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雇用理由書は企業が外国人雇用の必要性を明確にするための書類で、在留資格の申請時に提出します。出入国在留管理庁による所定の書類ではなく、提出は任意です。しかし、内定を出した相手の学歴・職歴と業務の関連性が分かりにくい場合は、提出することで在留資格の審査がスムーズに進みやすくなります。中小企業や新設会社で企業の安定性を疑問視されやすい場合も同様です。
この記事では、雇用理由書の例文や書き方、地方出入国在留管理局がチェックするポイントを解説します。要点を押さえた雇用理由書を提出し、外国人の在留資格の申請がスムーズに進むようにサポートしましょう。
目次
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雇用理由書とは、企業がなぜ外国人を雇用したいかを記した、在留資格申請時に提出する書類です。別名、職務内容説明書とも呼ばれます。出入国在留管理庁が定めている必要書類ではありませんが、在留資格の審査において大きな役割を果たします。
外国人は、日本で就労するにあたって地方出入国在留管理局で在留資格の申請をしなくてはなりません。「雇用理由書」は企業が外国人を雇用したい理由を明らかにする資料で、在留資格の申請時に必要な書類と一緒に提出します。出入国在留管理庁が定めている書類とあわせて雇用理由書を提出すると、補足説明を行うことが可能です。
外国人が「留学」から就労可能な在留資格に変更する際も、雇用理由書を提出します。
雇用理由書は、在留資格の申請時や変更時に必須の書類ではありません。たとえば、経営が安定している上場企業が、事業内容と関連性が深い経歴を持つ外国人を雇用する場合、所定の書類のみで問題ないでしょう。外国人を雇用した実績を多く持つ企業の場合も、在留資格の許可が下りやすいと考えられます。
しかし、企業の事業内容と外国人の学歴・職歴との関連性が分かりにくい場合、在留資格が不許可になってしまうケースが珍しくありません。中小企業や新設会社が初めて外国人を雇用する場合も、在留資格が不許可になったり審査期間が長引いたりする事態が生じます。
前述したように、外国人の経歴と業務内容の関連性が分かりづらい場合や初めて外国人を雇用する企業の場合、雇用理由書の提出をおすすめします。雇用理由書の提出によって、要件を満たしているにも関わらず説明不足で在留資格が不許可になる事態を防ぐのが狙いです。また、在留資格の審査が速やかに進むメリットもあります。
前述したとおり、在留資格は所定の書類が揃っていても必ず許可されるとは限りません。提出された書類だけでは要件を満たさないと判断された場合、在留資格は不許可とされます。
このような事態を防ぐために有効なのが、雇用理由書です。雇用理由書には、企業の事業内容や外国人の経歴と業務の関連性などを書きます。詳細を記した雇用理由書を提出することで、申請内容の補足説明が可能です。雇用理由書で補足説明をすることによって、在留資格の申請が不許可になるリスクを軽減できます。
雇用理由書を提出していない場合、地方出入国在留管理局が企業の事業や外国人の職務内容などを正確に把握するのに時間がかかります。追加の書類提出が発生し、審査期間が長くなる場合も少なくありません。一方、雇用理由書を提出すると申請内容をより早く正確に把握できるため、スムーズな審査につながります。
また、採用する外国人が日本に有益な人材であると雇用理由書で強くアピールすることで、在留資格の審査が円滑になると期待できます。
ここでは、雇用理由書の例文と書き方を紹介します。まず、まずは例文をご覧ください。
法務大臣殿
△△出入国在留管理局長殿
【申請人の概要】
氏名:△△
国籍:中華人民共和国
生年月日:1995年△月△日(△△歳)
上記の者の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の取得について、格別のご高配を賜りますようお願い申し上げます。
【採用する企業の概要】
株式会社△△
設立:1992年2月
資本金:1000万円
売上:20億円(△△関連の売り上げが7割、△△関連の売り上げが3割)
事業内容:機械工具の製造・販売
主要取引先企業:△△社や△△社など
従業員数:70人(うち外国人0人)
【外国人の業務内容・経歴との関連性・雇用する理由など】
弊社は1992年2月に設立し、機械工具の製造販売を行っております。主に取り扱っているのは、運搬・運送機器や工具備品などです。売上・利益ともに順調に推移しているため、今後は海外でも事業を展開したいと考えております。
