阿波踊りは400年続くパリピ文化! 日本一の踊る阿呆・寶船が世界に伝える「3つの魅力」

WeXpats
2023/04/21

日本を代表する踊りのひとつである阿波踊り(あわおどり)。400年の歴史を誇る伝統芸能でありながら、「踊る阿呆に見る阿呆(アホウ) 同じ阿呆なら踊らにゃ損損」という歌詞に象徴されるように、その精神は現代の“パリピ文化”にも通じます。

「本来、流行の最先端を取り入れる精神こそが『阿波踊りイズム』だったんです」

そう語るのは、阿波踊り集団「寶船(Takarabune)」の代表・米澤渉(Wataru Yonezawa)さん。これまでに世界21カ国のステージを熱狂させてきた、阿波踊り界のトップランナーです。

寶船のパフォーマンスは一見すると非常に斬新で型破り。例えば、2023年春に披露された「SHIBUYA AWA DANCE RUNWAY」は、ファッションショーと阿波踊りのコラボレーション。ハイブランドに身を包み、トランペットで踊る彼らの姿は、スタンダードな阿波踊りからかけ離れています。

しかし、阿波踊り400年の歴史には、女性用の派手な着物で踊る男性を「粋(いき)」とする価値観や、当時のトレンドだったジャズを踊りに取り入れる時代も存在したのです。

伝統を再解釈し、最先端のカルチャーとして世界に発信する寶船。彼らが「最強の文化」だと語る阿波踊りの魅力を聞きました。

▲2023年3月に行われた、ファッションブランド「HARE」とのコラボパフォーマンス「SHIBUYA AWA DANCE RUNWAY」。渋谷ヒカリエの通路を行進する形で披露され、施設の一般客を次々と列に巻き込みながら、雨天とは思えない熱狂を生み出しました。

 

阿波踊り=デトックス!? 踊る阿呆(アホウ)になる魅力​​​​​​

 

――海外の舞台でMCをする機会も多いと思いますが、阿波踊りを知らない方に対して、どのように魅力を説明していますか?

シンプルに「僕らが考える最強の文化だよ」と伝えます。あとはもう、実際に踊ってもらう方が早いんです。誰でも、いつでも、言葉が分からなくても、たった5分で踊れるようになるという阿波踊り最大の魅力をご自身で体感できますから。

 

――なるほど。たしかに「みんなで同じダンスを踊る」という体験そのものが価値ですよね。

もう少し詳しくお話しすると、寶船が考える阿波踊りの魅力は「双方向性(Interactive)」「多様性(Diversity)」「非言語性(Nonverbal)」の3要素です。

まずは「双方向性(Interactive)」。僕らはお客さんと一緒に踊ることを何より大切にしています。

 

400年以上続く阿波踊りの価値観が「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損損」。阿波踊りは身分制度が激しい時代に生まれた庶民の文化なので、踊っている人も、それを見ている人も、教養や立場に大した差はありません。同じような阿呆なんだから、恥ずかしがらずに一緒に楽しもうぜってことですね。

娯楽の少なかった昔の庶民にとって、阿波踊り祭りは溜まりに溜まったストレスを解放できる一大イベントでした。頭をカラッポにして、汗や涙と一緒にモヤモヤを体から排出する、いわば心のデトックスだったというか。

 

現代においても、思いっきりアホになれる機会なんてそうそう無いですよね。特にコロナ以降は、世界中どこへ行っても「お客さんが疲れてるな」と感じることが多くて……。だけど踊った後はすごくスッキリした表情になるんです。

踊ろうぜ! 叫ぼうぜ! 汗かこうぜ! って呼びかけて、お客さんの中で滞っている負の感情を吐き出させてあげることが、「踊る阿呆」である僕らの使命なのかなと。

 

――「双方向」ということは、寶船としてもお客さんから何かを受け取っているのでしょうか?

