外国人が納める所得税はいくら?課税される所得の範囲と所得税の計算方法

2022年03月16日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

初めて外国人を雇用する企業の労務担当者のなかには、所得税の取り扱いをどうすべきか迷う人もいるでしょう。基本的には、外国人も日本人と同じように納税します。しかし、住所の有無や日本滞在期間で課税範囲が異なるので注意が必要です。このコラムでは、外国人の所得税や住民税について解説します。また、外国人が利用できる免税制度も紹介。内容を参考にして、自社での外国人雇用に活かしましょう。

目次

  1. 外国人の所得税は居住区分で決まる
  2. 所得税の計算方法
  3. 外国人は住民税を納める?
  4. 外国人の所得税が免税される?短期滞在者免税制度とは
  5. 二重課税を防ぐ外国税額控除とは
  6. まとめ

外国人の所得税は居住区分で決まる

外国人も、基本的には日本人同様に所得税を納めます。ただし、日本の住所の有無と日本在住期間によって納める税金に違いがでるのが特徴です。

居住者

国税庁によると、居住者の定義は「日本国内に住所があるかまたは現在まで引き続いて1年以上居所がある個人」です。さらに、居住者には「非永住者」「非永住者以外の居住者」の分類があります。

非永住者

非永住者とは、居住者のうち日本国籍がないことに加え、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所(身を置くところ)を有していた期間の合計が5年以下である人を指します。

非永住者の所得税は「すべての国内所得」「海外で得た所得のうち、日本で支払われたもの」「海外から送金された所得」が課税対象です。

非永住者以外の居住者

非永住者の条件に当てはまらない居住者は「非永住者以外の居住者」と表されます。日本国籍を有している、もしくは過去10年以内において日本国内に住所または居所(身を置くところ)を有していた期間の合計が5年以上の人のことです。なお、ここでいう「住所」は生活の拠点を指し、住民票の有無を指しているわけではありません。非永住者以外の居住者には、国内所得および海外所得すべてに課税されます。

非居住者

非居住者とは、日本国内に住所がなく滞在期間が1年以下の人のことです。非居住者には、日本国内で得た所得のみ課税されます。なお、居住者の所得税率は日本人と同じく累進課税ですが、非居住者の場合は一律で20.42%です。

参照元
国税庁「納税義務者となる個人

所得税の計算方法

ここでは、居住者に分類される外国人の所得税の計算方法を説明します。

所得税を求める計算式

所得税の算出方法は以下のとおりです。

  1. 給与所得を計算(給与収入-給与所得控除-特定支出控除)
  2. 課税所得を計算(給与所得-各種控除)
  3. 所得税を求める(課税所得×税率-所得税控除)

居住者の外国人は、日本人と同様の控除を受けられます。

所得税率

所得税率は、課税所得の金額によって異なります。国税庁が公表している所得税の速算表をもとに所得税率を説明するので、参考にしてください。

【年収900万円以下の所得税率】

課税される所得金額

税率

控除額

195万円以下

5%

0円

195万円~330万円以下

10%

9万7500円

330万円~695万円以下

20%

42万7500円

695万円~900万円以下

23%

63万6000円

【年収900万円以上の所得税率】

課税される所得金額

税率

控除額

900万円~1800万円以下

33%

153万6000円

1800万円~4000万以下

40%

279万6000円

4000万以上

45%

479万6000円

海外のほとんどの国でも、所得税は累進課税です。しかし、日本より税率が低い国も多いため、外国人が所得税額に疑問を持つ可能性も否定できません。雇用する外国人から所得税について質問があったら、以上の表を活用しながら日本の所得税の仕組みを説明しましょう。

参照元
国税庁「所得税の税率

外国人は住民税を納める?