申請人は、中国の△△大学を卒業し、卒業後は日本の△△企業で通訳・翻訳業務を5年行っておりました。また、日本語能力検定試験のN1レベルを取得しており、ビジネス面でも問題がないと判断しております。面接においても、向上心や高いコミュニケーション能力があると確信し、当社の海外事業の展開にあたり、率先力として活躍できると期待しています。
幣社は、数年のうちに海外での事業の展開を計画しております。そのため、申請者には日本と海外を繋ぐための通訳・翻訳を任せる予定です。現在、当社には外国人の従業員がいないため、日本人では対応が難しい業務を担当してもらいます。また、入社後は商品に関する知識を身に付けてもらうべく、丁寧な研修を行います。
雇用理由書の長さはA4用紙1〜2枚程度が目安です。ただし、補足したい情報が多い場合は、詳細に記述するために多少枚数が増えても問題ありません。それでは、各項目について解説していきます。
申請先は、法務大臣と在留資格の書類を提出する地方出入国在留管理局の局長にします。
一般的に、新たに在留資格を取得するために企業が外国人の代理で申請をする場合、申請先は会社の所在地を管轄する地方出入国在留管理局です。そのほかの外国人本人が行う在留資格の申請の場合は、外国人の居住地を管轄する地方出入国在留管理局を申請先にしましょう。
申請人の名前はアルファベットで書きます。国籍と生年月日もあわせて記載しましょう。
取得または更新を希望する在留資格も記します。「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「研究」「経営・管理」など、正確な在留資格名を調べてから書きましょう。在留資格の名称は出入国在留管理庁のWebサイトに記載されています。
外国人を採用する企業の概要も簡潔に記載しましょう。
入社後に外国人に任せる業務内容は、具体的な内容を詳細に記載しましょう。業務内容と外国人の経歴の関連性も書くようにします。
企業が外国人を雇用しようと考えている理由や今後の展望を記載します。雇用する理由や今後の展望の例は以下のとおりです。現時点で行っていなくても、今回の外国人雇用を機に検討している事業があれば、そのことを説明してもよいでしょう。
参照元 出入国在留管理庁「地方出入国在留管理官署」 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
入社後のキャリアパスについても明記しておきましょう。特に、技術・人文知識・国際業務ビザの場合、仕事内容もステップアップしていくことが多いですので、入社後3~5年間で予定している職務内容、昇給見込なども書いておくとよいです。
地方出入国在留管理局の入国審査官が雇用理由書を見る際、企業の安定性や外国人の経歴が要件を満たしているかなどをチェックします。企業は、その外国人を雇用する際に疑問視されそうな点について、しっかりと雇用理由書で説明することが必要です。たとえば、外国人の雇用の必然性が疑われそうな場合、相手の経歴や今後の事業に不可欠な人材である点を詳細に記載します。中小企業や新設会社の場合は、特に経営の安定性や今後の事業展開について説明しましょう。
地方出入国在留管理局は、企業の直近の決算書類と雇用理由書をもとに、事業の安定性および継続性を判断します。重要視しているのは、企業が外国人を雇用したあと、安定して給与を払い続けられるのかという点です。そのため、企業は、雇用する予定の外国人の給与が払えることを明示できる書面を準備する必要があります。
通常、債務状況が黒字であれば問題ありません。しかし、債務超過となっている場合は、債務超過の理由説明書や今後の事業計画書を提出するケースもあります。
地方出入国在留管理局の入国審査官は、外国人の学歴や職歴が在留資格取得の要件を満たしているかを確認します。そのため、雇用理由書には、大学や専門学校で学んだ内容や前職での実績を具体的かつ簡潔に記載しましょう。
所定の在留資格の申請書には、前職での業務内容を書く欄がありません。特に職歴(実務経験年数)が在留資格の取得要件となっている場合は、雇用理由書を作成し詳細な説明をすると良いでしょう。
地方出入国在留管理局の入国審査官は、在留資格の審査で外国人の学歴や職歴が業務内容と合致しているか判断します。つまり、雇用理由書には、外国人が申請する在留資格と業務内容が合致しており、さらに外国人の専門性と関連している点を書かなければなりません。
地方出入国在留管理局は、雇用理由書に書かれた外国人の経歴と業務内容の関連性を見て申請人を雇用する必然性があるか判断しています。
ただし、大卒者の場合、経歴と業務内容の関連性は柔軟に審査されますので、必要以上に気にする必要はないでしょう。
「特定技能」や「技能実習」の在留資格については、外国人に対する企業のサポート体制が整っているのかもチェックされます。具体的なサポートの例は、事前ガイダンスの実施や外国人の住居探しの手伝い、住民届けの手続きの付き添いなどです。企業として業務のサポートを行うのはもちろん、生活に関する手助けをする旨を記載できると良いでしょう。
