日本人の名前は、字の意味や組み合わせ、読み方、音などを考慮して、親が慎重に名付けます。名付ける際にはいくつかのルールがあります。日本人の名前の構造の基本や最近人気の名前、日本語を話すときの使い方を学びましょう。
目次
日本人の名前の基本構造
日本人の名前はどのように構成されているのか、なぜ混乱することがあるのか、不思議に思ったことはありませんか?
名前の前に名字
アジアの多くの国々と同様に、日本人の名前は名字を先に、名前を後に書きます。
例えば、日本の有名な作家、「太宰治」の名前を見てみましょう。
「太宰」は名字、「治」は名前です。
英語では「Osamu Dazai」ですが、順番が違うので注意してください。
また、日本人の名前には、欧米人のようなミドルネームがほとんどありません。日本人でミドルネームを持つ人は、違う国で育ったか、両親のどちらかが日本人でない可能性が高いです。
【ポイント!】
ミドルネームがあり、それがパスポートに記載されている場合、日本でのすべての書類(特に法的な書類)にはミドルネームを記載することをお勧めします。パスポートに記載されている名前と法律上の書類が一致せず、後々問題になる人もいます。
名前に含まれる文字
漢字の名前
日本人の名前の多くは漢字で表記されます。例えば、「はる」という名前の場合、様々な漢字が使われます。
- 陽:光、太陽、男性を意味する
- 春:春を意味する
- 晴:晴天を意味する
このように、日本人の名前は、発音が全く同じでも、漢字によって意味が異なるのです。名前の例をもっと詳しく見てみましょう。
- 「よし」:吉(幸運)、義(正しい)、良(徳のある)など
- 「ゆき」:幸(幸せ)、雪など
- 「じゅん」:淳・純(純粋)、潤(繁栄)など
これらの名前と文字は、他の文字との組み合わせで長い名前の一部となり、名前にさらに意味を持たせることができます。また、初めて名前を伝えるときに、その字の意味や使い方を説明し、その字をイメージできるようにする役割もあります。
ひらがな・カタカナの名前
漢字を使わず、ひらがなやカタカナの名前の方もいます。例えば、「ゆき」です。この場合、名前の意味は分かりにくいですが、読み間違いはないでしょう。また、漢字とひらがなが混合している名前の方もいます。
カタカナは、外国にルーツを持つ方の名前によく使われます。日本にいる外国人のほとんどは、自分の名前がすでに漢字で書かれている国でない限り、自分の名前の発音をカタカナで表記します。しかし、日本人のご両親の中には、カタカナ表記をあえて選択される方もいます。例えば、Erikaという名前は日本でも海外でも人気があるので、漢字、ひらがな、カタカナのどれで表記するかは人それぞれです。
性別固有の名前
漢字の中には、男の子の名前に使われるものと、女の子の名前に使われるものがあります。そのため、例えば学校の出席簿を見れば、一目で男の子か女の子かわかるようになっています。
日本人の男性の名前には、武士のような強さをイメージさせる漢字や、男の子や息子であることを示す漢字があります。
例えば
- 武:「たけし」「まもる」「いさむ」などの読み方があり、「強い」「戦士」という意味があります。また、他の文字と組み合わせて、「たけ」「む」と読むこともあります。
- 夫:「お」と読み、「哲夫」「昭夫」など、名前の最後に付けるのが一般的です。
- 郎:「息子」を意味し、「次郎」「太郎」など、男の子の名前の最後に付けられます。
女性の名前には、花などの女性的で美しいものをイメージさせる漢字が使われることもあります。
- 花:「はな」や「か」と読み、「はな」「えりか」「かのん」など、女の子の名前によく使われます。
- 美:美しいという意味で、「み」と読み、「えみ」「みお」「みさき」など、女の子の名前によく使われます。
最近は名前を工夫する両親が多く、上記のような性別にこだわった漢字が使われることも少なくなってきています。また、「じゅん」や「あおい」など男の子と女の子の両方に使われる名前もあります。
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日本人に人気のある名前と一般的な名前
日本人の一般的な名字
日本人の一般的な名字はしばらく変化していません。日本で多い名字は「佐藤」、「鈴木」、「高橋」であり、昔からよくある名字です。また、「田中」「伊藤」「渡辺」「山本」「小林」「加藤」などもよくある名字です。
一方、名前(ファーストネーム)は世代によって異なります。名前に含まれる文字で世代が分かることもあります。例えば、「りん」という名前は、最近、男の子にも女の子にも人気がありますが、長い名前のあだ名として使われることはあっても、古い世代ではあまり見かけない名前です。
最近人気のある名前(2021年~2022年)
ベネッセコーポレーションが運営する新米パパ・ママ応援メディア「たまひよ」の2021年の調査による『2021年赤ちゃんの名前ランキング』の結果です。
親が男の子の赤ちゃんに選んだ名前のTOP10はこちら!
