外国人が納める所得税はいくら?課税される所得の範囲と所得税の計算方法

2020年06月24日
濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

外国人労働者の所得税の計算方法は日本人のものとほとんど変わりませんが、所得のうち課税される範囲には違いがあるので注意が必要です。こちらの記事では、外国人が納める所得税について、課税される範囲から免税されるケース、所得税の計算方法まで紹介しています。

外国人にも所得税がかかる

日本で働く外国人にも日本人と同じように所得税がかかり、所得税の計算方法は日本人のものとほとんど変わりません。ただし、「課税所得」は日本人と一部違うので注意が必要です。

具体的には、外国人の所得は以下3つに分けられます。

  • 国内所得:日本国内で得たお金

  • 海外所得:海外で得たお金

  • 国内への送金:海外で得たお金のうち日本に送金されたお金

しかし、全ての外国人がこの3つに課税されるわけではなく、人によってそれぞれ課税される範囲が異なります。

・外国人の3つの居住区分

国税庁では納税義務のある外国人を「居住者」と「非居住者」とで分類しており、そのうち居住者も「永住者」と「非永住者」の2種類で分類されています。(※)なお、国税庁が定める永住者、つまり税制度上の永住者は、法務省出入国在留管理庁が定めている「永住者ビザ」とは異なりますので注意してください。

それぞれの居住区分の範囲は次の通りです。

  • 永住者(居住者)

日本国籍を有している。または過去10年のうち5年以上は日本に住所・居所を有している。

  • 非永住者(居住者)

日本国籍を有さない。なおかつ過去10年間のうち日本に住所・居所を有している期間が5年以下。なおかつ非居住者に該当しない。

  • 非居住者

日本国内に住所がない。なおかつ日本での滞在期間が1年以下。

「住所」は住民票の有無で判断されるものではなく、客観的な事実によって判定されます。また、「居所」は住所を有していないものの、現在居住している場所を指します。

たとえば日本に住民登録していない外国人でも、日本に1年以上滞在して現在居住しているところがあればその居住区分は「非永住者」です。

これらの居住区分によって、所得のうち課税される範囲が変動します。

参照:国税庁「NO.2010 納税義務者となる個人

・外国人が納める所得税の範囲

外国人が納める所得税の範囲は次の通りです。

永住者

・全ての国内所得と海外所得

非永住者

・全ての国内所得

・海外所得のうち日本国内で支払われたもの

・海外所得のうち海外から日本へ送金されたもの

非居住者 ・国内所得のみ

非居住者は国内所得のみに課税されるため、日本で稼いだお金は所得税を納付する対象となりますが、海外で稼いだ分のお金は日本に納める義務はありません。

一方で、永住者の場合は全ての国内・海外所得に対して課税されるため、仮に母国でお金を稼いだ場合はその分の所得に対しても課税されます。

また、非永住者は基本的に国内・海外所得が課税対象ですが、仮に母国でお金を稼いだとしても、それが日本に関係ないビジネスであり、そのお金を日本に送金しない限りは課税されません。

なお、それぞれの所得税率は非居住者が原則20%で、非永住者および永住者は日本と同じ累進課税が適用されます。

納める所得税を減らせる?所得税の控除とは

外国人の所得税は、日本の労働者と同様の所得税控除が利用できます。

主な所得控除には以下のものがあります。

  • 基礎控除

  • 医療費控除

  • 社会保険料控除

  • 配偶者控除

  • 配偶者特別控除

  • 扶養控除

  • 雑損控除

  • 小規模企業共済等掛金控除

  • 生命保険料控除

  • 地震保険料控除

  • 寄附金控除

  • 障害者控除

  • 勤労学生控除

ただし、非居住者に関してはほとんどの所得控除が受けられないので注意が必要です。非居住者が受けられる所得控除は「雑損控除」「寄附金控除」「基礎控除」の3つです。

またその他にも、外国人の労働者だけが受けられる「外国税額控除」というものがあります。

参照:国税庁「所得金額から差し引かれる金額(所得控除)

・外国人労働者だけが受けられる「外国税額控除」

外国税額控除とは、母国と日本とで二重に課税されるケースを防ぐ控除です。

外国人労働者のうち永住者および非永住者は海外所得にも課税されます。そのため、仮に日本に居住していても母国でお金を稼げば、そのうち所得税として一部を日本に納めなければいけません。

しかし、母国でお金を稼げば母国でも税金が発生するため、母国と日本と二重に納税しなければいけない問題が発生します。

この二重の納税を防ぐために、日本は一部の国と「租税条約」を結んでいます。租税条約を結んでいる外国でお金を稼いでも、その国で納税して申告すれば基本的に日本で納税する必要はありません。

このことを「外国税額控除」と言い、人によっては日本に納める税金を大幅に抑えることができます。

なお、日本と租税条約を締結している国は平成30年3月時点で123カ国あり、それぞれの国は財務省のホームページから確認することができます。

参照:財務省「租税条約に関する資料

外国人の所得税が免除される「短期納税者免税制度」

一部の非居住者に対して短期納税者と判断される外国人は、所得税が免除される「短期納税者免除制度」が適用されます。

短期納税者免税制度が適用される要件は以下の3つです。

  1. 日本における滞在期間が年間183日以内

  2. 日本以外の国の企業から給与・報酬を受けている

  3. 海外法人の日本支店を含み日本で給与等を受けていない

短期納税者免税制度は「租税条約」で定められている制度の一つです。

たとえばアメリカの居住者で日本に出張という形で働いている場合、日本での滞在期間が年間183日、なおかつアメリカの企業から直接給与等を受けている人は日本で所得税を納付する必要はありません。

所得税の計算方法

居住者に分類される外国人労働者は、日本の所得税法が適用されます。

日本での所得税は以下の手順で求められます。

  1. 給与所得=給与収入-給与所得控除

  2. 課税所得=給与所得-各種控除

  3. 所得税=課税所得×税率-所得税控除」

所得税は全ての収入から課税されるわけではありません。全ての収入から給与所得控除を差し引いた所得額が算出され、その上で扶養控除や基礎控除などの各種控除を差し引いて算出された「課税所得」から税金を計算します。

所得税率は人それぞれ異なり、日本では累進課税を採用しているため課税所得が多ければ多いほど税率も上がります。

日本の所得税率と所得税控除額は次の通りです。

課税所得 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円〜330万円 10% 97,500円
330万円〜695万円 20% 427,500円
695万円〜900万円 23% 636,000円
900万円〜1,800万円 33% 1,536,000円
1,800万円〜4,000万円 40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円

所得税は給与から税金を差し引くだけでなく、このように少し複雑な計算を必要とします。そのため所得税を求める際は、収入や控除額などをあらかじめ把握しておかなければいけません。

まとめ

外国人労働者は日本で居住しているかどうか、またその居住年数にって所得税が課される範囲が異なります。

具体的に、居住区分における課税範囲は次の通りです。

永住者

・全ての国内所得と海外所得

非永住者

・全ての国内所得

・海外所得のうち日本国内で支払われたもの

・海外所得のうち海外から日本へ送金されたもの

非居住者 ・国内所得のみ

外国人労働者を雇用する企業は、外国人の居住先や居住年数に応じて所得税を計算しなければいけないので注意が必要です。

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