そうですね。僕ら自身、人々の心が一つになった瞬間の感動が大好きなんです。

コロナ禍で配信ライブやオンラインワークショップを始めたのですが、やればやるほど「現地で踊りたい」という気持ちが募りました。やっぱり、物理的に同じ空間を共有して、体と体で触れ合う感動には代えがたかった。自分たちの本能が求めるものを炙り出された三年間だったように思います。

 

――それでは2つ目の「多様性」とは?

まずは「誰でも踊れる」ということですね。阿波踊り祭りには子どもからお年寄りまで参加しますから、あらゆる人が踊れるように、振り付けがとても簡単です。

それに「文化的な多様性」も阿波踊りの魅力といえますね。昔の阿波踊りは本当に自由で雑多、いい意味でぐちゃぐちゃでした。ヴァイオリンで踊ったり、最新のファッションを取り入れたり、とにかく楽しければOK。本来、流行の最先端を取り入れる精神こそが「阿波踊りイズム」だったんです。

現在、メインストリームの阿波踊りは「こう踊ろう」という決まりが確立されていて、例えば男性が踊る「男踊り」と女性が踊る「女踊り」では振り付けが異なります。でも、これは阿波踊りが観光産業になって以降、1960年代に生まれた比較的新しい文化なんです。寶船では主流のスタイルにはこだわらず、外の文化とどんどん交わりながら、伝統芸能の新たな可能性に挑戦しています。

 

――体の性別で振り付けを区別しないことは「ジェンダーの多様性」にもつながりますね。そして3つ目が「非言語性(Nonverbal)」でしょうか。

阿波踊りの振り付けはとても簡単ですから、言葉が無くとも動きを見せれば理解してもらえます。

英語圏の国でパフォーマンスをした翌日、今度はフランス語圏の国で踊る。イタリア語圏の国からポルトガル語圏の国へ行く。そうやって世界中で同じ芸を見せられるのは、1人のパフォーマーとして誇らしいですね。

 

伝統芸能を未来につなげる「NEO阿波踊り」

――寶船のメンバーには海外出身の方もいますか?

今まさに活躍しているスペイン人のメンバーがいます。過去にはフランスの男の子が留学中に参加してくれたり、ベルギーやカナダの子がいたり。ある子からは「日本の伝統文化って静かで厳格なイメージだったけど、こんなに元気でノリノリの団体もあるんだ」と言われました(笑)

 

――これまで海外で活動してきて印象深いエピソードを教えてください。

宗教対立による内戦が続いていた国でのパフォーマンスが心に残っています。主流宗教が異なる様々な地域で踊ったのですが、どこへ行ってもすごく歓迎してもらえました。思想が異なる人たちが、同じダンスを踊って、同じように笑顔になって、その光景にすごくグッときたんです。

言葉があるから議論が生まれて、そのせいで対立が過激化していく側面もあると思います。そんな時に「一旦みんな言葉を忘れて踊ろうよ」と言える阿呆がいてもいいんじゃないでしょうか。そうして少しでも平和に貢献できるのなら、非常に幸せだと感じます。

 

――伝統芸能の繋ぎ手としては、どのような未来を描いているのでしょうか?

僕らは「NEO阿波踊り集団」を名乗っていて、それは阿波踊りの歴史を未来につなげたい、という想いがあるからです。

阿波踊りっていわばトラディショナルなパリピなんです。その精神はクラブカルチャーだったり、渋谷ハロウィンだったり、現代の若者文化にちゃんと受け継がれています。今でこそ阿波踊りは伝統文化の位置付けですが、昔は「風紀が乱れるから」って禁止されたこともあったんですよ。

「阿波踊りって伝統的でかっこいいよね」だけじゃなくて、「阿波踊りって流行の最先端だよね」と言われるような旬のカルチャーにしていくことが僕らの役割です。そのために、これからも伝統芸能の可能性に挑戦していきます。

取材協力:寶船

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