外国人の雇用契約書はどう作成する?企業に向けポイントを解説

2022年03月11日
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小島健太郎 (監修)
さむらい行政書士法人 代表社員
外国人の在留資格・VISA・帰化、対日投資手続きを専門に扱う「さむらい行政書士法人 」の代表社員。さむらい行政書士法人は東京、名古屋、大阪と全国対応。日本においても外国人を採用する企業が年々増加傾向にある中、外国人を雇用する際の就労ビザの取得を支援し、専門性の高いコンサルティングにより高い信頼を得ている。専門分野:在留資格・VISA・帰化。年間相談実績1,000件以上。 https://samurai-law.com

外国人を初めて雇用する場合、雇用契約書の作成方法に悩む人事担当者も多いでしょう。雇用時に外国人の在留資格の取得や変更がある場合、雇用契約書の内容が審査に影響します。また、外国人は書面での契約を重要視する傾向にあるため、慎重に作成を進めなくてはなりません。このコラムでは、外国人の雇用契約書作成時の注意点を解説します。内容を参考にして、外国人との雇用契約を滞りなく進めましょう。

目次

  1. 外国人の在留資格の申請に雇用契約書が必要
  2. 外国人の雇用契約書に明記する内容
  3. 外国人の雇用契約書を作成する際の注意点
  4. 厚生労働省のサンプルの活用もおすすめ
  5. まとめ

外国人の在留資格の申請に雇用契約書が必要

外国人雇用時の雇用契約書には、重要な意味があります。なぜなら、在留資格の審査に雇用契約書の写しが必要なためです。在留資格を持たない外国人や在留資格の変更が伴う外国人を雇用する際は、雇用契約書を地方出入国在留管理局に提出しなくてはなりません。雇用契約書に不備があると、外国人の在留資格の許可が降りないこともあります。

在留資格の許可を前提に雇用契約を結ぶ

外国人とは在留資格の申請が許可されるのを前提に雇用契約を締結します。在留資格の審査に雇用契約書の写しが必要になるため、在留資格を得られるか判明する前に外国人と雇用契約を締結するのです。

在留資格の申請が不許可になった場合、外国人は日本で就労できません。企業は、業務が行えない外国人と雇用契約を結んでいることになってしまいます。そのため、外国人の雇用契約書には、「就労可能な在留資格の取得(変更)申請が許可されたら本契約を有効とする」との内容を記載すると良いでしょう。

雇用契約書の代わりに労働条件通知書でも良い

地方出入国在留管理局に提出するのは、雇用契約書の代わりに労働条件通知書でも良いとされています。雇用契約書と労働条件通知書は、内容がほとんど同じ書類です。雇用契約書は、従業員と企業が雇用契約を双方合意した証明書として作られます。労働条件通知書は、企業が従業員に労働条件を示すために作成する書類です。地方出入国在留管理局は、外国人の労働条件を在留資格の審査対象とします。労働条件についてしっかり明記されていれば、雇用契約書と労働条件通知書のどちらを提出しても問題ありません。

外国人の雇用契約書に明記する内容

外国人の雇用契約書には、必ず記載しなくてはならない内容と自社の就業規則によっては記載が必要な内容があります。

必ず書くべき内容

必ず書かなくてはならない内容とは、労働基準法にて記載が義務づけられている項目です。

労働契約の期間

無期雇用(正社員)の場合は「期間に定めなし」と記載します。有期雇用の場合、契約期間の上限は、原則3年です。ただし、専門的な知識を持つ労働者は例外的に5年の契約期間が許可されています。

時間外労働の有無

時間外労働がある場合は、必ず労働契約書で明らかにしておきましょう。日本人は暗黙の了解で残業や早出出勤を容認する風潮がありますが、外国人は時間外労働に関する価値観が異なります。あらかじめ時間外労働があることを了承したうえで雇用契約を結ばないと、トラブルに発展する恐れがあるでしょう。

