日本の伝統文様の種類を解説!込められた意味とは

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2023/03/29

「日本にはどのような伝統文様があるのか知りたい」と思う方もいるでしょう。日本の伝統文様には、動植物に由来した模様や幾何学的なデザインのものがあります。これらの伝統文様は、着物や食器などの日用品はもちろん、寺院仏閣などの装飾に用いられ、長く親しまれてきました。このコラムでは、さまざまな伝統文様の種類や意味を紹介します。模様に込められた思いを知って、日本の伝統文様の魅力を感じてみてください。

目次

  1. 日本の伝統文様について
  2. 日本の伝統文様が使われている物や場所
  3. 日本の伝統文様に込められた思い
  4. まとめ

日本の伝統文様について

日本の伝統文様についての画像

日本の伝統文様は歴史と繋がりが深く、古くから衣服や住宅に用いられてきました。伝統文様のモチーフとなるのは、植物や動物、自然の風景など多種多様です。ここでは、伝統文様の特徴や歴史を詳しく解説します。

伝統文様とは

伝統文様とは、古くから伝わるデザインのうち、一つの模様を連続させて作っている模様のことです。日本では、織物や工芸品などに用いられ、和柄といわれることもあります。伝統文様のうち、動植物を模した模様が動・植物文、直線や曲線の組み合わせで出来たデザインが幾何学文です。

伝統文様は、豊作や家族の健康への願いを込めて使われてきました。中でも、縁起の良い意味のデザインは、「吉祥文様(きっしょうもんよう)」と呼ばれます。現代でも、「吉祥文様」は神社仏閣や着物、食器などに使われており、日常生活でも見る機会が多くあるでしょう。

伝統文様の歴史

日本で見られる伝統文様のルーツは、飛鳥・奈良時代に中国や朝鮮から伝わった模様です。当初の文様は、中国の伝説に出てくる鳥の鳳凰(ほうおう)や龍などをモチーフとしていました。日本独自の伝統文様が生まれたのは、平安時代以降です。貴族の間で、扇(おうぎ)や藤などの文様が広まりました。江戸時代になると、四角形が並んだ「市松模様(いちまつもよう)」が歌舞伎(かぶき)の衣装に用いられるようになります。これらの文様は、日本の文化とともに発展し、現代まで受け継がれてきたといえるでしょう。

日本の伝統文様が使われている物や場所

日本の伝統文様が使われている物や場所の画像

日本の伝統文様は、神社仏閣の装飾や着物などに用いられています。また、日用品である手ぬぐいや食器などに使用されている伝統文様も多様です。ここでは、縁起の良い伝統文様が使われている場所や物を解説します。

神社仏閣

神社仏閣の画像

日本の神社仏閣には、屋根や扉の装飾、ふすまの絵柄などにさまざまな伝統文様が使われてきました。寺院の屋根に見られるのが「飛雲(ひうん)」といわれる伝統文様で、縁起が良いとされる雲が飛ぶ様子を示しています。ふすまに多く用いられているのが、「青海波(せいがいは)」です。どこまでも続く穏やかな波を模しており、永く続く幸せや平和な暮らしの象徴とされます。菱型模様の「菱(ひし)」や、三角形を並べた模様の「鱗(うろこ)」は、畳の縁(へり)によく見られる伝統文様です。また、扉の装飾の一部によく使われるのが籠目(かごめ)で、複数の縦線と横線が交差してできた格子状の模様から出来ています。

枯山水

枯山水の画像

枯山水(かれさんすい)は、日本庭園に使われる様式の一つで、砂や石で自然の風景を表現するのが特徴です。波をかたどった「青海波」や「渦」などの伝統文様を用いることで、水辺の景色も描きます。砂に描かれる模様は砂紋(さもん)と呼ばれ、枯山水にとって重要です。

京都の龍安寺(りゅうあんじ)の枯山水は、砂に大小15個の石が配置されています。この枯山水は、どの位置から眺めても石が14個しか見えないように配置されているのが特徴です。また、長野県の興禅寺(こうぜんじ)には、雲を模した看雲庭(かんうんてい)と呼ばれる大きな枯山水があります。遠くにある木曽の山々と枯山水が一体化して見えるように造られているのも、看雲庭の魅力といえるでしょう。

