外国人労働者を正社員雇用するには?在留資格や就労許可について解説

2023年03月30日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

グローバル人材の確保や人手不足の解消のために、外国人雇用を検討する企業は増えつつあります。なかには外国人を正社員雇用したいと考える企業もあるでしょう。外国人が日本で働くには、就労が許可されている在留資格が必要です。また、外国人雇用独自のルールにも注意しなければなりません。このコラムでは、外国人を正社員雇用する流れや受け入れのメリット、注意点を解説。必要な知識を押さえて採用活動に活かしてください。


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目次

  1. 外国人を正社員雇用するメリット
  2. 外国人労働者が日本で正社員を目指す理由
  3. 正社員雇用できる外国人の在留資格
  4. 正社員雇用の前に外国人に在留資格を申請してもらう
  5. 外国人を正社員雇用するまでの流れ
  6. 外国人の正社員雇用における注意点
  7. まとめ

外国人を正社員雇用するメリット

外国人を正社員雇用するメリットの画像

企業が外国人を正社員雇用するメリットとして、海外進出のきっかけ作りや斬新なアイデアの創出などが挙げられます。企業が抱える課題の解決に外国人労働者が一役買う場合もあるでしょう。

事業の海外展開で有利になる

外国人労働者を正社員雇用していると、海外に支部を作ったり事業を展開したりする際に有利にビジネスを進められます。特に進出先の言語だけでなく文化にも詳しい社員がいれば、スムーズにやり取りできるでしょう。グローバル化が進む昨今、通訳や翻訳業務にとどまらず、進出国の価値観や慣習も理解したうえでやり取りができるブリッジ人材は貴重な存在です。正社員として雇用することで裁量の大きい仕事も任せやすくなるでしょう。

ダイバーシティ促進への取り組みをアピールできる

外国人の正社員雇用に関する取り組みは、社内外に対するダイバーシティ促進への前向きであることのアピールになるでしょう。外国人労働者を雇用すると、日本人とは異なる視点からのアイデアや意見が出やすくなり、企業の活性化につながります。従業員の多様性が広がることで、柔軟な思考が社会に根付く効果も期待できます。また、外国人の正社員が増えると「国籍に関わらず採用活動を行っている」というイメージが定着し、応募者が増える可能性があるのもメリットです。

労働意欲が高く技術もある人材を雇用しやすい

就労を目的に来日する外国人は、言葉や文化の異なる日本に訪れてまで達成したい目的があるため、学習意欲が高くやる気にあふれている傾向にあります。

外国人が日本で働くには在留資格が必要です。在留資格の手続きは複雑なうえ、一定の条件を満たさなければ申請が認められません。就労が許可されている在留資格を申請する際は、基本的に専門性の証明を求められます。日本で働くために、同業種で経験を積んだり大学に通ったりする外国人もいるようです。専門性を身につけ、面倒な手続きまでして日本で働こうとする外国人は、労働意欲が高いといえます。

外国人雇用のメリット・デメリットは「外国人労働者を採用するメリット7選!デメリットや気を付ける点も解説」でも解説しているので参考にしてください。

人材不足を解消できる

外国人を正社員雇用するメリットとして、人材不足の解消も挙げられます。日本は少子高齢化が進んでおり、産業を維持するための人材が不足しているのが現状です。AIによる業務削減や女性・高齢者の積極採用などが進められていますが、労働力はまだまだ不足しています。そこで注目されているのが外国人雇用です。

海外には人口過多や経済状況の不安定さによって、十分な能力があるにもかかわらず就職が難しい人もいます。外国人にも雇用の間口を広げることで、求職者は就職先が見つかりやすくなり、企業は人材不足解消につながるwin-winの関係を築けるでしょう。実際に日本に働きに来る外国人労働者は、年々増加傾向にあります。2022年10月末時点で日本で働く外国人は約182万人。今後も外国人労働者は増えると見込まれているため、今から受け入れ準備に乗り出すことをおすすめします。

参照元
厚生労働省「外国人雇用状況のまとめ(令和4年10月末現在)

外国人労働者が日本で正社員を目指す理由

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充実した社会保障制度や賃金水準の高さ、治安の良さなどに魅力を感じて日本での正社員雇用を希望する外国人は多いようです。外国人が日本で正社員を目指す理由を把握しておくと、求人作成の際に役立つでしょう。

