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外国人雇用を考えている企業へ、外国人労働者が支払う税金について解説します。日本にはさまざまな税金がありますが、外国労働者には、所得税や住民税、相続税の3つが大きく関わってくるでしょう。外国人の税金の支払いは日本人が税金を支払う場合と異なる点があるため、正確に仕組みを理解することが重要です。このコラムを、外国労働者にまつわる税金を理解するのに役立ててください。
目次
外国人労働者にも、給与が発生している以上は納税の義務があります。ただし、支払いに関する仕組みは日本人と外国人で異なる点が多いため、正しく理解したうえで雇用することが大切です。
日本の労働者に大きく関わる税金は、所得税や住民税、相続税です。外国人雇用に向け、内容について復習しておきましょう。
所得税とは、個人の所得に対してかかる税金のことです。所得のある人は、必ず収めることが義務付けられています。前年の1月1日から12月31日までの、1年間の収入をもとに税額が決定される仕組みです。
住民税とは、住んでいる都道府県や市区町村に納める税金のことです。地方自治体による、行政サービスを行うための資金確保を目的としており、道府県民税と市町村民税の2つからなります。
相続税とは、個人が亡くなった人から遺産を相続したときに、相続した財産に対してかかる税金を指します。外国人の相続税の支払いには日本人と異なる点が多いため、注意が必要です。
「外国人労働者の税金はどうなってる?所得税と住民税のポイントを解説」でも、外国人労働者の所得税と住民税、そして外国人を採用する際に気をつけた方がよい点をまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
外国人労働者に関する所得税について解説します。外国人の所得税は居住形態の区分によって課税範囲が異なるため、確認が必要です。また、支払い基準や範囲があること、所得税控除は外国人でも可能なことを理解しましょう。
外国人の場合「居住形態」の違いで課税範囲が異なります。
「居住者」と「非居住者」に分類され居住者はさらに「永住者」と「非永住者」に分かれるのです。
<居住者>
<非居住者>
日本に住所を有さない外国人、かつ日本に1年以上の居所を有さない外国人
なお、税制上の「永住者」は帰化した外国人(日本人)も含まれます。在留資格の「永住者」とは意味合いが違いますので注意しましょう。
外国労働者が支払う所得税の基準と範囲は以下のとおりです。
<居住者>
国内外すべての所得に課税
すべての国内所得と、海外所得のうち日本国内で支払われたものまたは海外から日本へ送金されたものに課税
<非居住者>
国内所得のみに課税
このように、日本に関わりが深く、居住年数が長いほど、課税される所得の範囲が広い仕組みになっています。
居住者か非居住者かによって、源泉徴収をする所得税率が異なります。居住者の場合は日本人と同様です。しかし、非居住者は原則として一律20%とされているため、企業側は外国人の居住期間や居住地、国籍を正確に確認することが必要です。申告漏れや納税漏れが発覚すると、税務調査が入る可能性が高いため注意しましょう。
外国人の所得税については、「外国人が納める所得税はいくら?課税される所得の範囲と所得税の計算方法」のコラムでも解説しています。また、外国人が利用できる免税制度も紹介しているので、自社での外国人雇用に活かしましょう。
外国人労働者に関する住民税について解説します。住民税は、支払い方法が2パターンあるうえ、出国や退職の際の注意点があるため、細かく確認しましょう。
住民税を支払う必要がある外国人労働者は、「1年以上の在留期間のある在留資格を持つ居住者」であり、1月1日時点での住所地に納付することが義務付けられています。また、前年度の所得が33万円以下の場合は、非課税です。非居住者である場合は、住所がないため住民税を納付する必要はありません。
住民税の支払い方法は2種類あります。企業が給与から天引きする方法と、外国労働者本人が自分でコンビニなどで支払う方法です。
特別徴収は、企業が労働者の給与から住民税を差し引き、市区町村役場に支払う方法です。会社で働く人はこれが原則であり、自分で市区町村役場に住民税を支払う必要はありません。ただし、住民税は毎年6月を節目としており、前年度の収入をもとに半年ごとに算出されているため、6月以降12月未満に企業に入社した場合は給与からの天引きができず、自分で払うことになります。その方法が、次の普通徴収です。
コンビニや銀行の窓口などに役所から届く納付書を提示し、自分で支払う方法が普通徴収です。普通徴収の場合、一括での支払いが困難であれば居住地の役所へ相談し、分割払いにすることもできます。また、前述のとおり、入社月によって特別徴収が不可能な人は、原則普通徴収の方法で自分で支払わなければなりません。
外国人労働者が支払う住民税の注意点を解説します。外国人が企業を退職する場合や、日本から出国する場合でも、支払いや届け出の義務があるので注意しましょう。
企業での天引きによって住民税を支払っている人が、企業を退職することになった場合は、未納分の住民税を本人が払う方法に変えて完納するのが原則です。ただし、企業側で未納分を一括にして給料や退職金から差し引き、支払う方法もあります。この仕組みは、日本人も同じです。
外国人が日本から出国するまでの間に住民税を支払うことができない場合、出国前に本人が、日本に住んでいる人の中から税金に関する手続きを行う代理人を決めなくてはなりません。さらに、居住地の役所に対し、本人が納税管理人の代理人を示す届け出を出す必要があります。
外国人労働者が支払う相続税について解説します。相続税は制度の仕組みが複雑であるため、正しく理解することが必要です。また、制度改正により外国人の相続税の負担率が変化していることも把握しましょう。
亡くなった人から相続などによって財産を取得した人それぞれの課税価格の合計額(相続財産等の合計額)が、遺産に係る基礎控除額(3600万円)を超える場合、その財産を取得した人は、相続税の申告をする必要があります。
2017年までは、日本国籍を持っていても、被相続人(故人)と相続人が相続開始の5年以上前から海外に住んでいる場合、日本国外の財産に対する相続税(もしくは贈与税)は課されませんでした。そのため、2017年までは日本籍を持ちながら、国外財産の贈与や相続を非課税で行う、いわゆる「課税逃れ」が頻繁に行われていたのです。。
2017年、課税逃れ防止・外国人の日本での長期滞在をさらに促進するという目的で、税制改正が行われました。一時的に日本に住む外国人は日本に住所を持っていないとみなされることになり、相続税や贈与税の課税対象は国内財産のみになったのが改正された点です。一時的に日本に住む外国人の相続税や贈与税の負担が軽くなった結果、外国人が日本で働きやすくなる環境になりました。そのため、日本の企業は優秀な外国人労働者の雇用を行いやすくなったのです。
参照元 国税庁 相続税の仕組みの分かりやすい解説 相続税の仕組みの分かりやすい解説「相続税のあらまし」 財務省 平成30年度税制改正 外国人の出国後の相続税等の納税義務の見直し
外国人雇用をするうえで、給与に関わる税金は非常に重要です。外国人の場合は日本人よりも細かいルールがあり、居住地や国籍によって支払いの方法などが変化します。税金は少しでも確認漏れや勘違いが生じると、企業への税務調査に繋がりかねません。企業側が正しく理解し、外国人労働者をサポートできるようにしましょう。
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