飲食料品製造業ー在留資格「特定技能」とは?⑬

2020年04月13日
小島健太郎 (監修)
さむらい行政書士法人 代表社員
外国人の在留資格・VISA・帰化、対日投資手続きを専門に扱う「さむらい行政書士法人 」の代表社員。さむらい行政書士法人は東京、名古屋、大阪と全国対応。日本においても外国人を採用する企業が年々増加傾向にある中、外国人を雇用する際の就労ビザの取得を支援し、専門性の高いコンサルティングにより高い信頼を得ている。専門分野:在留資格・VISA・帰化。年間相談実績1,000件以上。 https://samurai-law.com

飲食料品製造業における在留資格は、日本の製造業における慢性的な人手不足を解消するために導入されました。ここでは、業界内や関係機関での人手不足解消に向けた取り組みを紹介するほか、外国人雇用時に注意すべきことをご紹介します。

飲食料品製造業分野で「特定技能」の外国人を受け入れる目的

飲食料品製造業分野における深刻な人手不足を解消するため、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れ、飲食料品製造業分野の存続・ 発展を図ることが目指されています。

飲食料品製造業分野は人手不足

飲食料品製造業は、事業所数と従業者数が製造業の中でトップで、有効求人倍率は平成29年度には2.78倍となっています。これは飲食料品製造業の事業者間で人材の奪い合いが起きていることを意味します。

2019年の食品衛生法改正により、2020年6月までに全ての飲食料品製造業者にHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point=ハサップ)に沿った衛生管理の制度化への対応が求められており、今後HACCPを含む衛生管理の知識を有する人材の確保が急務となっています。

参照:厚生労働省 HACCP(ハサップ)

 ・飲食料品製造業分野のさまざまな取り組み

業界の慢性的な人手不足に対してさまざまな取り組みを紹介します。

1. 生産性向上のための取組

ロボット導入などの設備投資、IoT・AI等を活用した生産性向上、省人化、低コスト化を実現するため、専門家による工場診断に取り組んでいます。

2. 国内人材確保のための取組

国内における人材確保のため、「女性・高齢者」が働きやすい就労環境の改善と研修・セミ ナーの積極的な実施が業界内で進んでいます。また、農林水産省は、女性・高齢者の就業促進のため、「食品産業の働き方改革早わかりハンドブック」の作成し、業界理解の促進を進めています。

3. 処遇改善のための取組

人手不足を改善すべく、賃上げなどの処遇改善が進められており、経済産業省「工業統計調査」によると、従業員一人当たりの給与額は増加傾向(平成18年に273万円が平成28年に289万 円まで増加)にあり、食料品製造業界の正社員比率も上昇傾向(平成27年度に46%が平成29年度に48%に増加)にあります。

参照:調査の結果|工業統計調査|経済産業省

就労ビザとしての特定技能を申請する際の飲食料品製造業特有の事情

技能実習ビザは事業協同組合が出入国在留管理局に対して申請しますが、特定技能ビザは各飲食料品製造業者が個別に出入国在留管理局に申請をすることとなります。また、技能実習ビザの審査時には事業協同組合の財務諸表が問われるのに対して、特定技能ビザの場合は、各飲食料品製造業者の経営状況が審査対象となります。

・飲食料品製造業技能実習から特定技能ビザへの移行

飲食料品製造業は技能実習2号の対象ですが、技能実習2号の修了者は、特定技能1号へ移行できます。つまり、技能実習での3年と特定技能1号での5年、通算8年間日本で飲食料品製造業に従事することが可能になります。

・採用時期をずらすことで労働力を継続的に確保する

飲食料品製造業は特定技能2号の対象業種ではないことから、5年後には必ず労働者は帰国します。そのため、各労働者の雇用時期を1年程度ずらして雇用をすることで、労働者を継続的に確保することが求められます。

参照:農林水産省 飲食料品製造業分野における外国人材の受入れ拡大について

特定技能 飲食料品製造分野での外国人雇用の疑問

・飲食料品製造業分野における2019年4月以降の受け入れ見込数

飲食料品製造業分野では、今後5年間で7万3千人の人手不足が生じると想定されていますが、受け入れ上限は3万4千人と決まっています。

・飲食料品製造業分野における「特定技能1号」労働者としての基準

実際に働く現場で通用する即戦力となる技能と日本語レベルがあると認められる場合、「特定技能1号」が認可されます。

1. 飲食料品製造業分野の2号技能実習を修了

技能実習2号まで修了している人は無試験で特定技能1号に移行することが可能です。

2. 技能試験及び日本語試験に合格

技能実習2号を修了していない場合、「飲食料品製造業技能測定試験」と「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格することで認可されます。

日本語能力試験のN4は、基本的な日本語を理解することができるレベルで、日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できるレベルを指します。日本語学校に通っている留学生であればクリアできるでしょう。

・特定技能1号をもつ外国人の雇用側に求められる条件

雇用者も、農林水産省から課されている4つの条件を満たすことが求められます。

  1. 「食品産業特定技能協議会」の構成員になること。
  2. 食品産業特定技能協議会に対し必要な協力を行うこと。

  3. 農林水産省が主導する調査に必要な協力を行うこと。

  4. 受け入れ先企業(特定技能所属機関)は、特定技能の外国人に対して在留中に安定的・円滑な活動を行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を自らが行わない場合は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては協議会の構成員となっており、かつ農林水産省及び協議会に対して必要な協力を行う登録支援機関に支援業務を委託することを求められます。

なお、受け入れ企業は、外国人労働者を直接雇用する必要があり、派遣での雇用は認められていません。 

・飲食料品製造分野の対象となる事業は

「特定技能1号」の外国人労働者が働くことのできる業務は、以下の日本標準産業分類に該当する以下の7種類となっています。

  1. 食料品製造

  2. 清涼飲料製造業

  3. 茶、コーヒー製造業(清涼飲料を除く)

  4. 製氷業

  5. 菓子小売業(製造小売)

  6. パン小売業(製造小売)

  7. 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業

・外国人労働者が「特定技能1号」で働く場合、どのような業務に従事するのか

飲食料品の製造、加工、安全衛生に従事することができます。ただし「特定技能1号」の外国人労働者は、酒類に関する製造、加工、安全衛生に従事することはできません。

・飲食料品製造業分野における3年間の技能実習修了者(2号)に該当する「特定技能1号」の対象と

下記の10種類が、技能実習修了者(2号)に該当する「特定技能1号」の対象となります。

  1. 缶詰巻締

  2. 鳥処理加工業

  3. 加熱性水産加工食品製造業

  4. 非加熱性水産加工食品製造業

  5. 水産練り製品製造

  6. 牛豚食肉処理加工業

  7. ハム・ソーセージ・ベーコン製造

  8. パン製造

  9. そう菜製造業

  10. 農産物漬物製造業

まとめ

在留資格・特定技能の活用により、飲食料品製造業分野における慢性的な人手不足の解消が進むのか、注目されています。ロボット導入などの設備投資、IoT・AI等を活用した生産性向上、省人化、低コスト化といった社内の取り組みと、外国人人材との共存がこれからの課題です。

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