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留学の在留資格をもって日本で学ぶ外国人は年々増加しており、在留資格変更許可申請をして企業で働く外国人は、平成30年出入国在留管理庁の資料(※)によると25,942人にものぼり、前年と比較しても15.7%増(3,523人)という状況です。
新卒で留学生を採用したい企業は、留学生の知識や言語、技術を生かしてもらう前に、どのようなことを確認するべきなのでしょうか。
参照:法務省「平成30年における留学生の日本企業等への就職状況について」
2008年に文部科学省が策定した「留学生30万人計画」は、2019年6月には33万6千人となりました。外国人の雇用に関しては、10年前に比べて採用しやすい状況ができているといえます。
参照:法務省 「在留外国人の構成比(在留資格別)」
各企業では、留学生を社員として新卒採用すべきか悩んでいるところも多いのではないでしょうか。政府の調査(※)では、外国人新卒採用ルートとして、以下のような結果を公表しています。
国内の留学生の新卒採用 42.0%
国内における外国人のキャリア採用 18.1%
海外の外国人学生の新卒採用 11.5%
海外における外国人のキャリア採用 5.9%
日本に留学している外国人から新卒採用を検討している企業が圧倒的に多く、日本語の理解力の高さも評価されているのでしょう。
しかし、外国人社員は採用していないという企業も48.2%と大きく、日本で留学生が仕事を見つける厳しさも大きいのです。
経済産業省が行ったデータによれば(※)、留学生が希望する職種のランキングでは以下のような結果が出ています。
1位:「国際業務」(50.1%)
2位:「研究開発」(27.2%)
3位:「事務職(総務・人事・広報等)」(24.8%)
4位:「マーケティング・商品開発」(24.3%)
5位「貿易業務」(24.0%)
6位:「通訳・翻訳」(18.8%)
企業が外国人留学生を採用した職種は、以下のとおりです。
1位:「営業・販売」38.7%
2位:「研究開発」28.6%
3位:「システム開発・設計」21.1%
4位:「国際業務」19.1%
5位:「生産・製造」12.6%
6位:「マーケティング・商品開発」11.6%
貿易業務や通訳などの職種が留学生に人気なのに対し、企業側で求める配属先には差異があり、希望通りにいかないという現状です。
また別の調査(※)では、就職意欲のある留学生の半数以下しか就職できていない現状も見られます。留学生と企業がどちらも、就職・採用に関する情報不足が原因とも言われています。
参照:経済産業省(外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査) 経済産業省(地方中堅・中小企業における外国人活用に関する調査)
政府が行う留学生アンケート(※)では、日本企業の給与水準が高いと感じている学生は理系学生で37.6%、文系学生で26.3%という結果がみられます。日本の技術力や人材育成の充実度に高い評価をしながらも、収入面で満足できているのは多いとは言えないようです。
また、別の調査では(※)、20万円以上25万円未満で報酬を受ける人が一番多くなっています。外国人雇用では、日本人と同等、あるいは同等以上の報酬が決まりですので、外国人に求める仕事の役割と、成果を見極めていく必要があるでしょう。
参照:法務省「平成30年における留学生の日本企業等への就職状況について」
外国人留学生を新卒で迎えると、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
少子高齢化が進み、日本はますます働き盛りの年代が減少傾向にあります。働き手の母数が減ることで、優秀な人材を雇用できる数も減ってしまう不安があるなか、外国人留学生が日本で就職できれば、海外の優秀な人材を確保できると予測できるでしょう。
また、留学生が架け橋になり、海外とのスムーズな意思疎通ができるため、世界に視野を広げた戦略もできるようになります。事業拡大にも大きな戦力になることが期待できるのです。
積極性や効率性といった点からも、従業員には良い刺激を与えられるでしょう。グローバル企業に属することを意識して、それぞれが自己研鑽に励む流れにも期待が持てます。
外国人を雇用するときのデメリットには、「複雑なビザの取得」や「言語や文化の違い」が挙げられます。留学生ビザのままでは、勤務できる時間も週28時間と決められており、フルタイムで働くことはできません。就労ビザへの変更申請には、多くの書類作成と提出があるため、行政書士等の専門家を頼る人もいます。
また、日本では当たり前と感じられることは、決して万国共通ではありません。何事もハッキリものをいわずに察する日本人の言動や行動が、外国人には理解できないこともあるように、逆もまた然りなのです。お互いの価値観を尊重しながら、留学生たちが溶け込みやすい環境をそろえることも、大切なポイントになるでしょう。
十分なサポート体制を整えても、留学生側に問題があると採用できないケースもあります。企業が事前に確認したい事や注意点をみていきましょう。
どんな在留資格にも期限は必ずあります。在留資格が期限切れのまま勤務すると「不法就労」となり企業が罰せられますので、必ず在留期間の確認を行ってください。外国人雇用の基本中の基本ですから、忘れないようにしましょう。
企業が外国人留学生を雇用する場合、留学生の専攻科目と企業で働いてもらう職務内容に関連性がなければ就労ビザの変更を申請しても許可がもらえません。また、専門性の高い職務内容に限って許可が出ますので、許可がもらえそうかどうかの判断に迷ったら、採用を決める前に専門家に相談してみると良いでしょう。
外国人留学生を新卒採用するには、労働条件をしっかり伝えなければなりません。伝えたつもりでも、相手が理解できないていないと後々問題に発展することもありますので、外国語を話せる社員や外部の支援機関のサポートにより相違のない意思疎通を図る必要があります。
また、言葉や文化の違いに困惑しがちな留学生は、体制の整わない環境では孤独でストレスを感じやすく、仕事に定着できないこともあります。白黒はっきりしないニュアンスの多い日本で苦しむ外国人は多いのです。日本と留学生の母国の違いを双方が理解しながら、マナー研修や文化交流などを通じてコミュニケーションが取れるようにし、柔軟な対応ができるよう準備をする必要があるでしょう。
在留資格が特定技能1号となる職種なら、登録支援機関にサポートを委託できます。登録支援機関のサポート内容は、在留資格は違っても受け入れ体制を整える目安になりますので、参考にしてみてください。
外国人留学生が、日本で新卒採用され働き始める場合には、在留資格を「留学」から就労可能な資格へ変更する必要があります。
在留資格の変更は、本人または本人から依頼され出入国在留管理庁から申請取次を受けた機関、団体、公益法人職員(弁護士や行政書士など)によって申請できます。一般的には企業の社員が申請をすることはできないため、誤って提出に行かないよう注意しましょう。
在留資格変更申請は、提出から2ヵ月ほど審査にかかることもあるため、新卒で4月入社が決まっているなら、早い段階で申請をした方がいいでしょう。
在留資格の変更が間に合わない、認められない場合には、勤務できませんので出社しないよう注意が必要です。
日本で働きたい留学生も、日本で働いてほしい企業も、うまくマッチングできればグローバル化が進み、企業が望む事業にも拍車がかかることが期待できます。しかし、最初の難関である在留資格の変更で失敗してしまうと、日本で働くことが難しくなってしまうのです。
難しい書類作成や申請は専門家に任せることもできますので、双方が不安なく仕事に向き合っていけるよう信頼できる専門家を頼ることも、選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。