日本に留学したい外国人のなかには、どのような手続きを踏めばいいのか分からず悩んでいる方もいるでしょう。外国人留学生として日本を訪れるには、志望校の入学試験に合格したあと、査証(ビザ)と在留資格「留学」を取得する必要があります。このコラムでは、日本に留学するまでの流れや必要な手続きについて解説。留学に利用できる奨学金制度やアルバイトの可否もまとめているので、気になる方はチェックしてみましょう。
目次
日本に留学するには
外国人が留学するには、日本の大学や専門学校の入学試験に合格したあとで、査証(ビザ)と在留資格「留学」を取得する必要があります。実際に留学するまでの間にさまざまな手続きが必要なので、あらかじめ流れを確認しておきましょう。
志望校の情報収集を行う
日本への留学を希望する外国人が最初に行うべき行動は、志望校の情報収集です。留学関係の情報誌やセミナーなどを利用して、学びたい分野から候補を絞りましょう。なお、外国人が日本に留学するには入学資格を得なくてはなりません。入学資格の認定基準は教育機関によって異なりますが、原則12年の教育課程を修了している必要があります。就業年数が12年未満の場合、来日後に準備教育課程で学んだ期間を合算したり、文部科学省が指定する在外教育施設の課程を修了したりすれば入学資格が認められるようです。ほかにも、18歳以上であれば各教育機関が個別に行う入学資格審査に合格することで、入学資格が付与されるケースもあります。入学資格が認められる条件は文部科学省のWebサイトで公開されているため、不安な外国人は確認しておきましょう
「日本に留学したい外国人必見!留学生の受け入れ状況や施策について解説」では、国別・在学段階別に日本における留学生の受け入れ状況を解説しています。日本政府が外国人留学生の受け入れ拡大に向けて行っている施策や、留学に利用されている試験も紹介しているのでチェックしてみましょう。
願書と必要書類を提出する
志望校が決まったら願書を取り寄せ、必要書類を提出します。また、日本で入学試験を受ける場合、査証免除国以外から来日する外国人はは査証(ビザ)の申請が必要です。受験票を持って居住地近くの日本国大使館・総領事館で「短期滞在」ビザを申請しましょう。ビザの詳しい取得方法は後述します。
入学試験を受ける
志望校の入学試験に合格すれば留学先が決定します。願書が受理され受験票が手元に届いたら、入学試験まで待ちましょう。入学試験は教育機関独自のもの以外に、日本留学試験(EJU)が利用されています。日本留学試験とは留学を希望する外国人を対象に、日本語能力や基本学力を測定する試験です。日本留学試験の成績は受験後2年間有効なうえ、渡日前入学許可制度に利用できます。渡日前入学許可制度では来日することなく志望校の合否を判定してもらえるので、受験しておいて損はありません。教育機関によっては日本留学試験の成績と面接試験の結果で合否を判定するので、練習しておくと安心して試験に臨めます。
日本への留学を検討している方には「外国人留学生の在籍数が多い日本の大学ランキング!留学するメリットも解説」のコラムもおすすめです。外国人留学生が日本の大学へ進学するメリットもまとめているので、参考にして自分に合った進学先を選びましょう。
査証(ビザ)と在留資格を取得する
入学試験に合格したら速やかに「留学」査証(ビザ)と在留資格の申請を行います。旅券(パスポート)を持っていない外国人は、そちらの申請もあわせて行いましょう。パスポートの申請にはさまざまな書類が必要なうえ発行に時間を要するので、余裕を持って申請してください。ビザの申請に必要な書類は以下のとおりです。
・旅券(パスポート)
・査証申請書
・証明写真
・在留資格認定証明書(COE)
・経費支弁能力を証する書類
在留資格認定証明書(COE)の申請は、日本国内の地方出入国在留管理官署で行います。留学先の教育機関が代理申請してくれることが多いので、申請書類を確認しておきましょう。また、日本留学中の支払い能力を証明するために、本人もしくは保護者の課税証明書や預金残高証明書などの書類を求められることがあります。滞りなくビザを申請できるように用意しておくと安心です。ビザ発給の審査は最低でも1週間程度かかるので、早めに申請を行いましょう。
「留学」ビザを受けて日本に入国した外国人には、在留カードが交付されます。在留カードには在留資格が明記されており、外国人留学生の在留資格は「留学」です。日本に3カ月以上滞在する外国人は、常に在留カードを携帯しなければなりません。新千歳・成田・羽田・中部・関西・広島・福岡の空港から入国する外国人は、その場で在留カードが交付されます。日本での住居地が決まり次第、14日以内に住居地を管轄する市区町村の役所窓口で住民登録を行いましょう。そのほかの空港から入国した場合は後日在留カードが交付されるので、住民登録を行って郵送されるのを待ちます。
