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外国人雇用を検討している企業のなかには、特定技能とは何か気になっているところもあるでしょう。特定技能は在留資格の一つで、人手不足の業界における労働力確保を目的としています。このコラムでは、企業で在留資格「特定技能」を持つ外国人を雇用する方法を紹介。在留資格「特定技能」と「技能実習」の違いも解説します。特定技能外国人を雇用したい企業は、自社が条件を満たしているかをチェックしてみましょう。
目次
特定技能とは、生産性向上や国内での人材を増やす対策を行っても、人手不足が深刻な業界のために創設された在留資格です。在留資格「特定技能」を持つ外国人は、特定の産業でのみ就労が認められています。一定の専門性や技能を有しているため、雇用時から即戦力となるでしょう。なお、特定技能には1号と2号があり、それぞれ在留期間や受け入れ可能な業種が異なります。人手不足解消のために外国人雇用を検討している企業は、特定技能とは何かを把握することから始めましょう。
在留資格「特定技能」には1号と2号があり、在留期間や家族の帯同可否、受け入れ可能な業種などが異なります。まず、特定技能1号は特定産業分野において即戦力となる知識・経験を持つ外国人が取得できる在留資格です。特定産業分野に該当する14の業種で雇用できます。4ヶ月・6ヶ月・1年のいずれかの間隔で在留資格の更新が必要で、在留期間の上限は5年です。原則として、家族の帯同は認められません。
特定技能2号は1号よりも専門性が高く、熟練した技能や知識がある在留資格です。在留期間に上限がなく、更新を繰り返すことにより、定年まで雇用できます。在留資格の更新間隔は、6ヶ月・1年・3年のいずれかです。家族の帯同も認められるため、外国人にとってもメリットが大きいでしょう。
2022年2月時点で特定技能2号の受け入れが認められている特定産業分野は、建設業と造船・舶用工業のみです。ただし、日本政府は特定技能2号の受け入れ範囲の拡大に積極的なので、今後のほかの産業でも雇用できる可能性はあります。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」について」
在留資格「特定技能」を持つ外国人を雇用できるのは、深刻な人手不足が認められる特定の産業のみです。以下の業種に当てはまる企業は、特定技能1号を雇用できます。
・介護
・ビルクリーニング
・素形材産業
・産業機械製造業
・電気・電子情報関連産業
・建設(特定技能2号受け入れ可能)
・造船・舶用工業(特定技能2号受け入れ可能)
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
特定産業分野には製造業やサービス業、介護職などが含まれており、幅広い業種で在留資格「特定技能」を持つ外国人の雇用が認められています。なお、慢性的な人手不足に陥っている業種はほかにもあるため、特定産業分野が拡大する可能性もあるようです。
特定技能についていさらに詳しく知りたい方は「特定技能14業種を一覧で紹介!行える業務内容も解説」のコラムもおすすめです。
参照元 出入国在留管理庁「特定技能制度とは」
特定技能とは何かを理解したうえで雇用を検討する企業は、受け入れる際の条件や注意点をチェックしましょう。
在留資格「特定技能」を持つ外国人の就業先は、特定技能所属機関と呼ばれます。特定技能所属機関になるには、一定の条件を満たさなければなりません。たとえば、外国人労働者が働きやすいように職場環境を整え、適正な雇用契約を締結することが挙げられます。労働に関する法律を遵守し、事業主としての義務を果たしていれば、特定技能所属機関となる許可が下りやすくなるでしょう。一方で、試用契約を結んだ従業員との本契約を拒んだり特定技能外国人が働く業種で直近1年以内に解雇者がいたりする企業は、特定技能所属機関にはなれません。特定技能所属機関には、「適切な労働環境を整えている労働基準法を遵守した事業者」であることが求められます。
在留資格「特定技能」を持つ外国人の報酬は、日本人と同等以上と定められています。国籍や日本語能力を理由に、日本人より低い報酬にしてはいけません。有給休暇や社会保険といった福利厚生も、
日本人と同じように与えましょう。また、特定技能外国人は農業・漁業を除いて派遣雇用を認められていないので、雇用形態は直接雇用のみです。
外国人労働者に対する不当な扱いを防ぐため、雇用条件は厳しく審査される傾向にあります。正当な理由なく、特定技能外国人の賃金を下げたり待遇を悪くしたりすると、在留資格の取得・更新が認められなくなるでしょう。
特定技能外国人を雇用するには、支援計画を作成し地方出入国在留管理局へ提出する必要があります。特定技能外国人への支援内容は、大きく分けて「義務的支援」「任意的支援」の2種類です。