賃金水準が高い

母国よりも賃金水準が高いために、日本で正社員を目指す外国人もいます。「母国にいる家族に仕送りをしたい」「将来のために蓄えをつくっておきたい」など、理由はさまざまです。

社会保障制度が整っている

日本は世界的に見ても社会保障制度が手厚い国です。正社員として働けば外国人も健康保険や厚生年金に加入できるため、老後のために日本での就職を希望する人もいます。正社員就職を希望する外国人のなかには「健康保険に加入できるか?」「将来厚生年金をもらえるか?」を気にする人もいるので、しっかり説明できるようにしておきましょう。

治安が良く生活しやすい

日本は諸外国に比べて治安が良い国とされています。法律で銃や刃物、ボウガンなどの所持が禁止されていることもあり、テロや暴動が起きる可能性は限りなく少ないといえるでしょう。夜遅くに出歩いてもほとんど犯罪に巻き込まれない治安の良さに「日本で生活したい」と考え、正社員雇用を希望する外国人もいるようです。

日本で働いた経験が母国で活かせる

「日本での就労経験がある」という経歴は、母国で就職する際にアピールポイントになるため、日本で正社員を目指す外国人もいます。定年退職まで働き続ける外国人労働者もいますが、「日本で数年働いたのち、身につけた知識や技術を母国で活かしたい」と考える人も珍しくありません。日本企業や日本製品のなかには海外で高い評価を得ているものもあります。特に日本のものづくりやテクノロジー技術は母国での就職の際に役立つことが多く、将来のことを考えて技術を習得したいと考える人もいるようです。

安定した雇用が約束されている

日本社会には終身雇用の考えが根づいており、一度正社員雇用された人材は問題がなければ定年まで同じ会社で働き続けられる可能性が高いといえます。日本以外の国では実力主義・成果主義の企業が多く、雇用を継続する価値がないと判断されると即日解雇になることも。安定した雇用が約束されているというだけで、日本で正社員になるメリットがあると考える外国人もいます。

正社員雇用できる外国人の在留資格

正社員雇用できる外国人の在留資格の画像

外国人を正社員雇用できるかは在留資格によって異なります。就労が認められていない在留資格の外国人を雇用してしまうと、不法就労助長罪で罰則を受けるため注意しましょう。

身分に基づく在留資格

「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格には就労制限がありません。就労時間や職種を問わず、自由に仕事を選べます。

就労を目的とする在留資格

就労を目的とする以下の在留資格を持つ外国人は、正社員雇用が可能です。

外交/公用/教授/芸術/宗教/報道/高度専門職/経営・管理/法律・会計業務/医療/研究/教育/技術・人文知識・国際業務/企業内転勤/介護/興行/技能/特定技能/技能実習

在留資格ごとに就労できる業務が決まっており、許可されていない仕事を任せることはできません。外国人を正社員雇用する際は、各在留資格で許可されている活動をよく確認しておきましょう。なお、個々に日本での活動内容を定められる在留資格「特定活動」は、指定書でフルタイム勤務が可能とされている場合のみ正社員雇用ができます。指定書はパスポートに貼られているので、雇用の際にチェックしましょう。

【29種類一覧】在留資格別に就労の可否や外国人を雇用する際の注意点まで解説」では、在留資格の種類をまとめています。就労可能な在留資格や許可されている活動を知りたい方は、参考にご覧ください。

参照元
出入国在留管理庁「在留資格一覧表

正社員雇用の前に外国人に在留資格を申請してもらう

正社員雇用の前に外国人に在留資格を申請してもらうの画像

内定を出した外国人が在留資格を有していなかったり変更する必要があったりする場合、本人に申請手続きを行ってもらう必要があります。なお、外国人が海外にいる場合は企業による代理申請が必要です。外国人のサポートを行う可能性もあるので、手続きの流れは押さえておきましょう。

同業種からの転職の場合

日本で働く同業種の外国人労働者を中途採用で正社員雇用する場合、基本的に在留資格を変更する必要はありません。ただし、現在の在留資格が引き続き使用できるか確認するため、「就労資格証明書交付申請」を本人に行ってもらうのが無難です。申請は必須ではありませんが、就労資格証明書があれば外国人を正社員雇用する際の助けになります。また、在留期限が差し迫っている人は「在留期間更新許可申請」が必要になるので、速やかに手続きをしてもらいましょう。

