外国人の強制送還とは?退去強制と出国命令の概要や対策を企業へ解説

2022年06月23日
WeXpats Bizは技能実習/特定技能の外国人採用・雇用支援サービスを提供しているLeverages Global Supportの関連サイトです。行政書士監修の下、外国人採用の現場で役立つ情報を発信しています。
濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

外国人を雇用する企業のなかには、強制送還について知りたい方もいるでしょう。退去強制手続と出国命令の2つの措置の総称が強制送還です。外国人は不法入国や不法在留、不法就労、犯罪行為をすると国外へ強制送還されます。このコラムでは、強制送還の概要や送還までの流れを紹介。また、外国人を雇用する際、どのような対策を取れば強制送還を防げるかについて詳しく解説します。内容を参考にして、外国人雇用を進めましょう。

目次

  1. 強制送還とは
  2. どんな外国人が強制送還される?
  3. 外国人が強制送還されるまでの流れ
  4. 退去強制に該当する外国人が在留する方法はある?
  5. 強制送還の費用は誰が支払う?
  6. 外国人の強制送還を防ぐために企業ができる対策
  7. まとめ

強制送還とは

強制送還とは不法入国した外国人やオーバーステイの外国人、または犯罪を犯した外国人を強制的に国外へ出国させる手続きのことです。なお、「強制送還」は正式名称ではありません。正式には、「退去強制」と「出国命令」の2種類の措置があります。一般的に、これら2つを総称して「強制送還」と呼ばれているのです。以下では、退去強制と出国命令について詳しく解説します。

退去強制

日本で犯罪行為やオーバーステイをしている外国人は、原則、退去強制処分の対象です。対象となった外国人は、外国人の国籍または市民権の属する国へ送還されます。退去強制によって出国した外国人は、一定期間日本に再入国できません。これを「上陸拒否期間」といいます。退去強制処分された外国人の上陸拒否期間は5年間です。なお、過去にも退去強制処分による送還経験がある場合、2回目以降は10年間日本に再入国できません。また、麻薬等の取締りに関する法律違反により刑を受けた外国人は、無期限に日本に再入国ができません。
何らかの事情により国籍または市民権の属する国へ送還できない場合は、以下いずれかの国への送還手続きが取られます。

  • 入国する直前に居住していた国
  • 入国する前に居住していたことのある国
  • 日本に向けて船舶等に乗った港の属する国
  • 出生地の属する国
  • 出生時にその出生地の属していた国
  • その他の国

ただし、受け入れ国が外国人の入国を拒否した場合は、日本から送還できません。強制送還が可能になるまでの期間、外国人は入国者収容所や地方出入国在留管理局の収容場などに収容されます。

出国命令

出国命令の対象はオーバーステイをしている外国人です。通常、オーバーステイしている外国人は、先述した退去強制処分となり収容や送還の手続きが取られます。しかし、以下の出国命令の要件をすべて満たせば、収容されることなく日本から出国できるのです。

  • 速やかに出国することを希望して、自ら地方出入国在留管理局に出頭した
  • 違反が不法残留のみである
  • 窃盗その他一定の罪により懲役刑等の判決を受けていない
  • これまでに強制送還されたり、出国命令により出国したことがない
  • 速やかに出国することが確実である

出国命令によって出国した外国人の上陸拒否期間は1年間なので、退去強制の5年または10年と比べると短期間で再入国できます。

出国命令制度については、「出国命令制度とは?出頭から適用までの流れを外国人を雇用する企業へ解説」でも解説しているので、あわせてご覧ください。

参照元
出入国在留管理庁「退去強制手続と出国命令制度

どんな外国人が強制送還される?

ここでは、どのような外国人が強制送還されるかを具体的に紹介します。

不法入国および不法在留の外国人

不法入国および不法在留の外国人は強制送還の対象です。不法入国者とは、偽造パスポートを使用したり貨物船に隠れて密入国したりなど、不法な手段で日本に上陸する外国人を指します。一方、不法在留者は、主にオーバーステイをする外国人のことです。在留資格で定められた在留期間を超過後、更新手続きをせずに日本に在留し続ける外国人は不法在留者として強制送還されます。