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在留資格申請時に雇用理由書を出していない場合、もしくはその内容が不十分な場合、出入国在留管理局から追加書類として、雇用理由書を求められる場合もよくあります。
出入国在留管理局から求められた場合、かなり慎重に、そして詳しく記載する必要があります。
通常、書くべきことに加え、以下も記載したほうがよいでしょう。
一日の業務スケジュール
一週間の業務スケジュール
今後3年間のキャリアパス
入社当初に現業(単純作業等)に従事する場合、その合理的な理由説明
外国人を雇用する際は、申請内容に応じて在留資格認定証明書交付申請書や在留資格変更許可申請書も必要です。ここでは、「技術・人文知識・国際業務(通称「技人国」)」の在留資格認定証明書交付申請をする際の必要書類を解説します。
「技人国」の場合、企業の規模により決まるカテゴリーによって必要書類が異なります。企業のカテゴリーは以下のとおりです。
【カテゴリー1】上場企業や保険業を営む相互会社、公共団体など
【カテゴリー2】上場しておらず前年分の合計源泉徴収税額が1000万円以上の企業や個人
【カテゴリー3】上場しておらず前年分の合計源泉徴収税額が1000万円未満の企業や個人
【カテゴリー4】カテゴリー1~3以外に該当する企業(起業1年未満の新設会社や個人など)
カテゴリーは企業の安定性や信頼性を示しているといえます。カテゴリー1に該当する企業は、継続して外国人を適切に雇用できるとみなされ、提出書類が少なくて済むのです。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の申請する際の、カテゴリーごとの企業が用意すべき必要書類は以下のとおりです。
【カテゴリー1~4共通】所属するカテゴリーを証明する書類(四季報の写し・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写しなど)
【カテゴリー3・4のみ】登記事項証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
【カテゴリー3・4のみ】勤務先の事業内容や組織、役員、沿革などを記した会社案内といった資料
【カテゴリー3・4のみ】直近年度の決算文書の写し(新設会社の場合は今後3年間程度の事業計画書)
【カテゴリー4】前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする書類(外国法人の源泉徴収に対する免除証明書やそのほかの源泉徴収を要しない点を明らかにする資料など)
カテゴリーの区分やそのほかの書類の詳細は、出入国在留管理庁のWebサイトにも記載されています。具体的には、以下のとおりです。
在留資格認定証明書交付申請書(出入国在留管理庁のWebサイトか地方出入国在留管理官局の窓口で入手)
証明写真(縦4cm×横3cm)
返信用封筒(宛先を明記し、必要な額の簡易書留用郵便切手を貼付する)
専門学校を卒業して専門士または高度専門士の称号を付与された外国人は、専門士または高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
外国人の日本での活動予定を記載した労働条件通知書や雇用契約書など
外国人の学歴や職歴を証明する資料(大学の卒業証明書またはこれと同等以上の教育を受けたことを証明する文書)
必要な書類についてもしっかり把握しておきましょう。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格「技術・人文知識・国際業務」」 出入国在留管理庁「提出写真の規格」
雇用理由書のほかには、必要に応じて外国人の能力を証明できる書類や企業の様子を伝えられる資料を添付しましょう。
たとえば、外国人が日本語能力試験で高得点を取っている場合、点数が記載されている日本語能力試験合格書の写しを提出するのがおすすめです。また、新設会社やスタートアップの場合、設立経緯書やホームページの主要ページを印刷したもの、事務所の賃貸契約書(写し)などを提出するのも良いでしょう。
雇用理由書と同じく、用意する書類は外国人が在留資格を申請する際に疑問視されそうな点を補足するものでなければ、効果がありません。
雇用理由書は、雇用する外国人の在留資格の取得や変更時に必要な書類です。雇用理由書の提出は義務付けられていませんが、外国人の信頼性を示せるため、在留資格の審査をスムーズにする役割があります。雇用理由書を作成する際は、外国人を雇用する必然性を明確に記載しましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net