日本に住所を持つ、居住者に分類される外国人は住民税を納める必要があります。納付方法は日本人と変わりません。会社員の場合は給与からの特別徴収、個人事業主の場合は居住地の市町村役場に納めます。

日本に住所を持たない非居住者の外国人は、住民税を支払う必要はありません。住民税の納付は、1月1日時点で日本に住所を置く人が対象になるためです。また、前年の1月1日から12月31日までに無収入もしくは一定額以下の収入しかなかった人も、住民税の対象外となります。

参照元
総務省「外国人の方の個人住民税について

外国人の所得税が免税される?短期滞在者免税制度とは

非居住者の外国人は、一定の要件を満たせば短期滞在者免税制度の利用が可能です。ここでは、外国人の所得税が免税される可能性がある、短期滞在者免税制度の概要を説明します。

租税条約で定められている制度

短期滞在者免税制度は租税条約の締結内容のうちの一つで、条件を満たした非居住者の所得税が免税されます。租税条約とは、課税におけるさまざまな取り組みを共有し、経済交流を促進させるのが目的の二国間協定です。日本と外国人の母国が租税条約を締結していなければ、短期滞在者免税制度は利用できません。また、条約内容は国ごとに異なります。日本と租税条約を締結している国は、2022年2月時点で149ヶ国です。そのすべての国で短期滞在者免税制度を利用できるわけではありませんので注意しましょう。

短期滞在者免税制度を利用できる外国人

短期滞在者免税制度を利用できる条件は、国ごとの租税条約の内容によって異なります。たとえば、アメリカ合衆国と締結している「日米租税条約」により短期滞在者免税制度を利用する条件は、以下のとおりです。

  • 課税年度が開始または終了するいずれの12ヶ月間において、勤務地の滞在期間が合計183日以内であること
  • 報酬を日本以外の企業から受けていること
  • 日本の恒久的施設(支店や事業所、事務所など)から報酬を受けていないこと

多くの国で短期滞在の期間を183日以内と定義しているため、短期滞在者納税制度は「183日ルール」とも呼ばれています。

参照元
国税庁「租税条約に関する資料」
国税庁「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)

二重課税を防ぐ外国税額控除とは

外国税額控除とは、海外と日本とで二重に課税されるのを防ぐための仕組みです。居住者である外国人は、海外所得にも課税されます。そのため、海外で報酬を得れば、一部を所得税として日本に納めなければいけません。しかし、報酬を受けた国が源泉地課税(報酬を得た場所の税制に従う)を採用していると、日本と二重に納税しなければいけない問題が発生します。この二重の納税を防ぐための仕組みが、外国税額控除です。なお、外国所得税に分類される税は以下の4種類と定められています。

  1. 超過所得税その他個人の所得の特定の部分を課税標準として課される税
  2. 個人の所得またはその特定の部分を課税標準として課される税の附加税
  3. 個人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、個人の特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの
  4. 個人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、個人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税

控除される上限金額は、以下の計算式での算出が可能です。

【控除限度額の計算式】

所得税の控除限度額=その年分の所得税額×その年分の調整国外所得金額÷その年分の所得総額

【外国所得税が控除限度額を上回る場合の計算式】

復興特別所得税の控除限度額=当該年の復興特別所得税額×当該年の国外所得総額÷当該年の所得総額

外国税額控除は、海外に長期出張する日本人従業員も利用できるので、覚えておくと良いでしょう。

外国人労働者の税金はどうなってる?所得税と住民税のポイントを解説」では、外国人労働者の所得税と住民税、採用する際に気をつけた方がよいポイントを解説しています。これから外国人を雇用しようと検討されている企業の方は、ぜひご一読ください。

まとめ

日本に住所を置き就労している外国人は日本人と同様に所得税を納めます。しかし、海外支店から派遣や住所を置かない短期的な就労の場合は事情が異なるので注意しましょう。

所得税はほとんどの国で導入されているため、納税することに対して疑問を持つ外国人は少ないといえます。しかし、税率や徴収方法は国によって異なるため、外国人から質問があったら説明できるようにしておきましょう。

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