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ビルクリーニング分野は深刻な人手不足であり、日本人だけでは労働力を賄えなくなっているのが現状です。とはいえ、外国人雇用はハードルが高いと思っている企業担当者は多いでしょう。
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を持つ外国人は、「建設物内部の清掃」と「清掃に関連する業務」が行えます。幅広い業務に携われるので、人手不足に悩む企業の大きな助けとなるでしょう。
このコラムでは、特定技能「ビルクリーニング」の概要や行える業務内容を解説します。また、特定技能外国人を受け入れる企業の要件も紹介。内容を参考にして、外国人雇用を進めましょう。
目次
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特定技能「ビルクリーニング」とは、ビルクリーニング分野の深刻な人手不足を解消するために、即戦力となる外国人労働者の確保を目的として創設された在留資格です。
ビルクリーニングとは、事業所や商業施設など不特定多数の人が利用する建築物内部を清掃し、清潔さを維持する作業を指します。特定技能「ビルクリーニング」では、日常清掃や定期清掃といった通常の業務に加え、ホテル客室のベッドメイク作業にも従事可能です。
2019年4月に特定技能の在留資格が創設される前まで、ビルクリーニング分野で働けるのは技能実習生や留学生、身分系の在留資格を持つ外国人に限られていました。技能実習生は業務の制限があったり、留学生は週28時間しか働けなかったりと多くの制約があります。しかし、特定技能「ビルクリーニング」を持つ外国人は、技能実習生や留学生より幅広い範囲の業務を行うことが可能です。
特定技能「ビルクリーニング」には1号と2号があります。
1号では5年間、2号では事実上無期限での日本在留が可能です。まずは1号の在留資格でビルクリーニング業に従事し、その後に特定技能2号評価試験に合格すれば移行できます。
ビルクリーニング分野では、これまで1号のみ受け入れが可能でした。しかし、2023年6月9日に2号への移行ができることが閣議決定され、2024年5月30日に第1回目のビルクリーニング分野特定技能2号評価試験が実施されました。
参照元: 厚生労働省「特定技能制度」 厚生労働省「制度の概要(ビルクリーニング分野特定技能)」
ビルクリーニング業界は人手不足が深刻な状況です。ここでは、有効求人倍率から見る人手不足の現状や人材が集まらない理由を解説します。
厚生労働省による「第1回ビルクリーニング分野特定技能協議会」の資料によると、2017年のビル・建物清掃員の有効求人倍率は2.95倍でした。有効求人倍率は年々上昇しており、今後も人手不足の状況は続くと見られます。
ビルクリーニング分野が人手不足に陥っている理由として、以下の3つが挙げられます。
清掃関係の職種は体力を使う仕事にもかかわらず年収が低くなりがちで、人材を集めるのが難しい業界です。また、業務時間が限定されていることから非正規での募集が多く、若年層の応募が集まりにくくなっています。
さらに、人手不足にもかかわらず、ビルクリーニングが必要な「特定建造物」は増え続けています。特定建造物とは、建造物衛生法で特に衛生を保つ必要があるとされている場所のことです。不特定多数の人が出入りする興行場、百貨店、店舗、事務所、学校などのうち、床面積が3000平方メートル以上(小学校、中学校等は8000平方メートル以上)の建物が該当します。特定建造物の数は2009年度末時点で4万1757棟だったのが、2023年度末時点では4万8313棟と着々と増えている状況です。
参照元: 厚生労働省「資料5 ビルクリーニング分野について」 e-Stat「平成21年度衛生行政報告例」 e-Stat「令和5年度衛生行政報告例」
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を持つ外国人は、オフィスビルや商業施設、ホテル、レストランなどの内部清掃を行います。また、客室清掃作業の一環として、床や浴室、洗面台の清掃に加え、アメニティ補充やベッドメイクも可能です。
さらに、建物外部のガラスや外壁の清掃、資機材の運搬と倉庫整備、植裁管理なども関連業務として行えます。ただし、これらの関連業務のみ行うことは許可されていません。
参照元:出入国在留管理庁「特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description)」
特定技能「ビルクリーニング」の1号は、「技能試験と日本語試験に合格する」もしくは「ビルクリーニング分野の技能実習2号から移行する」といった方法で取得可能です。
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を得るには、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験と日本語能力を測る試験に合格する必要があります。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験では、ビルクリーニング業務の技能が適切に身についているかを評価します。
令和7年度の試験では、学科試験20問および実技試験30問があり、両方合わせて試験時間は50分です。試験科目は、ビルクリーニングに関する「作業の段取り」「器具の使用」「資材の使用」「機械の使用」「各部位の清掃」「各場所の清掃」「廃棄物処理作業」「資機材の整備」となっています。
試験の詳細は「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験について」で解説します。
日本語能力試験は、「日本語能力試験(JLPT)のN4」もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のA2レベル」の認定が必要です。どちらのテストも、基本的なコミュニケーションが取れる外国人であれば、合格は難しくありません。業務指示を理解できる程度の日本語能力を測定する試験といえます。
JLPTは世界最大規模の日本語能力を測る試験で、年2回実施されています。JFT-Basicは特定技能の在留資格申請のための試験ともいわれており、年6回と実施回数が多いのが特徴です。どちらも国内外で受験できます。
ビルクリーニング分野で技能実習2号を優良に修了した技能実習生(つまり、3年間の技能実習を修了した実習生)は、技能試験と日本語試験が免除されます。違う分野で技能実習を行っていた場合でも、日本語試験は免除ですが、技能試験には合格する必要があります。
技能実習を行えるのは最長5年ですが、特定技能に移行すれば、さらに5年ビルクリーニング分野で就労できます。その後、技能実習2号試験に合格すれば、永続的に就労することも可能です。業務を覚えた技能実習生は帰国しなくても済み、企業もスキルを身に付けた外国人を継続雇用できるのです。すでに技能実習生を受け入れている企業は、特定技能制度の利用を検討すると良いでしょう。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、全国ビルメンテナンス協会が実施しています。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験を受けられるのは、試験日に17歳以上の人です。日本で試験を受ける場合には、在留資格を有している必要があります。なお、中長期在留歴がなくても受験可能で、在留資格「短期滞在」でも問題ありません。