不法就労をする外国人

日本で不法就労をする外国人も強制送還の対象です。在留資格によって就労を許可されていない外国人は、日本で働けません。許可なく働くことは、入管法違反に該当するので強制送還されます。また、就労可能な在留資格を持っていたとしても、不法在留する外国人の就労や許可の範囲外の業務を行うことも不法就労です。

外国人の不法就労については、「外国人の不法就労とは?罰則や雇用時の確認方法を企業へ向けて解説」でも解説しているので、さらに詳しく知りたい方はあわせてご覧ください。

犯罪を犯した外国人

日本で以下の犯罪を犯した外国人は強制送還されます。

  • 住居侵入罪
  • 通貨偽造罪
  • 賭博罪
  • 殺人罪
  • 傷害罪
  • 監禁罪
  • 窃盗罪
  • 詐欺罪
  • 未成年者略取誘拐罪
  • 強盗罪
  • 恐喝罪
  • 盗品譲受罪

ほかにも、薬物取締法違反や旅券法違反を犯した外国人は、強制送還の対象です。裁判の結果、有罪判決が下された場合だけでなく、執行猶予でも強制送還は免れません。
ただし、「永住者」「永住者の配偶者等」「日本人の配偶者等」「定住者」の在留資格を持つ外国人は、強制送還されない場合もあります。

外国人が強制送還されるまでの流れ

ここでは、外国人が国外へ強制送還されるまでの流れを紹介します。

退去強制に該当する場合

退去強制により強制送還される場合の流れは以下のとおりです。

1.入国警備官による違反調査…不法入国や不法残留の疑いがある外国人に対して事実を確認するための調査が行われる

2.外国人の身柄を収容…調査の結果「容疑あり」と判断が下された場合、外国人は収容される

3.入国警備官から入国審査官へ引き継がれる

4.入国審査官による違反審査…不法入国や不法残留の事実を認定するための審査が行われる

5.退去強制令書の交付…不法入国や不法残留の事実を認定したあとに「退去強制令書」が交付される

6.強制送還…国外へ送還される

なお、退去強制の認定結果に納得できない外国人は、以下の流れで異議申し立てができます。

1.特別審理官による口頭審理…退去強制の認定が通知された日から3日以内に異議を申し立てると口頭審理が行われる

2.特別審理官による判定

・退去強制の認定が正しいと判定された場合…退去強制令書交付後に強制送還、または再度異議申し立てができる

・退去強制の認定が誤りと判定された場合…身柄解放および在留継続。出国命令の対象者は出国命令書交付後に出国する

3.法務大臣による裁決…口頭審理の判定通知から3日以内に異議を申し出ると、法務大臣または委任を受けた地方出入国在留管理局による裁決が行われる

4.法務大臣による裁決

・申し出の理由や在留を認める事情がないと判定された場合…退去強制令書交付後に強制送還される

・申し出の理由と在留を認める事情があると判定された場合…在留特別許可により一定期間在留が許可される

・申し出に理由があると判定された場合…身柄解放および在留継続、または出国命令の対象者は出国命令書交付後に出国する

永住許可を持つ外国人や本籍を日本に置いたことがある外国人は、在留特別許可を得られる可能性があります。ただし、在留特別許可を外国人に与えるか否かは、法務大臣が個別に判断しているので、必ず得られるとは限りません。

在留特別許可については、「在留特別許可とは?申請の流れと必要な書類を企業へ向けて解説!」でも解説しています。許可された・されなかった事例も紹介しているので、あわせて参考にしてください。

出国命令に該当する場合

出国命令に該当する場合は、以下の流れで手続きが行われます。

1.入国警備官による違反調査…不法入国や不法残留の疑いがある外国人に対して、事実確認の調査が行われる

2.入国審査官による違反審査…外国人に対して、不法入国や不法残留の事実を認定する審査が行われる

3.審査の結果

・出国命令対象者と認定された場合…主任審査官へ通知される(外国人は収容されない)

・出国命令対象者と認定されなかった場合…入国警備官へ差し戻され、先述した退去強制の流れで審査が行われる

4.出国命令書の交付…主任審査官によって出国期限が定められる

5.出国…出国期限までに外国人が自ら日本を出国する

なお、外国人が期限までに出国しない場合は、出国命令が取り消され、主任審査官によって退去強制処分へと変更されることもあります。

参照元
出入国在留管理庁「引渡・違反審査・口頭審理・異議申出・裁決・在留特別許可

退去強制に該当する外国人が在留する方法はある?

