日本語を勉強する際に特につまづきやすいのが、敬語の使い分けや漢字の読み書きです。日本語の勉強を始めたばかりの方にとって、文字の種類の多さが障害になる場合もあるでしょう。
このコラムでは、主語・述語の順番や助詞の選び方など、日本語の勉強でつまづきやすい7つのポイントを紹介。無理のない日本語学習の進め方や効率が良い勉強方法もまとめています。
目次
- 日本語の勉強でつまづきやすい7つのポイント
- 日本語の勉強の進め方
- 日本語を効率良く勉強する方法
- 勉強で身に付いた日本語能力を試験で測るのもおすすめ
- 海外に日本語を勉強する人はどのくらいいるの?
- まとめ
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日本語の勉強でつまづきやすい7つのポイント
初めて日本語を勉強する方は、特有の敬語表現や漢字の読み書きなどに苦戦するようです。ここでは、日本語の勉強でつまづきやすい7つのポイントを紹介します。
1.敬語の使い分け
日本語を勉強し始めたばかりの方は、どの相手にどの敬語を使うのかの判断に苦労するようです。日本で使われる敬語には、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があります。
「尊敬語」とは、目上の人の行動に対して敬意を表す敬語です。「言う」「見る」を尊敬語にすると、「おっしゃる」「ご覧になる」になります。
「謙譲語」は、自分自身を下げて相手を敬う敬語です。たとえば、自分がどこかに行くことを表すときは、「伺う」「参る」と表現します。
「丁寧語」とは、「です」「ます」などの言葉の語尾につけて丁寧な言い方にする敬語です。
日本では、相手の立場によって敬語を使い分けなくてはならないため、敬語に慣れていない方にとっては難しいと感じるでしょう。
2.漢字の読み書き
日本語の勉強でつまづきやすいポイントの一つに、漢字の読み書きが挙げられます。
漢字には音読みと訓読みがあり、何通りもの読み方が存在する文字がほとんどです。
たとえば、「月」は「つき」「がつ」「げつ」と読めます。そのため、月が使われている言葉を見た際に、どの読み方が適当かを判断するのが難しいと感じる場合もあるでしょう。
また、同じ読み方の漢字も多くあるため、ひらがなで書かれた単語を見て正しい漢字で書けるようになるまで、多くの勉強時間が必要です。
3.主語・述語の順番や省略された言葉の推測
日本語は、英語や中国語などの言語と、「主語」「述語」「目的語」などの「文の成分」の順番が異なっています。たとえば、英語は必ず「主語」を先に持ってきますが、日本語は先頭に「主語」が来るとは限りません。そのため、日本語の勉強を始めたばかりの方は、文章を読んで「主語」や「述語」などの順番を理解するのが難しいようです。
さらに、日本語は「主語」や「目的語」を省略する場合があります。日本語に長く親しんでいる人は、「誰が」「何を」が省略されていても、文脈から推測し内容を把握することが可能です。しかし、日本語に慣れていない方にとっては、「主語」や「目的語」が省略されると分かりづらく感じるでしょう。
4.動詞や形容詞の活用
日本語の勉強を始めたばかりの方は、「動詞」や「形容詞」の「活用」が難しいと感じる場合が多いようです。「活用」とは、あとに来る単語や文章の意味により、言葉の形が変わることを指します。
日本語では、一つの動詞につき「未然形」や「連用形」、「連体形」などの6つの「活用形」があります。しかも、「活用」のパターンは「動詞」により異なるため、さらに複雑です。
また、日本語は、「形容詞」にも5つの「活用形」があります。時制やあとに続く言葉によって、「楽しかった」「楽しい時間」など、「形容詞」である「楽しい」の言葉自体が変化するのです。そのため、混乱する日本語学習者もいるでしょう。
5.助詞の選び方
日本語を勉強する際の難しいポイントとして、適切な助詞の選び方も挙げられます。「助詞」は、ほかの単語のあとに付いて文節をつくる言葉です。「助詞」の種類や役割を以下で説明します。
- 格助詞…主に名詞について単語と単語の関係を表す
- 接続助詞…動詞や形容詞などの活用のある単語について、前後の文節を繋ぐ
- 副助詞…さまざまな単語について、仮定や限定などの意味を加える
- 終助詞…文末について、感嘆や強調などの意味を添える
特に難しいといわれているのが、「格助詞」の選び方です。
たとえば、「誰か会議に行ってくれませんか?」と聞かれた場合は、動作の主体を表す「格助詞」「が」を使って「私が行きます。」と答えられます。
同じように「格助詞」「も」を使って、「私も行きます。」と答えられる場合もあります。ただし、「も」が使えるのは、ほかの誰かが同じ動作をするとあらかじめ決まっている場合のみです。そのため、会議に行くのが自分一人の場合に「も」は使えません。
