子どもの人格形成にまで関わる日本の学校教育は、世界的に見ても珍しい制度といえます。評価される部分もある一方で、「おかしい」「変えたほうが良い」といわれる部分があるのも事実です。
このコラムでは、日本と諸外国の学校教育の違いについて解説します。また、日本の学校教育における問題点といわれる部分も紹介。内容を参考にして、学校教育のあり方について考えを巡らせてみましょう。
目次
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日本と諸外国では学校教育が大きく異なる
日本の学校教育は「日本型学校教育」とも呼ばれており、教科指導や生徒指導、部活指導をすべて教師が行うのが特徴です。諸外国の学校では教師の主な業務は生徒に勉強を教えることであり、生徒の生活に関わる指導や部活動は基本的に行いません。日本と諸外国の学校システムを比較し、それぞれの特徴を把握しましょう。
日本の学校教育の特徴
日本の学校教育は「日本型学校教育」とも呼ばれており、教科指導や生徒指導、部活指導をすべて教師が行うのが特徴です。諸外国の学校では教師の主な業務は生徒に勉強を教えることであり、生徒の生活に関わる指導や部活動は基本的に行いません。日本と諸外国の学校システムを比較し、それぞれの特徴を把握しましょう。
諸外国の学校教育の特徴
アメリカやドイツ、フランスなどの学校教育は教師が生徒に授業を行うことを指します。諸外国では日本の学校教育のように、部活動や身だしなみの指導を行うことはほとんどありません。海外では「学校の役割は教育」「生活指導やクラブ活動、身だしなみは家庭で考える」というように、役割分担をはっきりさせていることが多いです。ただし、学業をないがしろにしたり問題行為を犯したりした場合は厳重注意や停学、退学といった処分が下されます。
海外の学校教育で重視されているのは生徒の能力に適した教育を行い、才能や可能性を引き出すことです。複数の答えがあったり思考力が問われたりする問題が多く、学びへの探究心を育むことを重視しています。
日本の学校制度では義務教育は15歳まで
日本では初等教育にあたる小学校に6年間、中等教育の前半過程である中学校3年間が義務教育です。6歳で小学校に入学し、15歳で中学校を卒業したあとは就職したり進学したりと進路を決めます。義務教育の年数や開始時の年齢は国によってまちまちです。ここでは文部科学省の「諸外国の教育統計」をもとに、諸外国の義務教育についてチェックしてみましょう。
諸外国の義務教育の年数
日本の義務教育が9年間なのに対して、欧州やアメリカなどの諸外国は比較的長く、9~13年間です。一方、アジアやアフリカは義務教育の年数が短い傾向にあり、国によって差が開いています。
各国の義務教育の年齢は以下のとおりです。
・ドイツ:9年間(一部の州では10年間)、6~15歳まで
・イギリス:11年間、5~16歳まで
・アメリカ:12年間(一部の州では9~12年間)、6~18歳まで
・フランス:13年間、3~16歳まで
韓国や中国の義務教育の年数は日本と同じく9年間です。義務教育を9年以上行う国は世界的に見ても多く、年数だけでいえば日本は十分な教育を行っていると考えられるでしょう。
参照元 文部科学省「諸外国の教育統計」令和4(2022)年版
義務教育で学ぶカリキュラム
「国語・算数(数学)・理科・社会」に該当する基本的なカリキュラムは、ほとんどの国が義務教育で実施します。そのほかの義務教育で学ぶカリキュラムを知るには、各国の教育方針や法律を確認すると良いでしょう。
日本の場合は学校教育を通して、生きる力や豊かな人間性を育むのが目的です。そのため、通常の授業に加えて部活動や学校行事といった活動が盛んにおこなわれています。アメリカの義務教育では、州ごとにカリキュラムが作成されているのが特徴です。問題解決能力や創造性、批判的思考といったスキルの評価と教育水準の向上を目標としているため、カリキュラムの規定を減らして各学校の裁量に任せている傾向にあります。イギリスでは「ナショナル・カリキュラム」と「学校カリキュラム」を駆使して、最低限の教育と学校独自の授業の解説を両立させているのが特徴です。
国の教育に対する考え方や文化によって、義務教育のカリキュラムや授業時間は大きく異なります。特に、必修科目以外の教育は国や州、学校による差が大きいです。
日本の高等教育の概要については「日本の高等教育の概要と進学率を解説!良い点や問題点も紹介!」のコラムで詳しく解説していますのでご参考ください。
参照元 国立教育政策研究所「諸外国における教育課程の基準-近年の動向を踏まえて-」
日本の学校教育システムはおかしい?
授業のほかに部活動や生活指導、夜間の見回りなど日本の学校教育は教師の負担が大きいシステムです。教師が生徒の容姿や服装、行動を指導することもあり、なかには校則でプライベートな部分に関する禁止事項を設けている場合もあります。
勉強以外も学校教育の範囲に含まれる
海外の学校教育における教師の主な仕事は、生徒に授業を行い勉強を教えることです。身だしなみや生活指導、部活の顧問を担当をすることはほとんどなく、授業以外は教師が管理する範囲ではないと考えられています。一方で、日本の学校教育では給食を残さず食べさせたり、生徒の身だしなみをチェックしたりするのが一般的です。なかには生徒の下着の色や髪型まで校則で決めている学校もあり、人権侵害やセクハラにあたるとして問題視されています。防寒具の使用禁止や授業中・部活動中の水分補給禁止など、体調を崩しかねない校則も少なくありません。
合理性のないルールをおかしいと感じる人は多く、近年では生徒や自治体、学校が主体となって時代に即した校則の改革を行っています。
多様性に対する配慮が少ない
日本の学校教育は多様性に対する配慮が少なく、融通が利きにくいとされています。たとえば、地毛が茶髪だったりくせ毛だったりする生徒は、学校に「地毛証明書」を出さなければなりません。日本の学校に通う外国人やミックスルーツの子どもが増えているにもかかわらず、日本人を前提にした校則やルールから外れると指導対象になることがあります。人種や宗教、文化による日本人との違いが認められず、学校生活で苦労する親や子どもは後を立ちません。
日本人でも生まれ持った容姿が意図せず校則違反になってしまうことがあるため、「日本の学校教育はシステムを変えるべき」「現状はおかしい」という声は多いです。校則やルールを変えるのは簡単ではありませんが、現状に異議を唱える人が増えていけば日本の教育システムは変化し、生徒の多様性を尊重するようになるでしょう。
まとめ
日本の学校教育は「日本型学校教育」とも呼ばれ、授業だけでなく生徒の生活指導や部活指導も行い、人格面や道徳面で優れた人材を育てられると評価されています。一方で、人権侵害やセクハラになりかねない校則があったり、生徒の個人的な部分も学校が指導したりするのはおかしいという非難の声も少なくありませんでした。現在ではさまざまな面で改革が行われている最中です。今後の日本教育の動向に注目していきましょう。