外国人の雇用契約書には何を書く?必須項目や注意点を企業向けに解説

2022年05月18日
WeXpats Bizは技能実習/特定技能の外国人採用・雇用支援サービスを提供しているLeverages Global Supportの関連サイトです。行政書士監修の下、外国人採用の現場で役立つ情報を発信しています。
濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

初めて外国人を雇用する企業のなかには、雇用契約書をどのように作成すべきか分からず悩んでいるところもあるでしょう。外国人の雇用契約書には日本人と同じ項目のほか、雇用契約の停止条件といった外国人雇用特有の条件を盛り込む必要があります。そこで、このコラムでは外国人の雇用契約書を作成する理由や注意点、記載項目などを解説。外国人雇用の経験がない企業でも、スムーズに雇用契約書を作成できるようまとめています。

目次

  1. 外国人の雇用契約書とは
  2. 雇用契約書と労働条件通知書の違い
  3. 外国人の雇用契約書にテンプレートやひな形はある?
  4. まとめ

外国人の雇用契約書とは

雇用契約書は、労使間で締結される雇用条件に関する契約書類です。外国人労働者と使用者双方の署名・捺印が必要となるほか、それぞれ1通ずつ控えを保管する必要があります。基本的には日本人と同じように雇用契約書を作成しますが、外国人雇用特有の項目を加えたり相手が理解できる言語で記載したりしなければなりません。労働者への雇用条件の明示や書類による交付は法律によって義務づけられており、外国人に対しても同様の対応が求められます。

雇用契約書を作成する理由

採用した外国人労働者に雇用条件を明示し、内容に問題がないか確認する役割を担うのが雇用契約書です。外国人労働者の不安を払拭したり雇用後のトラブルを防いだりするためにも、雇用契約の締結は必ず書面を用いましょう。また、雇用契約書は、外国人が在留資格を取得するのに必要な書類でもあります。外国人雇用をスムーズに行うためにも、不備のないよう外国人の雇用契約書を作成しましょう。

雇用契約書で明示する項目

外国人労働者に明示・書面での交付を行う項目は、労働基準法によって定められています。必ず盛り込む項目と就業規則で定めている場合に明示する項目があるので、きちんと確認したうえで雇用契約書を作成しましょう。明示・書面交付が義務づけられている内容は以下のとおりです。

  • 労働契約の期間に関する事項
  • 期間が設けられた労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  • 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
  • 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

企業が明示義務を果たさない場合、30万円以下の罰金が科せられます。昇給に関しては賃金に関する事項に含まれないため、口頭での明示でも問題ありません。しかし、雇用契約書に記載しておけばあとからでも確認しやすいでしょう。続いて、就業規則で定めがあれば明示する項目は以下のとおりです。

  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  • 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • 安全及び衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰及び制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

以上の項目は書面ではなく口頭での明示でも良いとされていますが、外国人労働者に内容を理解してもらうためにも、雇用契約書に記載して渡すことをおすすめします。もしくは口頭で説明した上で、労働条件通知書に記載して渡しましょう。外国人労働者が労働条件を把握しているかしっかり確認し、不明点がある場合は認識をすり合わせましょう。

雇用契約書の作成に関する法律

外国人の雇用契約書を作成する際はいくつかの法律が絡んでくるため、違反しないよう注意する必要があります。外国人労働者の給与や待遇、労働条件を正しく運用していれば問題ありませんが、トラブルにならないようチェックしておきましょう。

  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 男女雇用機会均等法
  • 育児介護休業法
  • 退職の申出期間などの民法に定める事項
  • 労働安全衛生法
  • 個人情報保護法
  • 出入国在留管理法
  • 職業紹介法

作成した雇用契約書が法律に抵触しないか不安な場合は、人事や労務担当者、行政書士などに内容を確認してもらうことをおすすめします。

参照元
e-GOV法令検索「労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)

雇用契約書と労働条件通知書の違い

雇用契約書と同じく労働条件が記載されている労働条件通知書は、雇用主が労働者に一方的に渡す書類です。そのため、外国人労働者の署名・捺印は必要ありません。双方とも外国人労働者に雇用条件を明示することを目的としているので、企業が作成するのは雇用契約書か労働条件通知書のいずれかで良いでしょう。外国人の在留資格の申請も、労働条件通知書の提出で問題なく行えます。

外国人の雇用契約書にテンプレートやひな形はある?