在留資格とビザの違いや、外国人留学生の活動範囲をまとめている「外国人留学生に必要な在留資格「留学」とは?就労に必要な手続きも解説」も参考にしてみてください。
参照元 文部科学省「大学入学資格について」
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日本への留学に利用できる奨学金
経済的理由で日本への留学が難しい外国人への支援として、奨学金制度が設けられています。奨学金制度によって対象者が異なるので、利用を考えている外国人は条件を確認しておきましょう。ここでは、主な奨学金制度の概要や支給額、利用条件をまとめています。
留学生受入れ促進プログラム
留学生受入れ促進プログラムは日本学生支援機構が実施する奨学金制度です。準備教育課程を行う教育機関や日本語教育機関、大学や専門学校といった高度教育機関に在籍する私費外国人留学生が対象になります。留学生受入れ促進プログラムは募集予定人数が決まっているため、採用選考を通過しないと学習奨励費を受給できません。また、申込みを行う外国人留学生は以下の要件を満たす必要があります。
・日本語能力試験N2レベル以上、または日本留学試験(EJU)の日本語科目の得点が200点以上である者(機構が別に認める語学水準以上の場合も可)
・CEFRにおいてB2レベル以上である者
・給付の前年度の成績評価係数を機構が定める方法で算出したとき、すべての教育機関のレベルにおいて2.30以上あり、給付期間中も成績を維持できる見込みがある者
・学習奨励費受給後に、進路状況調査に協力する意思を有すること
・受けている仕送り額(入学金や授業料を除く)が、平均月額90,000円以下であること
・在日している扶養者がいる場合、その年収が500万円未満であること
・学習奨励費との併給を制限されている奨学金を受給していないこと
・機構の海外留学支援制度による支援を受けていない者
申込みは在籍する教育機関を通じて行います。留学生の在籍数に応じて教育機関ごとの推薦人数が決まるため、申し込めない可能性があることを留意しておきましょう。例年3月下旬ごろから募集が始まり、5月中旬には推薦が締め切られます。6月中旬に選考結果が決定し、7月中旬には4月から6月分の学習奨励費が支払われるようです。
学習奨励費は大学院・学部レベルで月額48,000円、日本語教育機関で30,000円給付されます。なお、給付期間は12ヶ月です。なお、渡日前入学許可制度を利用した外国人留学生や、日本留学試験出優秀な成績を修めた人は、留学生受け入れ促進プログラムを予約できます。
海外留学支援制度
海外留学支援制度は日本学生支援機構が実施する奨学金制度です。諸外国の高等教育機関が日本の大学や専門学校、専修学校などと学生交流する際の協定に基づいて、一定の要件を満たす外国人留学生に奨学金が給付されます。詳しい要件は以下のとおりです。
・日本と国交のある国の国籍を有する者
・学生交流に関する協定に基づき、受け入れ先の教育機関が受入れを許可する者
・経済的理由により自費のみで受け入れプログラムへの参加が困難な者
・受け入れプログラム参加にあたり、在留資格「留学」を確実に取得しうる者(90日以内の受入れプログラムの場合、在留資格の種類は問わない)
・受け入れプログラム終了後、在籍する教育機関に戻り学業を継続し、卒業または学位を取得する者
・学業成績が優秀で人物が優れている者
・受け入れプログラム参加のために本制度以外の奨学金を受ける場合、その支給月額の合計が80,000円を超えない者
海外留学支援制度の対象となる外国人留学生は、在籍する教育機関が募集・選考を行って受け入れ先に通知します。募集・選考の基準は在籍する教育機関や受け入れ先によって異なるので、奨学金を希望する外国人留学生は問い合わせてみましょう。選考を終えると、受け入れ先の教育機関が日本学生支援機構に支援対象者の申請を行い、承認可否が決定します。
国費外国人留学生制度
国費外国人留学生制度は文部科学省が実施する奨学金制度です。この制度は、日本と世界各国が相互に教育水準を高めることと、相互理解・国際協力の推進を目的としています。国費外国人留学生制度の対象となるのは以下に該当する学生です。
・研究留学生
・教員研修留学生
・ヤング・リーダーズ・プログラム留学生
・日本語・日本文化研修留学生
・学部留学生
・高等専門学校留学生
・専修学校留学生
