日本のタクシーは料金が高いことで有名です。実際、料金はどのくらいなのでしょうか。旅行や日々の暮らしで利用する時に備え、日本のタクシーの料金、利用方法、マナー、注意事項などをご紹介します。
目次
日本のタクシー料金
2020年2月、日本関東地域7地区のタクシー料金が改定され、初乗り運賃が1.2~1.27kmまで500円または1.47kmまで620円(埼玉県B地区)、加算運賃が257~272mあたり100円に改定されました(※1)。
地域ごとに初乗り運賃の距離と料金に違いがありますが、日本のタクシー料金は他国と比べると高いのが事実です。タクシー料金が高いことで有名なロンドン、ニューヨークと料金を比較した、国土交通省の2015年3月時点の『東京の平均乗車距離(約4.0km)における運賃比較』の結果を見てみましょう(※2)。
<4.0kmにおけるタクシー料金の比較>
- ロンドン:約1,670円
- 東京:約1,450円
- ニューヨーク:約1,300円
東京のタクシー料金がニューヨークより高いことに驚いた方もいるのではないでしょうか。それでは、料金体系についてもう少し詳しく見ていきましょう。
日本のタクシー運賃・料金体系(東京23区基準)
日本のタクシー運賃は①基本運賃(距離制/時間/定額)、②割増運賃(深夜早朝/冬季)、③割引運賃(公共的/遠距離/営業的)、④その他の4つに分けられます(※4、5)。それぞれの料金体系を見てみましょう。
①基本運賃
1. 距離制運賃
乗車地点から到着地点までの実際の搭乗距離に基づいて計算される運賃です。
上記で紹介した初乗り運賃+加算運賃が基本となりますが、一定速度(10km/hを超えない速度)以下で走行する場合、「時間距離併用運賃」というものが適用されることもあります。信号待ちや渋滞に巻き込まれた場合、乗客がタクシーを待たせた場合などに適用されるシステムで、搭乗時間が加算距離に換算されます。東京23区の距離制運賃は初乗り運賃が1.052kmまで420円、233mあたりの加算料金が80円で、時間距離併用制運賃は1分25秒まで80円となります。
2. 時間制運賃
距離制運賃を適用しにくい場合(観光地巡回、冠婚葬祭関連など)で営業所と特別に契約している場合の運賃です。東京23区基準で最初の1時間まで4,700円、その後30分ごとに2,150円が加算されます。
3. 定額運賃
事前に金額を定めている運賃で、特定の空港や駅で一定区間を運行する場合に適用されます。イベント開催期間中の移動や観光地の主要拠点施設間の巡回などに適用される場合もあります。
②割増運賃
1. 深夜早朝割増
原則として、夜10時~午前5時の間に搭乗する場合に適用され、割増率は20%です。
2. 冬季割増
雪が多い北海道・東北地域などで12月下旬~2月末まで適用され、割増率は20%です。ただし、観光タクシーや時間制料金などを適用する場合には、割増は適用されません。ご利用になる場合は、各地域のタクシー協会を通じて正確な情報をご確認ください。
③割引運賃
1. 公共的割引
身体障害者や知的障害者、その他の法令で定められた対象の方に適用される割引運賃です。
2.遠距離割引
一定額を超える遠距離を利用する乗客に適用される割引運賃です。東京23区の場合、9,000円以上の利用金額に対して10%割引が適用されます。
3. 営業的割引
その他、需要を喚起するために営業的に適用する割引運賃もあります。
4. その他の料金
乗客の都合で車両を待機させる場合には「待機料金」が、乗客の要請により乗車地点まで車両を送る場合(一般にタクシーを呼ぶ場合)には「迎車回送料金」が適用される場合があります。これらはタクシー会社や地域によって金額が異なり、課金されない場合もあります。その他、時間や車両の種類を指定する場合に「サービス指定予約料金」が適用されることがあります。また、高速道路を利用した場合は通行料が別途かかることも覚えておきましょう。
ポイント!>>タクシーのほうが経済的な場合もある?
日本のタクシーは高いですが、地下鉄やバスなどは乗り継ぎ料金が適用されないため、近距離の場合、乗客数や乗り換え回数などによってはタクシーの方が安くなることがあります。「タクシーは高い」と決めつけず、時には利用してみてはいかがでしょうか?
タクシー利用時以外で発生する暮らしのお金については「日本の生活費はどれくらい?一人暮らしの平均や節約のコツを紹介」のコラムにまとめています。ぜひこちらもご一読ください。
※1 国土交通省 2019年12月13日発表資料pdf p.1 ※2 国土交通省 2015年3月調査資料pdf p.9 ※3、4 一般社団法人東京都個人タクシー協会<運賃体系> ※5 国土交通省 2015年3月調査資料 pdf p.10
ピックアップ記事
日本のタクシーの利用方法
次に、タクシーの利用方法をご説明します。
観光客や日本の生活に慣れていない方の場合、タクシーをどこで捕まえればいいのか分からないこともあるでしょう。電話でタクシーを呼ぶこともできますが、ローミングが無効で電話が使えない、あるいは英語や日本語がうまく通じるか心配という方は、タクシーアプリを利用するとよいでしょう。
英語などの他言語に対応しているものもあり、タクシーを呼ぶだけでなく、出発地や目的地を設定することでおよその料金、所要時間をあらかじめ確認できます。また、タクシーの位置が地図上にリアルタイムで表示されるので、到着予定時刻も分かり安心です。事前にクレジットカード情報を登録しておくと、支払い時にサインなどの手間がかかりません。乗客や荷物が多い場合などには車種を選択して呼ぶこともできます。
関連用語>>迎車、無線配車
- 「迎車」:今すぐタクシーに来てほしいと要請して利用する乗車サービスです。時間を指定する「予約」と区別されます。地域やタクシー会社によって、タクシー料金に迎車料金、予約料金がそれぞれ請求されたり、減免されたりします。
- 「無線配車」:タクシー会社に電話やインターネットなどでタクシーの手配を要請したとき、タクシー会社が営業所にある車ではなく、乗車地に一番近い所の会社のタクシーに無線で連絡してタクシーを配車することです。
タクシーを呼ぶ
地域のタクシー会社に電話
タクシー会社に直接電話してタクシーを呼ぶことができます。「地域名(例:福岡)+タクシー会社」で検索すると、その地域のタクシー会社と電話番号が分かります。英語でタクシーを呼ぶことができる会社もあります(例:NIHON KOTSU)。
ポイント!>>「ハイヤー」とは?