異業種からの転職の場合

異業種で働く外国人を正社員雇用するには、「在留資格変更許可申請」が必要です。外国人の職歴や経歴、保有資格などを審査してもらい、専門性があると認められた場合にあらたな在留資格が与えられます。外国人の経歴によっては申請が許可されない可能性もあることを留意しておきましょう。異業種で働く外国人労働者を採用する場合、書類選考や面接の段階で在留資格の変更が認められそうかを確認するのも大切です。

在留資格変更許可申請について詳しく知りたい方は「在留資格変更許可申請とは?外国人を雇用する企業に向けて解説」をチェックしてみましょう。

外国人留学生を新卒採用する場合

外国人留学生は「留学」の在留資格で日本に滞在しており、そのままでは正社員雇用ができません。必ず「在留資格変更許可申請」が必要です。入社までに手続きを行ってもらいましょう。なお、外国人留学生の場合は教育機関で専攻している内容が、在留資格の審査結果に影響します。

海外にいる外国人を雇用する場合

海外在住の外国人を正社員雇用する場合、本人に代わって企業が「在留資格認定証明書交付申請」を行います。外国人本人に用意してもらう書類もあるので、綿密に連絡を取って手続きを進めましょう。

在留資格認定証明書は外国人がビザを申請する際に提出する書類です。申請が承認され次第、速やかに外国人のもとに郵送しましょう。

申請の流れや必要な書類は「在留資格認定証明書交付申請書の書き方を解説!外国人雇用に必要な基礎知識」で解説しています。

参照元
出入国在留管理庁「手続の種類から探す

外国人を正社員雇用するまでの流れ

外国人を正社員雇用するまでの流れ

日本人と外国人では正社員雇用までの流れに異なる部分があります。採用目的の設定から雇用契約の締結まで一通りの流れを確認しておきましょう。

1.雇用目的や採用ルートを決める

外国人を正社員として雇用する際、「何を目的に雇用するのか」「どうやって採用するのか」を明確にしておくことが大切です。外国人雇用の目的としてはブリッジ人材の確保・社内のグローバル化・インバウンド需要への対応などが挙げられるでしょう。雇用目的が定まったら、具体的な業務内容や求める人物像、待遇などを求人票に記載していきます。募集要項を詳細にするほど企業に適した人材が集まる可能性が高まるでしょう。

採用ルートはターゲットとなる外国人に合わせて選ぶのが大切です。主な採用方法として以下の選択肢が考えられるでしょう。

  • 外国人特化の人材紹介サービス
  • 教育機関からの紹介
  • リファラル採用

初めて外国人雇用を行う企業には、人材紹介サービスや教育機関経由の採用がおすすめです。外国人特化型の人材紹介サービスで募集すると、求める人材を見つけられる可能性が高まります。媒体によっては、求職中の外国人に直接スカウトを行うことも可能です。日本で働きたい外国人のなかには、情報収集が上手くできず自分に合った企業を見つけられない人もいます。そのため、目につきやすい外国人特化型の人材紹介サービスで求人を公開すると良いでしょう。

新卒で正社員雇用したい場合は、外国人留学生が在籍する専門学校や大学、日本語学校とコンタクトを取るのがおすすめです。外国人留学生のなかには、日本で就職したい気持ちがあっても就職活動が上手くいっていない人もいます。外国人留学生の目につきやすい範囲で求人を募集すれば、ピンポイントで人材を集められるでしょう。

2.外国人も働きやすい環境づくりを行う

外国人を雇用する企業は、早期離職を防ぐためにも職場環境を整えましょう。マニュアルや社内標識の多言語化、就業規則の改定などは外国人が円滑に業務を進めるために欠かせません。また、既存社員向けに外国人雇用に伴う心構えをレクチャーしたり不安・疑問を聞いたりする時間を設けるのも重要です。

3.採用選考を実施する

日本語を母語としない外国人にとって、難しい表現が多い筆記試験や適性検査は関門です。優秀な人材が日本語能力だけで不合格にならないよう、やさしい表現に変えたり日本人と異なる選考方法を採用したりすることも検討しましょう。

面接の際は日本人と同じように質問を行い、適性を見極めます。日本で働きたい理由やキャリアビジョンを聞くのも良いでしょう。なお、日本語能力に自信がない応募者もいるので、質問の際は簡単な日本語を心掛けることが大切です。

