特定技能「農業」を持つ外国人の雇用方法!試験内容や技能実習との違いも

2023年08月09日
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特定技能「農業」は、人手不足が深刻な農業業界における外国人雇用を増やすために作られました。特定技能外国人には幅広い業務を任せられるうえ、農業分野の場合は繫忙期の派遣雇用も可能です。
このコラムでは、農業分野で特定技能外国人を受け入れるための要件や技能実習生との違いを解説。人手不足に悩む農業事業者の方は参考にして、特定技能外国人の受け入れに踏み出しましょう。


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目次

  1. 日本の農業は慢性的な人手不足
  2. 特定技能「農業」の概要
  3. 特定技能「農業」と在留資格「技能実習」の違い
  4. 特定技能「農業」で可能な業務
  5. 外国人が特定技能「農業」を得るための試験
  6. 技能実習からの移行も可能
  7. 農業分野で特定技能外国人を受け入れ可能な企業
  8. 農業分野で特定技能外国人を雇用する流れ
  9. まとめ

日本の農業は慢性的な人手不足

日本の農業は慢性的な人手不足の画像

日本の農業は慢性的な人手不足に陥っています。以下は、近年の基幹的農業従事者(主な仕事として農業をする労働者)の推移です。

基幹的農業従事者

人数

2015年

175.7万人

2016年

158.6万人

2017年

150.7万人

2018年

145.1万人

2019年

140.4万人

2020年

136.3万人

2021年

130.2万人

2022年

122.6万人

2023年(概数)

116.4万人

※2015年、2020年のみ全数調査

上記から分かるように、ここ10年だけ見てもかなりの人数減少が見られます。主な理由として考えられるのは、少子高齢化による労働力の減少と後継者不足です。農業は土地や機械設備が必要なため、代々子どもが親から家業を引き継ぐのが主流でした。しかし、昨今では「体力的に大変」「天候に収入が左右されるのが不安」などの理由で、農業を継がずにほかの仕事に就く人が増えています。また、新しく農業を始めても初期費用がかさんだり収入が思うように増えなかったりして、離農するケースも少なくありません。

人口が減少している日本で人手不足を解消するには、外国人雇用が有効です。外国人労働者は年々増加しているうえ、年齢も若年層が多い傾向にあります。高齢化が進む農業において最適の人材といえるでしょう。

農業分野で外国人を雇用するメリットとは?必要な在留資格や注意点を解説」では、農業分野での外国人雇用について詳しくまとめています。

参照元
農林水産省「農業労働力に関する統計

特定技能「農業」の概要

特定技能「農業」の概要の画像

特定技能「農業」は、農業分野の人手不足の解消を目的に創設されました。特定技能の在留資格を持って働く外国人は、「特定技能外国人」と呼ばれます。ここでは、特定技能「農業」の概要を解説するので、外国人雇用を考えている農業従事者の方は参考にしてください。

在留資格「特定技能」のうちの一つ

特定技能は、人手不足が特に深刻な業界に限り、外国人の単純労働への従事を可能にする在留資格です。12種類あり、「農業」もそのうちの一つに定められています。特定技能の在留資格ができるまで、農業分野で雇用できる外国人は技能実習生や身分に基づく在留資格を持つ人に限られていました。特定技能の誕生で、外国人雇用がよりしやすくなったといえるでしょう。

特定技能「農業」は派遣雇用もできる

特定技能「農業」の特徴として、派遣雇用ができる点が挙げられます。本来、特定技能の在留資格を持つ外国人は、直接雇用が原則です。しかし、「農業」および「漁業」部分に限っては、繫忙期が時期や季節によって左右されるため、派遣社員として特定技能外国人を受け入れられます。

2023年6月に2号への範囲拡大が決定された

特定技能の在留資格は1号と2号があります。1号は日本で働ける期間が最長5年で、家族の帯同はできません。1号を持つ外国人は、熟練した技能を身に付けたうえで試験に合格すれば、2号へと移行できます。特定技能2号は在留期限が事実上無期限になるうえ、家族の帯同も可能です。

2019年の特定技能制度ができた当初は、2号への移行が許可されているのは「建設」と「造船・舶用工業」分野のみでした。しかし、2023年6月の制度変更により「介護」を除いたすべての分野でも受け入れができます。2023年中に移行試験の内容や細かい流れなどが決定されるので、最新情報をチェックしておきましょう。

