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外国人を雇用する際、雇用契約書の必要性や作成方法を知りたい方も多いのではないでしょうか。また、ひな形を利用したいと考える方もいるでしょう。雇用契約書は、外国人が在留資格の取得・変更を申請する際に必要な書類です。ところが、公的なひな形はありません。このコラムでは、雇用契約書に記入すべき項目や作成時の注意点を解説します。内容を参考にして、外国人との雇用契約を滞りなく進めましょう。
企業で外国人を雇用する際は、日本人を雇用するときと同様に雇用契約書を作成します。外国人が在留資格を取得・変更する際、雇用契約書のコピーを地方出入国在留管理局へ提出するためです。雇用契約書に公的なひな形や様式はありませんが、労働条件通知書の内容を参考に作成できます。
雇用契約書と労働条件通知書は、内容に大きな違いはありません。ただし、雇用契約書は雇用主と労働者双方の合意を得たことを証明する書類、労働条件通知書は雇用主から労働者へ向けて条件を明示した書類といった違いがあります。雇用契約書の作成は義務化されていないため、作成しなかった場合の罰則は設けられていません。しかし、雇用後のトラブルを回避するために、口頭でのやり取りだけでなく雇用契約書を交わすのが一般的です。一方、労働条件通知書は作成が義務付けられています。労働条件を明示していなかったり虚偽の内容を記入したりすると、処罰の対象になるので注意が必要です。
なお、外国人が在留資格を申請するときは、雇用契約書の代わりに労働条件通知書のコピーを提出しても問題ありません。
雇用契約書には公的なひな形はありません。ただし、雇用契約書に記入すべき項目は労働条件通知書と同じです。そのため、厚生労働省が公開している「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」が参考になるでしょう。サンプルは外国人労働者が多い国の言語を中心に、以下13言語で公開されています。
労働条件通知書のサンプルをもとにして、自社の就業規則の内容を盛り込みながら雇用契約書を作成しましょう。雇用契約書に記入すべき項目や記入例は、次項の「雇用契約書の作成方法」でも詳しく解説するので、あわせてご参照ください。
雇用契約書については、「外国人の雇用契約書を徹底解説!作成方法や盛り込む内容、注意点まで」でも詳しく解説しています。しっかりと把握して、外国人の雇用時に起こりがちなトラブルを未然に防ぎましょう。
参照元 厚生労働省「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」
雇用契約書には労働基準法で記入が義務付けられている項目と、自社の就業規則によって記入が必要な項目があります。記入例も順に紹介するので、雇用契約書作成の参考にしてください。
以下の項目は、労働基準法によって雇用契約書への記入が義務付けられています。
外国人が行う業務の内容は、在留資格の審査で最も厳しく見られるポイントです。取得しようとする在留資格で許可されている活動と、雇用契約書に記入する業務内容が適合していなければ、申請が不許可になります。
自社の就業規則に明記がある場合は、以下の内容も雇用契約書に記入しましょう。
就業規則にもとづく項目については、雇用契約書へ記載する以外に口頭や就業規則の配布でも問題ありません。しかし、外国人は書面での契約を重要視する傾向にあるため、雇用契約書に記載しておくことをおすすめします。
ここでは、正社員として外国人を雇用する場合を例に、雇用契約書の記入例を紹介します。
【雇用契約書】
株式会社△△△(以下甲とする)と、〇〇〇〇〇(外国人の名前)(以下乙とする)は、以下の条件に基づき雇用契約を締結する。
20●●年●月●日
甲:株式会社△△△
住所:〒●●●-●●●●東京都〇〇区△△△0-0-0
代表取締役〇〇〇〇〇(署名、捺印)
乙:住所〇〇県〇〇市△△△0-000-00
名前〇〇〇〇〇(署名)
ー記入例ここまでー
雇用期間を定める場合の上限は原則3年です。ただし、専門的な知識を持つ労働者は、例外的に5年の雇用期間が許可されています。
外国人の雇用契約書を作成する際は、日本人の雇用とは異なる注意点があります。以下で解説する内容に注意して、雇用契約書を作成しましょう。
外国人の賃金は、同じ業務を行う日本人と同等もしくはそれ以上の金額で設定しなければなりません。国籍や人種、性別などを理由に賃金を低くするのは許されない行為です。自社に同じ業務を行う日本人従業員がいない場合は、同じ地域で類似業務を行う日本人の賃金を参考にしましょう。また、外国人の賃金を月給で支払う場合、時給に換算したときの金額が地域の最低賃金以下にならないよう注意が必要です。ほとんどの就労可能な在留資格には、「同じ業務をする日本人と同等以上の報酬を受け取る」という項目があります。そのため、外国人の賃金を日本人よりも低く設定すると、在留資格を取得できず雇用できない可能性もあるのです。
雇用契約書は日本語だけでなく、外国人の母国語でも作成しましょう。日本語能力が高い外国人でも、雇用契約書にある日本語を正確に理解するのはなかなか難しいものです。外国人が雇用契約書の内容を理解しきれていないと、雇用後のトラブルに繋がるばかりか、在留資格の審査で不許可になる可能性もあります。
なお、母国語以外にも英語を正しく理解できる外国人の場合は、英語で作成しても問題ありません。
雇用契約書の作成後は外国人と内容を確認し、内容を十分理解したうえで署名・押印してもらいましょう。なぜなら、労働基準法により「労働者は明示された労働条件が事実と異なる場合、雇用契約を即時に解除することができる」と定められているからです。加えて、外国人が契約解除後14日以内に母国へ帰国する場合は、雇用主が旅費を負担しなければなりません。こうしたトラブルや出費を回避するためにも、外国人に雇用契約書の内容を理解してもらうことが非常に大切です。
参照元 労働基準法e-GOV「第十五条(労働条件の明示)」
外国人雇用に在留資格の取得や変更が伴う場合、雇用契約書のコピーを地方出入国在留管理局へ提出します。外国人が雇用契約の内容に合意したことを証明する重要な書類です。雇用契約書の公的なひな形はありませんが、記入すべき内容は労働条件通知書と同様なので、厚生労働省のサンプルが参考になるでしょう。
雇用契約締結後のトラブルを回避するために、日本語だけでなく外国人の母国語や英語でも雇用契約書を作成し、十分内容を理解しているかを確認しながら契約を進めてください。
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