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国内外から改善を指摘されていた日本の技能実習制度について、日本政府は平成29年に新しい法律「技能実習法」を施行しました。そもそも「技能実習制度」とはどのような制度であり、新しい法律「技能実習法」によってどのように変わったのでしょうか?また、実際に日本国内でどのくらいの技能実習生がいるのでしょう?ここでは技能実習制度について確認します。
平成5年に外国人技能実習制度が設立し、「技能実習」のための日本在留資格ができました。それにより、外国人が日本全国の職場で働くことが可能になりました。では、外国人技能実習制度とはそもそもどのような目的で作られた制度でしょうか?実習生の実習計画を認定する内閣府所管の公益財団法人国際人材協力機構は次のように定義しています。
技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進です。
この趣旨は技能実習法が施行されてからも変わりません。
ポイントは次の4点です。
外国人技能実習制度は、あくまでも国際貢献のための制度であり、人手不足を補う制度ではありません。
開発途上国とは、人口ひとりあたりの所得水準が低く、第一次産業の比重が高い国のことです。第一次産業とは、あまり加工がされない農業・水産業・林業などの産業のことです。
永住ではありません。条件つきで延長しても、滞在期間は5年までという制限があります。
日常業務を通した従業員教育(OJT)により、日本の技術を教えます。技能実習生は、出身国である開発途上国などに帰国した後、日本で学んだ技術を母国の産業発展のために役立てます。
参照:外国人技能実習機構「技能実習の基本理念」 法務省 厚生労働省「外国人技能実習制度について(令和2年1月7日改訂版)」p.5
技能実習生を受け入れている職種は82職種146作業あります(令和2年2月25日時点)。対象職種の拡大・縮小は随時行われますので、最新の情報を確認するようにしましょう。平成30年度の統計によると、特に受け入れ人数の多い職種は「機械・金属関係関連」「建設関連」「食品製造関係関連」です。
参照:法務省 厚生労働省「外国人技能実習制度について(令和2年1月7日改訂版)」p.6~7
外国人技能実習生は日本にどのくらいの人数滞在しているのでしょうか?法務省のデータによると令和元年6月末時点で、日本には36万7,709人もの技能実習生がいます。技能実習生の人数は、年々増加しており、外国人留学生数(33万6,847人)を上回っています。
日本は実習生の出身国と技能実習を適正かつ円滑 に行うために連携を図ることを目的として二国間協定を結んでいます。現在下記の14か国があります。あくまでも「円滑に行うため」の協定であり、結んでいない国(中国など)から実習生を受け入れることは可能です。
ベトナム
カンボジア
インド
フィリピン
ラオス
モンゴル
バングラディシュ
スリランカ
ミャンマー
ブータン
ウズベキスタン
パキスタン
タイ
インドネシア
令和元年6月末時点の技能実習生の国籍と比率は次のとおりです。
国籍 | 比率 | ポイント |
---|---|---|
ベトナム | 51.4% | 技能実習生の半分以上がベトナム国籍 |
中国 | 22.1% | 以前は中国人が大半を占めていた |
フィリピン | 9.1% | |
インドネシア | 8.4% | 最も新しく二国間協定が結ばれた |
タイ | 2.9% | |
その他 | 6.1% | ミャンマー、カンボジア、モンゴルなど |
参照:厚生労働省 技能実習に関する二国間取決め(協力覚書) 法務省 令和元年6月末現在における在留外国人数について(速報値)
平成29年11月1日「外国人の技能実習の適切な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行されました。技能実習法では、国や実習実施者(受け入れ企業など)、監理団体、技能実習生の責任・義務を明文化しました。
「技能実習を適切に実施する」ことと「外国人技能実習生を保護する」ことが技能実習法成立の主な理由です。
