日本では、1993年に「法隆寺(ほうりゅうじ)地域の仏教建造物」や「姫路城(ひめじじょう)」が、初めて世界遺産に登録されました。世界遺産に登録されているのは、歴史ある建造物だけではありません。大自然が感じられる「白神山地(しらかみさんち)」や「屋久島(やくしま)」も自然遺産として登録されています。
このコラムでは、日本の全世界遺産を一覧にして紹介。ぜひ訪れて欲しい世界遺産の魅力も解説します。
目次
【最新】日本にある世界遺産一覧
外務省のWebサイト「我が国の世界遺産一覧表記載物件」によると、日本には2023年2月時点で、25件の世界遺産があります。そのうち文化遺産が20件、自然遺産が5件です。
日本の文化遺産
文化遺産に登録されるのは、多くの人から見てはっきりと価値があると分かる記念物や建造物、遺跡、特有の文化がある場所などです。日本では城や神社仏閣といった建造物、日本特有の宗教背景がある場所などが登録されています。
- 法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)(1993年記載)
- 姫路城(兵庫県)(1993年記載)
- 古都京都の文化財(京都府、滋賀県)(1994年記載)
- 白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜県、富山県)(1995年記載)
- 原爆ドーム(広島県)(1996年記載)
- 厳島神社(広島県)(1996年記載)
- 古都奈良の文化財(奈良県)(1998年記載)
- 日光の社寺(栃木県)(1999年記載)
- 琉球王国のグスク及び関連遺産群(沖縄県)(2000年記載)
- 紀伊山地の霊場と参詣道(三重県、奈良県、和歌山県)(2004年記載)
- 石見銀山遺跡とその文化的景観(島根県)(2007年記載)
- 平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群(岩手県)(2011年記載)
- 富士山-信仰の対象と芸術の源泉(静岡県、山梨県)(2013年記載)
- 富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県)(2014年記載)
- 明治日本の産業革命遺産製鉄・製鋼、造船、石炭産業(岩手県、静岡県、山口県、福岡県、熊本県、佐賀県、長崎県、鹿児島県)(2015年記載)
- 国立西洋美術館本館(東京都)(2016年記載)
※7ヶ国(日本、フランス、ドイツ、スイス、ベルギー、アルゼンチン、インド)に点在するル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-の構成資産の一つ - 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県)(2017年記載)
- 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県、熊本県)(2018年記載)
- 百舌鳥・古市古墳群(大阪府)(2019年記載)
- 北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道、青森県、岩手県、秋田県)(2021年記載)
文化遺産については「日本の文化遺産を紹介」のコラムでより詳しく解説しています。
日本の自然遺産
自然遺産に登録されるのは、ほかにはない景観の美しさや地形・地質に重要な特徴がある場所などです。日本では山地や半島、島々が登録されています。
- 屋久島(鹿児島県)(1993年記載)
- 白神山地(青森県、秋田県)(1993年記載)
- 知床(北海道)(2005年記載)
- 小笠原諸島(東京都)(2011年記載)
- 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(鹿児島県、沖縄県)(2021年記載)
特有の生態系がある場所や絶滅のおそれのある動植物の生息地なども登録されています。
参照元 文化庁「日本の世界遺産一覧」 東京都小笠原支庁「小笠原の自然」
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日本独特の建造物が見られる世界遺産
日本で世界遺産に登録されている建造物には、城や神社仏閣、古い家屋、古墳などがあります。世界遺産に登録された建造物を訪れると、日本独特の建築様式を学べるでしょう。
姫路城
兵庫県姫路市にある姫路城は、日本で最初に登録された世界遺産の1つです。白鷺(しらさぎ)が羽を広げたような姿から別名「白鷺城」とも呼ばれています。
日本の城郭建築の見どころといえば、装飾的な屋根である天守閣(てんしゅかく)。姫路城は、現存している中で最大の大きさを誇る大天守閣と、櫓(やぐら)で繋がっている小天守が特徴です。保存状態の良さや完成度の高さなどから文化遺産に認定されました。
