日本には古くから現代まで受け継がれてきた、伝統的な楽器があります。それらの楽器は日常の中で見かけることは少ないですが、お祭りや歌舞伎といった儀式・芸能など、特別な時間に華を添える存在です。このコラムでは、そんな日本の伝統楽器にはどのような種類があるのかを紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
目次
日本の伝統的な楽器は「和楽器」と呼ばれる
日本で古来より伝わり演奏されてきた伝統的な楽器を、和楽器と呼びます。和楽器には日本独自の文化から生まれたものや、大陸の影響を受けて作られたものなどがあり、その種類はさまざまです。演奏方法は主に「吹く」「弾く」「打つ」に分けられ、それぞれ管楽器、弦楽器、打楽器と区分されます。
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管楽器(吹きもの)
管楽器は、吹くことで音が出る楽器です。中でも、和楽器における管楽器は「吹きもの」と呼ばれます。ここでは、管楽器に分類される和楽器について解説するので、ぜひ参考にしてください管楽器に分類される和楽器について確認してみましょう。
尺八(しゃくはち)
尺八は竹製の笛で、長さが一尺八寸であったという理由からその名前がつけられました。奈良時代に中国から伝わってきたとされ、現在は琴や三味線などの楽器と合わせて演奏されることが多くあります。江戸時代は禅宗に所属する虚無僧が主に使用し、尺八を吹きながら全国を回る修業が行われていました。
笙(しょう)
笙は、主に日本の雅楽に使われる楽器です。それぞれ長さの違う17本の竹の管が立てられた形状をしており、別名「鳳笙」とも呼ばれています。17本の竹の管のうち音が出るのは15本で、残り2本は音が出ません。頭(かしら)と呼ばれる吹き口からは、空気を吸っても吹いても音が鳴るのが特徴です。
竜笛(りゅうてき)
竜笛は長さ40cmほどの竹製の横笛です。竜笛には7個の指孔(ゆびあな)があり、それぞれを指でふさいで音階を調節します。雅楽において主旋律・装飾音を担当することが多い楽器で、引き締まった音色が特徴です。
篠笛(しのぶえ)
篠笛は長さによって、出る音の高さが変わる楽器です。そのため、合奏の際は異なる長さの篠笛を使って音の高さに差をつけます。日本語の「フエ」という言葉が指すのは、多くの場合、この「篠笛」です。篠笛は雅楽のほかに、獅子舞や祭りばやしといった伝統芸能にも使われています。
篳篥(ひちりき)
篳篥は前に7個、後ろに2個の指孔がある縦笛です。長さは約18cmと小さめですが、見た目にそぐわない大きな音が出るのが特徴で、雅楽では主旋律を担当します。篳篥の先端には簧(した)という薄片があり、この部分を湿らせてから空気を吹き込みます。
神楽笛(かぐらぶえ)
神楽笛は、神楽歌の伴奏に用いられる横笛です。純日本製の楽器で「大和笛(やまとぶえ)」「太笛(ふとぶえ)」とも呼ばれます。雅楽に用いられる「龍笛」「高麗笛」の中で、最も長い形状をしており、いちばん低い音が出るのが特徴です。「半息」と呼ばれる奏法を用い、静かに伸びやかに演奏します。強く吹いたりアクセントをつけたりはしません。
高麗笛(こまぶえ)
高麗笛は、雅楽に用いる横笛です。朝鮮半島を経由して伝来した「高麗楽」の演奏用に持ち込まれた楽器であるものの、宮中や神社の祭礼で行われる「東遊(あずまあそび)」という舞踊にも使用します。東遊に使用される「東遊笛」が絶えてしまったためです。高麗笛は、細く短い形状をしており、高く鋭い音が出ます。
能管(のうかん)
能管は、能楽や歌舞伎、囃子に用いられる横笛です。吹き口と指穴の間に「のど」と呼ばれる小さな竹管がはめこまれており、この部分で息がせき止められることで「ヒシギ」という鋭く甲高い音が出ます。能管は、高音域が通常の音階を外れるだけでなく、音の高さが笛ごとに異なるため、合奏にはあまり適していません。独特の音で雰囲気を作り出すのに用いられます。
弦楽器(弾きもの)
和楽器における弦楽器の呼び方は「弾きもの」です。ここでは、弾きものの種類について解説します。
箏(そう)
