日本で働く外国人の中には、「日本の定年はいくつなんだろう?」と考える方もいるでしょう。日本では労働力不足や少子高齢化の加速を理由に、定年が引き上げられたり定年後も働き続けられる制度が導入されたりしています。このコラムでは、日本における定年の年齢や、過去に実施された定年制度の改定について解説。再雇用制度や勤務延長制度といった定年後の雇用に関連する制度も紹介しているので、参考にしてください。
目次
日本の定年は何歳?
厚生労働省の「平成29年就労条件総合調査」によると、95.5%の企業が定年制を採用。そのうち、79.3%の企業が60歳を定年としています。しかし、2013年に高年齢者雇用安定法が改正され、2025年4月までにすべての企業で定年を60歳から65歳までに引き上げることが義務となりました。2021年現在は改正された高年齢者雇用安定法の経過措置期間で、「定年を65歳までに引き上げ」「定年制の廃止」「継続雇用制度(再雇用制度や勤務延長制度)の導入」のいずれかを導入する必要があります。
参照元 厚生労働省「平成29年就労条件総合調査 結果の概況」
将来的に70歳まで定年が延長される可能性も
2021年に改正された高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務としています。あくまで努力義務の範疇ではあるものの、日本の少子高齢化で労働力が不足すれば、将来的に定年が70歳まで延長される可能性もあるでしょう。
「日本で働く外国人必見!定年の平均年齢や定年制度の現状を解説」のコラムでも、日本の定年制度の変化について解説していますので、まとめてチェックしてみてください。
日本と外国における定年制の比較
アメリカやカナダ、イギリスなどでは、一部の職業を除き定年制を原則禁じており、何歳で仕事を辞めるかは労働者が自分の意思で決めています。定年制のない諸外国においても、定年にしたい年齢の平均は徐々に上昇傾向にあるようです。また、定年制のあるドイツやフランスなどでも、定年を65歳から67歳までに引き上げる予定があることから、日本以外の国でも定年延長の流れが加速している現状が見て取れます。
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日本の定年はなぜ延長されたのか
日本の定年が延長された背景には、主に3つの理由があります。外国人の方は、自国の定年事情と重なる部分もあるでしょう。ここでは、日本の定年が延長された理由について詳しく解説します。
1.少子高齢化による労働力不足のため
日本で定年が延長された理由の一つは、少子高齢化に伴う労働力不足を補うためです。労働力が不足し続けると、現役の就労者が負担する年金や税金の負担額が増えることが考えられます。また、企業にとっても労働力不足は深刻な問題で人手が足りず経営規模の縮小を余儀なくされる恐れがあるのです。
2.定年後も働きたい高齢者が増えたため
厚生労働省の「令和2年版厚生労働白書」によると、日本人の健康寿命は男女ともに年々上昇しており、定年退職してもまだ働きたいという方が増えたことも定年の延長に影響しています。「健康維持のため」「生活費のため」「仕事が好きなため」など理由はさまざまですが、定年の延長は就労意欲のある高齢者のニーズに合わせた改正でもあるのです。
参照元 厚生労働省「令和2年版厚生労働白書」
3.定年と年金支給開始までの空白をなくすため
定年と年金の支給開始年齢までの空白期間を作らないようにするのも、定年延長をした理由の一つです。日本では2013年から年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられており、最終的に60歳から65歳に変更される予定となっています。定年が60歳のままでは退職後に年金をもらえない期間が発生してしまうため、定年の引き上げが完了する2025年までに年金の支給開始を65歳にするよう計画されました。引き上げのペースは3年に1歳ずつで、男性は2025年に、女性は5年遅れて2030年に年金の支給開始年齢が65歳となる予定です。
参照元 厚生労働省「いっしょに検証!公的年金~財政検証結果から読み解く年金の将来~」
定年を迎えても働ける日本の制度
定年を迎えても働ける日本の制度に、再雇用制度と勤務延長制度があります。ここでは両者の内容や違いについて解説するので、高齢になっても長く働きたい外国人は、職場にどちらかの制度があるか確認してみてください。
再雇用制度
再雇用制度とは、定年退職後に改めて雇用契約を交わす制度です。定年に伴う再雇用の場合、退職以前の役職は失われ、アルバイトや契約社員といった新しい雇用形態で契約します。勤務日数や勤務時間といった労働条件は、再雇用の際に変更可能です。
勤務延長制度
勤務延長制度とは、現在の役職や給与、仕事内容などを大きく変更せずに雇用を延長して働ける制度のことです。退職金は勤務延長の終了時に支払われます。元々勤務延長制度は、定年退職を予定した社員の後任が見つからなかったり、該当する社員が定年退職することによって経営に支障が出たりするのを防ぐ目的で制定されました。
まとめ
2025年4月以降は、すべての企業で65歳までの就業機会の確保が義務となりました。もちろん日本で働く外国人も定年を迎えれば、高年齢者雇用安定法の対象として再雇用や勤務延長などの制度を受けられます。
改正された高年齢者雇用安定法は、高齢者がより長く社会で活躍するための制度です。日本の企業に在職している方や、これから日本で仕事を見つけるという方は、会社の定年制について確認しておくと安心といえるでしょう。