日本は火山が多く、天然温泉の数が世界一の国です。しかし、火山と温泉がどう関係するのかよく分からない方もいるでしょう。このコラムでは、火山と温泉の関係を紹介します。また、火山とは関係のない場所で湧く温泉についても解説。日本の有名な火山によってできた温泉もまとめています。内容を参考にして、日本の温泉への理解をさらに深めましょう。
目次
温泉が湧く仕組みとは?火山との関係
温泉は火山と密接な関係があります。火山とは、地球の内部にあるマグマが地表に噴出する際にできた山のことです。一方温泉は、地表近くまで上昇してきたマグマの熱によって温められた地下水やガスが、地上に湧き出ることでできます。火山地帯では比較的地上に近い位置にマグマがあるので、温泉が沸きやすいのです。このような、火山の活動によりできた温泉を「火山性温泉」といいます。
日本列島があるのは、4つのプレート(地球の表面にある大きな岩盤)のうえです。このような場所はプレートの動きによってマグマの活動が活発になりやすく、火山や温泉が多くなります。なお、すべての地下から湧くお湯が温泉になるわけではありません。温泉法により定められた物質を規定量含んでいる、もしくは摂氏25℃以上の温度を保っている温水が温泉に定義されます。
参照元 環境省「温泉の定義」
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火山がない場所にも温泉は湧く!
温泉は先述した「火山性温泉」のほかに、火山の活動とは関係のない理由で湧く「非火山性温泉」もあります。
深層地下水型
深層地下水型は、地下の奥深くに染み込んだ地下水が、地中の温度によって温められてできた温泉です。地中の温度は、深くなればなるほど高くなります。たとえば、地下1000mの温度は約35~45℃、約1500mになると45~60℃ほどです。深層地下水型の温泉は自然に湧き出てくる以外にも、奥深くまで機械で掘り下げる「ボーリング」によって見つけられます。東京都内や平地にある温泉のほとんどは、この深層地下水型の非火山性温泉です。
化石海水型
大昔の地殻変動により地中に閉じ込められた海水を「化石海水」といいます。化石海水の温度は高くありません。しかし、塩分を多く含んでいることから温泉法で定める温泉に該当します。化石型温泉はそう多くありません。新潟県の松之山温泉や和歌山県のかつらぎ温泉などごく僅かです。
温泉に入ると健康に良いって本当?
温泉に含まれる成分は、健康にさまざまな良い影響をもたらすといわれています。医療が発達するはるか昔から、皮膚病や関節炎などの慢性疾患の苦痛を和らげるのに温泉が使われてきました。温泉は、場所ごとに含まれる成分が異なり、効能も変わります。なお、持病のある方は、温泉の成分によっては逆に健康を損ねてしまう可能性があるので、注意しましょう。温泉の成分は、温泉宿や各温泉協会のWebサイトで確認できます。
温泉が健康に良い理由は、含まれている成分による効果だけではありません。暖かい湯にゆっくり浸かることで血行が良くなり、さまざまな不調が改善されやすくなります。また、体にかかる水圧や浮力には、体をリラックスさせる効果もあるのです。
日本の入浴習慣については「日本のお風呂の入浴方法は独特?文化や海外との違いなどを紹介!」のコラムも参考にしてください。
日本の有名な火山性温泉
ここでは、火山の活動によりできた火山性温泉のなかでも、特に有名な4つを紹介します。
箱根温泉
箱根温泉は、神奈川県足柄下郡箱根町にある温泉のことです。奈良時代に発見された歴史のある温泉で、江戸時代には「湯本」「塔之沢」「宮ノ下」「堂ヶ島」「底倉」「木賀」「芦之湯」を合わせた「箱根七湯」として有名になりました。現在では、新たに掘削された温泉を合わせて17~20の温泉があります。大きく分けて6種類の泉質があり、それぞれ違った入り心地を楽しめるでしょう。
17~20ヶ所ある温泉のなかでも最も歴史の古い「湯本温泉」は、箱根を代表する湯として有名です。湯本温泉の泉質は「単純温泉」といい、刺激が少なくお年寄りや子どもも楽しめます。箱根は温泉だけでなく観光地としても有名です。温泉に入ったあとは、湖畔のリゾート「芦ノ湖」や火山活動を感じられる「大涌谷」、自然と彫刻を一緒に楽しめる「彫刻の森美術館」などにもぜひ行ってみましょう。
草津温泉
群馬県草津町にある草津温泉は、自然湧出量日本一を誇ります。湯量が多いので、湧き出た湯を循環させずにそのまま楽しめる「源泉かけ流し」が可能です。泉質は酸性が強く肌の表面を滑らかに整えるので、美肌になれる湯として知られています。また、その酸性の強さから「恋の病以外は何でも治せる」というジョークまで作られました。
草津温泉の名物は、江戸時代から伝わる「湯もみ」です。女性達が歌いながら長い板でお湯をかき回し、温度を下げて肌当たりを滑らかにします。現在でも観光客を楽しませるショーとして行われているので、草津温泉に行った際は見学してみてください。
熱海温泉
静岡県熱海市にある熱海温泉は、江戸時代には将軍達に献上されたといわれる由緒ある温泉です。また、多くの有名な小説家が長期宿泊したり別荘を構えたりするなど、文豪ゆかりの地として知られています。
熱海温泉の主な泉質は、塩化物温泉と硫酸塩温泉です。体を芯から温め、関節痛や神経痛の痛みをやわらげる効果があるといわれています。なお、熱海温泉の場所は、温泉地には珍しく海の近くです。そのため、夏は温泉とあわせて海水浴も楽しめます。
雲仙温泉
長崎県雲仙市小浜町雲仙にある雲仙温泉は、国立公園に指定されています。江戸時代には、西洋から来た外国人のリゾート地として人気でした。
雲仙温泉に行ったら、地獄巡りをしてみましょう。地獄めぐりとは、火山地帯を歩いて巡ることです。水蒸気やガスが勢い良く吹き出す様子が仏教で言い伝えられてる地獄のようなので、この名が付けられました。自然のパワーやエネルギーを感じられるスポットです。
まとめ
火山の多い日本には温泉もたくさんあります。温泉に入ることで、日本の伝統である入浴文化をより身近に感じられるでしょう。旅行に行った際はホテルだけでなく温泉旅館にも宿泊して、温泉を楽しんでみてください。