「日本の電力の需要は増加しているの?」「日本と海外の消費電力量の差を知りたい」と思う外国人もいるでしょう。このコラムでは、日本の電力の需要の推移を詳しく解説します。また、日本の最大電力と最大日電力量も紹介。エネルギー資源の自給率や輸入など、日本が抱える課題もまとめているので、参考にして日本の電力に関する知識を身に付けましょう。
目次
日本の電力の需要の推移
日本の電力の需要は、エアコンやパソコンなど電化製品の普及を背景に伸び続けています。1990年以降、自然から得られる「一次エネルギー」のなかで電力が占める割合は40%を超えている状況です。
経済産業省が発表した「総合エネルギー統計」によると、2020年度の最終エネルギー消費のうち、電力は27%を占めています。最終エネルギー消費とは、一次エネルギーと、一次エネルギーを加工した「二次エネルギー」の消費を合わせたエネルギーの総量のことです。2020年度の電力消費は、前年と比べて、2.1%増加していました。日本の電力の需要は、政治や経済の動きに左右されています。2011年に「東日本大震災」が発生してからは、電力の消費量を抑えるために節電を行う人が増加しました。そのため、近年では電力の需要の伸びが鈍化しています。
来日を検討している外国人の方には、「外国人が日本で生活すると電気代(電力消費量)はいくら?節約術も紹介!」のコラムもおすすめです。
参照元 経済産業省資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」
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日本の消費電力と消費電力量
ここでは、日本の一人あたりの年間消費電力量を世界の国々と比較して紹介します。また、日本で記録された最大電力と最大日電力量もまとめているので、参考にしてください。
消費電力量
2018年度の日本の一人あたりの消費電力量は、年間8,010kWhでした。主要国のうち、一人あたりの消費電力量が最も多いカナダは15,438kWh、次に多いアメリカは13,098kWh、韓国は11,082kWhです。カナダが最も多いのは、水力が豊富で電力を確保しやすく、電気料金が安いからでしょう。
同年の国別の割合を見てみると、世界全体の消費電力量の45%をアメリカと中国とで占めていました。内訳は中国が28%、アメリカが17%です。次いでインドが5%、日本とロシアが4%を占めています。
最大電力と最大日電力量
ある一定の期間のなかで、最も多く使用されたピーク時の電力量を最大電力といいます。最大日電力量とは、1日に消費される電力量の最大値のことです。
日本の最大電力で最も大きい値を記録した日は、2001年7月24日の18,269万kWでした。夏は冷房を使う機会が多いため、1年のなかで最も最大電力の値が大きくなります。2001年以降は、徐々に最大電力の値が下がり、東日本大震災が発生した2011年以降の最大電力は17,000万kW以下です。
最大日電力量のデータも見てみましょう。2010年8月24日には、日本の最大日電力量として最も大きい値である339,668万kWhを記録しました。2011年には322,648万kWhと数値が下がり、2019年は314,988万kWhとさらに少なくなっています。最大日電力量も最大電力と同様、夏に最高値が記録されることがほとんどです。しかし、2011年から2017年までの最大日電力量は12月と1月、2月に記録されています。夏の冷房だけでなく、冬の暖房も電力消費に大きく影響を及ぼしているといえるでしょう。
参照元 電気事業連合会「電気事業のデータベース(INFOBASE)」
日本が抱えるエネルギーに関する課題
日本はエネルギー資源を海外からの輸入に頼っており、国内でのエネルギー自給率が低い状況です。ここでは、日本が抱えるエネルギーに関する課題を詳しく解説します。
日本はエネルギー自給率が低い
日本はエネルギー自給率が低い国です。2010年のエネルギー自給率は20.3%でしたが、2011年には11.6%、2014年には6.4%まで下がりました。2018年に11.8%まで上がりましたが、ほかの国と比較するとかなり少ない自給率です。2018年のOECD(経済協力開発機構)に加盟している国のエネルギー自給率は、ノルウェーが最も多く700.3%でした。次いでオーストラリアが320%、カナダが175.8%です。日本は35ヶ国中34位で、1位のノルウェーと比較すると60倍以上の自給率の差があります。
エネルギー源を海外からの輸入に頼っている
日本は国内にエネルギー資源がほとんどないため、海外からの輸入に頼っています。1973年の日本の化石燃料は、94%が海外からの輸入でした。1970年代に原油価格が高騰したことで起きた「オイルショック」をきっかけに、日本は化石燃料の海外輸入率を下げようとします。しかし、2011年に発生した「東日本大震災」の影響で原子力発電所が稼働を停止したことにより、火力発電が増加しました。日本は発電のための化石燃料を海外からの輸入に頼ることになったのです。2018年時点での日本で用いる化石燃料は、85.5%を海外から輸入しています。
継続的にエネルギーを確保できない可能性がある
国際情勢によっては、日本は今後継続的にエネルギー資源を確保できない可能性があります。たとえば、日本は原油を中東からの輸入に頼っていますが、中東は政治が安定していません。また、2019年には原油の輸送路の近くで、日本の船舶が攻撃される事件もありました。もし、輸送路を利用できなくなると、世界のエネルギー価格が上がる可能性が考えられます。日本は特定の国からの輸入に頼らず、輸入先を分散させて継続的にエネルギー資源を供給していかなくてはなりません。
まとめ
日本の電力の需要は徐々に伸びています。しかし、2011年に発生した「東日本大震災」をきっかけに節電を意識する人が増え、電力の需要の伸びは鈍化している状況です。
日本はエネルギー自給率が低く、エネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っているという課題を抱えています。海外からの輸入に依存し続けると、いずれ安定してエネルギーを確保するのが難しくなるリスクがあるでしょう。