日本の経済は外国の状況や国内の政策などと深い関係があります。米国のトランプ大統領が輸入品に高い関税をかければ日本の輸出産業に、石破内閣が最低賃金を引き上げれば労働者の雇用に、それぞれ影響を与えるでしょう。
この記事では、日本経済の現在の状況や今後の見通しのほか、日本経済への影響が予想される出来事などについて解説します。
目次
現在の日本経済の状況
2024年4~6月の実質GDP成長率(2次速報値)は 0.7%(年率2.9%)でした。景気は停滞状態でしたが、緩やかに回復しているといえます。
GDP成長率とは、国内で生産されたモノやサービスの付加価値が前期と比較して何%増えたかを示す数字です。種類は実質GDPと名目GDPとがあり、物価の変動を差し引いた「実質GDP成長率」が国の景気を測る数値としてよく用いられます。
GDP(国内の生産量)が上がると景気が上向いている、下がると景気が下向いていると判断できるでしょう。
2024年11月19日現在の日本経済の状況としては、名目賃金(給与明細の額面の金額)の増加などがあり、低迷していた個人消費が回復の動きを見せています。また、インバウンド需要は増加傾向です。サービス業の経済活動も盛んになってきました。
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参照元 内閣府「統計表(四半期別GDP速報)2024年」
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今後の日本経済への影響が予想される出来事
ここでは、今後の日本経済への影響が大きいと考えられる出来事について解説します。
石破内閣が発足
2024年11月11日に第2次石破内閣が発足しました。石破総理大臣は記者会見で、優先したい課題の一つとして「日本経済の活力を取り戻すこと」を挙げています。具体的には、「地方からの活性化」 「経済全体の活性化」を同時に行っていく考えです。
石破総理大臣は、日本全体の経済政策としての地方創成のほか、スタートアップ企業への支援や人のスキルを向上させるための投資などを行っていくと説明しています。
最低賃金についての政府目標は、2020年代に全国平均を時給1500円に引き上げることです。速いペースで引き上げるため、企業の負担が増えたり賃金が低い労働者の雇用に悪影響を与えたりする可能性があります。
日本の総理大臣や政治家に興味がある方は「日本の歴代の内閣総理大臣を紹介!役割や任期についても解説」 「日本と海外では政治家の在り方は異なる?外国人向けに分かりやすく解説!」も、あわせてご覧ください。
中国経済の低迷
中国の実質GDP成長率(前年同期比)は2023年10~12月期に5.2%、2024年1~3月期に5.3%、2024年4~6月期に4.7%となりました。景気回復の動きは停滞気味といえます。自動車販売やインフラ投資などの増加がある反面、中国経済を牽引する不動産市場の停滞などにより国内の需要は停滞している状態です。
中国は日本の最大の貿易国のため、日本と中国の経済関係は密接に繋がっています。実際に、中国の不動産市場の低迷により、建築機械などの中国向け製品の売り上げが減少した日本企業も。中国の景気低迷が続けば、輸出の減少によって日本経済にマイナスの影響を与える恐れもあるでしょう。
米国大統領選
2025年1月にトランプ氏が米国大統領に就任することが決定しました。トランプ氏は外国からの輸入品に原則10~20%の関税をかける方針を示しています。日本も関税の対象のため、輸出産業にマイナスの影響もあるでしょう。
製品を輸出できなくなった日本企業が米国内での生産を増やした場合、日本での雇用が減り、地域の産業が衰退することも考えられます。
また、関税の影響による輸入品の価格上昇などの要因で、米国内での物価が上がる可能性も。日本でも輸入物価が上がりインフレが促されるでしょう。インフレとは、物価が上昇傾向になることです。
良い影響として、米国の物価上昇によって株価が上がれば、日本の株価も上昇すると考えられています。資産運用をしている人にとっては利益が変わる可能性があるため、注目しておくと良いでしょう。
数年間続く円安ドル高
日本は2022年に大幅な円安となり、円安ドル高が続いています。円安ドル高とは、日本の円の価値がドルに対して相対的に下がることです。要因は日米間での金利差拡大だと考えられています。
なお、トランプ氏の大統領就任が決定した際、1ドル=154円台まで円安が進みました。米国のインフレとその抑制のために金利水準が高まる予測から、ドルを購入する動きが強まったのが理由です。金利が高いドルで資産運用したほうが、低金利の通貨より利子が多く得られます。
円安の状態では、海外に輸出するモノやサービスの値段を安く設定できるのです。輸出産業が活発になるため、海外に市場を多く持つ大企業にとってはプラスに働く面もあるでしょう。一方、輸入品の値段が上がり、国内の消費の冷え込みに直結します。
中東情勢の緊迫化
2023年から、パレスチナの組織である「ハマス」とイスラエル軍の間で戦闘が行われています。
日本では原油輸入の中東依存度が90%以上です。緊迫している紅海を経由して輸送されることが少ないため、日本経済に影響が出る可能性は少ないとされていました。しかし、中東情勢の緊迫が長期化したり、石油施設が攻撃を受けたりするなどして原油価格が動くことも考えられます。
原油から精製される石油が使われるのは、火力発電所の熱源や家庭のヒーターなどのほか、飛行機や船、車などの動力源、プラスチック製品の原料などです。石油は生活に密接に繋がっているため、原油価格の変動は日本経済に影響を与えるでしょう。
参照元 内閣府「第2章 2024年前半の世界経済の動向(第3節)」 経済産業省「石油統計速報 令和6年9月分」
今後の日本経済は徐々に回復する見通し
今後の日本経済は、徐々に回復していくでしょう。背景には、賃金がプラスに推移することや企業の設備投資増加などの見通しがあります。
ただし、先述のように日本内外の状況などによって経済が影響を受ける可能性もあるでしょう。
賃金はプラスに推移していく
賃金はプラスに推移していく見込みです。石破内閣で最低賃金の全国平均を引き上げる政府目標があるほか、企業の人手不足や物価高への配慮などから春闘(しゅんとう)で賃上げが実現できる可能性も。春闘とは、労働組合が賃金や勤務時間といった労働条件の改善について企業と交渉することです。
賃金が上昇し景気が良くなれば個人消費も徐々に増えていくでしょう。
企業の設備投資は増加していく
企業の設備投資は増加傾向が続くでしょう。企業は「二酸化炭素排出量をなくす」 「デジタル技術を使う」 「業務を効率化し作業量を減らす」といった投資に意欲的です。
設備投資とは、企業が店舗を新設したり設備を購入したりすることを指します。設備投資は国内の需要になるほか企業間での競争力を高めるため、経済成長の原動力となり景気に大きな影響があるのです。
まとめ
今後の日本経済は賃上げや設備投資などにより徐々に回復していく見通しですが、米国の政策など今後影響が予想される出来事もあります。
経済は日々変化しているため、こまめに状況をチェックし今後の動きに注目していきましょう。