【企業向け】在留資格取り消しの事由や流れ~詳しい事例まで解説

2022年03月10日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

「在留資格はどのようなことで取り消しになるの?」「在留資格の取り消しはどのような流れで行われるのだろう」と興味がある企業の方も多いでしょう。このコラムでは在留資格が取り消しになる事由や事例、流れを解説。また、在留資格の取り消し件数や、資格喪失となり出国する際の退去強制と出国命令制度の違いも紹介します。外国人が日本で働くために必要な在留資格の知識を深め、外国人雇用の参考にしてください。

 

目次

  1. 在留資格が取り消しになる事由とは?
  2. 在留資格が取り消しになった事例
  3. 在留資格取り消し件数
  4. 在留資格取り消しの流れ
  5. 退去強制と出国命令制度
  6. まとめ

在留資格が取り消しになる事由とは?

在留資格の取り消しは入管法第22条の4に規定されています。在留資格が取り消しになる事由は、虚偽の申告や不正行為などです。在留資格が取り消しになると外国人は日本に滞在できなくなります。外国人を雇用する企業の方は、在留資格が取り消しになる事由を理解しておきましょう。

虚偽の申告により在留資格を取得した

虚偽の申告により在留資格を取得したことが判明すると、取り消しになります。該当するのが、偽造した書類での在留資格の取得や日本での活動予定と異なった内容を申告した資格取得です。例えば、会社が名義貸しをして、実際に就労しない外国人を雇ったことにして在留資格を取得した場合などがあります。。ほかには、上陸拒否事由の該当を隠して在留資格を取得した場合も取り消しになります。上陸拒否事由とは、保健・衛生上の問題や反社会性が強いなどの理由で日本への入国が好ましくないとされる事柄です。具体例としては、国内外において懲役1年以上の処分を受けた外国人などです。

在留資格に関する活動を所定期間行っていない

在留資格に関する活動を所定の期間行っていない際も資格取り消しになります。該当するのは、「就労目的」や「特定活動」、「留学」などの在留資格を持つ外国人が資格に関する活動を3ヶ月行っていない場合です。例えば退職して3ヶ月以上、無職でいる場合、取消対象となります。また、在留資格の活動を行わず資格以外の活動を行おうとしているかすでに行っている場合は、期間の長さを問わず取り消しになります。ほかの取り消し事由に挙げられるのは、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の資格で入国したが、離婚した場合や、特段の事情もなく配偶者と6ヶ月以上別居している場合などです。

住居地の適切な届出をしていない

日本に入国後、適切な住居地の届け出をしていないと在留資格が取り消しになります。該当するのは、入国後90日以内に住居地を届け出ない場合や偽りの住居地を届け出た場合、引っ越しを行い新たな住居地を90日以内に届け出ない場合です。

参照元
出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)

在留資格が取り消しになった事例

在留資格が取り消しになった事例は以下のとおりです。ここでの例を参考に、どのようなことで在留資格が取り消しになるか知識を深めましょう。

上陸拒否事由の隠匿や婚姻偽装により資格を受領

上陸拒否事由の隠匿や婚姻偽装による資格の取得は在留資格の取り消し事由です。上陸拒否事由の隠匿による取り消しには、過去の退去強制を隠し在留資格を取得した例が挙げられます。また、婚姻偽装による取り消しに該当するのは、日本人と偽装結婚し「日本人の配偶者等」の在留資格を取得した事例です。ほかには、「技術・人文知識・国際業務」の資格を得るため、実際の業務内容とは異なる偽りの在留期間更新許可申請書で在留資格を取得した事例があります。

留学の在留資格だが学校除籍後も在留

学校除籍後も「留学」の在留資格で日本に在留すると、資格が取り消されます。学校を除籍されると、留学ではなくなるためです。「留学」の在留資格取り消しの事例には、学校除籍後に3ヶ月以上留学に関する活動をせず日本に滞在していた、除籍後にアルバイトを行っていたなどがあります。

新住所の未提出や虚偽の住居地を提出

新住所の未提出や虚偽の住居地の提出も在留資格取り消しの事由になります。住居地に関係した在留資格の取り消しには、「技能実習」の在留資格を所持している外国人が、実習先の寮から失踪した例がありました。また、90日以内に新住居地の届け出をしなかった、配偶者を日本に呼ぶ際に虚偽の住居地の届け出たなども、在留資格取り消しの事由になります。

参照元
出入国在留管理庁
「平成30年の『在留資格取消件数』について」
「令和2年の『在留資格取消件数』について

在留資格取り消し件数

近年、在留資格の取り消し件数は著しく増加しています。2016年には294件だった在留資格の取り消し件数が、2020年には1210件と約4.1倍になりました。理由は、日本に滞在する外国人の増加に伴い在留資格の取り消しが多くなったためでしょう。ここでは、在留資格の取り消し件数を詳しく解説します。

年度ごとの在留資格別取り消し件数

出入国在留管理庁の「令和2年の『在留資格取消件数』について」によると、2016年から2020年にかけて取り消し件数が多かった在留資格が変化していることがわかります。

