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在留外国人が家族滞在ビザで配偶者や子どもを呼び寄せるには、扶養できるだけの経済力が必要です。また、婚姻関係や親子関係が法律上有効でなくてはいけません。
家族滞在ビザは、資格外活動許可を得れば就労が可能です。ただし、週28時間の制限や働いてはいけない業種の存在など、注意点は少なくありません。
この記事では、家族滞在ビザの外国人を雇用する際に気をつけるべき点や、家族滞在ビザで外国人の家族を呼び寄せる方法などを解説します。
目次
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家族滞在ビザとは、在留資格「家族滞在」の俗称です。本来、ビザとは外国人が日本に入国する際に必要な査証を指しますが、在留資格の呼び名として使う人も少なくありません。そのため、この記事では在留資格「家族滞在」=家族滞在ビザとして説明します。
家族滞在ビザは、在留外国人に扶養されている配偶者や子どもが取得するものです。原則として、在留期限は扶養者と同じになります。
在留期限後も日本での生活を望む場合は「在留期間更新許可申請」を行い、許可されれば引き続き日本での在留が可能です。子の場合、扶養されていれば成長して成年になってからも更新ができます。ただし、成人した子を呼び寄せて新たに家族滞在ビザを取得させることはできません。
なお、家族滞在ビザは配偶者や子どもが扶養者と暮らすために付与されています。扶養者である外国人が在留資格を失った場合、家族滞在ビザで日本に在留し続けることはできません。
2023年12月末時点で、家族滞在ビザで日本に滞在する外国人は約26万人です。
参照元
出入国在留管理庁「在留資格「家族滞在」」
家族滞在ビザの対象になるのは、以下の在留資格を持つ外国人に扶養される配偶者や子どもです。養子も対象となりますが、親や親族は対象とはなりません。
教授/芸術/宗教/報道/高度専門職/経営・管理/法律・会計業務/医療/研究/教育/技術・人文知識・国際業務/企業内転勤/介護/興行/技能/文化活動/留学/特定技能2号
なお、在留資格「留学」のうち日本語学校の学生は対象外です。つまり、日本語学校の学生は、夫や妻を家族滞在ビザで呼び寄せることはできません。
参照元
出入国在留管理庁「在留資格「家族滞在」」
家族滞在ビザを取得するためには、「配偶者や子が扶養を受けている」「扶養する能力がある」「家族関係が法律上有効」といった条件が必要です。
配偶者は扶養者の外国人と同居する前提で、扶養を受けている必要があります。子どもの場合、社会通念で必要とされている監督・保護を受けていることが条件です。
なお、家族滞在ビザで認められている活動は日常的な活動であり、就労を目的とはしていません。配偶者や子どもの滞在が就労目的だと判断されると、申請は不許可になります。子どもの年齢が高いほど入国管理局に労働目的だと疑われやすくなるため、不許可にならないよう申請理由書を提出するのが一般的です。
扶養者には扶養できるだけの経済力と扶養する意思が求められます。そのため、扶養者の年収が低いと申請が不許可になるケースも。必要となる額は明確な基準が定められておらず、家族構成や地域の物価などにより異なります。また、基本的に扶養家族と同居するため、間取りや広さが十分な住居があることも条件です。
扶養家族は日本と本国の両国の法律上で家族関係が認められている必要があります。
配偶者とは法律上の婚姻関係を有していることが条件で、事実婚や内縁関係などは含まれません。また、一夫多妻制の国の場合、第二婦人以降の家族滞在ビザは認められません。
一方、子どもは実子や養子、認知された非嫡出子などが該当します。第二婦人の子供であっても該当します。家族滞在ビザの審査に関しては、夫婦関係や親子関係の証明が十分でないと不許可となる場合もあります。
海外から家族を呼び寄せたい場合、在留資格認定証明書交付申請を行います。一般的な流れは以下のとおりです。
扶養者が在留資格認定証明書交付申請を行う
在留資格認定証明書が交付されたら海外の家族に郵送かメールで送付する
家族がその国の日本の在外公館(大使館や総領事館)で在留資格認定証明書を掲示して入国査証(ビザ)を申請する
その国の在外公館で入国査証(ビザ)が発給される
