外国人技能実習制度とは?企業に向けて技能実習生の受け入れ方法を解説

2022年01月18日
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島田亮司 (監修)
日本ビザ国際行政書士事務所
ストックホルム大学交換留学を経て、中央大学法学部卒業。東京書籍株式会社に入社、主に英語辞典や教材の編集、異文化理解教育のテキスト製作を担当。その後、PHP研究所にて英文月刊誌の副編集長として国内外の取材、執筆、編集に携わる一方、松下幸之助研究の研究スタッフとして外国人経営者向けの研修セミナーの企画、運営、講演を行う。伊藤忠商事食料カンパニー向けのアナリストを経て独立。1997年設立のNPO国際交流団体SIEN(埼玉県国際交流協会登録)の代表として現在までの22年間、異文化理解、交流促進に関わる社会活動をする他、外国人社員教育、外国人採用コンサルティング、在日外国人向けに生活サポートや賃貸物件のアドバイス等も行う。宅地建物取引士。英語通訳案内士。 http://visa-nihon.com/

「外国人技能実習ってどのような制度?」と疑問に思う方もいるでしょう。技能実習は、開発途上国の人材へ日本の技術を移転するのが目的の制度です。多くの企業は監理団体を通す「団体監理型」で技能実習生を受け入れています。このコラムでは技能実習制度の基礎知識や、技能実習を行える職種を解説。また、企業が団体監理型で技能実習生を受け入れる流れもまとめています。内容を参考にして、スムーズに技能実習を開始しましょう。


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目次

  1. 外国人技能実習制度の基礎知識
  2. 技能実習を行える職種と作業範囲
  3. 企業が外国人技能実習生を受け入れる流れ
  4. 外国人技能実習制度の問題点
  5. まとめ

外国人技能実習制度の基礎知識

外国人技能実習制度の基礎知識の画像

外国人技能実習制度は、開発途上国の外国人に日本の技術を移転するのが目的です。この項目では、外国人技能実習制度の基礎知識を紹介します。企業はこの項目を参考にして、技能実習生の受け入れに必要な知識を身に付けましょう。

外国人技能実習制度の目的

外国人技能実習制度の目的は、開発途上国出身の外国人に日本の技術や知識を移転し、母国の発展に活かしてもらうことです。日本は先進国として「人づくり」に取り組み、国際社会に貢献しています。外国人技能実習生は母国では学べない技術を学ぶために来日しているため、単なる「労働力」として扱ってはなりません。外国人技能実習制度の基本理念を理解したうえで、技能実習法や労働基準法などの関係法令を遵守し、正しく技能実習を実施しましょう。

外国人技能実習生の送り出し国

外国人技能実習生を日本に送り出しているのは、以下の国です。

  • インド

  • インドネシア

  • ウズベキスタン

  • カンボジア

  • スリランカ

  • タイ

  • 中国

  • ネパール

  • パキスタン

  • バングラデシュ

  • フィリピン

  • ベトナム

  • ミャンマー

  • モンゴル

  • ラオス

以上の国々のほかに、ペルーも送り出し機関の新規選定を行っており、近い将来送り出し国になる予定です。

外国人技能実習生の受け入れ方式

外国人技能実習生の受け入れには「企業単独型」と「団体監理型」の2つの方式があります。

企業単独型は、技能実習を実施する企業が直接合弁企業や取引先企業で働く外国人を受け入れる方式です。海外に事業所や取引先企業を持っていなければ実施が難しいうえ、手間や時間も必要とされます。団体監理型は、監理団体を通じて外国人技能実習生を受け入れる方法です。監理団体は事業協同組合や商工会議所などの非営利団体からなり、企業は監理費を支払うことでサポートを受けられます。そのため、中小企業であっても技能実習を行いやすい方式といえるでしょう。実際に2020年の法務省のデータでは、技能実習を実施している企業の97.6%が団体監理型を採用していました。

制度の詳しい内容については、「在留カードが期限切れになったらどうなる?罰則や対処方法を解説」をご参照ください。また、技能実習生の受け入れサポートを行う監理団体について知りたい方には、「外国人技能実習制度の監理団体とは?選ぶときのポイントを企業に向けて紹介」のコラムがおすすめです。監理団体の特徴や選ぶときのポイントについて詳しく解説しているので、外国人技能実習生の受け入れを検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。

