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特定技能とは、人材不足が深刻な業界のために作られた在留資格です。自社の業界が12種類の特定産業分野に該当する場合、条件を満たせば幅広い業務に従事できる特定技能外国人を雇用できます。
このコラムでは、在留資格「特定技能」の概要を簡単にわかりやすく解説。また、外国人が特定技能の在留資格を得る方法や企業が雇用する際の流れもまとめています。内容を参考にして、特定技能外国人の雇用をスタートしましょう。
目次
「特定技能」は、人手不足が特に深刻な業界で外国人労働者を受け入れやすくするために創設されました。1号と2号があり、それぞれ就労できる期間や家族帯同の可否が異なります。
特定技能とは、生産性向上や国内での人材を増やす対策を行っても、人手不足が解消できない業界「特定産業分野」のために創設された在留資格です。在留資格「特定技能」の取得要件に学歴要件はありません。技能試験と日本語の試験に合格すれば取得可能です。在留資格「特定技能」を得た外国人(特定技能外国人)は一定の専門性や技能を有しているため、雇用時から即戦力となる人材といえるでしょう。
特定産業分野に定められている業界は、以下のとおりです。
特定産業分野は製造業やサービス業、介護職などいずれも人手不足が深刻な業界ばかりです。現在は、多くの外国人が在留資格「特定技能」のもと、各業界で働いています。
なお、慢性的な人手不足に陥っている業種はほかにもあるため、特定産業分野が拡大する可能性もあるでしょう。
特定技能1号は特定産業分野において即戦力となる知識・経験を持つ外国人が取得できる在留資格です。4ヶ月・6ヶ月・1年のいずれかの間隔で在留資格の更新が必要で、在留期間の上限は5年です。母国から配偶者や子どもを連れてくる「家族の帯同」は認められていません。
特定技能2号は1号よりも専門性が高く、熟練した技能や知識があると認められた外国人に付与される在留資格です。特定技能1号を修了後、条件を満たしていると認められた外国人にのみ許可されます。
特定技能2号には更新上限がないため、事実上無期限で日本に在留可能です。家族の帯同も認められるため、在留2号の取得は外国人にとってもメリットが大きいでしょう。
2023年6月時点で、特定技能2号の在留資格を持つ外国人を受け入れられるのは「建設分野」「造船・舶用工業分野の溶接区分」のみです。しかし、2023年6月9日に「介護」を除いたほかの9分野でも特定技能2号の受け入れを開始することが閣議決定されました。「介護」分野に関しては、在留資格「介護」へ変更するルートが存在するため、特定技能2号の対象からは除外されます。
今後、体制が整い次第受け入れが開始されるので、最新の情報をチェックするようにしましょう。
参照元 特定技能総合支援サイト「特定技能制度とは」 出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)」
特定技能外国人は該当する分野であれば、単純労働も含めた総合的な業務を行えます。就労に係る在留資格は、基本的に専門的な知識や技術を要する業務しか認められていません。そのため、人手が不足していても、なかなか外国人を雇用しにくいのが現状でした。従事させたい業務が単純労働に該当する場合、「永住者」や「日本人の配偶者等」などの身分に基づく在留資格を持つ外国人しか雇用できなかったのです。
特定技能の在留資格ができたことで、企業は以前より外国人労働者の受け入れがしやすくなったといえるでしょう。
「特定技能」に似た在留資格に「技能実習」という種類があります。名称の類似性や1号・2号と区分がある共通点から混同されることがありますが、それぞれ目的が異なる在留資格です。外国人雇用を行う際に混乱しないよう、相違点を認識しておきましょう。
在留資格「特定技能」の目的は、人手不足の業界における人材確保です。日本人と同じように働けるため、さまざまな仕事を任せられます。一方で、在留資格「技能実習」は開発途上国の経済発展に必要な技能を持つ人材の育成が目的です。専門的な技能を身につけるため来日している技能実習生は、清掃や配膳、荷物運びなどの単純労働を行えません。従事できる業務内容から、在留資格「特定技能」と「技能実習」の目的の違いが読み取れます。
特定技能と技能実習では、受け入れ方法も異なります。
「特定技能」の在留資格を持つ外国人を雇用する際は、受け入れ機関の基準を満たしたうえで、支援計画を作成し支援を実施することで受け入れが可能です。支援計画の作成や実施は登録支援への委託もできます。一方、技能実習生を受け入れるには、監理団体や外国人技能実習機構など複数の組織との連携が必要です。
両方とも外国人と企業が直接雇用契約を結ぶ点は一緒ですが、制度上の違いが複数あります。
特定技能は日本で働くことを目的とした在留資格なので、外国人が望めば同じ業務区分内で転職できます。日本人に比べて転職の難易度はやや高めですが、ほかの企業に移る特定技能外国人もいるようです。対して、技能実習生は母国の発展に活かせる技能の習得を目的としているため、例外はあるものの原則では自己都合での転職(転籍)が認められていません。
