外国人研修制度との違いは?企業に向けて技能実習制度の概要を解説

2022年03月10日
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小島健太郎 (監修)
さむらい行政書士法人 代表社員
外国人の在留資格・VISA・帰化、対日投資手続きを専門に扱う「さむらい行政書士法人 」の代表社員。さむらい行政書士法人は東京、名古屋、大阪と全国対応。日本においても外国人を採用する企業が年々増加傾向にある中、外国人を雇用する際の就労ビザの取得を支援し、専門性の高いコンサルティングにより高い信頼を得ている。専門分野:在留資格・VISA・帰化。年間相談実績1,000件以上。 https://samurai-law.com

「外国人研修制度と技能実習制度はどう違うの?」と疑問に思う企業もあるでしょう。技能実習制度は、以前「外国人研修・技能実習制度」として運営されていた経緯があるため、混乱する人も多いようです。このコラムでは、それぞれの制度の異なる点を解説します。また、外国人技能実習制度の概要や、実際に技能実習生を受け入れるステップも紹介。内容を参考にして、技能実習生の受け入れをスタートしましょう。


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目次

  1. 外国人技能実習制度とは
  2. 外国人技能実習制度の概要
  3. 技能実習生を受け入れるステップ
  4. 外国人技能実習生制度の運用状況と抱えている問題
  5. まとめ

外国人技能実習制度とは

ここでは、外国人技能実習制度の概要や歴史、外国人研修制度との違いを解説します。

日本の国際貢献が目的の制度

外国人技能実習制度の目的は国際貢献です。開発途上国から来日した技能実習生に、実務を通して日本の優れた技術や知識を移転します。技能実習生は技能実習終了後、日本で学んだ技術や知識を母国に持ち帰り、産業・経済の発展に繋げるのです。技能実習制度は、日本が先進国として果たすべき責務を全うするための制度といえるでしょう。勘違いされがちですが、技能実習制度は人材を確保するための制度ではありません。認識を誤らないようにしましょう。

外国人研修・技能実習制度がもとになっている

現行の外国人技能実習制度は、1993年にスタートした「外国人研修・技能実習制度」がもとになっています。外国人研修・技能実習制度では、外国人は在留資格「研修」および「特定活動」で座学や実務研修を行っていました。しかし、この運用方法の場合、研修の意味合いが強く労働関係法令の対象にはなりません。そのため、外国人を不当な低賃金で働かせる企業が続出してしまいました。その後、在留資格「技能実習」の創設や技能実習法の制定を経て、現行の外国人技能実習制度が確立されたのです。

現在運用されている外国人技能実習制度には、技能実習生を保護し人権を守るための仕組みが多く盛り込まれています。外国人研修制度も今なお存在していますが、外国人技能実習制度とは関連のない制度に変更されました。
詳しくは、「外国人技能実習制度とは?新制度についてわかりやすく解説!」も参考にしてみてください。

外国人研修制度と外国人技能実習制度の違い

現行の外国人研修制度と外国人技能実習制度の違いは、外国人に付与される在留資格の種類と報酬を伴う実務研修の可否です。
制度の違いについては、「外国人受け入れ制度とは? 技能実習と特定技能の違いを解説」のコラムでもまとめています。ぜひ、チェックしてみましょう。

在留資格の違い

外国人研修制度では、外国人は在留資格「研修」を付与されます。一方、外国人技能実習制度で外国人に付与される在留資格は、「技能実習」です。

実務研修の可否

外国人研修制度では、国や地方公共団体が行う一部の研修を除き、報酬を伴う実務研修は行えません。また、外国人と企業が労働契約を締結しないため、生活実費として研修手当のみ支給されます。具体的には、技術講習や工場の見学、座学による授業などが該当するでしょう。一方、外国人技能実習制度では、外国人(技能実習生)は企業と雇用契約を結んだうえで実務研修を行います。報酬は、労働基準法や最低賃金法に基づいて支給される決まりです。

外国人技能実習制度の概要

ここでは、技能実習生の在留資格や受け入れ方式、対象の職種などを解説します。

技能実習生の受け入れ方式

外国技能実習制度には、「団体監理型」と「企業単独型」の2種類の技能実習生の受け入れ方式があります。

団体監理型は、監理団体を通して技能実習生を受け入れる方式です。技能実習を実施する企業は、監理団体に監理費を支払うことで技能実習生の受け入れに関わるサポートを受けられます。自社で煩雑な手続きを行わずに済むため、多くの企業が利用する方式です。

企業単独型では、監理団体を通さず自社のみで技能実習生の受け入れを行います。技能実習生になるのは、海外の支店や取引先企業の職員です。そのため、事業規模の大きい企業が採用する方法といえます。

技能実習生の持つ在留資格

外国人技能実習制度において、技能実習生に付与される在留資格は「技能実習」です。技能実習を行う期間と在留資格の関係は以下のとおりです。

技能実習の期間

在留資格の種類

移行の条件

技能実習1年目

技能実習1号

技能検定基礎級、もしくは技能評価試験初級の合格することで2号へと移行できる

技能実習2~3年目

技能実習2号

技能検定の随時3級、技能評価試験の場合は専門級への合格で3号へと移行できる

技能実習4~5年目

技能実習3号

※技能実習は最長で5年まで

なお、技能実習の在留資格は、受け入れ方式でも異なります。カタカナの「イ」と「ロ」で分類され、団体監理型は「ロ」、企業単独型は「イ」です。たとえば、団体監理型で技能実習2年目に入る技能実習生には「技能実習2号ロ」の在留資格が付与されます。