4月上旬ごろには城の周辺で約1000本の桜が咲くため、より美しい風景を見られます。
古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)
古都京都の文化財は、京都府の京都市と宇治市(うじし)、滋賀県の大津市にある17つの神社仏閣・城からなる世界遺産です。
日本の各時代の庭園・建築様式の代表例であるとされ、1994年に文化遺産に登録されました。自然との融合を大切にする日本独自の文化や精神性が感じられるのも、評価されたポイントです。
清水寺や龍安寺、平等院などは、観光地として特に人気があります。
白川郷・五箇山の合掌造り集落
岐阜県の白川郷(しらかわごう)および富山県の五箇山(ごかやま)にある、合掌造り(がっしょうづくり)の家屋の集落群も、世界遺産に登録されています。
「合掌造り」という名前は、両方の手の平を胸の前で合わせた姿、合掌に似ている屋根が由来です。
集落の自然景観と、豪雪に耐えながら養蚕(ようさん)をするための独自の工夫を持った家屋が評価され、文化遺産の登録に繋がりました。
厳島神社
広島県広島市にある厳島神社(いつくしまじんじゃ)は日本三景の一つで、海にそびえ立つ大鳥居が圧巻の世界遺産です。
1168年に建てられた社殿は、平安時代の貴族住宅の建築様式・寝殿造(しんでんづくり)を取り入れています。海のうえに広がっている厳島神社は、潮の満ち引きによって景色が変化するのも魅力です。自然と建造物が一体となっている希少価値が評価され、文化遺産に登録されました。
厳島神社がある宮島は自然も美しく、季節ごとに異なる景色を楽しめます。
日光の社寺
日光の社寺は、栃木県日光市にある世界遺産です。日光東照宮(にっこうとうしょうぐう)、日光山輪王寺(にっこうざんりんのうじ)、日光二荒山神社(にっこうふたらさんじんじゃ)の建造物群と周辺の遺跡によって構成されています。
建造物の高い芸術的価値と自然と一体化した景観が評価され、1999年に文化遺産に登録されました。9棟の国宝と94棟の重要文化財のほか、周辺の山林では樹齢360年以上の杉が見られます。パワースポットとして知名度が高く、観光客が多い世界遺産です。
百舌鳥・古市古墳群‐古代日本の墳墓群‐
百舌鳥(もず)・古市古墳群は、大阪府堺市、羽曳野市(はびきのし)、藤井寺市にまたがって存在している49基の古墳群からなる文化遺産です。
古墳とは土を高く盛り上げて作ったお墓で、百舌鳥・古市古墳群は300年代後半から400年代後半にかけて建造されました。
百舌鳥・古市古墳群は、帆立貝形墳(ほたてがいがたふん)や円形の円墳(えんぷん)、方墳(ほうふん)など、さまざまな形の古墳から構成されています。なかでも特に有名な古墳は、国内最大級の仁徳天皇陵古墳(にんとくてんのうりょうこふん)です。前方が四角で後方が円の前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)という形をしています。
日本の歴史的建造物についてさらに理解を深めたい方は、「日本の歴史的建造物21選!人気のスポットを地域別に紹介」のコラムもおすすめです。
参照元 外務省「我が国の世界遺産一覧表記載物件」 文化遺産オンライン「百舌鳥・古市古墳群‐古代日本の墳墓群‐」
日本の近代について学べる世界遺産
世界遺産の中には、日本の近代について学べる場所もあります。戦争の歴史や産業・建築面の発展について知りたい方におすすめです。
原爆ドーム
原爆ドームは第二次世界大戦において投下された原子爆弾で被爆した建物で、広島県広島市にあります。核兵器の恐ろしさを忘れず後世に伝えるために、文化遺産に登録されました。
原爆ドームはもともと広島県内の物産品の展示や販売のために建てられ、被曝する前は広島県産業奨励館という名称でした。建物の内部は火災で焼失しましたが、壁や鉄骨のドーム部分は残っています。焼けただれた壁面から、原子爆弾や戦争の恐ろしさが感じられる世界遺産です。
富岡製糸場と絹産業遺産群
群馬県富岡市にある富岡製糸場は、富岡製糸場と絹産業遺産群の構成資産の一つとして文化遺産に登録されています。
富岡製糸場では、1800年代後半から1900年代にかけて品質の良い生糸が大量に生産されました。製糸と絹糸の材料となる養蚕の技術を現代に伝える建造物です。また、日本と世界の技術交流を生んだ側面も評価されて世界遺産の登録に繋がりました。
欧米の影響が見られる木造レンガ造りの建物は、明治時代の近代建築の特徴が見られます。
明治日本の産業革命遺産製鉄・製鋼、造船、石炭産業
明治日本の産業革命遺産製鉄・製鋼、造船、石炭産業は、近代日本の産業の発展過程を物語る文化遺産です。構成資産は、福岡県の北九州市や大牟田市(おおむたし)、山口県萩市(はぎし)などに点在しています。
日本は1850年代から1910年にかけて、西洋の技術を応用し、製鉄・製鋼、造船、石炭などの重工業分野で急速な発展を遂げました。官営八幡製鉄所や三池炭鉱・三池港、萩反射炉などは、当時の技術や産業の発展過程を現代に伝える貴重な資産です。
ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献‐
パリを拠点に活躍した建築家のル・コルビュジエの建築作品のうち、17つが構成資産として文化遺産に登録されています。世界遺産に登録されているル・コルビュジエの作品があるのは、日本、フランス、ドイツ、スイス、ベルギー、アルゼンチン、インドの7ヶ国です。日本では、国立西洋美術館が登録されています。
ル・コルビュジエの作品は、近代の人々のニーズを満たす新しい概念を造りだし、広い地域に影響を与えた点が評価されました。
参照元 文化遺産オンライン「ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献‐」
大自然を感じられる日本の世界遺産
世界遺産の中には、自然が豊かである点が評価され登録されたところもあります。北から南までさまざまな場所が世界遺産に登録されており、異なる気候に触れられたり珍しい動植物を見られたりするのが魅力です。
屋久島
屋久島は自然が美しい神秘的な森として、観光客に人気の自然遺産です。屋久島では樹齢7200年以上を誇る縄文杉(じょうもんすぎ)をはじめ、約1,500種類の植物が確認されています。
なかでも有名なのが、ウィルソン株と呼ばれる縄文杉の大きな切り株です。空洞になっている中に入って空を見上げるとハート形に見えるため、恋愛のパワースポットとしても話題になりました。
白神山地
白神山地は神々の森とも呼ばれている自然遺産です。青森県南西部から秋田県北西部にまたがる、130,000haにおよぶ広大な山岳地帯のことを指します。
白神山地の中で特に人気のスポットは、ブルーのインクを流したような鮮やかな青が美しい十二湖です。東アジアで最大級といわれるブナ林も観光客に人気で、運が良いと特別天然記念物であるカモシカに出会える可能性があります。
紀伊山地の霊場と参詣道
紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)は、和歌山県、奈良県、三重県の3県にまたがる文化遺産です。古くから神聖とされてきた場所である吉野・大峯(おおみね)、熊野三山、高野山(こうやさん)と、これらの霊場を繋ぐ参詣道が含まれています。
霊場と参詣道は豊かな自然の中にあり、大自然に触れられます。歴史ある神社仏閣・参詣道が残されている点や、日本に古来から伝わる神道と仏教が融合してできた文化が評価されました。
知床
北海道の知床半島(しれとこはんとう)は、多くの野生動物と独自の自然環境が共生している自然遺産です。最後の秘境と呼ばれており、希少な動植物の生息地になっています。
冬には流氷が海を埋め尽くし、アザラシやオオワシ、オジロワシといった動物たちが訪れます。絶滅危惧種であるシマフクロウのほか、ヒグマやエゾシカ、キタキツネなどが生息しているのも特徴です。
人気スポットを巡りたい方には、知床岬やルシャ湾、カムイワッカの滝などを周る知床半島クルーズをおすすめします。
小笠原諸島
東京都にある小笠原諸島(おがさわらしょとう)は、美しく澄んだ青い海や独自の生態系が形成された30の島からなる自然遺産です。小笠原諸島にしか生息していない動物の多さや、植物の進化の過程を表す証拠が見られる点が評価され登録されました。
天然記念物のハハジマメグロや小笠原諸島にのみ咲く花・テリハハマボウなど、珍しい動植物に出会えます。運が良ければ、イルカやクジラの群れを見られるでしょう。
富士山‐信仰の対象と芸術の源泉‐
富士山は2013年に登録された、比較的新しい世界遺産です。人々は古くから噴火を繰り返してきた富士山を、恐れられながらも神聖な山として称えてきました。信仰対象とされた点や富士山をモチーフに多くの芸術作品が生み出されてきた点から、文化遺産として登録されています。
富士山は遠くからの眺めも魅力的ですが、山頂から見た景色も絶景です。
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
奄美大島(あまみおおしま)、徳之島(とくのしま)、沖縄島北部、西表島(いりおもてじま)は、鹿児島県と沖縄県にまたがっている自然遺産です。
島々は長く大陸から孤立していたため、独自の進化を遂げた固有種が多数存在しています。絶滅危惧種も生息しており、アマミノクロウサギやヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなどが有名です。
まとめ
日本には2023年2月時点で25件の世界遺産があります。姫路城や古都京都の文化財などの歴史ある建造物を訪れると、日本の文化や建築様式に触れられるでしょう。白神山地や富士山に行き、美しい景色を眺めるのもおすすめです。
魅力あふれる世界遺産にぜひ足を運んでみてください。