外国人技能実習生の在留資格

外国人技能実習生の在留資格は「技能実習」です。外国人技能実習生の在留資格は、受け入れ方式や技能実習を行っている年数によってさらに細分化されます。

来日1年目の技能実習生に付与されるのは「技能実習1号」です。1年間技能実習を行い、技能評価試験に合格すれば「技能実習2号」の在留資格が付与され、さらに2年間技能実習が行えます。技能実習2号の修了後、技能評価試験に合格すれば「技能実習3号」となり、通算で5年の技能実習が可能です。

在留資格は受け入れ方式でも変わります。企業単独型では「イ」、団体監理型では「ロ」です。たとえば、団体監理型で技能実習を開始する来日1年目の技能実習生には、「技能実習1号ロ」の在留資格が付与されます。

参照元
厚生労働省「外国人技能実習制度について

技能実習を行える職種と作業範囲

技能実習を行える職種と作業範囲の画像

技能実習を実施できる職種と作業は決まっています。定められている範囲外の作業を技能実習生に指示してはなりません。技能実習生が行えるのは、2021年3月時点で85職種、156作業です。技能実習を多く実習している食品業界を例に、技能実習を行える職種と作業を紹介します。

【技能実習を行える職種・作業名】

  • 缶詰巻締(作業: 缶詰巻締)

  • 食鳥処理加工業(作業:食鳥処理加工)

  • 加熱性水産加工食品製造業(作業:節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造)

  • 非加熱性水産加工食品製造業(作業:塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造、調理加工品製造、生食用加工品製造)

  • 水産練り製品製造(作業:かまぼこ製品製造)

  • 牛豚食肉処理加工業( 作業:牛豚部分肉製造)

  • ハム・ソーセージ・ベーコン製造(作業:ハム・ソーセージ・ベーコン製造)

  • パン製造(作業:パン製造)

  • そう菜製造業(作業:そう菜加工)

  • 農産物漬物製造業(作業:農産物漬物製造)※技能実習2号まで受け入れ可能

  • 医療・福祉施設給食製造(医療・福祉施設給食製造)※技能実習2号まで受け入れ可能

以上のように、行える職種や作業は細かく定められています。人手不足だからといって本来許可されていない作業を外国人技能実習生に指示するのは避けましょう。

参照元
厚生労働省「技能実習制度 移行職種・作業一覧(85職種156作業)

企業が外国人技能実習生を受け入れる流れ

企業が外国人技能実習生を受け入れる流れの画像

ここでは、企業が団体監理型で外国人技能実習生の受け入れる際の、おおまかな流れを紹介します。

1.外国人技能実習生の募集と選定をする

企業は加入した監理団体に、外国人技能実習生に求める条件を伝えます。監理団体は企業の出した条件をもとに送り出し機関とやり取りをし、候補者を選定するのが役割です。その後、企業は監理団体のサポートのもと、現地やオンラインで面接を行い、自社で受け入れる外国人技能実習生を選定します。

2.技能実習計画の認定申請を行う

企業は外国人技能実習生の選定を終えたら、外国人技能実習機構へ「技能実習計画」を提出しなくてはなりません。監理団体の職員である技能実習作成指導者の指導のもと、技能実習計画を作成して提出します。外国人技能実習機構に技能実習計画の認定が受けられなければ、技能実習は実施できません。

3.在留資格認定証明書の交付の手続きをする

外国人技能実習機構に技能実習計画が認定されたら、次は外国人技能実習生の入国準備です。監理団体は受け入れ企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理局で、「在留資格認定証明書」の交付手続きをします。在留資格認定証明書とは、外国人が取得予定の在留資格に相応しい人物であることを証明する書類です。在留資格認定証明書があると、外国人の日本への入国が非常にスムーズに進みます。