各年度で取り消し件数が多かった在留資格は、以下のとおりです。
 

・2016年
日本人の配偶者等:90件
留学:86件
定住者:26件
 

・2017年
留学:172件
日本人の配偶者等:67件
技術・人文知識・国際業務:66件


・2018年
留学:412件
技能実習2号ロ:127件
日本人の配偶者等 :80件
 

・2019年
留学:427件
技能実習2号ロ:272件
技能実習1号ロ :60件
 

・2020年
留学:524件
技能実習2号ロ:427件
技能実習1号ロ :117件
 

いずれの年代でも「留学」の在留資格の取り消しが多いことがわかります。なお、2018年以降に「技能実習」の在留資格の取り消しが大幅に増えている理由は、「技能実習」で滞在する外国人が増加したためでしょう。厚生労働省の「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」によると、2020年10月時点で「技能実習」の在留資格を持つ外国人は402,356万人で、前年より4.8%増加しています。

国籍・地域ごとの在留資格別取り消し件数

出入国在留管理庁の「令和2年の『在留資格取消件数』について」によると、2022年に在留資格取り消し件数が最も多かった国はベトナムで、711件(58.8%)でした。次に中国が162件(13.4%)、ネパールが98件(8.1%)と続きます。

3国の取り消し件数で1位になっている在留資格を見ると、ベトナムとネパールは「留学」でそれぞれ299件(42.1%)と84件(85.7%)、中国は「技術実習2号」で56件(44.4%)です。スリランカやウズベキスタンでは在留資格「留学」が、カンボジアやミャンマー、インドネシアでは「技能実習2号」の取り消し件数が1位でした。フィリピンでの取り消し件数が多い在留資格は同率1位で「技能実習1号」と「留学」です。

いずれの国籍や地域でも「技能実習2号」「留学」の在留資格の取り消し件数が多いことがわかります。

参照元
出入国在留管理庁「令和2年の『在留資格取消件数』について」
厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和2年10月末現在)

在留資格取り消しの流れ

日本に滞在する外国人に在留資格取り消し事由の疑惑が出た場合、次のような流れで手続きが進みます。
 

1.意見聴取通知書が届く

入国審査官から意見聴取を行う日付・場所が記載された意見聴取通知書が届きます。指定日時に出頭できない場合は、あらかじめ地方出入国在留管理局に連絡し日程の調整が必要です。
 

2.陳述・証拠提出を行う

「意見聴取通知書」の指定日時に本人または代理人が出頭し、入国審査官に陳述・証拠提出を行います。代理人になれるのは、後見人や未成年の親権者などの法定代理人、在留資格取り消しの対象者が指定した弁護士などです。
 

3.在留資格取消通知書が届く

在留資格が取り消しになった場合、対象者に届くのが「在留資格取消通知書」です。在留資格の取り消し事由により以降の手続きが異なり、即時収容・送還される場合と出国まで猶予期間が与えられる場合があります。
 

4.出国

「在留資格取消通知書」に指定された期間内に出国する必要があります。
 

在留資格取り消しの流れは以上です。自社の外国人社員に意見聴取通知書が届いた際はまず本人に事実確認を行いましょう。在留資格取り消し事由に心当たりがない場合や正当な理由があり在留資格に関する活動ができていない場合は、取り消しに該当しないことの説明・立証が必要です。個人での説明・立証が難しいようであれば、弁護士といった専門家に相談する方法もあります。

退去強制と出国命令制度

在留資格が取り消しになった場合、退去強制か出国命令制度による手続きがとられます。どちらになるかを決めるのは、在留資格の取り消しの事由の悪質性や逃亡の可能性の有無です。ここでは、退去強制と出国命令の違いを解説するので、在留資格取り消し後の出国に関する知識を深めてください。

退去強制とは

退去強制とは日本に在留している外国人を強制的に出国させることです。退去強制の場合、身柄が収容され、送還されます。退去強制になるのは、虚偽の申告により在留資格が取り消しになった場合や在留資格取り消しで出国命令が出たのに猶予期間中に出国しなかった場合です。また、在留資格に関する活動を所定期間行っていない人や資格外の活動を行おうとした人のうち在留資格取り消しになった者で逃亡の恐れがある外国人も退去強制になります。退去強制された外国人は上陸拒否期間が定められ、退去強制された日から5年間日本に入国できません。過去に退去強制された後日本に入国し、再び退去強制になった場合、上陸拒否期間は10年間です。

出国命令制度とは

出国命令制度は退去強制より簡略された手続きで、対象者を収容せずに出国させる制度です。出国命令では、出国のため30日を超えない猶予期間が指定され、行動範囲や居住地に条件が付きます。出国命令制度が適用されるには、対象者自ら出国を希望し出入国在留管理局へ出頭、懲役や禁固などの判決を受けていないなど、5つの条件を満たすことが必要です。出国命令で出国した人は、出国日から1年間日本に入国できません。企業で雇用する外国人の不法残留が発覚したときは、速やかに地方出入国在留管理局への出頭を促し、手続きのサポートをしましょう。

まとめ

このコラムでは取得した在留資格が取り消しになる事由、流れについて解説しました。どのような場合に在留資格が取り消しになるのかを把握し、在留資格認定証明書交付申請をする際や自社で働く外国人社員に適切な在留資格の更新を喚起する際の参考にしてください。在留資格の取り消しに関する内容は複雑です。もし、自社の外国人社員に在留資格取り消しの疑惑が出た場合、弁護士や行政書士など専門家へ相談するのも良いでしょう。

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