業務を行う場所

異動や転勤で業務を行う場所が変更する可能性があるときは、労働契約書にすべての勤務地を記載しておくと良いでしょう。

行う業務の内容

行う業務の内容は、外国人の在留資格の審査で最も厳しく見られるポイントです。記載する業務内容が、取得しようとする在留資格で許可されている活動と適合していなければ、申請が不許可になります。また、行う業務の内容が、外国人が大学や専門学校で学んできた専門分野と関連していないと、在留資格を得るのは難しいでしょう。特に専門学校卒業者の場合、専攻内容と行う業務との間に密接な関連性が必要となります。雇用契約書には「社内文書翻訳業務」「システム開発業務」など、行う業務内容を詳しく記載します。

入社後に現場研修や実習がある際も、雇用契約書に記載しましょう。就労に関する在留資格では単純労働が禁止とされていることがほとんどです。しかし、研修や実習が業務上必要なものだと判断されれば許可されます。雇用契約書には研修・実習の有無を記載し、別紙で期間や詳しい内容を提示すると、地方出入国在留管理局の審査がスムーズに進むようです。

賃金規定

労働基準法では、雇用契約書に賃金規定を記載することも求められています。雇用後に認識の違いが発生しないよう、外国人が理解しやすい書き方をしましょう。

勤務時間、休憩時間、休日

勤務時間や休憩時間、休日に関する内容も、必ず雇用契約書に記載しなくてはなりません。繁忙期に変更が生じる場合は、あらかじめ明記しておくと良いでしょう。

契約更新に関する内容

有期雇用の場合は、雇用契約書にて「契約を更新する基準」を記載しておく必要があります。たとえば、「本人の職務能力や健康状態によって判断する」「経営状態によって判断する」などと記載すると良いでしょう。

退職に関する内容

退職や解雇に関する内容を詳しく明記しておくことで、外国人が退職する際にトラブルになるのを防げます。「退職は何日前に申し出るのか」「どのような手続きが必要か」などの事柄を記載しましょう。

昇給

昇給に関する規定は、労働基準法では書面ではなく口頭での通知でも良いとされています。しかし、外国人と雇用契約を締結する際は、できるだけ書面にして提示するのが親切です。

自社の就業規則によっては記載すべき内容

自社の就業規則に明記がある場合に、雇用契約書に記載すべき内容もあります。なお、雇用契約書以外に口頭や就業規則の配布でも問題ありません。就業規則に定められている場合に記載する内容は、以下のとおりです。

  • 休職に関すること
  • 職業訓練に関すること
  • 安全衛生に関すること
  • 退職金を得る条件や計算方法など
  • 退職金以外の臨時的な賃金に関すること
  • 賞与に関すること
  • 最低賃金額に関すること
  • 本人が負担する食費や作業用品などに関すること
  • 災害補償や業務外の傷病扶助に関すること
  • 表彰や制裁に関すること

以上の内容は口頭でも問題ありません。しかし、外国人の場合は書面での契約を重要視する傾向にあるため、雇用契約書に記載しておくのをおすすめします。

外国人の雇用契約書を徹底解説!作成方法や盛り込む内容、注意点まで」のコラムでも、外国人の雇用契約書について、概要から作成方法・盛り込むべき内容・注意点までを幅広く解説しています。しっかりと把握して、外国人の雇用時に起こりがちなトラブルを未然に防ぎましょう。

外国人の雇用契約書を作成する際の注意点

外国人の雇用契約書を作成する際は、日本人の雇用とは異なる注意点があります。以下で紹介するポイントを参考にして、慎重に作成を進めましょう。

同じ仕事をする日本人より低い報酬にしない

外国人の報酬は、同じ仕事をする日本人と同等もしくはそれ以上に設定しましょう。就労可能な在留資格のほとんどは、取得の要件に「同じ業務をする日本人と同等以上の報酬を受け取る」との項目があります。そのため、外国人の報酬を日本人より低く設定すると、外国人の在留資格の申請が不許可になる可能性が高いでしょう。また、人道的な観点からも外国人という理由だけで報酬を低くすることは許されません。同じ仕事をする日本人が社内にいなければ、同じ地域の企業で類似した仕事をする日本人従業員の報酬を基準にしてください。

