留学生を契約社員で雇用する際の注意点は?企業に向けて解説

2021年11月11日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

「留学生を契約社員で雇用しても良いの?」と疑問に思う企業の方もいるでしょう。契約社員だからといって、就労ビザの許可申請が却下されるとは限りません。しかし、正社員での雇用よりハードルが高くなるのは事実です。このコラムでは、留学生が在留資格を就労可能な種類に変更する際の、審査項目を紹介します。また、留学生を契約社員で雇用する場合の注意点も解説。このコラムを参考にして、留学生の雇用をスムーズに進めましょう。

 

目次

  1. 留学生を契約社員で雇用してもビザは許可される?
  2. 留学生が就労ビザを申請する際の審査項目
  3. 留学生を契約社員で雇用する際のポイント
  4. まとめ

留学生を契約社員で雇用してもビザは許可される?

留学生を契約社員で雇用したからといって、就労ビザの許可が降りない訳ではありません。理由は、雇用形態だけが在留資格変更許可申請の審査基準ではないためです。以下で詳しく説明します。

契約社員だからといって不許可になる訳ではない

留学生の雇用形態が契約社員でも、出入国在留管理局から就労ビザの許可が降りる可能性は十分にあります。在留資格の許可はさまざまな視点で審査されており、雇用形態だけで判断されることはありません。そのため、正社員でなくてもほかの審査条件を満たしていれば、就労ビザを得られる場合があります。

短かすぎる契約期間では許可がおりない場合も

就労ビザの許可は、雇用形態だけでは判断されないとはいえ、留学生を雇用する際の契約期間があまりにも短いと、不許可になる恐れがあります。理由は、在留資格の審査項目に「雇用の安定性」が含まれているためです。契約社員でも、1年以上といった比較的長期の契約期間が設けられていれば、雇用安定性が認められます。しかし、1カ月~3カ月の短期契約で留学生を雇用しようとすると、雇用安定性が認められず、在留資格の申請が却下される可能性が高まるでしょう。そのため、留学生を契約社員として雇用する際は、少なくとも1年以上の契約期間を設定する必要があります。

留学生が就労ビザを申請する際の審査項目

ここでは、留学生が契約社員として働くために必要である、就労ビザの審査項目を解説します。留学生が就労ビザを取得するには、出入国在留管理局に「在留資格変更許可申請」をしなくてはなりません。理由は、在留資格を就労が許可されていない「留学」から、就労できる種類のものに変更するためです。在留資格変更許可申請では、主に以下の4つの点を審査されています。

1.大学や専門学校の専攻に関連する職種か

留学生が就労可能なビザを得るには、就こうとする仕事の内容が大学や専門学校の専攻に関連している必要があります。日本での就労が許されている在留資格は、ある程度の専門的知識や技術を持っていなければ得られません。たとえば、大学や専門学校でIT技術について学んでいた留学生が、介護士として働こうとしても、在留資格変更の許可は出ない可能性が高いでしょう。そのため、留学生を契約社員で雇用する際には、大学や専門学校の専攻と行う仕事に関連性があるか確認しましょう。なお、大学の場合は緩やかな関連性があればよく、専門学校の場合は密接な関連性が求められます。

2.安定した雇用であるか

留学生が日本で就労ビザを取得するには、雇用の安定性が必要です。雇用安定性は主に会社の経営状況から判断されます。そのため、留学生の雇用形態が契約社員で、契約期間が比較的短くても、経営の安定している大企業であれば在留資格が許可される可能性があるでしょう。契約期間が長くても、直近の決算で債務超過となっている会社の場合、、申請が不許可になることもあるので注意が必要です。

3.日本人より安い報酬ではないか

留学生が受け取る予定の報酬が、同じ仕事をする日本人を下回っていないかどうかも判断基準の一つです。企業が「外国人である」との理由だけで、日本人より低い報酬しか支払わないのは許されていません。しかし、実際には外国人の報酬を日本人より低く設定している企業が存在しています。そのため、多くの在留資格の取得条件には「日本人と同等以上の報酬を受けられるか」という項目が設けられているのです。留学生を契約社員として雇用する際には、報酬の設定に気を配るようにしましょう。

4.長く続けられる仕事であるか

就労可能な在留資格の審査では、外国人が継続して働ける仕事であるかどうかも重要視されます。留学生を契約社員として雇用する企業が特に気を付けなくてはならないのが「仕事の継続性」の部分でしょう。留学生の契約期間が1年未満の場合、在留資格の変更申請が却下される可能性が高まります。また、企業の経営状態で仕事の継続性が不安定な場合も、許可が降りない場合があるため、その点も考慮して雇用を進めると良いでしょう。

留学生を契約社員で雇用する際のポイント

ここでは、企業が留学生を契約社員で雇用する際に気を付けるべきポイントを紹介します。雇用契約書の内容を本人がしっかり理解できているか確認しましょう。また、留学生が就労ビザをスムーズに得るために、契約社員ではなく、正社員として雇用できないかお検討してみましょう。

留学生が契約内容を理解できているか確認する

留学生を契約社員で雇用する際は、本人が契約内容を正確に理解できているかを確認しましょう。契約書の文章には難解な表現が多く、日本語能力が十分でない留学生は意味を理解しきれていない可能性があります。雇用契約の内容を正しく理解していないまま契約を結べば、いずれトラブルに発展する可能性もあるでしょう。そのため、企業側がサポートしながら、双方が納得して契約を結ぶ必要があります。

外国人ならではの雇用契約書を用意する

留学生を契約社員として雇用する場合、日本人と同じ雇用契約書では不十分な場合があります。たとえば、在留資格の変更が許可されなかった際の雇用契約の在り方に関して、雇用契約書に明記しておく必要があります。在留資格が許可されなくても雇用義務が残ったままでは、日本で仕事は行えなくても在籍はあるという複雑な状況になるでしょう。そのため、雇用契約書に「在留資格を取得できなかった場合は雇用契約は無効」といった内容の項目を追加しておくとスムーズです。そのほかにも外国人を雇用するうえで雇用契約書に記しておくべき内容がないか確認しておきましょう。

正社員で雇用できないか検討してみる

留学生を契約社員で雇用する前に、まずは正社員で雇用できないか検討してみましょう。有期契約だと、出入国在留管理局の在留資格変更許可申請の審査が厳しくなります。留学生を正社員として雇用する手段はないかを検討し、できない場合はなぜ難しいのかを明確にしておく必要があるでしょう。

まとめ

留学生を契約社員で雇用することは可能です。しかし、契約期間や企業の経営状況によっては就労ビザの許可が降りない可能性があります。就労ビザが降りなければ留学生が日本で働くことはできません。そのため、留学生を雇用する前に契約期間や経営状況について確認しておきましょう。