技能実習2号への移行対象職種とは?技能実習生を受け入れたい企業へ解説

2021年11月05日
WeXpats Bizは外国人採用に特化した求人サイトWeXpatsJobsの関連サイトです。行政書士監修の下、外国人採用・雇用に関する「採用ノウハウ」「市場動向」「在留資格管理」などの情報を発信。外国人採用・雇用にお悩みのある企業様に向けて、"現場で役立つ情報"を提供いたします。
濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

「技能実習生を受け入れたいけれど、技能実習2号への移行対象職種が分からない…」と悩む企業の方もいるでしょう。技能実習2号への移行対象職種には、建設機械施工や食品製造業などがあります。このコラムでは、さまざまな移行対象職種と、技能実習2号から3号への移行ができない職種、作業を紹介。移行対象職種に定められる条件も解説しているので、参考にして技能実習生の受け入れを進めましょう。

目次

  1. 技能実習制度の分類とは?
  2. 技能実習生の移行対象職種について解説
  3. 技能実習2号への移行対象職種を紹介
  4. 技能実習3号への移行が不可能な職種もある
  5. 技能実習生の受け入れが可能な移行対象職種の条件
  6. まとめ

技能実習制度の分類とは?

技能実習とは、外国人実習生が日本で働き技能や技術を身に付けて、母国で活かすための制度です。技能実習の在留資格は、技能実習1号、2号、3号に分類されています。ここでは、それぞれの特徴を紹介します。

技能実習1号

日本に来て1年目の技能実習生の在留資格は、「技能実習1号」に分類されます。技術の習得を目指すのが目的で、日本で技能実習を行うにあたり初めに取得する在留資格です。さらに、監理団体を通して実習を行う「団体監理型」の方式で日本に来た技能実習生は「技能実習1号ロ」、監理団体を通さずに実習を行う「企業単独型」で日本に来た技能実習生は「技能実習1号イ」と分類されます。このように、受け入れ方式によって分類が異なるのが特徴です。なお、技能実習2号、3号も同様の分け方をします。

技能実習2号

「技能実習2号」は日本に来て2、3年目で、1号から2号へ移行するための試験に合格した技能実習生の在留資格です。技能実習1年目に習得した技術を習熟させるのが目的であるため、1号から2号に移行する際に職種や作業内容の変更はできません。なお、移行するには学科試験と実技試験に合格する必要があります。

技能実習3号

日本に来て4,5年目の技能実習生の在留資格が「技能実習3号」です。移行するには、定められた実技試験に合格する必要があります。1号から2号への移行と異なるのは、監理団体と実習実施者が優良だと認められていることも条件に入る点です。また、「技能実習3号」に移行する技能実習生は、一度帰国して再度日本に来てから技能実習を行います。一度帰国する理由は、母国との繋がりを切らさないためです。

技能実習生の受け入れを検討している企業の方には、「外国人技能実習制度の概要を企業向けに解説!技能実習生の受け入れ方も紹介」のコラムもおすすめです。外国人技能実習制度のメリットや注意点、技能実習生の受け入れが可能な職種なども紹介しているので、ぜひチェックしてみましょう。

技能実習生の移行対象職種について解説

移行対象職種とは、技能実習1号から2号、3号へ移行できる職種・作業のことです。厚生労働省により定められ、順次新たな職種が追加されています。2021年3月時点で、技能実習2号への移行対象職種は「85種156作業」です。また、技能実習3号への移行対象職種は「77種135作業」とされています。なお、技能実習2号への移行対象職種のすべてが3号に移行できるわけではありません。

技能実習2号への移行対象職種を紹介

技能実習2号への移行対象職種には、建設機械施工や食品製造業などがあります。ここでは、具体的な職種を紹介するので、自社で実習を行う職種が移行対象かどうかを確認してみてください。

【農業関係(2職種6作業)】

耕種農業、畜産農業

【漁業関係(2職種10作業)】

漁船漁業、養殖業

【建設関係(22職種33作業)】

さく井、建築板金、冷凍空気調和機器施工、建具製作、建築大工など

【食品製造関係(11職種18作業)】

缶詰巻締、食鳥処理加工業、食品製造業(加熱性水産加工、非加熱性水産加工)など

【繊維・衣服関係(13職種22作業)】

紡績運転、織布運転、染色、ニット製品製造、たて編ニット生地製造など

【機械・金属関係(15職種29作業)】

鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工など

【その他(19職種35作業)】

家具製作、印刷、製本、プラスチック成形、強化プラスチック成形、塗装、溶接など

【社内検定型の職種・作業(1職種3作業)】

空港グランドハンドリング

上記が現時点で定められている、技能実習2号への移行対象職種です。

参照元 OTIT 外国人技能実習機構「技能実習移行対象職種(令和3年3月16日時点)