食器

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日本の伝統文様は、日常的に使われる茶碗や湯呑、皿にも用いられてきました。食器に使われる伝統文様は、「青海波(せいがいは)」や「梅」などです。「青海波」は、陶磁器で作られた茶碗や湯呑、皿によく見られます。また、「梅」は陶磁器はもちろん、木でできた漆器にもよく描かれる伝統文様です。梅はまだ寒い春の初めに咲くため、忍耐強さの象徴とされる縁起の良い柄とされています。

手ぬぐい・ふろしき

手ぬぐい・ふろしきの画像

手ぬぐいやふろしきによく見られるのは、「波千鳥(なみちどり)」「市松模様」などの伝統文様です。「波千鳥」の模様は、波と鳥の群れを組み合わせてできています。「世間の荒波をともに乗り越えていく」との意味があり、夫婦円満や家内安全を象徴する縁起の良い文様です。「市松模様」には、色の異なる四角形が途切れずに描かれています。子孫繁栄の意味が込められており、てぬぐいやふろしきはもちろん、着物や日用品に用いられてきました。

着物

着物の画像

着物に使われる伝統文様には、「松竹梅(しょうちくばい)」や「貝合わせ」などがあります。「松竹梅」はおめでたい席で着る着物の柄によく使われてきました。前述した梅のほかにも、寒さに強い松やまっすぐに伸びる竹が描かれていることから、忍耐力と繫栄を象徴する伝統文様の一つです。また、「貝合わせ」は、一対のハマグリは隙間なくぴったりと合うため、夫婦和円満の象徴として親しまれてきました。繁栄を象徴する「扇子」や、数多くの宝物を描いた「宝尽くし」も、おめでたい場面で着る着物に用いられる伝統文様です。

日本の伝統工芸や着物について、「日本の伝統産業を外国人に向けて解説!お土産におすすめの品も紹介!」や「日本の着物に興味がある外国人に向けて歴史や種類を解説!」のコラムでも詳しく紹介しています。併せてご覧ください。

日本の伝統文様に込められた思い

日本の伝統文様に込められた思いの画像

ここでは、日本の代表的な伝統文様を紹介します。日本では、花や雲、水などの自然をかたどったり抽象化したりすることで、多種多様な伝統文様が生まれてきました。模様の由来や意味を知って、伝統文様の魅力を感じてみてください。

桜の画像

日本を代表する花である「桜」をモチーフにした伝統文様も、着物や家具、日用品などのさまざまな物に使われてきました。「桜」の伝統文様が意味するのは、満開に咲く様子が由来となった「繁栄」や「豊かさ」です。「桜」の伝統文様には、多くの種類があります。代表的な「桜散らし」は、桜の花が全体に描かれている模様です。ほかには、「桜」と水の流れを組み合わせた「桜川」や、楓(かえで)を一緒に描いた「桜楓(おうふう)」などがあります。

麻の葉

麻の葉の画像

「麻の葉」は、いくつもの三角を組み合わせた正六角形の模様で、生命力の強い麻の葉をかたどっています。麻がまっすぐに大きく伸びることから、成長と健康を願って子どもの産着や着物に多く用いられる伝統文様です。また、平安時代には仏像の装飾にも麻の葉模様が用いられました。現代でも、日用品はもちろん、襖(ふすま)や壁紙などの住宅の装飾にも用いられています。

工字繋ぎ

工字繋ぎの画像

「工字繋ぎ」は「工」の文字を規則的に描いた模様で、着物の地紋に良く使われてきました。地紋とは、彩色や刺繍によって施すデザインではなく、布の織り方で作られた模様のことです。地紋のある織物は、見る角度により光の反射で模様が浮かび上がります。「工字繋ぎ」は、斜めにした工の字が途絶えることなく続いている伝統文様です。延命や長寿の象徴とされ、縁起の良い模様として用いられています。