箏は、奈良時代に中国から伝来してから、日本独自の楽器として発展してきました。爪と呼ばれる道具を指にはめて、胴に張られた絹糸を弾いて演奏します。箏と似た楽器として琴(こと)があり、この2つは見た目も似ているため同じものと認識している方が多いですが、厳密には違うものです。箏には柱(じ)と呼ばれる音階調節の器具がありますが、琴にはありません。
三味線(しゃみせん)
三味線は、中国から伝来した三弦が元になったといわれています。和楽器の中でも人気があり、人形浄瑠璃や歌舞伎などでもよく使用される楽器です。胴に張られた3本の弦を、撥(ばち)と呼ばれる道具で鳴らし、音を奏でます。
琵琶(びわ)
琵琶は名前の通り、果物の枇杷を半分に割った形をしています。日本の有名な戦国武将である上杉謙信は、琵琶の名手でもありました。琵琶には筑前琵琶や楽琵琶、平家琵琶、薩摩琵琶といった種類があり、それぞれ鳴る音の高さや響きなどが異なります。
胡弓(こきゅう)
胡弓は、三味線を小型にしたような形の楽器です。3~4本の弦をもち、馬の毛をひいた弓を使って楽器本体を動かしながら演奏します。江戸時代には箏や三味線とともに三曲合奏の形式で演奏され、明治以降は胡弓に代わり尺八が使用されるようになりました。
打楽器(打ちもの)
和楽器における打楽器の呼び方は「打ちもの」です。ここでは、打楽器に分類される和楽器を紹介します。
和太鼓(わだいこ)
和太鼓はお祭りや歌舞伎、神社仏閣の儀式など幅広い場面で活躍する楽器です。昔は木製の胴に皮を張って、2本の桴(ばち)で交互に叩くことで演奏します。和太鼓は鋲打ち太鼓と紐締め太鼓の2種類に分けられ、材質・大きさなどによって音の響きが変化するのが特徴です。
小鼓(こつづみ)
小鼓は和太鼓と同じく太鼓の一種ではありますが、その大きさや演奏方法には違いがあります。調べ緒という紐を緩めたりきつくしたりすることで音色に変化がつき、柔らかく丸みのある音が出るのが特徴です。和太鼓が桴で打って音を鳴らすのに対し、小鼓は膜を手で直接打つことで音を鳴らします。音の出し方は、調べ緒を左手で持って右肩に担ぎ、膜を右手で打つという方法です。
大鼓(おおつづみ)
構造は小鼓と一緒ですが、名前の通り大鼓の方が一回り大きいのが特徴です。皮は厚く、調べ緒も太めのものが使用されています。演奏の前には皮を乾燥させておくことで、小鼓とは反対の硬く芯のある音を出します。また、小鼓には音色があるのに対し大鼓にはないのも特徴の1つです。
鉦鼓(しょうこ)
鉦鼓は、雅楽に用いる金属製の打楽器です。丸い木枠の内側に皿状の青銅器を吊り下げ、その内側を2本の桴(ばち)で打って演奏します。高い音で、太鼓の音を装飾するような役割をもっている点が特徴です。舞楽に使用する大鉦鼓、管弦の合奏に使用する釣鉦鼓、行進して演奏する道楽(みちがく)に使用する荷鉦鼓(にないしょうこ)といった種類があります。
摺鉦(すりがね)
摺鉦は、祭囃子や管弦楽曲に用いられる金属製の打楽器です。真鍮製の小皿を、撞木(しゅもく)というバチで打ったり、指で叩いたりして音を出します。手に持てる小型のサイズから、吊り下げて持つ大型のサイズまでさまざまあり、サイズごとに音や響きが異なります。
拍子木(ひょうしぎ)
拍子木は、日本では「火の用心」の夜回りで知られる木製の楽器です。20~30cmほどの角柱型の木を打ち合わせて、高い音を出します。雅楽や祭囃子のほか、相撲で力士を呼ぶ際に使ったり、歌舞伎の開始・幕切れの合図に打ったりもするため、音楽以外の場面で聞くことの多い楽器といえるでしょう。
日本の音楽への理解をさらに深めたい方は「日本の音楽の魅力を詳しく解説!歴史や伝統的な楽器を知ろう」のコラムもおすすめです。また、「日本の伝統文化を解説!芸道や季節の行事の一例を紹介」では、さらに幅を広げて日本の文化について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
まとめ
日本には伝統的な楽器がさまざまあります。しかし、これらの和楽器を実際に見たり聴いたりできる機会が少なく実物に触れた経験がある人は多くありません。近ごろではインターネットの普及により、日本の伝統楽器を実際に演奏している映像や紹介動画などが見れるようになりました。気になる楽器があった方は、演奏している動画を見るとより日本の伝統文化への知識を深められるでしょう。