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日本では、日本在住外国人に対する行政支援策を実施しています。しかし、外国人を雇用している企業の中には、日本政府の方針や具体的な行政サポートについて疑問点や不明点もあるのではないでしょうか。
今回は日本在住外国人に対する行政サポートや政府方針をはじめ、具体的な支援策についても解説していきます。
目次
まずは日本在住外国人に向けた、支援方針と現在の状況について紹介します。
日本政府は、日本在住外国人との共生社会の構築や、外国人の受け入れを積極的に行う点を基本方針としています。
つまり外国人を積極的に受け入れるだけでなく、日本の社会や文化、行政サービスなどを理解してもらえるようサポートをしたり、外国人が積極的に協力を示してくれる環境作りをしたりといった共生社会を目指しているのが特徴です。
【基本方針】
外国人の受け入れを今後も行う
共生社会の構築を目指す
外国人に日本の理念を理解してもらえる環境作り
日本在住外国人は、年々増加傾向です。1996年から20年間で約100万人以上、新規で来日し、日本で生活しています。
在留外国人は、永住許可を得た外国人や留学生、専門技術を持ち日本で働く外国人、技能実習生などを指します。つまり観光客を除いても100万人以上増加している状況で、行政および企業の支援策も必要といえるでしょう。
さらに経済財政諮問会議の分析によると、今後5年間で30万人以上の増加数が見込まれています。(コロナの影響で下方修正されています)
企業の人事担当者も、この機会に外国人の雇用に関する対策だけでなく、雇用した後のサポートも行える環境を考えましょう。
参考:我が国に生活・滞在する外国人の現状と外国人が生活・滞在する上での課題
日本在住外国人に対する支援策については、閣僚会議で定められました。そして閣僚会議で示された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」によると、共生に向けた施策は7種類に分かれているのが特徴です。
大きく分けると多言語へ向けた取り組みや生活サービス環境の改善、円滑なコミュニケーション、外国人児童生徒への教育に関する質の向上、適正な労働環境の確保などが含まれています。
参考:外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策
続いては、日本で生活を始めている外国人に対して、行政はどのような支援策を提示しているのか解説します。
外国人を雇用している・雇用を検討している企業の人事担当者も、行政サービスからどのような支援が必要なのか広く見識を持ちましょう。
外国人労働者の多くは、行政サービスの細かな内容から手続きの流れ、医療や福祉に関する情報について事前に調べていないケースもあります。
日本在住外国人も暮らしやすい社会を作るには、行政サービスや生活情報を多言語化した上で情報発信することも大切です。
そこで行政側では、生活情報に関するガイドブックや多言語に対応した翻訳技術を活用した環境の整備、外国人向けの相談窓口を一本化し分かりやすくするなど、いくつかの支援策を示しています。
日本在住外国人の増加によって、医療機関や福祉サービスの利用件数も増える事が予想されます。そこで政府は、医療機関へ受診しやすい環境作りや診療時の通訳サービス、外国人スタッフの受け入れ体勢構築など、医療や福祉サービスの支援策についても方向性を示しています。
日本在住外国人の中には、交通ルールや法律、日本のマナー、危険なコミュニティなどに対する知識や防犯意識に関して乏しいケースも考えられます。
たとえば車線を反対に走行したり、自転車で歩道を通行してしまったりなど、ルールや法律をしっかり知識を身に付けなければ分からない点です。
そこで外国人にも交通ルールの知識を身に付けてもらうよう、啓発活動を行うなど交通事故防止や防犯意識の向上へ向けた施策も考えられています。
外国人労働者は、日本の労働関係の法令や労働条件について知らないことも多く、労働環境に関するトラブルに巻き込まれるケースも考えられます。そこで行政は、ハローワークを通じて事業主へ、労働環境や雇用に関する相談など適切な対応を行うよう指導し、各企業の環境改善へ取り組んでいます。
さらに外国人労働者へ向けた安全衛生教育を始め、労働基準監督署の「外国人労働者相談コーナー」を増設したり、対応言語を増やしたりといった支援策についても示されているのが特徴です。
参考:日本国際交流センター(日本の地方自治体における多文化共生の現在と今後) 参考:首相官邸(外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策)
行政の支援策を確認できたら、具体的な支援策例も確認していきます。
日本は地震大国でもあり、災害の多い地域でもあります。日本在住外国人にとっても災害情報は、迅速に取得しなければいけません。また、多言語も必要です。
内閣府の防災情報のページでは、災害時に便利なアプリやWebサイトを複数紹介しています。また、リーフレットとしてまとめているので、ダウンロードし小冊子としていつでも確認できるよう配慮されています。
他にも天気予報や災害情報も発信している気象庁では、各情報を多言語(14ヶ国語)で確認できる仕様へ切り替えています。
たとえば防災対策に重要な避難勧告(台風などによる土砂災害や冠水など)に関するガイドラインは、既に多言語化(英語版)されて無料配布しています。
災害警戒レベルに関する説明や水害から身を守るための避難行動、ハザードマップの見方など、防災や避難に関する情報を網羅しています。避難勧告に関するガイドラインを確認する方法は、内閣府の「防災情報のページ・避難勧告に関するガイドライン」から、英語版を始め14の言語版をダウンロード可能です。
参考:内閣府(防災情報のページ)
日本で暮らすためには銀行口座の開設も大切です。しかし、口座開設に伴う資料確認や手続きの流れを理解するには難しい部分も多く、開設手続きが進まないケースも珍しくありません。
さらにお金を扱う手続きということもあり、犯罪に巻き込まれるリスクも存在します。
