日本で暮らしている人のなかには、日本経済は今後どうなるのか気になる人もいるでしょう。2022年の日本経済は、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大やウクライナ情勢、記録的な円安などさまざまな出来事に影響され、大きく揺れ動いています。
このコラムでは、日本経済が今後どうなるかの見通しを解説。内容を参考にして、仕事やビジネスに活かしましょう。
目次
現在の日本経済の状況
2022年1月~3月の実質GDP成長率(2次速報値)はー0.1%(年率ー0.5%)でした。前期の2021年10月~12月と比較するとややマイナスに転じています。GDP成長率とは、国内で生産されたモノやサービスの付加価値が前期と比較して何%増えたかを示す数字です。種類は実質GDPと名目GDPとがあり、物価の変動を差し引いた「実質GDP成長率」が国の景気を測る数値としてよく用いられます。国内の生産量=GDPが上がると景気が上向いている、下がると景気が下向いていると判断できるでしょう。
マイナスになったのは、物価上昇や円安により輸入額が増えたことが影響していると考えられます。また、新型コロナウイルスのオミクロン株流行拡大があり、外出控えや消費控えがあったことも要因の一つです。
「日本経済が抱える問題とは?時事問題も含めて解説!」日本経済が抱える問題点をまとめているので、あわせてご覧ください。
参照元 内閣府「統計表(四半期別GDP速報)2022年」
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今後の日本経済への影響が予想される出来事
ここでは、今後の日本経済への影響が大きいと考えられている出来事について解説します。今後の日本経済がどうなるか気になる方は以下の出来事についての情報をよくチェックしておきましょう。
ロシアによるウクライナ侵攻
2022年2月14日、ロシアはウクライナに軍事侵攻を開始しました。欧米諸国はロシアの行動を非難し、経済制裁を課しています。日本政府も主要国の措置に沿って、貨物の輸出などの禁止措置を講じました。これにより、ロシアから多く輸入していた品物の供給が不安定になり、価格の高騰や供給不足に陥っています。
特に影響が大きいのは液化天然ガスや石炭、レアメタルの供給です。これらのエネルギー関連商品は、高い割合をロシアからの輸入に頼っている状況でした。エネルギーの供給不安はさまざまな方面に影響があります。また、ロシアからは木材や小麦など生活に密接に関係する物品も多く輸入していたため、今後の消費者への影響は避けられません。ロシアのウクライナ侵攻は日本経済の今後に大きく関わってくる出来事といえるでしょう。
世界的な物価上昇
世界的な物価上昇は、日本経済の今後に大きな影響を及ぼします。各国では新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の落ち込みから回復しつつあり、急増したモノやサービスの需要に供給が追いついていない状況です。このような状況は「供給制約」といい、物価の上昇(インフレ)に直結します。また、先述したウクライナ情勢の影響も加わり、さまざまな物品の価格が次々と上がり始めているのです。
日本は諸外国と比較すると物価の上昇が緩やかな国とされていました。しかし、2022年に入ってからはガソリンや飲食料品、電気などあらゆる物・サービスが次々と値上げされており、今後もインフレは加速していく見通しです。値上げは国内消費を減少させるだけではなく、企業の生産コストを引き上げ業績を悪化させます。企業の業績が悪くなると国民の雇用や賃金にも影響するため、景気の後退に繋がる可能性があるでしょう。
アメリカの金融引き締め
2022年5月4日、アメリカ経済をコントロールする中央銀行の役割を持つ、連邦準備制度理事会(通称:FRB)は大幅な金融引き締めに踏み切りました。金融引き締めとは、政策金利(中央銀行が一般銀行にお金を貸し出す際の金利)を引き上げることです。金融引き締めは市場に流れるお金を減らし、物価の上昇を抑える目的があります。一方で、景気の成長をストップさせることにも繋がるため、経済に影響を及ぼす判断といえるでしょう。
世界経済に大きな影響力を持つアメリカで経済的な混乱が起こると、当然日本の景気にも関係します。FRBの金融政策は経済の状況を見て変動するため、今後どうなるか常にアメリカの動向をチェックしておきましょう。
記録的な円安ドル高
日本は2022年に入ってから円安水準が続いています。円安ドル高とは、日本の円の価値がドルに対して相対的に下がっていることです。2022年6月14日、日本の円相場は一時1ドル=135円台前半まで値下がりしました。これは、1998年以来の記録的な水準です。要因として考えられるのは、アメリカが金融引き締めに踏み切った一方で、日本が金融緩和(金利の引き下げ)の政策をとったことから発生する「金利差」です。
円安は、海外に輸出するモノやサービスの値段を安く設定できます。輸出産業が活発になるため、海外に市場を多く持つ大企業にとってはプラスに働く面もあるでしょう。一方、輸入品の値段が上がり、国内の消費の冷え込みに直結します。
新型コロナウイルスによる中国経済の低迷
中国経済の低迷は、日本経済に大きく影響を及ぼします。中国の主要都市である上海市では、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、2022年3月末より大規模な都市閉鎖(ロックダウン)が開始されました。この厳しい中国政府の判断は「ゼロコロナ政策」と呼ばれています。市民の自由な外出が禁止され、経済活動は低迷しました。6月に一旦解除されたものの、再度感染者は拡大傾向にあり、またロックダウンに入る可能性もあるでしょう。
中国随一の経済都市である上海市のロックダウンは「サプライチェーン」に影響し、日本経済にも大きく影響します。サプライチェーンとは、製品が製造され消費者の手に渡るまでの一連の流れのことです。ロックダウンにより中国に工場を置く日本企業は、部品や原材料を送ることができず生産をストップせざるを得なくなりました。新型コロナウイルスの感染が再び拡大すれば、今後も同じような混乱に陥る可能性が十分あるでしょう。
今後の日本経済には明るい兆しも
今後の日本経済には明るい兆しもあり、次期2022年4~6月の実質GDP成長率はマイナスからプラスに転じると予想されています。理由は、日本国内で新型コロナウイルスの感染者が減少傾向にあり、経済活動がコロナ前の水準まで回復することが期待されているためです。特に旅行やレジャー消費が大幅に伸びると予想されています。さらに、2022年6月10日からは団体での外国人旅行客の受け入れが再開されたので、インバウンド(訪日観光客)需要による経済の活発化も期待できるでしょう。
まとめ
日本経済の今後は、物価の上昇や円安など不安材料はあるものの、新型コロナウイルスの感染が収まってきたことにより、明るい兆しも見え始めています。経済は日々変化しているため、こまめに状況をチェックし、今後の動きに注目していきましょう。