外国人留学生の在籍管理が厳格化した理由とは?

2020年04月07日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

近年、少子化や文部科学省の推進する「留学生30万人計画」を背景に、国内の学校では留学生の受け入れが盛んになっています。

しかし生徒数維持のために留学生を受け入れる学校が現れたことで、適正な教育の提供や就学環境の整備を怠る学校が増え、留学生が所在不明になったり、犯罪を引き起こしたりするなどの事件が発生するようになりました。これを受けて2019年6月に文科省から外国人留学生の在籍管理を徹底するよう全国の学校に要請がありました。


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目次

  1. 増加する外国人留学生の現状
  2. 留学生の在籍管理が厳格化する背景
  3. 文部科学省からの在籍管理徹底の方針
  4. 不適切な留学生受け入れを行う学校にはペナルティも
  5. 在留資格が停止されるリスクもあるので、在籍管理は適正に

増加する外国人留学生の現状

まず最初に、増加している外国人留学生の現状についてご紹介していきましょう。

増加する外国人留学生と「消えた留学生」の発生

独立行政法人日本学生支援機構の「外国人留学生在籍状況調査」によると、平成30年の外国人留学生の人数は298,980人で前年比12%増加しています。平成15年の約100,000人と比較すると、わずか15年で留学生の人数が3倍に増えたことになります。これは文部科学省が2008年に策定した「留学生30万人計画」によって、大学をはじめとする教育機関が積極的に留学生を受け入れてきた結果です。

数値上の目標は達成され、計画の趣旨である「日本を世界により開かれた国とする」という計画策定当初の目的は達成しましたが、外国人留学生が増えるに従い、新たな問題が発生しました。

その代表的な事例が、約700人の留学生が所在不明になった「消えた留学生問題」です。

参照:独立行政法人日本学生支援機構「国人留学生在籍状況調査」
文部科学省「「留学生30万人計画」骨子の策定について」

留学生増加に伴う新たな社会問題の発生

「留学生30万人計画」が進み、出稼ぎ目的での留学や資格外活動による不法就労、そして失踪などの問題が増えるようになりました。特に失踪した外国人が不法残留と見なされると一般社会に関わることができなくなり、違法就労をさせる企業や反社会的勢力と関わるケースが報告されています。

留学生の在籍管理が厳格化する背景

留学生の在籍管理が厳格化する背景にはどのような問題あるのでしょうか。

不適切な留学生受け入れと不法残留者の増加

日本には現在263万人の外国人が留学生や労働者、技能実習生として生活しています。しかし毎年7000人の技能実習生が行方不明になり、66,000人が不法残留しています。この背景には外国人留学生の受け入れ増加に伴い、適切に在籍管理を行わない学校が増えてきたことがあります。留学生の不法残留は4,700人を超え、毎年1,500人の留学生が失踪します。受け入れた留学生を授業料の不払いを理由に除籍し、母国に帰すこともなく放置してしまうケースも出てきました。

不適切な留学生受け入れの事例

東京福祉大学では、3200名の留学生を研究生として受け入れました。しかし約700名が所在不明となっていたことが明らかになり大きな波紋を呼びました。東京福祉大学は2012年に開学した新興校ですが、2015年に1403名だった留学生を2018年には全国2位の5,133名まで受け入れ人数を拡大しました。

しかし指導者や設備の不足から、十分な留学生の実態把握や指導ができずに大量の失踪者や不法滞在者を生み出しました。所在不明者の多くは学費を払うことができずに大学を除籍され、除籍後の動向について大学は関知しないため、数多くの失踪者を生み出すことになったのです。

事件の発覚を受け、外国人の出入国を担当している法務省と大学の監督を担当する文科省が合同で立ち入り調査を行ったところ、通学実績がないにも関わらず定員充足を図るために意図的に留学生をかき集めていることが判明しました。研究生の多くは週10時間だけ大学の授業に出ると残りの時間は労動に充てており、出稼ぎ労働の感覚で来日する研究生が多くいたようです。また、入試においては不適切な選考が認められ、日本語能力の不十分な留学生に合格を出して授業料を徴収するビジネスの実態が明らかになったのです。

定員割れを留学生で補って私学助成金を水増しし、不法滞在者を増加させることにも繋がるこの悪質な手法は国会でも大問題になり、文科省から各大学に在籍管理を徹底するよう通達が行われることになりました。

文部科学省からの在籍管理徹底の方針

文部科学省から要請された「在籍管理の徹底に関する新たな対応方針」とは具体的にどのような内容なのでしょうか。

文部科学省「在籍管理の徹底に関する新たな対応方針」とは

東京福祉大学の事件を受けて文部科学省は「在籍管理の徹底管理に関する新たな対応方針」をまとめました。その内容は大きく以下の2点です。

  • 留学生の在籍管理状況の迅速・的確な把握と指導の強化
  • 在籍管理の適正を欠く大学等に対する在留資格審査の厳格化

大学や専門学校などに求められる対応とは

文科省の要請によって大学や専門学校などの各種学校は外国人留学生の適正な受け入れと在籍管理の徹底、研究生や聴講生といった「非正規生」の受け入れについては学校の規模や指導者の人数を考慮して適正に行うことが求められるようになりました。また、留学生が卒業や中退など、何らかの理由で学校から離れたとしても教育機関の責任で在留資格関連の手続きや届出を行うように要請されました。

そして、退学者や除籍者、所在不明者が発生した場合には、その理由と発生要因の分析及び対策を講ずるように要請されています。

不適切な留学生受け入れを行う学校にはペナルティも

文科省からの要請に従わない場合には、どのようなペナルティが課されるのでしょうか。

不法残留者や所在不明者の多い学校を「慎重審査対象校」に

不法残留者や所在不明者が多い学校は「慎重審査対象校」として法務省に通告。対象校に留学する留学生向けの在留資格審査を厳格化します。この審査では留学生に学費などの経費支払い能力があるか、留学生として十分な日本語能力を有しているかなどが審査され、日本語能力については試験によって証明することも検討されています。

悪質な学校には「在籍管理非適正大学」の通告と学校名の公開も

3年連続で「慎重審査対象校」とされた大学や、悪質な留学生受け入れを行なっている学校は「在籍管理非適正大学」としてペナルティの対象となります。ペナルティの内容は対象大学に入学する学生向けの在留資格を付与しないという重い内容です。つまり、その学校は新たな留学生を受け入れることができなくなります。在学生についても在留資格更新ができなくなります。学校名も公開されることになりましたので、非常に重い処分となります

なお、2019年には、在籍管理非適正大学の第一号の認定校が出ています。

在留資格が停止されるリスクもあるので、在籍管理は適正に

国策として進められてきた留学生の積極的な受け入れですが、人数目標が達成されつつある現在、方針が転換してきました。適正に学生の在籍管理を行わない場合には留学生としての在留資格の発行を停止されるので、そもそも留学の受け入れができなくなってしまいます。

今後は、適正な留学生の受け入れ体制の構築にシフトしていく以上、この方針に従わない学校は留学生を受け入れることができなくなるリスクがあります。適正に在籍管理を行い、留学生が学問に打ち込むことができる環境を構築することが今後の留学生を受け入れる学校には求められていくでしょう。

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