義務的支援は、生活オリエンテーションの実施や事前ガイダンスの提供、出入国時の送迎などが該当します。特定技能外国人を受け入れるうえで必ず実施しなければならないため、注意しましょう。一方で、任意的支援は義務的支援に付随しており、特定技能外国人が安心して働けるよう可能な範囲で求められるものです。生活オリエンテーションにおいて必須情報以外も提供したり相談・苦情の窓口情報一覧を渡したりといった支援が、任意的支援に該当します。
特定技能外国人を受け入れる際は、支援計画をきちんと実施するためにも相手が理解できる言語での支援体制が必要です。なお、特定技能外国人の母国語を話せる人材がいない場合は、登録支援機関に支援業務を委託することもできます。
登録支援機関は受け入れ企業に代わって、特定技能外国人のサポートを実施する団体です。対応可能言語や業務委託の費用、実績などを確認し、信頼できる登録支援機関に特定技能外国人のサポートを任せるのも良いでしょう。
特定技能外国人を雇用する際は、出入国在留管理庁へいくつか申請を行います。実際の手続きは地方出入国在留管理局で行えるため、最寄りの窓口を調べておくと手続きがスムーズです。特定技能外国人の雇用に関する主な申請を以下に記載するので、受け入れを検討している企業は把握しておきましょう。
・在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せる場合)
・在留資格変更許可申請(他の在留資格から特定技能に変更する場合)
・在留期間更新許可申請(在留期間を更新する場合)
在留資格や在留期間に関する申請は、特定技能外国人が日本で働くために必要です。記入事項に不備があった場合、在留資格の取得・更新が認められません。申請書類の確認や取り次ぎを行ってくれるサービスもあるので、手続きに慣れていない企業は利用も視野に入れてみましょう。
「特定技能」に似た在留資格に「技能実習」という種類があります。名称の類似性や1号・2号と区分がある共通点から混同されることがありますが、それぞれ目的が異なる在留資格です。外国人雇用を行う際に混乱しないよう、相違点を認識しておきましょう。
在留資格「特定技能」の目的は、人手不足の業界における人材確保です。日本人と同じように働けるため、さまざまな仕事を任せられます。一方で、在留資格「技能実習」は開発途上国の経済発展に必要な技能を持つ人材の育成が目的です。専門的な技能を身につけるため来日している技能実習生は、清掃や配膳、荷物運びなどの単純労働を行えません。従事できる業務内容から、在留資格「特定技能」と「技能実習」の目的の違いが読み取れます。
特定技能と技能実習では、雇用契約の結び方も異なります。特定技能の場合、企業と外国人の間で直接雇用契約を結ぶのが一般的です。シンプルな仕組みのため、初めて外国人雇用を行う企業でも分かりやすいでしょう。一方、技能実習生を受け入れる企業は、監理団体や外国人技能実習機構など複数の組織と関わるので、雇用契約が複雑になる傾向にあります。
特定技能は日本で働くことを目的とした在留資格なので、外国人が望めば同じ業務区分内で転職できます。日本人に比べて転職の難易度はやや高めですが、ほかの企業に移る特定技能外国人もいるようです。対して、技能実習生は母国の発展に活かせる技能の習得を目的としているため、原則転職が認められていません。外国人雇用を検討している企業は、在留資格「特定技能」と「技能実習」を混同しないように、それぞれの特徴を覚えておきましょう。
技能実習生の受け入れを検討している方は「外国人技能実習機構の役割とは?技能実習生を受け入れ予定の企業向け解説」のコラムも合わせてご覧ください。
外国人が特定技能の在留資格を得る方法は特定技能評価試験の合格か技能実習2号からの移行のどちらかです。良好に技能実習2号を修了した外国人は、特定技能評価試験を受けずに特定技能1号への移行ができます。特定技能評価試験は日本だけでなく海外でも行われていますが、実施国や業種が限られているため技能実習2号から特定技能へ移行する外国人が多いようです。
技能実習2号から特定技能1号へ移行すると在留期限が長くなり、従事できる業務内容が増えます。技能実習生を受け入れている企業は、特定技能1号への移行を打診してみましょう。ただし、技能実習のなかには特定技能への移行対象職種に含まれていないものもあります。あらかじめ特定技能への移行が可能か確認しておくのが賢明です。
「技能実習から特定技能へ変更は可能?手続きやメリット・デメリットを解説」のコラムでは、移行可能な職種や手続きを行うメリット・デメリットに付いても詳しく解説しています。まとめてチェックしてみてください。
「特定技能」とは、あらゆる対策を講じても人手不足の業界における労働力を確保するため、創設された在留資格です。雇用するには適切な支援体制の構築が必要ですが、受け入れられれば日本人のように幅広い業務を任せられます。業種によっては技能実習2号からの移行も可能です。特定技能外国人の雇用を検討している企業は、雇用先の義務や雇用条件を確認して、受け入れ体制を整えましょう。