技能実習の対象になる職種

技能実習の対象になるのは、2022年1月時点で85職種156作業です。技能実習が行われる産業は「農業関係」「漁業関係」「建設関係」「食品製造関係」「繊維・衣服関係」「機械・金属関係」「その他」「空港グランドハンドリング」に分かれています。そこからさらに職種・作業が細かく分類されているのです。たとえば、建設関係の技能実習対象職種は以下の22職種33作業があります。

引用:OTIT外国人技能実習機構「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧(85職種156作業)

なお、すべての職種・作業が技能実習3号まで移行できるわけではありません。以下の職種・作業は技能実習2号までです。技能実習は最長で3年間なので、長期的な受け入れを検討している企業は注意しましょう。
 

【技能実習3号まで移行できない職種・作業】

  • 農産物漬物製造業
  • 医療・福祉施設給食製造
  • 紡績運転
  • 織布運転
  • カーペット製造
  • 印刷業のうちグラビア印刷
  • リネンサプライ
  • 宿泊
  • ゴム製品製造
  • 空港グランドハンドリングのうち客室清掃

技能実習が行える職種は、追加される可能性もあります。こまめに外国人技能実習機構(OTIT)の確認すると良いでしょう。

技能実習生を受け入れられる人数

企業が技能実習生を受け入れられる基本の人数枠は、企業の常勤職員の人数によって異なります。常勤職員とは、技能実習生を含まない雇用保険に加入している従業員のことです。ここでは、多くの企業が利用する団体監理型での受け入れ可能人数を説明します。

基本の人数枠

技能実習生を受け入れられる基本の人数枠は以下の通りです。
 

【常勤職員の人数と受け入れ可能な人数】

  • 301人以上:常勤職員総数の20分の1
  • 201人以上300人以下:15人
  • 101人以上 200人以下:10人
  • 51人以上 100人以下:6人
  • 41人以上 50人以下:5人
  • 31人以上 40人以下:4人
  • 30人以下:3人

なお、以上の数字は企業が一度に受け入れられる技能実習生の数ではありません。技能実習生2号は基本人数の2倍の人数を受け入れられます。たとえば、基本人数枠が4人の企業の場合、始めに受け入れた技能実習生が1号から2号に移行すれば、さらに4名の受け入れが可能です。

優良認定を受けている場合の人数枠

技能実習生を実施する企業および監理団体が外国人技能実習機構(OTIT)から優良認定を受けていれば、受け入れ人数を増やせます。優良認定を受けている場合の受け入れ人数は以下の通りです。

  • 技能実習1号:基本人数枠の2倍
  • 技能実習2号:基本人数枠の4倍
  • 技能実習3号:基本人数枠の6倍

企業外国技能実習機構(OTIT)から優良認定を受けるには、技能実習生の技術習得度や待遇、法令違反の発生状況などの項目において一定の基準を満たす必要があります。

外国人技能実習制度の概要を企業向けに解説!技能実習生の受け入れ方も紹介」では、外国人技能実習制度のメリットや注意点、技能実習生の受け入れが可能な職種などを紹介しています。技能実習生を受け入れる際の流れも解説しているので、気になる企業はチェックしてみましょう。

技能実習生を受け入れるステップ

ここでは、団体監理型で海外から技能実習生を受け入れる流れを解説します。初めて技能実習を実施する企業は実際の流れをイメージし、準備を進めましょう。

  • 監理団体を選び、加入する
  • 監理団体が人材を募集し、企業と一緒に面接を行い採用を決定する
  • 監理団体のサポートを受けつつ、技能実習計画の認定申請を行う
  • 技能実習生の在留資格に関する申請を行う(在留資格認定証明書交付申請)
  • 来日した技能実習生が監理団体が実施するガイダンスを受けている間、受け入れ体制を整えておく(住居や指導体制の構築など)
  • 技能実習開始

状況によって多少違いはありますが、面接から実習実施までに半年以上は掛かります。余裕を持って準備するようにしましょう。

外国人技能実習生制度の運用状況と抱えている問題

日本に来日する技能実習生は増加しています。厚生労働省の資料によると、2021年10月時点で日本で就労している技能実習生は402,356人でした。この人数は全体の外国人労働者数1,724,328人の23.3%に上ります。就労に関する在留資格のなかではもっとも多い数字です。2020年は、新型コロナウイルスの世界的流行により前年からの増加率が大幅に下がりました。しかし、状況が好転すればさらなる受け入れ人数の増加も期待できるでしょう。

外国人技能実習制度は技能実習法のもと順調に運用されているように感じられますが、課題も残されています。解決しなければならない課題によく挙げられるのは、相次ぐ技能実習生の失踪でしょう。技能実習生が実習先から失踪し、行方が分からなくなってしまう事案が頻発しています。例年、実習生の3%前後が失踪しています。2018年の失踪者数は、9052人でした。技能実習生が失踪する理由は、より高い賃金を得るためや実習の辛さから逃れるためなどさまざまです。技能実習生の失踪は、企業の対策により防げる可能性があります。十分な賃金を支払い労働環境を整えるのはもちろん、技能実習生が悩みごとを相談できるような雰囲気づくりも大切です。

参照元
厚生労働省「令和2年10月末現在「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】

まとめ

現在の外国人技能実習制度は、外国人研修・技能実習制度がもとになっています。外国人技能実習生の受け入れを検討する企業は、どのようにして現在の制度が作られていったのかを知りましょう