4.雇用契約や労務関係の手続きを行う

選考の結果、外国人を正社員雇用することが決定したら速やかに内定通知書を送付します。雇用契約書は日本語のほか、外国人の母語でも作成すると親切です。契約内容に関する認識の相違を減らせるので、トラブル防止にもなります。雇用契約を締結する際は、しっかりすり合わせを行い、外国人の理解度を確かめながら話を進めましょう。

雇用契約を結んだら在留資格に関する手続きに入ります。基本的に外国人本人が手続きを行いますが、企業側が書類を用意したり代理で申請したりすることも。速やかに申請を行えるように準備しておくと安心です。また、外国人を雇用した企業はハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出する必要があります。正社員雇用の場合、「雇用保険被保険者資格取得届」と同時に提出するので忘れないように注意してください。

外国人の正社員雇用における注意点

外国人の正社員雇用における注意点の画像

外国人を正社員雇用するときは、ミスマッチやトラブルが起きないように細心の注意を払う必要があります。一歩間違えると不法就労助長罪に問われる可能性もあるので、外国人の雇用は慎重に行いましょう。

在留資格で行える活動と業務内容の一致を確認する

外国人を正社員雇用する際は、在留資格で許可されている活動と業務内容が一致しているか確認します。在留資格で認められていない仕事をさせた場合、不法就労助長罪にあたるので注意しましょう。なお、就労に関する在留資格では、原則単純作業が禁止されています。荷物運びや書類整理などの雑務を主な業務として任せないように気をつけましょう。日本人と同じように業務を割り振っていると、知らず知らずのうちに法律に違反する可能性があります。

自社の業務で必要な日本語レベルを把握する

円滑な業務のために外国人労働者に日本語能力を求めるのは問題ありませんが、過度に高い水準を要求するのはやめましょう。自社での業務にあたって必要な日本語レベルを把握し、適切な要件を求人票に記載するのが大切です。日本語能力が高いからといって、業務に必要なスキルも優れているとは限りません。優れた人材を日本語能力の有無だけで弾いてしまわないように、総合的に判断しましょう。

待遇や給与は日本人も外国人も平等に決める

国籍で待遇や給与を変えるのは差別です。外国人労働者も日本人と同じように会社の評価基準に則って決めましょう。国籍の違いを理由に長時間働かせたり給料を下げたりするのは労働基準法違反にもなります。
外国人雇用を行う企業は、日本語能力が高くない外国人も職能で適切に評価されるように、査定基準を見直すのも大切です。日本語能力が足を引っ張ってなかなか評価が上がらないと、仕事への意欲が低下し早期離職につながる恐れがあります。国籍に関わらず平等に評価されるように、格差が生まれない仕組み作りに尽力しましょう。

異文化理解を心掛ける

外国人雇用で最も大切なのは、文化の違いを理解し、相手を尊重する思いやりの心を持つことです。生まれ育った国の価値観や信仰する宗教によって、「仕事よりも家庭を優先したい」「就業中にもお祈りの時間が欲しい」と考える外国人労働者は少なくありません。自分のアイデンティティが認められなかった場合、仕事に消極的になる可能性も考えられます。すべての希望を通すのは現実的ではありませんが、日本人も外国人もお互いに異なる文化を持つことを念頭に置き、歩み寄ることが大切です。

環境整備を終えてから雇用を開始する

準備が整わないまま外国人雇用に踏み切ると、トラブルが多発する可能性があります。職場の環境整備や既存従業員への説明など、すべての準備が終わってから外国人雇用をスタートしましょう。国籍の異なる外国人は多様な価値観や思想、行動理念を持っています。無計画に外国人を正社員雇用するとお互いに働きにくさを感じ、職場環境が悪化しかねません。外国人雇用のメリットを最大限享受するためにも、環境整備を終えてからの受け入れをおすすめします。

まとめ

外国人労働者を正社員雇用するには?在留資格や就労許可について解説のまとめの画像

日本での正社員雇用を希望する外国人労働者は一定数います。少子高齢化による人材不足が深刻な日本において、企業が外国人を正社員雇用するメリットは絶大です。しかし、注意点も把握しておかなければトラブルに発展しかねません。外国人を正社員雇用するメリットと注意点、雇用までの流れなどをきちんと把握したうえで、自社にふさわしい人材の確保を目指しましょう。