しかしながら、この制度を悪用する企業がいまだに後を絶ちません。実習生の低賃金、残業代未払い、長時間労働などの問題や、職場での暴行やセクハラ、また実習生自身の犯罪や疾走なども見られます。
技能実習法を適正に運用するためには施行後も官民一体となった取り組みが必要です。
現在は、日本政府だけでなく経団連や日本弁護士会などが「ビジネスと人権」という視点で技能実習制度の適切な運営と外国人技能実習生の保護の重要性を共有し対策に乗り出しています。
参照:日本総研「CSRを巡る動き:外国人労働者の労働環境改善に向けた期待」(2018年09月03日) 国連「犯罪です!人身取引 (第13回国連犯罪防止刑事司法会議)」(2015年03月26日) アメリカ国務省人身取引監視対策部「2019年人身取引報告書(日本に関する部分)」(2019年6月20日) 経団連「外国人材の受入れに向けた基本的な考え方~深化するグローバル化への対応~」(2018年10月16日) 経団連「人権を尊重する経営の推進と我が国の行動計画(NAP)に対する意見(2019年11月11日)」p.23 日本弁護士連合会 第62回人権擁護大会シンポジウム第二分科会「今こそ、国際水準の人権保障システムを日本に!」(2019年10月3日)p.147「外国人技能実習生の過酷労働」
外国人技能実習機構は、平成29年1月に設立した認可法人です。法務省と厚生労働省からの委嘱で技能実習の業務を行う組織であり、「技能実習法」を基礎に設立されました。
外国人技能実習機構の主な業務は次のとおりです。
監理団体の許可 | 監理団体とは、技能実習生を受け入れ、傘下の企業などで技能実習を実施する団体です。技能実習生の保護のために、監理団体の審査を行い許可を出します。 |
---|---|
技能実習計画の認定 | 技能実習の監理団体や実施する企業などが作成する「技能実習計画」を審査し認定します。技能実習生を受け入れる実施者として基準を満たしているかについても審査します。 |
実地調査 | 監理団体や実施する企業などの実地調査を行います。 |
技能実習生に対する相談業務・支援業務 | 技能実習生の相談を受付け、支援を行います。外国語のマニュアルなどを作成し公式サイトで公開しています。 |
技能実習生の転籍の支援 | 監理団体や実施企業などが技能実習を継続することが不可能になった場合、技能実習生の転籍の調整を行います。 |
技能実習に関する調査・研究 | 技能実習制度や技能実習生について調査や研究を行います。 |
参照:外国人技能実習機構 「外国人技能実習機構とは」
この中で最も重要な業務は2番目にある技能実習計画の認定です。この認定が下りることで実習生のビザ申請に入ることができるためです。
技能実習法は、外国人技能実習生を拡充しながら同時に保護をすることを規定しています。「優良」と認められた監理団体や実習実施者に限定して、「技能実習期間の延長」や「技能実習生の人数枠の増加」などの拡充について定められています。
また、「技能実習生に対する人権侵害行為などに対する罰則規定」だけでなく、「技能実習生による人権侵害行為の申告」も認められています。また、条件を満たせば技能実習生の転籍も可能になるなどの実習生の保護が図られています。
参照:法務省 厚生労働省「技能実習法が成立しました!」
日本に来る技能実習生数は、年々増加しています。発展途上国への技術移転という国際貢献が名目ですが、日本の労働市場における人手不足という背景があることは間違いありません。国連やG7、日本政府、経団連が推進している「ビジネスと人権」という観点からも技能実習制度の適切な運用を図り「外国人技能実習生の保護」に留意することが今後より一層重要になるでしょう。
参照:国連「ビジネスと人権に関する指導原則」 経済産業省 「責任あるサプライチェーン」 外務省「ビジネスと人権」 経団連「人権を尊重する経営の推進と我が国の行動計画(NAP)に対する意見(2019年11月11日)」p.23
技能実習制度における監理団体について詳しく知りたい場合はこちら:技能実習制度における監理団体とは?監理団体選びのポイントを解説
技能実習制度を利用したい場合はこちら:外国人を研修生として受け入れよう!技能実習制度の利用方法を解説
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