外国人の母国語もしくは英語で作成する

労働基準法により、労働条件は本人の理解できる言語で提示するよう定められています。そのため

、日本語能力が不十分な外国人に日本語の労働契約書を作成してはなりません。日本語での会話に問題がない外国人でも、雇用契約書に記載されるような複雑な日本語を完璧に理解するのは難しいでしょう。外国人が雇用契約書の内容を理解しきれていないと雇用後のトラブルに繋がります。雇用契約書は外国人の母国語で作成するのが望ましいですが、外国人が理解できるのであれば英語で作成しても問題ありません。

外国人は書面の契約を重要視するので慎重に作成する

外国人は書面での契約を重視するため、漏れのないように作成しましょう。日本では、契約書は形式的な書類だと捉えられがちです。しかし、海外では契約書の内容に沿って業務が進められます。そのため、雇用契約書に明記されていない早出出勤を指示したりサービス残業を行わせたりすると、外国人の不満に繋がる可能性があるでしょう。外国人と業務上のトラブルを防ぐためにも、雇用契約書にはできるかぎり詳しく労働条件を記載します。

関係法令に準ずる内容になっているか確認する

外国人雇用に限ったことではありませんが、雇用契約の内容が法律を遵守しているかもしっかり確認しましょう。労働に関する法令の一例は以下のとおりです。

  • 労働基準法
  • 最低賃金法
  • 労働安全衛生法
  • 男女雇用機会均等法
  • 労働契約法
  • 育児介護休業法

外国人雇用の場合は、以上の法令のほかに入管法(出入国管理及び難民認定法)も関係します。

雇用契約書は、最新の法律の内容で作成するのが基本です。長く同じ様式を使用して雇用契約書を作成している企業は、今一度最新の法律に準じた内容になっているかを確認しましょう。不安が残る場合は、専門家からアドバイスを受けて作成するのが賢明です。
詳しくは、「外国人の雇用契約書にひな形はある?作成方法や注意点を企業へ向けて解説」でも確認できます。内容を参考にして、外国人との雇用契約を滞りなく進めましょう。

厚生労働省のサンプルの活用もおすすめ

外国人の雇用契約書を作成する際は、厚生労働省のサンプルも活用してみましょう。厚生労働省のホームページでは、外国人労働者向けモデル労働条件通知書を公開しています。労働条件通知書と雇用契約書は記載する内容は同じ書類であるため、作成時の参考になるでしょう。対応しているのは以下の13言語です。

  • 英語
  • 中国語
  • 韓国語
  • ポルトガル語
  • スペイン語
  • タガログ語
  • インドネシア語
  • ベトナム語
  • クメール語
  • モンゴル語
  • ミャンマー語
  • ネパール語
  • タイ語

外国人労働者が多い国の言語を中心にサンプルが公開されています。サンプルをもとにして、自社の就業規則の内容を盛り込みながら作成を進めましょう。

参照元
厚生労働省「労働基準法関係

まとめ

外国人の雇用時に在留資格の取得や変更が伴う場合、雇用契約書の内容が非常に重要です。地方出入国在留管理局は、提出された雇用契約書を見て外国人がこれから行う業務と希望する在留資格の適合性を判断します。そのため、できる限り詳しく業務内容を記載し、審査がスムーズに進むようにしましょう。

外国人を雇用する際、雇用契約書の内容の理解不足から後々トラブルに発展するケースも少なくありません。企業は外国人の理解できる言語で雇用契約書を作成し、思い違いがないか確認しながら契約を進めてください。

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