試験科目は、ビルクリーニングに関する「作業の段取り」「器具の使用」 「資材の使用」「機械の使用」「各部位の清掃」「各場所の清掃」「廃棄物処理作業」「資機材の整備」です。
学科試験は、問題用紙に書かれた写真やイラストから適切なものを選ぶ形式で、掃除用具の種類や掃除の手順、清掃中の接客などについての知識が問われます。
合格の最低基準は、学科試験と実技試験の両方で得点率60%以上です。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、日本の各地域で行われています。2024年には北海道・宮城・東京・愛知・大阪・広島・徳島・福岡で実施されました。また、20名以上の受験者がいれば、事業主の申請により随時出張試験を受けることも可能です。
なお、日本国内だけでなく、国外での受験も行われています。過去には、インドネシア・フィリピン・タイ・スリランカ・ミャンマー・カンボジア・ネパールで試験が実施されました。
試験日程や実施要領は国によって異なるので、都度確認が必要です。
参照元: 厚生労働省「ビルクリーニング分野特定技能評価試験について」 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「特定技能」
特定技能「ビルクリーニング」の2号は、「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」もしくは「ビルクリーニング技能検定1級試験」に合格することで取得できます。
ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験に合格することで、特定技能「ビルクリーニング」の2号を取得可能です。試験は学科試験と実技試験があります。
ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験を受験するには、現場管理の実務経験が2年以上必要です。ここでの実務経験とは、特定建築物の清掃業務に複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理した経験のことです。
特定技能「ビルクリーニング」の2号は、ビルクリーニング技能検定1級試験に合格することでも取得できます。
ビルクリーニング技能検定は、ビルの所有者から依頼を受けて実施する清掃業務において、環境衛生を適切に保つために必要な技能を評価する試験です。ビルクリーニング技能検定1級試験を受験するには、以下のうちいずれか1つの要件を満たす必要があります。
なお、試験は毎年1回実施されており、学科試験と実技試験があります。
参照元: 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「特定技能」 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「ビルクリーニング技能士」
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を受け入れる際、企業は「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」への登録と、ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入をしていなければなりません。また、外国人材の支援体制の義務を果たす必要もあります。
事前の準備なくして、外国人材の受け入れは不可能です。雇用する前に必要事項をしっかりと把握しておきましょう。
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を受け入れる企業は、清掃業務事業へ登録する必要があります。登録する業種および業務内容は、以下のとおりです。
業種 |
業務内容 |
建築物清掃業 |
建築物内の清掃を行う事業(建築物の外壁や窓の清掃、給排水設備のみの清掃を行う事業は含まない。) |
建築物環境衛生総合管理業 |
建築物における清掃、空気調和設備及び機械換気設備の運転、日常的な点検及び補修(以下「運転等」という。)並びに空気環境の測定、給水及び排水に関する設備の運転等並びに給水栓における水に含まれる遊離残留塩素の検査並びに給水栓における水の色、濁り、臭い及び味の検査であって、特定建築物の衛生的環境の維持管理に必要な程度のものを併せ行う事業 |
参照元:厚生労働省「建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録について」
登録を行うには、機械器具その他の設備に関する基準(物的基準)、事業に従事する者の資格に関する基準(人的基準)、作業の方法や機械器具の維持管理方法などに関するその他の基準を満たさなければなりません。登録方法は都道府県によって異なります。登録手続きは、営業所の所在地を管轄する都道府県生活衛生担当部署へ問い合わせましょう。
ビルクリーニング業者が特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を受け入れる際は、ビルクリーニング分野特定技能協議会の構成員になる必要があります。
ビルクリーニング分野特定技能協議会は、ビルクリーニング分野での特定技能外国人の適切な受け入れを監理するべく創設されました。特定技能外国人の受け入れ開始から4ヶ月以内に加入手続きを行います。
なお、加入するだけではなく、ビルクリーニング分野特定技能協議会および厚生労働省が実施する調査や指導に応じることも、受け入れ要件の一つです。
特定技能1号外国人を雇用する企業には、労働環境や生活をサポートするための「支援計画」を作成し、支援体制を整えることが義務付けられています。
もしも特定技能外国人の支援業務を自社で行うのが難しい場合は、「登録支援機関」への委託も可能です。
登録支援機関は、特定技能外国人が日本社会に馴染めるよう事前ガイダンスや住居の提供・契約のサポート、日本の生活に関するオリエンテーションなどを実施します。
「WeXpats」は外国人採用に特化した人材紹介サービスです。弊社が運営する「レバレジーズグローバルサポート」は登録支援機関としての業務も行っており、特定技能外国人の紹介から支援業務まで一貫して対応しています。
外国人雇用に関する知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しているので、初めて特定技能外国人を受け入れる企業さまはぜひお問い合わせください。
参照元: 厚生労働省「建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録について」 厚生労働省「ビルクリーニング分野特定技能協議会」 出入国在留管理庁「特定技能運用要領」
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格が創設されたことにより、人材不足解消への道が開かれました。ビルクリーニング分野では、2019年からの5年間で37,000人の特定技能外国人の受け入れを見込んでいます。
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を有する外国人材であれば、清掃作業のほかにアメニティ補充やベッドメイク、植裁管理なども可能です。人手不足解消のためにも、特定技能外国人の雇用を検討してみましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net