名前 |
読み方 |
意味や子どもへの希望 |
1.蓮 |
れん |
蓮花、純粋、美しい |
2.陽翔 |
はると |
太陽に向かって走る/飛ぶ、高みを目指す |
3.蒼 |
あおい |
青緑、空と海のように大きく自由に、豊かに育む |
4. 樹 |
いつき |
空に向かって背伸びをする |
5.湊 |
みなと |
港、人が集まるところ、グローバル、フレンドリー |
5. 朝陽 |
あさひ |
朝日、明るい、寛大 |
7. 碧 |
あおい |
青色、輝く宝石、明るい、信頼できる |
8. 大翔 |
ひろと |
大飛躍、高みを目指す、舞い上がる |
9. 律 |
りつ |
理念、リズム、強い理念、創造性 |
10. 暖 |
だん |
暖かい、暖かい日差し、親しみやすい、穏やかな |
しかし、名前の字は関係なく音だけで人気のある男の子の名前のTOP5は、「はると」「りく」「みなと」「はるき」「あおと」でした。
親が女の子の赤ちゃんに選んだ名前のTOP10はこちら!
名前 |
読み方 |
意味や子どもへの希望 |
1. 陽葵 |
ひまり |
太陽のように元気いっぱい、ひまわりのように育つ |
1. 紬 |
つむぎ |
つながる、夢を叶える、人とつながる、強くなる、長生きする |
3. 凛 |
りん |
力強く、凛々しく、優雅に |
4. 芽依 |
めい |
芽を出す、新しいことに挑戦する、強い信念を持つ |
5. 葵 |
あおい |
花、かわいい、誠実、正直、強い |
6. 陽菜 |
ひな |
穏やか、優しい、温かい、誠実 |
7. 澪 |
みお |
水路、水辺、親切に人を助ける、若い、美しい |
8. 莉子 |
りこ |
論理的、冷静、人を安心させる |
9. 結菜 |
ゆいな |
元気、かわいい、人をつなぐ |
10. 杏 |
あん |
アプリコット、人々を助けるために、グローバル |
名前の字は関係なく音だけで人気のある女の子の名前のTOP5は、「えま」「みお」「つむぎ」「めい」「あおい」でした。
そして、2022年上半期の総合人気名前ランキングTOP5はこちら!
- 心桜:「こころ」「こはる」「ここな」「ここみ」など
- 碧:「あお」「あおい」「みどり」
- 虎優:「とらまさ」「こう」 ※2022年は寅(=虎)年のため
- 琉翔:「りゅうと」
- 颯:「はやて」「そう」「かける」など
これらの名前が2022年末のランキングを揺るがすのか、それとも昨年から人気の名前がまだ根強く残っているのか、注目です。
『日本の子どもに多い名前とは?由来や人気の傾向について解説!』ではより詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
日本人のユニークな名前「キラキラネーム」
「キラキラネーム」は、読み方や発音が特殊な名前です。今までにない名前から、漢字の読み方が面白い名前まで、さまざまです。
- 「ピカチュウ(光宙)」、「ナルト」、「アリエル(泡姫)」など、人気キャラクターの名前。
- 「テトリス(凸)」:テトリスのゲームに登場するブロックのように見える凸という漢字を使った名前。
- 「モカ」や「ココア」など親が好きなものからとったかわいい名前。
- 「一番(とっぷ:Top)」「偉人(ぐれいと:Great)」など、本来の漢字の読み方ではなく、意味から読み方をとった名前。
キラキラネームは、それ自体がとても目立つものですが、その名前を選んだ親以上に、その名前を持つ子どもたちの人生に影響を与えるものです。確かに印象に残り忘れにくい名前ですが、一度で正しく言えなかったり、他の子から「キラキラネーム」だとからかわれたりと、嫌な思いをすることもあります。それが原因で、大人になってから改名をしてしまう人もいます。
英語名から日本語名への変換
日本人の名前の中には、日本語に不慣れな人には発音しにくいものがあります。海外に住む日本人や多民族国家に住む家族にとっては、子供の名前を決める際に考慮すべきもう一つのポイントです。ファーストネームは英語で、ミドルネームを日本語にしたり、その逆にしたりする人もいます。