参照元
出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)」

特定技能「農業」と在留資格「技能実習」の違い

特定技能「農業」と在留資格「技能実習」の違いの画像

特定技能と技能実習の在留資格は関係性が深いものの、異なる点も存在します。特に制度の目的の違いは、雇用主として正しく理解しておく必要があるでしょう。以下で、特定技能外国人と技能実習生の違いを説明します。

制度の目的

特定技能と技能実習の在留資格では、制度の目的に大きな違いがあります。

技能実習制度の目的は「人づくり」です。外国人に日本の技術を実習を通して移転し、母国の経済発展に役立ててもらう日本の国際協力の一環ともいえる制度です。人材補填が目的の制度ではないため、技能実習生を人材確保のために雇ってはなりません。一方、特定技能制度は人材不足の業界のためにできた制度です。特定技能制度の創設により、人手不足の企業は人材をより確保しやすくなりました。

在留期間

日本に在留できる期間にも違いがあります。

技能実習生は技能実習3号まで移行すれば最長5年の在留が可能です。それ以上日本に在留するためには、ほかの在留資格に変更しなくてはなりません。
特定技能の場合、先述したとおり1号の在留期間は最長5年でそれ以上の更新は不可です。しかし、特定技能2号の在留資格は更新が可能なので、事実上無期限で日本に在留できます。

手間やコスト

技能実習生や特定技能外国人の受け入れは、ほかの在留資格を持つ外国人を雇用するのとは違った手間やコストが掛かります。

企業が技能実習生を受け入れる際は、「監理団体」に加入するのが一般的です。監理団体は技能実習生の受け入れをサポートする機関で、支援を受けるには監理費を支払います。また、面接のための海外渡航費や技能実習生の入国準備の費用も必要です。

特定技能外国人を雇用する場合は、技能実習からの切り替えか海外から新規で入国するかでコストが異なります。技能実習からの切り替えの場合、新たな費用や手間はそこまで掛からないでしょう。新たに特定技能外国人を受け入れる場合は、海外の送り出し機関へ払う費用や入国に掛かる費用を用意します。また、特定技能外国人の支援業務を「登録支援機関」に委託する場合は、支援委託手数料も必要です。

転職可否

技能実習生は原則転職ができません。ただし、受け入れ企業に問題があったり企業の事情で技能実習が続けられなかったりした場合は、認められることもあります。一方、特定技能の在留資格を持つ外国人は手間は掛かるものの、制度上は転職が可能です。

特定技能と技能実習の違いは「外国人受け入れ制度とは? 技能実習と特定技能の違いを解説」や「特定技能とはどのような在留資格?簡単にわかりやすく解説【2号範囲拡大】」でもまとめています。

特定技能「農業」で可能な業務

特定技能「農業」で可能な業務の画像

特定技能「農業」の在留資格では、畜産農業および耕種農業に関する作業ができます。また、2つの業務を主に行っていれば、関連業務も可能です。

畜産農業に関わる作業

畜産農業の分野では「栽培管理」「農産物の集出荷」「選別」などの業務ができます。なお、栽培管理の業務には必ず従事しなくてはなりません。たとえば、農産物の集出荷や選別のみをひたすら行わせることはできないので注意しましょう。

耕種農業に関わる作業

耕種農業には「飼養管理」「畜産物の集出荷」「選別」が該当します。集出荷および選別は、飼養管理とあわせての従事が必要です。

関連業務も可能

特定技能外国人は、関連業務をすることも認められています。関連業務の一例は、各業務に付随する加工や運搬、雪が降ったときの除雪作業などです。ただし、関連業務だけを専ら行わせるのは禁止です。耕種農業および畜産農業とあわせて従事させるようにしましょう。

外国人が特定技能「農業」を得るための試験

外国人が特定技能「農業」を得るための試験の画像

外国人が特定技能「農業」を得るには、技能測定試験と日本語に関する試験への合格が必要です。

技能測定試験

一般社団法人全国農業会議所が実施する技能測定試験は「耕種農業」と「畜産農業」の2種類で、日本のほか海外でも受験できます。テストはコンピュータ・ベースド・テスティング(CBT)、もしくはペーパーテストのどちらかです。学科試験および実技試験から構成され、70問程度の問題を60分で解きます。なお、テキストや出題される問題のサンプルは実施団体のWebサイトでも確認可能です。