技能実習3号への移行が不可能な職種もある

技能実習1号から2号への移行対象職種のなかには、3号への移行ができない職種が含まれています。技能実習3号の受け入れを考えている企業は、移行対象職種かどうかを確認しましょう。ここでは、技能実習2号から3号へ移行できない職種と作業を紹介します。同じ職種であっても、3号へ移行できる作業とできない作業があるので、注意してください。カッコ内が作業です。

【漁業関係】

  • 漁船漁業(棒受網漁業)

【食品製造関係】

  • 農産物漬物製造業(農産物漬物製造)
  • 医療、福祉施設給食製造(医療、福祉施設給食製造)

【繊維・衣服関係】

  • 紡績運転(前紡工程、精紡工程、巻糸工程、合ねん糸工程)
  • 織布運転(準備工程、製織工程、仕上工程)
  • カーペット製造(織じゅうたん製造、タフテッドカーペット製造、ニードルパンチカーペット製造)

【その他】

  • 印刷(グラビア印刷)
  • リネンサプライ(リネンサプライ仕上げ)
  • 宿泊(接客、衛生管理)
  • ゴム製品製造(成形加工、押出し加工、混練り圧延加工、複合積層加工)

【社内検定型の職種・作業】

  • 空港グランドハンドリング(客室清掃)

上記の職種と作業に従事する技能実習生は、3年間しか日本に在留できないため、技能実習第3号への移行はできません。

参照元
OTIT 外国人技能実習機構「技能実習移行対象職種(令和3年3月16日時点)

技能実習生の受け入れが可能な移行対象職種の条件

移行対象職種に該当する企業も、一定の条件を満たしていないと技能実習生の受け入れができません。ここでは、企業が技能実習生を受け入れるための条件を紹介します。

技能実習計画の内容が適切か

技能実習計画には、「必須作業」「関連作業」「周辺作業」という技能実習生に指導する作業の内容を記載します。厚生労働省が定めている審査基準を満たした作業内容でなければなりません。

必須作業

必須作業とは、技能実習生が技術や技能を習得するために必ず行う作業です。実習実施者は、必須作業に記載した内容のすべてを技能実習生に指導する必要があります。たとえば、審査基準に基づいた技能実習1号の缶詰巻締の必須作業は以下です。

(1)二重巻締機を用いた巻締作業

  1. 巻締計測器に計測作業
  2. 工具類の整理整頓作業
  3. リフターの高さの調節作業
  4. 第1巻締ロールの調節作業
  5. 第2巻締ロールの調節作業
  6. 巻締作業
  7. データシートへの記録作業
  8. 巻締内部の検査作業(切断面の視覚検査のみ)

また、必須作業には「安全衛生業務」も含まれます。危険性の高い作業には特別な指導が必要な場合もあるので、審査基準には必ず目を通しましょう。

関連作業

関連作業とは、必須作業に関連する業務です。たとえば、審査基準によると技能実習1号の缶詰巻締の関連作業には、「洗浄作業」「調理作業」「殺菌・冷却作業」などが挙げられています。必須作業のように、技能実習生に必ず従事させなければならない作業ではありません。

周辺作業

周辺作業は、関連作業よりも前段階の作業を指します。技能実習1号の缶詰巻締の周辺作業は、「作業場管理作業」「器工具の管理作業」「原料(材料)等の搬送作業」などです。なお、関連作業、周辺作業ともに、必須作業と同じく安全衛生業務に関する内容が含まれます。

参照元
厚生労働省「技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験試験基準

技能実習生に従事させる作業の時間配分が適切か

技能実習生を受け入れる場合は、「必須作業」「関連作業」「周辺作業」の時間配分を正しく設定しなくてはなりません。作業時間は、必須作業が年間の50%以上で関連作業が年間の50%以下、周辺作業は33%以下で設定するよう定められています。また、「安全衛生作業」は、各作業ごとに全体の10%を占めるように計画するのが条件です。

まとめ

2021年3月時点では、技能実習2号への移行対象職種は85種156作業、技能実習3号への移行対象職種は77種135作業です。随時新たな職種が追加されるので、技能実習生を受け入れたい企業はその都度確認しましょう。移行対象職種の場合は、審査基準を満たした作業内容と時間配分の設定を行うのが大切です。