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介護や建設、製造といった人手不足に陥っている業界・職種では、外国人技能実習生の受け入れが増えつつあります。外国人と企業の双方にメリットがある技能実習制度ですが、すべての職種で技能実習生を受け入れられるわけではありません。このコラムでは、技能実習生を受け入れられる職種を一覧表にして紹介します。技能実習制度の概要もまとめているので、外国人技能実習生の受け入れを検討している企業は確認しておきましょう。
目次
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技能実習制度は開発途上国の外国人に日本で技術や知識を移転し、帰国後に母国の発展に貢献できる人材を育成する国際協力を目的とした制度です。2021年3月の時点で、85の職種で外国人技能実習生を受け入れており、156の作業に最長5年従事してもらえます。厚生労働省が発表した「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和2年10月末現在)」によると、日本に在留する技能実習生は約40万人です。技能実習は増加率が高い在留資格なので、今後も外国人技能実習生が増えることが予想されるでしょう。
企業が外国人技能実習生を受け入れるには、一定の条件を満たす必要があります。詳細な条件は技能実習法に定められているので、必ず確認しましょう。簡単にまとめると、外国人技能実習生を受け入れる条件は以下の通りです。
人手不足の業界や職種で重宝されることが多い技能実習生ですが、あくまで目的は技能の移転です。外国人技能実習生を、労働力の調整手段として利用してはいけません。技能実習生の受け入れや技能実習の実施に関して違反があった場合は、改善命令が下ったり技能実習計画の認定取り消されたりしてしまうこともあるようです。技能実習生は技能習得のために日本に来ているので、企業が外国人を受け入れる目的をよく考えて、状況に応じて判断することが重要です。
「外国人技能実習制度の概要を企業向けに解説!技能実習生の受け入れ方も紹介」でも、外国人技能実習制度のメリットや注意点、技能実習生の受け入れが可能な職種などを紹介しています。技能実習生を受け入れる際の流れも解説しているので、気になる企業はチェックしてみましょう。
技能実習制度では、入国1年目は「第1号技能実習」で2~3年目は「第2号技能実習」、4~5年目は「第3号技能実習」と習熟度によって区分が異なります。在留資格は受け入れ方式と習熟度によって異なり、団体監理型の場合は「技能実習1号~3号ロ」です。1号から2号に移行するには、学科試験と技能試験に合格しなければなりません。2号から3号へは技能試験のみで移行できます。
外国人技能実習生が技能を身に付けるほど長く在留できるので、技能実習計画は入念に考えましょう。
実習実施者である企業の常勤職員総数によって、外国人技能実習生の受け入れ可能人数は異なります。団体監理型のの場合、第1号技能実習生を常勤職員総数が301人以上なら20分の1の人数まで受け入れ可能です。常勤職員総数が201~300人なら第1号技能実習生の受け入れ可能人数は15人、101~200人なら10人と決まっているので、受け入れを検討している企業は注意しましょう。また、第2号技能実習生の受け入れ可能人数は、それぞれ第1号技能実習生の2倍までです。
第3号技能実習生は、監理団体と実習実施者が優良認定を受けられないと雇用できません。外国人技能実習機構から優良な実習実施者だと認められれば、通常より多くの技能実習生を雇用できるようになります。
参照元 厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和2年10月末現在)
ここでは、外国人技能実習生を受け入れられる職種一覧を紹介します。第3号技能実習への移行可否もまとめているので、外国人技能実習生の受け入れを検討している企業は参考にしてください。
農業関係の職種は以下の2職種で、外国人技能実習生はそれぞれ3種類の作業を行えます。
田畑を耕して栽培を行う耕種農業では、ビニールハウスを試用した施設園芸や畑作、果樹園での栽培作業に従事できます。畜産農業では養豚・養鶏といった飼養作業のほかに、乳牛から牛乳の生産を行う酪農作業に就くことも可能です。なお、養牛(肉牛の生産)は含まれていませんので、注意してください。