また、日本人の名前には、英語名として使いやすいものや、その逆のものもあります。例えば、以下のようなものがあります。
- 「はな(Nana)」:Hannah、 Hanna
- 「あいりん(Airin)」:Eileen、Irene
- 「まや(Maya)」「えりか(Erika/Erica)」「かれん(Karen)」「まりあ(Maria)」「あんな(Anna)」
- 「じん(Jin)」: Gene、Jea
※「じん」は日本では男の子の名前によく使われます。
- 「しおん(Shion)」「しゅん(Shun)」:Sean
- 「けん(Ken)」「れい(Ray)」「じょう(Jo)」「あらん(Aran/Alan)」「れおん(Reon/Leon)」
「両方の言語で簡単に使える名前にしたい」という親も多く、特に外国にルーツを持つ方にはこのような名前がよく使われています。
日本語に相当する名前がない場合は、名前をカタカナで書きます。例えば「Jessica→ジェシカ」「Michael→マイケル」となります。
名前の呼び方のルール
日本人の名前は、英語のようにそのまま呼び捨てにすることはありません。日本では、名前を呼ぶ時に必ず覚えなければならないルールや敬語があります。
基本的なルール
日本では、相手との関係性によって呼び方を変えます。親しい間柄でもないのに、名前(ファーストネーム)で呼ぶと、相手に不快な思いをさせたり、失礼に当たったりすることがあります。
また、日本では名前(ファーストネーム)は親しい友人や家族だけが使うことができ、職場で使うことはあまりありません。職場の場合、名前の代わりに肩書きが使われることが多いです。
敬称
日本での肩書きや敬称は、相手への尊敬や謝意を表すために名前に付けられます。よく使われるのは、「さん」「様」「くん」「ちゃん」「先輩」「先生」などです。
- 「さん 」:日本で最もよく使われている敬称です。相手の年齢、性別、身分に関係なく使うことができます。英語では、MisterやMiss/Mrsに相当します。例えば、「中原中也」という名前の人がいたら、面識がなければ「中原さん」、面識があって相手が許可すれば「中也さん」と呼ぶことができます。
- 「様」:日本で最も丁寧な敬称で、主に目上の人や取引先に使います。英語ではSirやMadamがそれにあたります。もし、相手の名前が「森林太郎」であれば、「森様」のように苗字と一緒に使います。名前が分からないお客さんの場合は「お客様」と呼びます。
- 「くん」:主に年下の男性、友人の男性、職場で自分より立場が下であり、より親しい間柄の男性に使います。また、まれに年下の女性にも使われることがあります。相手の名前が「中島敦」であれば、「中島くん」「敦くん」のどちらで呼んでも構いません。
- 「ちゃん」:主に子供や若い女性に使われます。また、相手のことをよく知っている場合にも使われます。例えば、「谷崎直美」という名前の人がいたら、「直美ちゃん」と呼ぶことができます。なお、フルネームで使われることはほとんどなく、「谷ちゃん」のように、名字を短くしたあだ名の場合にも使われることがあります。
- 「先輩」:上級生や年上・目上の同僚に声をかけるときに使われます。主に学校や職場の先輩・後輩の関係で使われることが多いです。「国木田独歩」という名前であれば、「国木田先輩」、近い関係であれば「独歩先輩」と呼ぶことができます。
- 「先生」:先生やお医者さんなどの職業の人に呼びかけるときに使われます。「江戸川乱歩」という名前の人がいれば、その人を「江戸川先生」と呼ぶことができます。
日本特有のマナーについては『日本特有のマナーとは?外国人に向けて食事や仕事する際の行儀・作法を紹介』をご覧ください。
まとめ
日本人の名前には、世界中の人々の名前と同じようにそれぞれ意味があり、親からの希望が込められています。その人が一生背負っていくものです。そのため、名前にどんな字を使うか聞かれたり、「いい名前!」と言われたりすることもあります。皆さんも日本人と仲良くなったら、名前の読み方や意味をぜひ聞いてみてください。