このように、格助詞が変わると、意味が大きく変わったりニュアンスが伝わらなくなったりするため、選び方が難しいといえるでしょう。
6.文字の種類の多さ
日本語の文章には、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」「ローマ字」の4種類の文字が使われます。文章の読み書きができるようになるには、日本語の特有の文字である「ひらがな」「カタカナ」「漢字」の習得が必要です。
しかも、「ひらがな」「カタカナ」は、それぞれ46文字もあります。
漢字にいたっては、知っておけば日常生活で読み書きに困らないとされる必要最低限の漢字(常用漢字)が、2136文字もあるのです。
日本語を勉強する最初の段階で、文字の種類が多くて覚えられないという方もいるでしょう。
7.擬音語や擬態語の多さ
日本語が母国語でない方は、勉強をするなかで「擬音語」や「擬態語」の多さに戸惑うようです。
「擬音語」は、「ワンワン」や「ザーザー」など、動物の鳴き声や実際に出ている音を表しています。
「擬態語」は、「すやすや」や「ひらひら」など、状況を音で表した言葉です。
海外では動詞または形容詞で「擬音語」や「擬態語」を表現することが多いため、音を表す日本語になじみにくいのでしょう。
擬音語・擬態語については、「オノマトペとは?意味や使い方を覚えて表現を豊かにしよう」や「日本語のオノマトペクイズ全30問を出題!楽しく学びたい人におすすめ」のコラムでも解説しています。
日本語の勉強の進め方
日本語の勉強を進める際は、学習する順番が重要です。以下では、日本語の勉強の進め方をまとめています。
- まず、ひらがなとカタカナを覚える
- 画数の少ない漢字から覚え始める
- 主語・述語・目的語といった文の成分の順番を勉強する
- 形容詞の活用の仕方を学習する
- 動詞の活用の仕方を勉強する
漢字の習得には多くの勉強時間が必要です。画数の少ない漢字から覚え始めて、文法の勉強と同時進行で学習を進めていきましょう。
形容詞は、どの単語でも活用のパターンが変わりません。単語によって活用のパターンが変わる動詞より覚えやすいため、先に勉強すると良いでしょう。
「日本語の文法を知りたい!正しく理解するためのポイントを説明」のコラムでは、日本語の文法について詳しく解説しています。日本語の勉強方法を探している方には、「日本語の勉強方法を外国人に向けて解説!覚えるのが難しい内容も紹介」のコラムもおすすめです。
日本語を効率良く勉強する方法
一からしっかりと日本語を勉強したい方は、日本語学校に通うのがおすすめです。ほかにも、好きなものや興味のある対象を通して日本語を勉強する方法を取り入れると、無理なく継続できて効率も良いでしょう。
日本語学校に通う
日本語を習得し日本での進学や就職を希望する方は、日本語学校に通って勉強するのがおすすめです。
日本語が母国語がでない方が日本の大学や専門学校に進学するには、JLPT(日本語能力試験)N2レベル以上の日本語能力が必要です。
多くの日本語学校は、JLPTの合格を目的としたカリキュラムを組んでいるため、効率良く日本語の勉強ができるでしょう。
また、日本語学校では日本のマナーや文化も学べます。海外在住で将来的に日本で働きたい方は、日本語学校でマナーを身に付けておくと、就職時に役立つでしょう。
日本のアニメ・ドラマ・映画などを観る
日本語を楽しく学習するには、興味のある日本のアニメやドラマ、映画を観ると良いでしょう。
映像によって状況を理解できるので、初めて日本語を勉強する方にも分かりやすくておすすめです。アニメやドラマ、映画でよく出てくるセリフは印象に残りやすいため、自然と日本語を覚えられます。
日本のアニメやドラマ、映画の原作となった漫画や小説などを読むのも、おすすめです。映像作品を観ているとあらすじが頭に入っているため、分からない言葉や読めない漢字があっても、内容を理解しやすいでしょう。読み進めていくうちに知っている言葉が増えて、日本語の読解能力が上がります。
好きな作品を楽しみながらだと、日本語の勉強が続けやすいでしょう。
日本のアーティストの曲を聴く
音楽が好きな方は、日本のアーティストの曲を聴いて日本語を勉強すると良いでしょう。
歌詞を覚えたり単語の意味を調べたりしているうちに、自然と多くの日本語が学習できます。また、最新の曲には若者言葉や流行語も使われているため、新しく生まれた言葉の習得も可能です。
曲を覚えて歌うことで、発音や会話の勉強にも役立つでしょう。
移動中や空いている時間などの好きなタイミングで学習できるのも、音楽を聴いて勉強するメリットの一つです。
日本の文化や歴史から学ぶ
日本の文化に興味がある方には、神社や寺院などの特徴や歴史を調べるのもおすすめです。日本語で書かれた伝統的な建築物についての本やWebサイトを読むと、文字の勉強になるでしょう。