退去強制に該当する外国人が日本に在留するには、行政手続きとしての「再審情願」と「仮放免許可申請」、司法手続きとしての「行政訴訟」を行う方法があります。再審情願とは、法務大臣および主任審査官に対して、退去強制の取り消しと在留特別許可を求めるものです。退去強制が確定している外国人が、確定後の家庭環境や個人の事情の変化などを理由に、再び審査を請求するときに行えます。ただ、実際に再審情願が認められるのは、かなり稀なケースです。人道的配慮が必要など、よほどの状況変化がないと認められません。再審情願の審査によって退去強制令書が取り消され、在留特別許可を得た外国人は在留の継続が可能です。
行政訴訟では、退去強制令書の取消請求訴訟と執行停止申し立てを行います。行政訴訟の場合、外国人が退去強制に相当するか否かの判決を行うのは裁判所です。判決結果によって認容判決が下されれば、退去強制処分は取り消されるので在留を継続できます。

強制送還の費用は誰が支払う?

強制送還の費用は、外国人本人・国民(税金)・運送業者のいずれかが支払います。

外国人本人

強制送還の費用は、基本的には対象者である外国人本人が支払います。これを「自費出国」といい、出入国在留管理庁では可能な限り外国人自身が支払うよう促しているようです。
ただし、入国者収容所長または主任審査官によって許可を得た外国人でなければ、自費出国できません。外国人本人に出国の意思があり、出国可能な資金を所持しているかなどを調査したうえで、自費出国の許否判断が行われています。

国民(税金)

国民の税金によって強制送還することを、「国費出国」といいます。外国人に出国の意思がない場合や費用を用意できない外国人は、国費すなわち国民の税金を利用して強制送還するのです。ほかにも、人道的配慮によって早期送還が必要と判断された場合は、国費出国が適用される場合もあります。

運送業者

以下のいずれかに該当する場合は、運送業者が強制送還の費用を支払います。

  • 上陸審査で上陸を拒否された外国人
  • 仮上陸や船舶観光上陸を許可されたあとに逃亡、または正当な理由なく呼び出しに応じない外国人
  • 国外への退去命令を受けたにも関わらず、期限までに退去しない難民旅行証明書を持つ外国人
  • 寄港地上陸や通過上陸など一時的な上陸許可に関わらず、在留期限後も残留し続ける外国人
  • 外国人の上陸時、退去強制事由に該当すると知っていた運送業者

外国人と全く繋がりのない運送業者が費用を支払う訳ではありません。強制送還の対象となる外国人を日本へ連れてきた運送業者が費用負担の対象です。

参照元
出入国在留管理庁「退去強制令書の執行・送還・自費出国

外国人の強制送還を防ぐために企業ができる対策

ここでは、企業で雇用する外国人の強制送還を防ぐために、どのような対策をすべきかを紹介します。

雇用時に在留カードの内容を確認する

外国人の強制送還を防ぐには、雇用時に在留カードの内容を十分確認することが重要です。在留期間をはじめ、在留資格の種類や就労制限の有無、資格外活動許可欄などを目視し、自社で雇用可能かどうかを判断しましょう。オーバーステイの外国人や許可の範囲外で外国人を雇用すると、外国人本人が不法就労で強制送還の対象になるだけでなく、雇用主も不法就労助長罪で処罰されます。

不法就労と不法就労助長罪については、「不法就労および不法就労助長罪の概要を外国人を雇用する企業へ向けて解説」でも紹介しているので、あわせてご覧ください。

雇用後も定期的に在留期限をチェックする

外国人が自社で働き始めたあとも、定期的に在留カードで在留期間を確認することが強制送還防止に繋がります。オーバーステイの事実が判明した場合は、地方出入国在留管理局や警察に通報しましょう。また、在留カードの更新手続きを忘れないよう、積極的に声掛けをするのも企業ができる対策の一つです。

まとめ

強制送還とは、「退去強制手続」と「出国命令制度」の2種類の措置のことを指します。強制送還は、不法入国または不法在留の外国人、犯罪を犯した外国人などを強制的に国外へ出国させるための手続きです。
外国人を雇用する際は在留カードの内容を確認し、強制送還対象者を採用しないよう注意しましょう。また、雇用後も定期的に在留期間が過ぎていないかを確認することが大切です。

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