七宝

七宝

「七宝」の伝統文様は、同じ大きさの円の重なりからできています。円が重なった部分は花弁のように、円の中央部分は星のように見えるのが特徴です。円が連続して繋がる模様から、人と人の繋がりであるご縁や子孫の繁栄、円満などの象徴とされています。古代エジプトや中国でも古くから用いられており、日本では平安時代に「輪違い」という名前の有職文様として、平安貴族の衣装や調度品などに用いられました。

模様につけられた名前の由来は、仏教用語の「七宝」です。七つの宝である、金・銀・水晶・瑠璃(るり)・瑪瑙(めのう)・珊瑚(さんご)・しゃこ貝を指しています。名前の由来や有職文様に使われたことから、格式の高い伝統文様といえるでしょう。

立湧(たちわき・たてわき)

立湧(たちわき・たてわき)の画像

立湧は、蒸気が立ち昇る様子を2本の曲線で示している伝統文様です。日本の伝統芸能の一つである能の衣装にも使われてきました。「立湧」には、曲線が太くなった部分に描かれる文様によって、いくつかの種類があります。「雲立湧」は、雲が空に昇っていく様子を象徴している格式の高い文様です。平安時代には、皇子や高位の政治家の衣装に使われました。ほかには、菊の花が配置された「菊立涌」や波が描かれた「波立涌」などがあります。

流水

流水の画像

「流水」は、水が流れる様子をかたどった伝統文様です。水の流れが、数本の曲線で表された幾何学的なデザインと絵のように繊細に描かれた模様があります。渦巻きが描かれた「観世水(かんぜみず)」は幾何学的な「流水」模様です。流れる水を描くことで、悪い出来事や火災を防ぎたいとの願いや汚れがなくきれいな様子を表しています。また、細やかな流水の絵は、縁起が良く美しい柄として高価な着物に描かれてきました。
ほかにも、流水はさまざまモチーフと組み合わされ、多くの種類があります。「扇面流し(せんめんながし)」は扇が、「菊水文」は菊の花が、流水とともに描かれてる文様です。

矢絣(やがすり)

矢絣(やがすり)の画像

「矢絣」は、弓矢に付いている鳥類の羽飾りを連続させた伝統文様です。もともとは、織り方の一つである絣(かすり)で作った矢模様の布を「矢絣」といっていました。矢は、悪い出来事を退ける意味があり、「矢絣」も縁起の良い文様として使われます。とりわけ、紫と白の「矢絣」は歌舞伎や時代劇で、上流階級の人々に仕えて身辺の世話をする女性の着物に使われてきました。

また、大正時代を舞台の少女漫画『はいからさんが通る』で、主人公が着ていたことでも有名です。現代でも、卒業式に「矢絣」の着物と袴を着る女性が多くおり、人気の伝統文様といえるでしょう。

唐草

唐草の画像

「唐草」は蔦(つた)が四方に延びていく様子をかたどった伝統文様です。蔦は生命力が強く、さまざまな方向に伸びていくことから、長寿や繁栄を象徴する縁起の良い文様とされてきました。「唐草模様」は、ギリシア神殿の遺跡に描かれた草の模様が、シルクロードや中国を経て日本に伝わったものといわれています。緑地に白の「唐草模様」が描かれた風呂敷は、祭りで獅子舞のかぶり物として使われる馴染み深いアイテムです。

亀甲

亀甲の画像

「亀甲」は、亀の甲羅をかたどった六角形を並べた伝統文様です。亀は長寿の象徴とされ、「亀甲」も縁起の良い文様とされています。平安時代には、有職文様として貴族の衣装や調度品などに用いられました。「亀甲」にも、一緒に描く模様やデザインの重ね方で種類があります。「亀甲花菱」は六角形の中に花びらをあしらった伝統文様です。また、3つの亀甲を組み合わせた「毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)」もあります。

まとめ

まとめの画像

日本の伝統文様は、神社仏閣や着物、食器に用いられ親しまれてきました。人々は、縁起をかついだり幸せへの願いを込めたりして、伝統文様を使ってきたのです。日本の伝統文様の魅力は、見た目の美しさと込められた思いにあるといえるでしょう。このコラムを参考に、日本の伝統文様への興味を深めてください。

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