金融庁は、金融機関や外国人を雇用している企業へ向けて、金融機関を適切に利用するためのマニュアルを作成しました。また、14ヶ国語もの言語に対応しているので、共生社会を構築するという基本方針にも沿っています。
外国人を雇用している企業は、上記のマニュアルを活用し、適切に金融機関を利用する方法を覚えてもらえるようサポートできます。
企業も「共生社会」という意識が必要です。
参考:首相官邸(外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策)
法務省公式HP「外国人生活支援ポータルサイト」では、生活や仕事、防災に関する幅広いガイドブックを配布しているのが特徴です。
言語は英語や中国をはじめ、合計13ヶ国語の外国語に対応しています。
内容は在留資格の交付手続きや日本の教育システムなどに関する、基礎的な内容から具体的な手続き、対処方法を丁寧に説明しているのが魅力です。
他にも下記のような点について、外国人向けに1つ1つ解説しています。
在留資格の取得手続き
マイナンバー制度の登録方法
日本の労働形態
働き方
最低賃金や賃金の支払われ方
社会保険の種類と概要
妊娠、出産時の手続き
医療機関の探し方
税の基本と種類、納付方法
住宅の種類
日本のマナー、一般的なルール
特に日常生活におけるゴミ出しなどのルールやマナーについては、公的手続きと違い正確に確認するのが難しい内容です。
こちらも「外国人生活支援ポータルサイト」のガイドライン内で、丁寧に説明しています。ごみ出しは、曜日のルールや燃えるごみや燃えないごみの区分、不法投棄の意味やなどを説明しているのが特徴です。
一般的なマナーは、トイレの使い方や安易に大きな声を出さないこと、ながらスマホの禁止、公共交通機関での過ごし方や温泉や銭湯の入り方など、細かく説明しています。
ちなみに賃貸住宅の入居方法や細かなルール、法律については国土交通省「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」にてガイドブックを配布しています。
参考:法務省(外国人生活支援ポータルサイト) 参考:国土交通省(外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン)
外国人にとっても病気やケガの場合に、どこへ駆け込めばいいのか不安になる部分です。
法務省の外国人生活支援ポータルサイトや厚生労働省の特設サイトでは、医療制度の仕組みや医療機関の種類、探し方などについてガイドラインとしてまとめています。
言語については、ふりがな付きの日本語でも優しく説明しているのが特徴です。また、下記ののような内容です。
医療機関の探し方(地方自治体の広報誌やインターネットなど)
健康保険の加入義務と要件
健康保険料の支払方法と負担割合
市販薬、薬の購入方法(病院併設の薬局、ドラッグストア)
外国人を雇用した場合は、生活や税の他、医療機関や医療制度、薬の購入方法などについてもガイドラインの配布や説明を行いましょう。
参考:法務省(外国人生活支援ポータルサイト)
最後に、企業は日本在住外国人に対して、どのようなサポートをすべきなのか主な項目を解説します。
外国人社員を抱えている企業の中には、外国人とのコミュニケーション不足によるトラブルや、労働条件や就業規則を認識してもらっていないために契約トラブルに発展するリスクも存在します。
企業は日本在住外国人に対して、どこまでサポートすればいいのか悩んでいる可能性もあるかと思いますが、少なくともコミュニケーションの少ない職場や、生活や日本語教育に関するサポートのない状態は共生社会に沿っていない職場環境といえるでしょう。
まずは契約書や関連書類を多言語化し、説明時には通訳者を間に立てたり多言語翻訳ソフトを使用したりしながら、内容を理解してもらい契約するのが基本です。さらに雇用後も職場で、多大なストレスを抱え込まないよう職場定着へ向けた、きめ細やかなサポートも必要です。
たとえば安全衛生教育や研修の実施、日本人社員の共生意識向上を目的とした研修など多角的な視点からの取り組みも求められます。
職場定着にかかる各種支出の中には、助成金制度の対象となる可能性もあるので、気になる人事担当者は厚生労働省のHPから確認してみてください。
多言語化のために導入した設備や改修費、翻訳機器導入費、社労士や弁護士へ関連業務の委託量などの一部費用に対して助成金を付与してくれます。(上限72万円もしくは上限57万円)
日本在住外国人が日本で安定した生活を過ごすには、住宅も確保しなければいけません。また、住宅確保が職場の定着にもつながります。
賃貸住宅の中には、外国人の入居を控えたり断ったりするケースもあり厳しい環境です。
国土交通省では日本在住外国人向けに、14か国語対応の「部屋探しのガイドブック」を国土交通省HPにて公開しています。内容は日本で住居を探している外国人向けに、部屋を借りる時の流れや間取り図の見方といった基礎から、契約手続きの流れや詳細、必要書類などまで丁寧に解説しているのが特徴です。
企業の人事担当者は、面談や相談時に「部屋探しのガイドブック」を提供、内容を説明しながら住宅確保のサポートも行いましょう。
参考URL:国土交通省(外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について)
企業の人事担当者や経営陣の中には、外国人の雇用と労働に関する指導の他、何をサポートすればいいのか分からず悩んでいたり、離職されたりしていないでしょうか。
日本政府および行政は、在留外国人や観光客との「共生社会」を基本方針として環境整備や、多言語化されたガイドブックの作成など対応を始めています。
そして、企業も外国人の労働力に目を向けるだけでなく、契約時に丁寧な説明と翻訳、職場定着へ向けた適切なサポートなど労働以外の部分にも力を入れる必要があります。
まずは今回紹介した行政の支援策を確認しながら、日本在住外国人に対するサポートや職場環境の改善へ向けて少しずつ動きましょう。
日本在住外国人に対する行政サポートについては、「日本在住の外国人生活支援情報まとめ(2021年版)」でも詳しく解説しています。
ぜひご一読ください。