神社や寺院、日本庭園などを実際に訪れるのも、案内表示やパンフレットから日本語が学べるのでおすすめです。ガイドの人と話すと会話の勉強にもなります。
ほかにも、茶道や華道などを体験したり習ったりしてみると、文化を学びながら同時に日本語の勉強もできるでしょう。
SNSで日本人の友人を見つける
SNSを利用して日本人の友人を作り、日本語でメッセージを送り合うのもおすすめの勉強法です。
実際に日本語を使ってやり取りをすることで、単語や文法、日常的によく使う表現などを学べます。
分からない日本語の言葉をすぐに質問できるのもメリットです。実際に人とやりとりしながら勉強していくと、より実践的な日本語が身に付くでしょう。
日本人と直接会話する
日本人と直接会話をすると、日本語を早く覚えられるでしょう。また、会話をしていくうちに、自然と言葉の意味や細かいニュアンスを学べます。実際に日本人と会話することで、発音の勉強にもなるでしょう。
目上の人と話す機会があれば、日本語の敬語表現やマナーも勉強できます。
日本語の勉強に役立つWebサイトやアプリを利用する
日本語を勉強できるWebサイトやアプリを利用するのも、おすすめの学習方法の一つです。無料で利用できるWebサイトやアプリが多いため、費用を気にせずに勉強できます。日本語の勉強に役立つWebサイトやアプリは以下のとおりです。
- つながるひろがるにほんごでのくらし…さまざまな場面で使われる日本語を動画と文章で勉強できるWebサイトで、3つのレベルに分かれている
- いろどり日本語オンラインコース…基本的な日本語のコミュニケーションを勉強できるWebサイトで、ユーザー登録が必要
- NHK NEWS WEB EASY…分かりやすい日本語で最新のニュースを伝えているWebサイトで、記事の漢字にはふりがなが振ってある
- Dr. Moku’s Hiragana and Katakana…ひらがなとカタカナが勉強できるアプリで、文字を覚えるためにイラストを使った工夫がされている
- Kanji Senpai…漢字の書き方や読み方、意味、発音などが勉強できるアプリ
- Yomiwa JP Dictionary…スマートフォンのカメラで漢字を撮影すると読み方が分かるアプリで、英訳も表示される
Webサイトやアプリを利用すると、使われる場面の動画を見ながら日本語を勉強できたり簡単に漢字の読み方を調べたりできるでしょう。
日本語を学びたい方には、「日本語を勉強する外国人向け!おすすめの学習法を紹介」や「外国人向け!日本語の勉強方法を紹介」の記事もおすすめです。
参照元
文化庁「つながるひろがるにほんごでのくらし」
勉強で身に付いた日本語能力を試験で測るのもおすすめ
ある程度、日本語を勉強したら、自分のレベルを測るために試験を受けるのがおすすめです。日本語能力を測る試験を受けると、理解できている内容や覚えている漢字を確認できます。
また、身に付いていない内容がはっきりするため、重点的に勉強したほうが良い個所も分かるでしょう。
試験の合格を目標にすると、日本語の勉強のモチベーションも維持にも役立ちます。
日本語能力を測る試験で最も有名なのが、前述したJLPTです。ほかにも、「J.Test(実用日本語検定)」や「NAT-TEST」などがあるので、受験を検討してみましょう。
JLPTについては、「JLPT(日本語能力試験)の申し込み方法や期間を外国人に向けて解説」のコラムをご覧ください。
JLPT以外の日本語能力を測る試験については、「JLPTだけじゃない!?さまざまな日本語の試験を紹介!」のコラムで紹介しています。
参照元
文化庁「日本語能力評価・試験等一覧」
国際交流基金・日本国際教育支援協会「日本語能力試験公式ウェブサイト」
海外に日本語を勉強する人はどのくらいいるの?
国際交流基金が発表した「海外日本語教育機関調査」のデータによると、2021年度の海外の日本語学習者数は3,794,714人でした。
2021年の海外の日本語学習者を調べると、中国人が最も多く1,057,318人でした。次いで、インドネシア人が711,732人、韓国人が470,334人、オーストラリア人が415,348人です。
2018年の結果と比べると、中国人とインドネシア人、オーストラリア人の日本語学習者はそれぞれ5.2%、0.3%、2.5%増加しています。対して、韓国人の日本語学習者は、11.5%減少している状況です。
参照元
国際交流基金「2021年度海外日本語教育機関調査結果の概要」
まとめ
日本語は英語と比べて、文字の種類が多い、敬語表現が難しいなどの特徴があります。
楽しく勉強するためには、日本のアニメやドラマ、映画を観たり、日本語の曲を聞いたりするのがおすすめです。ほかにも、日本語が学習できるWebサイトやアプリを利用すると、効率良く勉強できます。
勉強がある程度進んだら、日本語能力を測る試験を受けて実力を試すと良いでしょう。