピークが到達しその後は減少傾向が続く見込みです。

さらに高齢化率については日本とアジア各国では約40年のタイムラグがあるとされ、2035年に14%の高齢社会へ到達する予測です。

生産年齢人口は2035年前後をピークに、減少が進む可能性もあり日本と同様の傾向です。

参照:経済産業省(アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み)

日本も少子高齢化と生産年齢人口の減少

日本は、アジア各国よりも早い段階で生産年齢人口の減少と高齢化率の増加が進み、少子高齢化社会へと突入しています。

具体的には2000年頃から生産年齢人口が減少し始め、2025年には労働需要(各業界に必要な人材)に対して505万人の生産年齢人口不足が予測されている状況です。

特にサービス業と医療・福祉、小売業の人材不足が懸念されていて、外国人労働者に求められる技術も多様化、高度化しています。

ただし、アジア各国の生産年齢人口も減少しているので、より慎重に人材の確保へ向けた対策を考える必要があります。たとえば高度な医療技術を持っている外国人は、アジア各国も欲するので人材確保だけでも難しい状況です。

アジアの外国人労働者市場と日本の関係性

続いてはアジアの外国人労働者市場の最低賃金などから、日本の立場やリスクについても触れていきます。アジアの外国人労働者市場にとって日本は、メリットの少ない市場へと変化している可能性もあります。

・中国・ベトナムの最低賃金上昇

アジアの外国人労働者市場は、年々最低賃金が上昇傾向で推移しています。また、中国・ベトナムなどは、特に最低賃金が上昇傾向です。

たとえば中国人民元は、毎年100~200元程上昇していて、ベトナムドンは約40万ドン単位で毎年上昇しています。

【レート(2020年8月)】

  • 1元=15円前後

  • 1ドン=0.005円前後

【最低賃金(2020年、月給)】

  • 中国(北京):2,200元(約33,000円)

  • ベトナム: 4,420,000ドン(約22,100円)

  • 日本(東京都):170,184円

参照:一目で分かる最低賃金
みずほ銀行
JETRO日本貿易機構

日本も最低賃金は上昇しているものの、1年で20円、110%の増加率と緩やかな上昇ですが、中国とベトナムでは150%の増加率となっています。

食品・インフラ・耐久消費財等の物価を比較すると、日本は中国の3倍程度、ベトナムの5倍程度であり、日本は賃金の高さという点で優位性も保っています。さらに2020年現在も、日本には、中国やベトナム、インド、ネパール、フィリピンなどから数多くの労働者が流入しています。日本市場も賃金や労働環境に加えて、文化的魅力など複数の在留メリットがあるとも考えられます。

【2019年12月時点、在留外国人の流入数統計】

  • 中国: 813,675 人

  • 韓国: 446,364 人

  • ベトナム: 411,968 人

  • フィリピン: 282,798人

  • 台湾: 64,773 人

  • タイ: 54,809 人

参照:法務省(在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表)

しかし、アジア各国の最低賃金の伸びは大きく、今後自国で生計を立てやすくなりつつある側面もあります。

もちろん外国人の中には、日本の文化や雰囲気、生活環境が好きという方もいるので、賃金の伸びや変化に関わらず日本で働く方も一定数存在します。

アジア各国の技術力や最低賃金の伸びも意識しながら、日本企業や日本文化の良さや魅力も発信する活動も検討してみましょう。

参照:@DIME(外国人が日本で働きたい理由ランキング)

・GDP世界2位の中国も少子高齢化が進み、外国人労働者を受け入れ始めている

中国はGDPで世界2位(2018年のデータ参考)の経済大国となり、同時に少子高齢化も急速に進んでいるのが特徴です。そのため、従来のように外国人労働者として日本など外国へ働きに行くのではなく、自国に外国人を受け入れる方針へ変わる可能性もあります。

このような方針転換は中国だけでなく、少子高齢化の進むアジア各国でも今後考えられる方針転換です。

仮にアジア各国が外国人労働者を受け入れる体制へ本格的に転換した場合、日本企業はこれまでのように人材を確保できない可能性も考えなくてはいけません。

さらに日本企業の中でも、技能や実績と比例しない最低賃金での支払など、労働条件に問題があるケースも存在します。そのため賃金や労働条件など、慎重に設定することが大切です。

参照:経済産業省(アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み)
Global note(GDPランキング 2018年、2019年更新データ)

外国人労働者=人材確保しやすい、人材コストを抑えられるといった誤った認識はしないよう注意しましょう。また、これらは非常に問題のある認識でもあります。

アジアの外国人労働者市場から企業が行うべき対策

ここからは、アジアの外国人労働者市場の厳しい現状を理解した上で、日本の企業がどのように外国人を雇用していくべきか2点を軸に解説します。

・外国人労働者の労働環境整備

まずは、外国人労働者の労働環境を整備することから、職場の定着率向上と信頼関係の構築、評価アップにつながります。

1つは賃金の適切な設定です。外国人労働者の日本語能力や保有資格、専門技術や実績などを加味しながら慎重に考慮しましょう。また、福利厚生も充実させるのが、定着率向上に大切な要素です。