日本に入国し、空港で在留資格認定証明書を提出すると在留カードが交付される(後日郵送の場合もあり)
在留資格認定証明書の有効期限は発行から3ヶ月で、それまでに入国しなければなりません。
在留資格認定証明書交付申請の必要書類は以下のとおりです。
在留資格認定証明書交付申請書 1通(出入国在留管理庁のWebサイトでダウンロード)
写真 1葉(申請書に添付する)
返信用封筒(定型封筒に宛先を記入し、簡易書留料金を加算した郵便切手を貼ったもの) 1通
申請人と扶養者との身分関係を証する文書(婚姻証明書、出生証明書など)
扶養者の在留カードまたは旅券の写し 1通
扶養者の職業と収入を証明する文書(在職証明書。営業許可書、住民税の課税証明書など)
家族滞在ビザが不許可になるケースもよくあります。その原因は、以下のようなことが多いです。特に、企業側で用意する在職証明書の書き方には十分に注意しましょう。
扶養者の給与が低い場合、不要能力に乏しいと判断されやすいです。
家族滞在ビザを申請する場合、扶養者の在職証明書を提出します。このとき、扶養者が在留資格で認められない活動を行っていると、「在留状況不良」と判断されて家族滞在が認められません。
たとえば、扶養者が技術・人文知識・国際業務のビザを持っている場合、在職証明書の仕事内容欄には「通訳」「翻訳」「マーケティング」「エンジニア」など、ある程度専門的な仕事が記載されるはずです。単純労働に従事しているように見える書き方はしないようにしましょう。
参照元
出入国在留管理庁「在留資格「家族滞在」」
家族滞在ビザでは本来、収入を得る活動が許可されていませんが、資格外活動許可を取得すれば一定の条件のもとで就労が可能です。制限を守ることで、アルバイトや契約社員などとして勤務できます。
企業は、外国人を雇用すれば人手不足を解消できるうえ、外国人利用客への対応もしやすくなるでしょう。
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関連記事:「外国人を人材派遣で雇える?企業に向けてメリット・デメリットを解説」
資格外活動許可は、以下の条件を満たす外国人が申請できます。
本来の在留資格の活動が妨げられないこと
本来の在留資格の活動を行っていること
在留資格「特定技能」と「技能実習」を除き、資格外活動許可の活動が入管法別表第一の一の表か二の表に記載されている活動に該当すること(個別許可の場合)
資格外活動許可の活動が法律に違反しないこと
風俗営業や風俗関連営業が行われる営業所で働かないこと
収容令書を発付されたり意見聴取通知書の送達や通知を受けたりしていないこと
外国人の素行が不良ではないこと
日本や日本の会社との契約に基づいて在留資格の活動を行っている場合、その機関が資格外活動を行うことについて同意していること
風俗営業にはキャバレーやバー、パチンコ店、麻雀店なども含まれます。こういった店舗では、清掃やティッシュ配りなどの仕事も認められません。
資格外活動許可には、「包括許可」「個別許可」の2種類があります。
家族滞在ビザの外国人が一般的に取得するのは包括許可です。包括許可は週28時間までの就労が認められます。勤務先ごとに個別の許可が要らないため、働き始める前から事前に申請が可能です。
家族滞在ビザの外国人を雇用する場合、残業時間を含め、どの曜日から数えても連続した7日間で28時間を超えないよう注意しましょう。また、Wワークをしている場合は、ほかの勤務先の労働時間と合計して制限内に収めなければなりません。
なお、扶養者の収入を超えてはいけないというルールもあります。
個別許可は、包括許可の週28時間制限を超えたり、客観的に稼働時間を確認することが困難だったりする場合に個別に認められます。申請には活動内容や時間について説明する文書が必要です。また、就労期間が在留期間の半分を超えてはいけません。
参照元
出入国在留管理庁「資格外活動許可について」
出入国在留管理庁「『家族滞在』の在留資格に係る資格外活動許可について」
家族滞在ビザの外国人を雇用する際、不法就労をさせてしまうと企業が不法就労助長罪に問われます。適切に雇用するためには、在留カードの確認や就労時間の管理を徹底しなければなりません。
ここでは、家族滞在ビザの外国人を雇用する際の注意点について解説します。
家族滞在ビザの外国人が資格外活動許可を取得せずに働いてしまった場合、不法就労に該当します。また、許可されている上限の時間を超えてしまった場合も同様です。