国費外国人留学生制度の手続きは、すべて在外日本国大使館または日本国内の教育機関で行われます。この制度を利用すると奨学金が支給されるだけでなく、教育費を国に負担してもらうことが可能です。奨学金の給付額はヤング・リーダーズ・プログラム留学生が最も高く、月額242,000円が支給されます。次いで研究留学生が月額143,000~145,000円、教員留学生が143,000円となっており、そのほかの奨学金は117,000円です。詳しい申請方法が知りたい方は、自国の日本国大使館や総領事館、留学を希望する教育機関に問い合わせてみましょう。
地方自治体・国際交流団体の奨学金
日本の地方自治体や国際交流団体が実施している奨学金制度もあります。申込みの条件に、居住地や在籍する教育機関の所在地が関わってくるのが特徴です。支給額は国や公的機関の奨学金に比べて少なく、月額10,000円に満たないこともあります。また、ほかの奨学金との併給ができないことが多いようです。
民間奨学団体の奨学金
民間企業や民間奨学団体が実施している奨学金制度もあります。各企業の目的や特徴に沿って特定の教育機関や専攻分野、出身国を対象にしていることが多いようです。条件が限定的なうえほかの奨学金制度との併給が認められませんが、その分選考の倍率は低いと考えられます。
学校独自の奨学金
留学先の教育機関によっては、学校独自の奨学金制度を設けていることがあります。要件や支給額は教育機関ごとに差があるので、気になる方は問い合わせてみましょう。
参照元 独立行政法人日本学生支援機構「留学生受入れ促進プログラム(文部科学省外国人留学生学習奨励費)」 独立行政法人日本学生支援機構「海外留学支援制度(協定受入)」 文部科学省「国費外国人留学生制度について」
日本に留学中のアルバイトは可能?
外国人留学生が持つ在留資格「留学」は日本での勉強が目的のため、アルバイトを含む就労が認められていません。ただし、資格外活動許可を受ければ一定の制限のもとアルバイトが認められます。学費や生活費のためにアルバイトを検討している外国人留学生は、資格外活動許可を受けて充実した留学生活を送りましょう。
外国人留学生のアルバイトには資格外活動許可が必要
外国人留学生が資格外活動許可を受けずにアルバイトした場合、不法就労とみなされて厳しい罰則を受けます。留学を中止して母国への帰国を余儀なくされることもあるので、アルバイトを行う際は必ず資格外活動許可を申請しましょう。また、資格外活動許可を受けていても風俗営業に関わるアルバイトや週28時間以上の就労は禁止です。
資格外活動許可の申請方法
資格外活動許可の申請は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で行えます。申請に必要なのは申請書のみです。法務局や地方出入国在留管理庁のWebサイトからダウンロードするか、直接窓口で用紙をもらいましょう。必要事項を記入して提出したあと、2週間から2ヶ月ほどで審査が行われます。申請者の素行や申請内容に問題がなければ、資格外活動許可が認められるでしょう。なお、外国人留学生が日本に初めて入国する場合に限り、空港でも資格外活動許可を申請できます。
外国人留学生に人気があるアルバイト
「令和元年度私費外国人留学生生活実態調査」によると、アンケートを回答した外国人留学生のうち7割以上が何らかのアルバイトを行っています。そのうち、約4割の外国人留学生が飲食業でアルバイトしており、人気の高さがうかがえるでしょう。飲食業のアルバイトが人気な理由としては、日本人とのコミュニケーションが多く、活きた日本語を学べることが考えられます。また、店舗によっては遅い時間まで開いているため、ライフスタイルに合わせた働き方を選べるのも魅力です。ほかにも、コンビニエンスストアや翻訳・通訳のアルバイトに人気があります。アルバイトを始める際は、語学力向上や収入アップなどの目的に合わせて選びましょう。
参照元 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「令和元年度私費外国人留学生生活実態調査」
まとめ
外国人が日本に留学するには、志望校の入学試験に合格したうえで、ビザ(査証)や在留資格の取得が必要です。提出する書類を用意したり審査を受けたりする必要があるので、速やかに準備を進めましょう。また、経済的理由により留学に不安がある場合は、奨学金制度の利用をおすすめします。留学先の教育機関や学業成績によって利用できる奨学金制度が異なるため、気になる方は事前にチェックしておくと安心です。このコラムを参考に日本への留学に必要な知識を身に付け、留学生活を充実させてください。