また、入社時の契約事項や各種説明の多言語化も必要です。

ただしこのような環境構築にはコストもかかるため、雇用を条件とする助成金制度も活用してみるのがおすすめです。

政府では外国人労働者を雇用している企業にも、下記のような助成金を用意しています。

  • 雇用調整助成金:外国人労働者を含む休業手当に対する助成金、金額は休業手当の3分の2程度

  • トライアル雇用助成金:試験雇用時に適用、1人最大5万円を3ヶ月支給

  • 人材開発支援助成金:特定の技能を習得予定の労働者を雇用している企業へ向けた助成金、複数のコースおよび条件に分かれている

参照:厚生労働省(人材開発支援助成金)
厚生労働省(トライアル雇用助成金)
厚生労働省(雇用調整助成金)

助成金制度を効率的に活用しながら労働環境にもきめ細やかな配慮と工夫を行い、外国人労働者からも評価される信頼性の高い企業を目指しましょう。

・外国人労働者との契約トラブル、法令違反などに注意

外国人労働者の雇用によって慎重にならなければいけないポイントが、契約トラブル、職場でのトラブルによるです。

当たり前ですが法令違反はご法度ですし、やってはいけない行動です。仮に評判を落とすような行動が生じた場合、SNSなどによる情報拡散など、あらゆる場面で違法行為を告発さされ国内外で信用されない企業として捉えられます。

他にはコミュニケーション不足による認識の違いによって、育成できないパターンも避けなければいけません。

コミュニケーション不足を避けるためには、日本語の流ちょうな外国人労働者もしくは、採用する外国人労働者の言語を習得している日本人を雇用し、通訳しながら育成する方法も考えるべきでしょう。

アジア各国の取り組みにも注目

最後に、アジア各国の外国人労働者の送出、受け入れに関する取り組みや方針について紹介します。

・韓国、台湾、シンガポール、マレーシアの基本方針

韓国とマレーシアは、元々自国の労働者が海外で働く送出を軸としていましたが、1980年頃から外国人労働者を受け入れる方針へ変わっています。

台湾は1990年代から外国人労働者の受け入れ開始し、シンガポールは1980年代から開始しているのが特徴です。

そして労働者の熟練度や受け入れに関する制限などは、各国で異なります。

  • 台湾:国内の労働者が就きにくい業種から受け入れ、国内産業の海外流出を避ける

  • 韓国:国内の労働力不足を補う

  • マレーシア:国内の雇用を確保するため受け入れは削減傾向

  • シンガポール:熟練の労働者を優遇

ただし、4ヶ国いずれも自国の労働者が雇用確保できるよう、優先的に政策を進めているのが原則です。

参照:独立行政法人 労働政策研究・研修機構

・アジア4か国の在留資格は、高度人材に対する設定も異なる

台湾、韓国、マレーシア、シンガポールの4ヶ国は、在留資格および高度人材の種類も異なっています。

台湾と韓国は業務や活動内容に応じて在留資格を設定しているのに対し、マレーシアやシンガポールは大まかに区分している傾向です。つまり、研究や教授といった内容によって在留資格が変わるのは台湾と韓国で、日本も同様のケースです。

主な受け入れ業種は製造業とサービス業、建設業で、マレーシアとシンガポールは外国人労働者の受け入れ比率も高い傾向です。一方台湾と韓国は数%と、比較的少ない比率といった違いもあります。

外国人労働者は日本だけが受け入れている訳ではありません。台湾、韓国、マレーシア、シンガポールなどアジア各国が、それぞれ自国の人材不足産業へ外国人を受け入れています。

さらに自国の雇用を守りながら外国人労働者を受け入れる点や、受けれ枠や外国人雇用税など優れた点の多い特徴も持っています。

東北、東南アジア各国に負けないよう、日本企業も外国人労働者受け入れに関するきめ細やかなサポートや対策を行いながら人材確保向けて動きましょう。

参照:独立行政法人 労働政策研究・研修機構

アジアの外国人労働者市場は変化している

アジアの外国人労働者市場は、生産年齢人口の減少および高齢化比率の増加によって、少子高齢化へ進みつつあります。また、アジア各国の生産年齢人口は、2035年頃をピークとして今後減少することが想定されています。

一方で台湾や韓国、マレーシアやシンガポールなどアジア各国は、外国人労働者の受け入れ政策を進めているのが特徴です。そのため、これまで以上に人材確保の難易度が高まっていると考えられます。

日本企業が取り組むべき項目は、労働環境の改善(多言語化や福利厚生の充実)、賃金を各労働社の技能や経験に応じて適切に設定し、信頼関係を結ぶところです。

まずは自社の労働環境を見直し、外国人労働者が定着できるような状況か確認しましょう。