外国人雇用を検討している企業は、在留資格「特定技能」と「技能実習」を混同しないように、それぞれの特徴を覚えておきましょう。
外国人が特定技能の在留資格を得る方法には、「試験に合格する」もしくは「技能実習から移行する」の2種類があります。
特定技能の在留資格を得るには、技能試験および日本語の試験への合格が必要です。
技能試験は分野およびどの作業に従事するかによって細かく内容が異なり、主に学科試験と実技試験が行われます。
日本語の試験は、「日本語能力試験(JLPT)」のN4レベルの取得、もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)」への合格が必要です。どちらも日常会話が可能なレベルに該当します。なお、特定技能「介護」分野においては、別途「介護日本語評価試験」にも合格しなくてはなりません。介護日本語評価試験は、介護の現場で必要な日本語能力を測る試験です。
技能実習2号までを良好に修了した技能実習生は、在留資格を特定技能に移行する際に日本語の試験が免除されます。また、特定技能で行う業務と技能実習で行っていた業務内容が一致する場合は、技能試験も受ける必要がありません。
技能実習ができる期間は最長5年ですが、特定技能に移行することでさらに5年、日本で就労可能です。技能実習から特定技能へ移行すると、本人は引き続き日本で仕事ができ、企業は技術のある外国人を継続して雇用できるため、双方にメリットがあります。
詳しくは「技能実習から特定技能へ変更は可能?手続きやメリット・デメリットを解説」のコラムでまとめています。
ここでは、企業が特定技能外国人を雇用するうえで必要な手順をわかりやすく解説します。
在留資格「特定技能」を持つ外国人の就業先は、特定技能所属機関と呼ばれます。特定技能所属機関になるには、一定の条件を満たさなければなりません。たとえば、外国人労働者が働きやすいように職場環境を整え、適正な雇用契約を締結することが挙げられます。労働に関する法律を遵守し、事業主としての義務を果たしていれば、特定技能所属機関となる許可が下りやすくなるでしょう。
試用契約を結んだ従業員との本契約を拒んだり、特定技能外国人が働く業種で直近1年以内に解雇者がいたりする企業は、特定技能所属機関にはなれません。特定技能所属機関には、「適切な労働環境を整えている労働基準法を遵守した事業者」であることが求められます。
在留資格「特定技能」を持つ外国人の報酬は、日本人と同等以上と定められています。国籍や日本語能力を理由に、日本人より低い報酬にしてはいけません。手当や各種特別休暇などの福利厚生も日本人と同様に設定しましょう。また、農業・漁業を除いて、特定技能外国人の派遣雇用は認められていないので、雇用形態は直接雇用のみです。
外国人労働者に対する不当な扱いを防ぐため、雇用条件は厳しく審査される傾向にあります。正当な理由なく、特定技能外国人の賃金を下げたり待遇を悪くしたりすると、在留資格の取得・更新が認められなくなるでしょう。
特定技能外国人を雇用するには、支援計画を作成し地方出入国在留管理局へ提出する必要があります。特定技能外国人への支援内容は、大きく分けて「義務的支援」「任意的支援」の2種類です。
義務的支援は、生活オリエンテーションの実施や事前ガイダンスの提供、出入国時の送迎などが該当します。特定技能外国人を受け入れるためには、必ず実施しなくてはなりません。一方で、任意的支援は義務的支援に付随しており、特定技能外国人が安心して働けるよう可能な範囲で求められるものです。生活オリエンテーションにおいて必須情報以外も提供したり相談・苦情の窓口情報一覧を渡したりといった支援が、任意的支援に該当します。
特定技能外国人を受け入れる際は、適切な支援体制の構築が必要不可欠です。なお、支援計画の作成および支援の実施は、登録支援機関に委託ができます。
登録支援機関は受け入れ企業に代わって、特定技能外国人のサポートを実施する団体です。対応可能言語や業務委託の費用、実績などを確認し、信頼できる登録支援機関に特定技能外国人のサポートを任せるのも良いでしょう。
特定技能外国人を雇用する際は、在留資格に関する手続きを出入国在留管理庁で行います。実際の手続きは地方出入国在留管理官署で行うため、事業所を管轄するのはどこか調べておくと手続きがスムーズです。特定技能外国人の雇用に関する主な申請を以下に記載するので、受け入れを検討している企業は把握しておきましょう。
上記のうち、在留資格認定証明書交付申請は雇用する企業が代理で行います。
在留資格や在留期間に関する申請は、特定技能外国人が日本で働くために必ず必要です。記入事項に不備があった場合、在留資格の取得・更新が認められません。申請書類の確認や取り次ぎを行ってくれる専門家もいるので、手続きに慣れていない企業は利用も視野に入れてみましょう。
「特定技能」とは、あらゆる対策を講じても人手不足の業界における労働力を確保するため、創設された在留資格です。受け入れられれば日本人のように幅広い業務を任せられます。業種によっては技能実習2号からの移行も可能です。
特定技能外国人の雇用を検討している企業は、雇用先の義務や雇用条件を確認して、受け入れ体制を整えましょう。