外国人の雇用契約書にテンプレートはありません。継続的に外国人労働者を雇用する企業は、自社でテンプレートやひな形を作成すると良いでしょう。厚生労働省が用意している「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」や、労働局などの公式サイトで公開されている書式を参考にするのも一つの方法。WeXpats Bizでも、「外国人の雇用契約書にひな形はある?作成方法や注意点を企業へ向けて解説」のコラムで雇用契約書の記入例をご紹介しているので、ぜひご覧ください。外国人労働者の母国語にあわせた雇用契約書を用意できるよう、準備を整えましょう。

参照元
厚生労働省「外国人労働者向けモデル労働条件通知書(英語)」
東京都労働局「労働関係様式集

外国人の雇用契約書を作成する際の注意点

外国人労働者が雇用契約書の内容を理解できないまま署名・捺印した場合、労働条件を明示したことにはならず、労働基準法違反となります。外国人の雇用契約書を作成する際は使用言語に注意したり法律に抵触していないか確認したりと、さまざまな点に注意しなければなりません。ここでは、初めて外国人の雇用契約書を作成する企業向けに注意点を解説します。

給与額は同一業務を行う日本人と同等以上にする

外国人労働者の給与は同一業務を行う日本人と同等以上に設定するよう、法律によって定められています。外国人労働者にも日本の法律が適用されるので、不当に給与を下げたり最低賃金以下の賃金を支給したりしてはいけません。比較対象となる社員がいない場合は、同じ地域の同業他社で働く日本人の給与水準を参考にしましょう。なお、給与だけでなく待遇も日本人と同等以上にする必要があるので、雇用契約書を作成するときは国籍による格差を生まないよう注意する必要があります。

職務内容は具体的に書く

外国人は日本人に比べて契約内容を重視する傾向が強く、法律上問題がない場合でも契約外の業務は行わないことがあります。暗黙の了解が通じない場合もあるので、従事する業務や就業場所について具体的に記載し、外国人労働者も分かりやすいように雇用契約書を作成しましょう。職務内容の記載がアバウトな場合、外国人労働者とのトラブルに発展しかねません。また、外国人労働の在留資格の審査にも影響するでしょう。職務内容の記載方法で、在留資格取得許可申請の結果が左右されるため、できるだけ具体的かつ丁寧に明記することが大切です。業務内容の詳細やイレギュラーな業務が発生する可能性などは、すべて雇用契約書に記載しましょう。

現場実習や研修の内容・スケジュールも明記する

職務上必要な現場実習や研修を行う場合、その内容とスケジュールを雇用契約書に明記する必要があります。多くの在留資格では現場における現業仕事を原則禁止していますが、入社後の短期間であれば実習・研修が認められるケースもあります。現場実習を実施する予定がある企業はその旨を雇用契約書に記載し、資料を添付しましょう。

雇用契約の停止条件も盛り込む

新しく就労可能な在留資格を取得する外国人の場合、雇用契約書を作成する段階では申請の審査結果が出ていないため、正式に雇用できるか分かりません。そのため、外国人の雇用契約書には「本雇用契約は、△△の在留資格が認められた後に効力が発生する」という旨の停止条件を記載するのが一般的です。外国人がすでに日本に在留している場合は「在留資格の変更が許可されない場合」というように文言を変えましょう。

停止条件を雇用契約書に明記することで、外国人に対して就労可能な在留資格の取得が入社条件であることを示せます。不法就労やトラブルを防ぐためにも、停止条件は必ず雇用契約書に盛り込みましょう。

双方が正しく内容を理解できるよう配慮する

雇用契約書を作成する際は、雇用主と外国人の双方が正しく理解できるよう内容を組み立てましょう。外国人が雇用契約書の内容を理解していなかったり誤解していたりすると、のちのち雇用主が不利益を被る可能性があります。たとえば、外国人が雇用契約書の内容を勘違いし、あとになって認識の齟齬が発覚した場合、労働者の権利である契約の即時解除が認められるのです。そして、外国人が契約の即時解除を行って14日以内に帰国する際、雇用主が旅費を支払わなければなりません。企業にとって大きな負担となるので、リスクを回避するためにも雇用契約書の内容確認はきちんと行いましょう。

外国人の雇用契約書については、「外国人の雇用契約書はどう作成する?企業に向けポイントを解説」のコラムでも詳細が確認できます。ぜひ、合わせてご一読ください。

まとめ

外国人の雇用契約書を作成する際は、双方が納得して契約を締結できるよう、できるだけ具体的に労働条件を記載しましょう。労働条件の明示・書面での交付は雇用主の義務です。雇用契約の停止条件や帰国時の旅費といった外国人雇用特有の項目も、不法就労やトラブルを防ぐために記載することをおすすめします。外国人が内容を理解できなかったがゆえにトラブルに発展することもあるので、リスク回避のためにも認識のすり合わせをしっかり行いましょう。