日本には完全予約制で営業所の車を呼んで目的地まで移動できる「ハイヤー」と呼ばれるサービスもあります。「都市型ハイヤー」の場合、認可を受けた事業者が特定の地域でのみ運行でき、原則「2時間以上」の場合に予約できます。
日本のタクシーアプリの利用
Wi-Fiが使える環境なら、日本のタクシーアプリを利用してみてください。利用可能な地域がアプリごとに異なるので、事前に対象地域化を確認してからダウンロードすることをお勧めします。インターネット決済が可能なアプリの場合、降車後自動的に決済されるので便利です。利用エリアの範囲が比較的広いタクシーアプリをご紹介します。
- Go : 北海道、宮城、茨城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、富山、石川、岐阜、愛知、近畿、佐賀、京都、大阪、兵庫、奈良、広島、福岡
- Uber Taxi : 札幌、青森、中トンベツ、仙台、福島、東京、横浜、大阪、京都、淡路島、名古屋、広島、高知、福岡
- DiDi:北海道、宮城、東京、埼玉、千葉、神奈川、静岡、大阪、兵庫、京都、福岡、長崎、沖縄
※利用エリアは変更(拡大)する場合があります。
路上でタクシーを拾う
向こうから待っていたタクシーが近づいてきてに書かれた漢字語がどういう意味なのかわかりません。ひとまず手を光って聞いてみますが、まったく止まらないタクシー…常識で知っておくと便利なタクシー表示灯の意味を紹介します。
乗れるタクシー
- 空車:乗客がおらず、乗車可能な状態です。通常、赤で表示されます。
- 割増:割増料金が適用される深夜・早朝に表示され、乗車可能です。
乗れないタクシー
- 賃送、実車:乗客がいる状態です。地域や会社によって呼び方が異なります。
- 支払い:目的地に到着して乗客が運賃を計算している状態です。
- 賃切: 観光や冠婚葬祭などで貸し切っている状態です。
- 予約:予約されたタクシーで、乗客を迎えに行っている状態です。
- 迎車:連絡を受けて乗客を迎えに行っている状態です。
- 回送:営業所に移動中または運転手が休憩中の状態です。
利用時のマナー、注意事項
乗車
「空車」のタクシーが来たら、後部ドアの前に立ってドアが開くのを待ちます。日本のタクシーは全て、運転手がレバーでドアを開閉するようになっています。乗客が自分でドアを開閉することもできますが、故障や事故の原因になることがあるので、日本では運転手に任せましょう。ただし、助手席は自分でドアを開閉しなければなりません。4~5名で乗車する場合を除き、通常は後席を利用します。
ドアの開閉もそうですが、運転手は乗客の乗車~降車までの全てを担当するという意識が背景にあり、スーツケースなどの荷物をトランクに載せる場合、運転手が荷物の積み下ろしをしてくれるのが一般的です。
また、日本では2011年時点で全国47の都道府県の各自治体に登録されたタクシー事業者団体が全面禁煙を宣言しました(しかし、2013年時点では全国に約10%の非禁煙車あり)(※)。運転手と乗客の健康のために、禁煙を実践しましょう。
※2013年4月5日衆議院『禁煙タクシーとハイヤーに関する質問主意書』
お支払い
日本では利用料金に追加してチップを支払う必要はありません。
最近ではクレジットカード決済が可能なタクシーが増えていますが、クレジットカード会社によっては利用不可のものもあります。タクシーの窓に利用可能なクレジットカードの種類と支払い方法が表示されているの確認しておきましょう。
また、Suica(交通系ICカード)などの電子マネー、PayPayなどのQRコード決済が可能な場合もあります。
ポイント!>>窓にカードのロゴがあっても、カード決済できない場合がある?
窓にカードのロゴがあるのに、そのカードで決済ができない場合があります。これは、日本のクレジットカード会社で法人顧客等に発行する「タクシーチケット」を利用できるという意味でロゴシールを貼っておく場合があるからです。そのため、乗車前に運転手に「クレジットカード、大丈夫ですか?」と、カード決済ができるか確認しておくとよいでしょう。支払いの際に役立つ日本語は「買い物に役立つ日本語を紹介!欲しい物を購入できるようになろう」のコラムでご紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
まとめ
料金は高いけれど、便利な日本のタクシー。利用方法や便利なアプリ、マナー、注意事項などを覚え、賢く利用してみてください。