不法就労者を雇用した場合は、企業が不法就労助長罪に問われます。3年以下の懲役か300万円以下の罰金、またはその両方が罰則です。企業が在留カードの確認を怠った場合は過失とみなされるため、「不法就労者だと知らなかった」という言い訳は通用しません。過失がある従業員だけでなく企業も罰金刑の対象なので、在留カードの確認を徹底しましょう。
在留カード表面の氏名と顔写真を見て、本人のカードかどうかを確認しましょう。「在留資格欄」が家族滞在か、また、「在留期間(満了日)」が期間内かもチェックが必要です。
家族滞在の場合、本来は就労が認められていない在留資格のため、「就労制限の有無」欄には「就労不可」と記載されます。しかし、裏面の「資格外活動許可欄」に「許可:原則週28時間以内・風俗営業の従事を除く」とあれば就労可能です。
先述のとおり、包括許可で認められている週28時間の上限は、すべての勤務先との合計時間に適用されます。従業員がWワークをしていた場合、自社で週28時間に収まっていたとしても、もう一方の勤務先と合わせると制限を超えてしまう可能性も。Wワークをしているのか確認し、している場合は勤務時間も把握したうえで、自社との合計が上限を超えないようにシフトを組みましょう。
家族滞在ビザを持つ外国人は、ほかの就労可能な在留資格に変更しない限り、規定の労働時間を越えて働けません。就労が許可されているビザは働く時間に制限がないため、フルタイム勤務が可能です(もちろん労働基準法は適用されます)。
ただし、希望すれば誰でも就労ビザに変更できるわけではありません。就労ビザを得るには、行おうとする活動とビザが適合していることをはじめ、相応しい学歴や実務経験、資格なども必要です。
家族滞在ビザからの変更では、「技術・人文知識・国際業務」「技能」などのビザが考えられます。「技術・人文知識・国際業務」ビザの人文知識カテゴリーを例に挙げると、取得には大学や日本の専門学校を卒業していること、もしくは10年以上(国際業務は3年以上)の実務経験が必要です。
在留資格「永住者の配偶者等」も選択肢の一つでしょう。永住者の外国人と婚姻関係にあることが求められるので、扶養者である夫が在留資格「永住者」に変更する必要があります。このような身分に基づく在留資格には就労制限がありません。
また、扶養されている子が高校卒業後に日本で働くことを希望する場合、在留資格「定住者」「特定活動」などに変更できる可能性も。この場合、就労先の内定が出ているなどの条件を満たす必要があります。
配偶者が扶養者と離婚した場合、家族滞在ビザの「家族関係が法律上有効である」「扶養されている」という条件が満たされません。そのまま滞在し続けることはできないため、帰国するかほかの在留資格に変更する必要があります。ただし、先述のとおり就労ビザを得るには学歴や実務経験、資格などの条件を満たさなければなりません。
外国人の雇用時や離職時には、従業員の氏名や在留資格などを記載した「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出しなければなりません(雇用保険に加入する場合は不要)。届け出を怠ると30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
労働基準法第3条には、国籍を理由に賃金や労働条件に差を設けてはならないという記載があります。労働関係法令は外国人にも適用されるため、日本人ではないという理由で給与を下げたり労働時間を長くしたりするのは法律に違反する行為です。外国人が同意していても許されることではないので、均等待遇を遵守しましょう。
参照元
出入国在留管理庁「「家族滞在」の在留資格をもって在留し、高等学校卒業後に日本での就労を希望する方へ」
e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」
家族滞在ビザは、特定の在留資格を持つ外国人に扶養される配偶者や子どもが得るものです。本来は就労できませんが、資格外活動許可を得れば週28時間を上限に働けます。家族滞在ビザを持つ外国人を採用する場合は、在留カード裏面の資格外活動許可欄を忘れずに確認しましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net