4.在留資格認定証明書を現地へ送る

在留資格認定証明書は、外国人技能実習生のビザ(査証)の発給のために必要です。そのため、在留資格認定証明書が交付されたら、速やかに受け入れ予定の外国人技能実習生に郵送します。団体監理型の場合は監理団体が郵送の手続きを行ってくれるでしょう。外国人技能実習生は、現地の日本国大使館もしくは総領事館にてビザ(査証)の発給を行い、日本に入国します。

5.講習を行ってから技能実習を開始する

外国人技能実習生が入国したら、監理団体は講習を実施します。講習の内容は、日本語や生活するうえでのマナー、法律についてです。企業は監理団体の講習が完了するまでに外国人技能実習生の住まいや受け入れ体制を整えておきましょう。講習が完了したら、技能実習が開始できます。講習期間は、1~2ヶ月です。

外国人技能実習制度の概要を企業向けに解説!技能実習生の受け入れ方も紹介」では、外国人技能実習制度のメリットや注意点、技能実習生の受け入れが可能な職種などを紹介しています。技能実習生を受け入れる際の流れも解説しているので、気になる企業の方はチェックしてみましょう。

外国人技能実習制度の問題点

外国人技能実習制度の問題点の画像

外国人技能実習制度には、劣悪な環境で技能実習を行う企業があったり、不正を働く送り出し機関や監理団体が存在したりするなどの問題があります。また、外国人技能実習生の失踪も改善すべき問題です。企業は、外国人技能実習制度にどのような問題点があるか把握したうえで、適切に技能実習を実施するように努めましょう。

劣悪な環境で技能実習を行う企業がある

ほとんどの企業は適切に技能実習を実施しています。しかし、劣悪な環境で技能実習を行う一部の企業の存在が問題になっているのも事実です。特に、低賃金や過重労働は技能実習制度の抱える最もポピュラーな問題といえるでしょう。技能実習制度は人材育成が目的であり、受け入れにコストが掛かるため利益が出くいのが実情です。だからといって、技能実習生を最低賃金以下の給料で働かせたり、サービス残業を連日強いたりするのは許されません。外国人技能実習生にも日本の労働関係の法律が適用されます。そのため、最低賃金以上の賃金の支払いはもちろん、「1日8時間・週40時間」の労働時間の原則をできるだけ守り、オーバーした場合は残業代をしっかり支給するようにしましょう。

失踪をする外国人技能実習生がいる

外国人技能実習生の失踪も社会問題になっています。失踪する理由はさまざまですが「低賃金による生活の困窮」「実習先でのパワハラや暴力」など、企業側が原因である場合も多いようです。外国人は実習実施先から失踪すると在留資格を失います。不法滞在者となれば正当な職には就けないため、犯罪に巻き込まれる可能性もあるでしょう。企業は、外国人技能実習生の接し方に気を配り、働きやすい労働環境を整備する必要があります。また、悩みごとを相談できるような雰囲気づくりも重要です。日本語や日本の文化に上手く適用できず、悩みを抱えてしまう外国人技能実習生は少なくありません。様子をよく観察し、必要であれば声をかけたり話を聞いたりすることで失踪を防げる場合もあります。

悪質な送り出し機関や監理団体が存在する

悪質な送り出し機関や監理団体も存在するようです。日本で働けば母国にいるよりも多く収入を得られるため、技能実習への参加を希望する外国人は多くいます。なかには外国人の「日本で技能実習をしたい」という心理を利用し、高額な手数料や保証金を要求する送り出し機関があるのも事実です。また、監理団体のなかにも、加入した企業に対して高額な監理費を支払わせたのにも関わらず、サポートを十分に行わないような組織が少なからずあります。企業は加入する監理団体選びを慎重に行うことで、悪質な送り出し機関や監理団体と関わることを防げるでしょう。悪質な運営をする送り出し機関や監理団体を利用しない方針の企業が増えれば、技能実習制度の適正化が進みます。

まとめ

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このコラムでは、外国人技能実習制度について知りたい企業に向けて、概要を解説しました。少子高齢化により、ますます労働力不足が深刻化するなかで、外国人技能実習制度が果たす役割は決して小さくありません。しかし、あくまでも趣旨は開発途上国の経済発展を担う「人づくり」であることを忘れずに、適切に技能実習を行いましょう。