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「技術・人文知識・国際業務」は外国人の在留資格の一つです。該当する職種が多岐にわたるため、外国人雇用を考える企業にとっては最も関わる機会の多い在留資格ともいえるでしょう。このコラムでは、「技術・人文知識・国際業務」に該当する職種を解説。また、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請する際の条件や注意点も紹介します。スムーズに外国人雇用が進むよう、参考にしてみてください。
目次
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は「技人国(ぎじんこく)」とも呼ばれる、いわゆる「就労ビザ」の一つです。一定の要件を満たし、自然科学や人文科学の分野に属する仕事を行う外国人や、外国籍ならではの思考・感受性を要する業務に就く外国人に与えられます。
なお、「技術・人文知識・国際業務」の資格を持つ在留外国人は、2020年6月末時点で28万8,995名です。その数は年々増加傾向にあり、外国人労働者の活躍の場が拡大していることがうかがえるでしょう。
「「技術・人文知識・国際業務」とはどのような在留資格?企業に向け解説」でも、在留資格の概要や取得の要件を確認できます。オフィスワークや技術関係、翻訳などの業務で外国人を雇用したい企業は、内容を参考にしてみてください。
参照元 出入国在留管理庁 技術・人文知識・国際業務 日本において行うことができる活動内容等 【在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表】 2020年6月末
「技術・人文知識・国際業務」に当てはまる職種は多種多様です。ここでは、「技術」「人文知識」「国際業務」の3つの分野ごとに該当職種を紹介します。外国人雇用を考える企業の方は、自社の職種が当てはまるかどうか確認してみてください。
「技術」に当てはまる職種は「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術や知識を要する業務」です。厚生労働省が具体例として挙げている機械工学等の技術者やシステムエンジニア等のエンジニアのほか、建築設計、情報セキュリティに関する仕事なども該当します。いわゆる「理系職種」をイメージすると分かりやすいでしょう。
「人文知識」に当てはまる職種は「法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術や知識を要する業務」です。いわゆる「文系職種」が該当し、厚生労働省は企画、営業、経理などの事務職を具体例に挙げています。ほかにもマーケティングやコンサルティング、会計業務など幅広い職種が対象です。
「国際業務」に当てはまる職種は「外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務」です。厚生労働省が具体例として挙げている英会話学校などの語学教師、通訳・翻訳、デザイナーといった、外国人ならではの語学力や芸術センスを活かせる仕事が該当します。
参照元 出入国在留管理庁 技術・人文知識・国際業務 日本において行うことができる活動内容等 厚生労働省 我が国で就労する外国人のカテゴリー
日本で就労を考える外国人が「技術・人文知識・国際業務」を申請・取得するには一定の条件を満たす必要があります。技術・人文科学に当てはまる職種に就く場合と、国際業務に当てはまる職種に就く場合とで条件が異なるので、以下で違いを押さえましょう。
まず、技術・人文知識・国際業務のうち、いずれの分野の職種に就く場合にも必ず満たさなければならない条件は「同職種に従事する日本人と同額、もしくはそれ以上の報酬を受ける」ことです。企業側は「外国人だから」という理由で日本人より基本給を低く設定してはいけません。また、各種手当を上乗せして日本人の基本給と揃えても、条件は満たせないので注意しましょう。具体的な金額に関する決まりはありませんが、外国人にも国籍を問わず平等に給与を支給することが重要です。
技術・人文知識に当てはまる職種の場合は、日本人と同額以上の報酬を受けるほか、以下の条件のいずれか一つを満たす必要があります。
国際業務に当てはまる職種の場合は、日本人と同額以上の報酬を受けるほか、以下の条件をすべて満たす必要があります。
企業側も在留資格「技術・人文知識・国際業務」の申請条件を把握し、外国人の採用や賃金の設定に活かしましょう。
参照元 出入国在留管理庁 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
在留資格「技術・人文知識・国際業務」を申請したとしても、外国人が行う業務内容に専門性がないと判断されたり、外国人の在留状況に問題があったりすれば不許可になる可能性があります。企業側は不許可を避けられるように、注意点を押さえておきましょう。
雇用する外国人が専攻した科目と、就労する仕事の業務内容に関連性がないと認められれば、在留資格は許可されません。たとえば、雇用する外国人が専門学校のデザイン科を卒業して専門士の称号を得ているにもかかわらず、翻訳や通訳の仕事に就くのでは「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は認められないでしょう。企業側は、外国人の履修内容をきちんと把握したうえで、適切な業務に従事させる必要があります。
雇用する外国人が携わる業務に専門性が必要ないと判断された場合も、在留資格が許可されません。専門的な技術や知識を問わない、いわゆる単純作業は「技術・人文知識・国際業務」に該当しないと考えておきましょう。実際、過去にはホテルにフロントとして就職しながら清掃作業や配膳作業を行っていた外国人や、食品工場で製造ラインの作業を行っていた外国人の「技術・人文知識・国際業務」が不許可になっています。
企業側に外国人を雇用する明確な必要性があるかどうかも、「技術・人文知識・国際業務」の許可を左右します。たとえ外国人の職務内容や業務の専門性、賃金の設定などに問題がなかったとしても、外国人を雇うほどの作業量や需要がないと判断されれば、在留資格は認められません。
たとえば、ホテルでフランス人通訳を雇用したにもかかわらず、フランス語を話す利用客がほとんどいないといった場合、「技術・人文知識・国際業務」の申請は不許可になります。
雇用する外国人の在留状況に問題がある場合も、「技術・人文知識・国際業務」の申請は認められません。たとえば、外国人が学生時代に資格外活動許可の範囲を超えて長時間アルバイトをしていたり、学校に行かずに資格外活動に従事していたりするのは問題行動にあたります。企業側は、雇用する外国人がこれまで良好な在留状況だったかどうかも確認する必要があるでしょう。
参照元 出入国在留管理庁 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について 「別紙3 許可・不許可事例」
「技術・人文知識・国際業務」は日本で就労する外国人の多くが取得する在留資格の一つで、該当職種は多岐にわたります。ただし、申請・取得の認可を受けるにはいくつか要件があり、企業側も注意すべき点が少なくありません。雇用する外国人がスムーズに「技術・人文知識・国際業務」の許可を受けられるよう、正しい知識を身に付けておきましょう。
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