漁業関係は以下の2職種で、外国人技能実習生を受け入れ雇用できます。
外国人技能実習生が従事できる作業は漁船漁業で9つ、養殖業で1つです。漁船漁業の場合はかつお一本釣りやイカ釣り、巻き網を用いた魚の捕獲など、船や漁具を使って漁獲を行う作業で技能実習を行えます。
養殖業では採取したホタテ貝やまがきの種苗を採取して、人工的に管理・育成する作業で技能実習で可能です。
建築関係で外国人技能実習生を受け入れられるのは22職種あります。分野ごとに見ると最も職種が多く、作業数は33種類です。建設業界の慢性的な人手不足に加えて、発展途上国では需要が高い技能を学べるため、ほかの分野よりも職種が多い傾向にあります。
建設関係の仕事は専門性が高いため、1つの職種につき1つの作業が多いようです。
食品製造関係は11職種で作業は18種類あり、食品加工や製造が中心です。
外国人技能実習生は缶詰の接合や食品の加工、パン・そう菜の製造といった作業に従事できます。また、医師の指導に基づいて、医療施設や福祉施設で提供される食事を調理することも可能です。
ただし、農産物漬物製造業と医療・福祉施設給食製造は、第3号技能実習に移行できない職種なので注意しましょう。
繊維・衣類関係は13職種で、作業は22種類あります。繊維・衣服関係の職種では若い人材が少なく、技能実習生を積極的に受け入れる傾向にあるようです。発展途上国は縫製工場が多く、技能を学んで母国の発展に活かせるため、外国人技能実習生本人にも受け入れる企業にもメリットが大きい職種といえます。
紡績運転や織布運転、カーペット製造の職種は第3号技能実習に移行できません。技能実習生を受け入れる際は、研修や実習を行える年数をしっかり把握しましょう。
技能実習制度が実施された1993年から、機械・金属関係の職種は外国人技能実習生の受け入れを行っています。15職種の中には日本の工業を支える仕事も多く含まれており、作業は29種類とほかの分野と比較しても多いです。
発展途上国のなかには土地の安さから工業化が進んでいる地域もあり、母国の発展のために機械・金属関係の職種で、技能を身に付ける外国人技能実習生もいます。機械・金属関係の職種は景気の影響を受けやすい傾向にあるため、外国人技能実習生を受け入れる際は、先を見据えて計画を立てましょう。
上記で紹介した分野に属さない19職種と35種類の作業は、その他として扱われています。
家具製作では家具手加工、溶接なら手溶接・半自動溶接というように、職種によってできる作業の内容が異なります。外国人技能実習生を受け入れる際は、任せられる作業内容をきちんと確認しましょう。また、印刷の職種でグラビア印刷を行う場合は第3号技能実習に移行できません。
空港グランドハンドリングという職種でも、外国人技能実習生を受け入れられます。行える作業は航空機地上支援と航空貨物取扱、客室清掃の3種類です。客室清掃は第3号技能実習に移行できないので、外国人技能実習生を受け入れる際は注意しましょう。
さまざまな職種で外国人技能実習生を受け入れられますが、いくつか注意しなければならないこともあります。外国人技能実習生を「安い労働力」として考えている企業もあるかもしれませんが、技能実習制度の目的は技能の移転であり、人手不足解消や労働力の確保ではありません。人手不足を補うために外国人を雇用する場合は、専門的・技術的分野の在留資格を持つ人材や永住者などを雇用しましょう。
昨今では悪質な企業による賃金未払いやハラスメント、過酷な環境での強制労働によって犯罪を起こしたり、失踪したりする外国人技能実習生が増えています。監査団体によって厳しいチェックが入るので、外国人技能実習生を受け入れる企業は入念に準備を行いましょう。また、外国人技能実習生の職種は後から変更できないので、企業の現状や相手の意向を確認して計画を立てることが求められます。
2021年3月時点で、外国人技能実習生は85職種156作業で受け入れ可能です。人手不足の業界には重宝される制度ですが、あくまで技能の移転が目的であることを念頭に置きましょう。昨今では過酷な労働環境や賃金未払い、ハラスメントなどを理由に犯罪や失踪といった問題を起こしてしまう外国人技能実習生も増えつつあります。企業が外国人技能実習生を受け入れる際は、職種だけでなく受け入れ態勢にも気を配りましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net