日本語能力の試験

日本語能力を測る試験では、日本語能力試験(JLPT)のN4レベルもしくは国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のA2レベルの認定が必要です。どちらのテストも求められているのは基礎レベルなので、日本語である程度コミュニケーションが取れる外国人であれば、スムーズに認定を受けられるでしょう。

参照元
一般社団法人全国農業会議所「農業技能測定試験

技能実習からの移行も可能

技能実習からの移行も可能の画像

農業分野で技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、特定技能の在留資格に移行できます。現状、農業分野で特定技能の在留資格を得て働く外国人は、大半がもともと技能実習生だった人です。

技能実習2号から特定技能に移行する際、技能実習で行っていた業務と特定技能で行おうとする仕事が同じであれば試験が免除されます。技能実習を行えるのは最長5年ですが、特定技能に移行することでさらに5年、日本在留が可能です。

農業分野で特定技能外国人を受け入れ可能な企業

農業分野で特定技能外国人を受け入れ可能な企業の画像

特定技能外国人が日本で安心して働けるよう、受け入れる企業にも要件が定められています。

特定技能「農業」を持つ外国人を直接雇用する場合

農業分野で特定技能外国人を直接雇用するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 労働者を一定期間以上(6ヶ月以上)雇用した経験があること
  • 農業特定技能協議会の構成員になること
  • 農業特定技能協議会に対し必要な協力を行うこと
  • 登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合は、農業特定技能協議会に対し必要な協力を行う登録支援機関に委託すること

特定技能協議会は、特定技能制度の適正な運営を図るために創設された競技会で、特定産業分野ごとに設けられています。初めて特定技能外国人を雇用する企業は、必ず加入しなければなりません。加入時期は特定技能外国人の入国後4ヶ月以内と定められています。

特定技能「農業」を持つ外国人を派遣で雇用する場合

派遣で特定技能外国人を受け入れる場合、直接雇用とは異なる以下の要件が追加されます。

  • 特定技能所属機関となる労働者派遣事業者は、農業現場の実情を把握しており特定技能外国人の受入れを適正かつ確実に遂行するために必要な能力を有していること
  • 外国人材の派遣先となる事業者は、労働者を一定期間以上雇用した経験がある者、もしくは派遣先責任者講習等を受講した者を派遣先責任者とする者であること

派遣で特定技能外国人を受け入れる場合、農業特定技能協議会への加入義務や支援計画の実施義務は派遣元にあります。

上記以外にも、「納税義務を果たしていること」「欠格事由(前科など)に該当していないこと」といった基本の条件も満たさなくてはなりません。自社が特定技能外国人を受け入れられる状態であるか確認してから、手続きを進めましょう。

参照元
出入国在留管理庁「「農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領

農業分野で特定技能外国人を雇用する流れ

農業分野で特定技能外国人を雇用する流れの画像

ここでは、特定技能外国人を受け入れる流れを解説します。

  1. 特定技能外国人に特化した人材紹介会社や派遣会社などを利用して募集をかける
  2. 面接を行い、採用者を決定する
  3. 雇用契約を締結する
  4. 外国人に事前ガイダンスや健康診断を実施する
  5. 外国人が海外にいる場合は、事業主もしくは行政書士や登録支援機関などが地方出入国在留管理官署にて「在留資格認定証明書交付申請」を行う(外国人が日本にいる場合は本人が「在留資格変更許可申請」をする)
  6. 海外にいる外国人の在留資格認定証明書が交付されたら、原本を本人に送付する(外国人本人が母国の日本国大使館・総領事館でビザ(査証)の申請を行う)
  7. ビザ(査証)を用いて外国人が入国したら、生活の基盤を整えるサポートを行い、業務をスタートする

まとめ

まとめの画像

人手不足が深刻な農業分野において、特定技能外国人の受け入れは労働力を確保するのに有効な手段です。農業分野では派遣での受け入れが認められているため、繫忙期に絞って就労してもらうこともできます。外国人雇用を検討する農業事業者はこのコラムの内容を参考にして、特定技能制度への理解を深めましょう。

実際に受け入れを考えている企業様は、弊社の特定技能専門のチームがおりますのでご相談から承ることができます。特定技能の受け入れの為のフォローや人材の紹介まで対応可能です。まずは気軽にお問合せ下さい。