育成就労制度の対象職種は?特定技能制度との関係も解説

2024年03月12日
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育成就労制度では、特定技能制度への移行を前提として外国人を育成していきます。そのため、受け入れ職種も特定産業分野と同じになる見込みです。
このコラムでは、育成就労制度で受け入れられる職種を解説します。また、育成就労制度の創設により変わる点も紹介。制度がスタートする前にあらかじめ概要を理解しておきましょう。

目次

  1. 育成就労制度とは
  2. 育成就労制度を利用できる職種
  3. 受け入れ分野は増える可能性がある
  4. 育成就労制度のポイント
  5. まとめ

育成就労制度とは

育成就労制度とはの画像

育成就労制度は、廃止される技能実習制度の代わりに作られる外国人受け入れ制度です。特定技能への移行を前提にして運用されます。

廃止される技能実習制度に代わる制度

育成就労制度は、廃止が決定した技能実習制度の代わりに創設される制度です。技能実習制度は、発展途上国出身の外国人に日本の技能や技術を移転する「国際貢献」を目的に運用が開始されました。しかし、実際には労働力の補填に技能実習生が使われており、制度の理念とは違う内容になっていることが問題視されていたのです。また、技能実習生の失踪や低賃金、受け入れ機関でのパワハラなどが多発している点も社会問題になっていました。

上記のような状況から、有識者で見直しが検討。2023年11月30日に有識者会議の最終報告書が政府に提出され、技能実習制度の廃止と育成就労制度の創設が決定しました。

人材育成と人材確保が目的

育成就労制度は、人材育成および人材確保が目的とされています。国際貢献に繋がる人材育成を基本理念としていた技能実習制度と比べると、より実態に合った内容になったといえるでしょう。

特定技能1号への移行が前提

育成就労制度は、外国人が特定技能1号に移行することを前提に運用される予定です。3年の育成期間で、外国人の技能を特定技能1号の水準まで高めます。

特定技能1号とは、特定産業分野で働く外国人に付与される在留資格です。特定産業分野は日本で特に人手が足りてない業種として定められています。外国人は試験に合格し在留資格「特定技能」を取得すれば、単純労働を含めた幅広い業務への従事が可能です。

特定技能については「特定技能とはどのような在留資格?簡単にわかりやすく解説【2号範囲拡大】」のコラムで詳しくまとめています。

育成就労制度を利用できる職種

育成就労制度を利用できる職種

育成就労制度を利用できる職種は、特定技能制度と同じになる予定です。技能実習制度では受け入れられていても、育成就労制度では受け入れ不可になる職種も出てくるでしょう。

基本は特定技能制度と同じになる

前述したとおり、育成就労制度は特定技能制度への移行を前提としています。そのため、受け入れ職種も特定技能制度と同じになる予定です。
2024年3月時点では、以下の12分野で特定技能外国人を受け入れられます。

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  4. 建設
  5. 造船・舶用工業
  6. 自動車整備
  7. 航空
  8. 宿泊
  9. 農業
  10. 漁業
  11. 飲食料品製造業
  12. 外食業

上記の職種に該当する企業は、育成就労制度でもスムーズに外国人を受け入れられるでしょう。

受け入れ不可の職種も出てくる

技能実習制度では外国人を受け入れられた職種でも、育成就労制度になると受け入れできなくなる可能性があります。技能実習制度のあとに特定技能制度ができたため、職種が適応していないケースも数多くあるためです。先述した特定技能制度に職種がない、もしくは職場の産業分類が特定技能分野に適合してない場合は、育成就労制度で外国人を受け入れることはできません。

技能実習の職種は「外国人技能実習生の職種一覧!企業が受け入れる際の条件や注意点も解説」や「技能実習2号への移行対象職種は?技能実習生を受け入れる企業向けに解説」のコラムをご覧ください。

受け入れ分野は増える可能性がある

受け入れ分野は増える可能性があるの画像

育成就労制度が始まるに当たり、移行先となる特定技能制度の受け入れ分野が拡大される可能性があります。技能実習制度の廃止・育成就労制度の創設により外国人の受け入れができなくなる企業は、人手不足で経営に影響が出る恐れがあるでしょう。そのような事態を防ぐために、現行の特定産業分野で受け入れられる範囲の拡大や分野自体の追加が議論されている最中です。

なお、育成就労制度に関する議論とは別に、人手不足の観点から追加が予定されている分野もあります。政府は「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4つの分野を特定産業分野に加えることを検討中です。2024年度中の閣議決定を目指して調整がされています。

特定技能「自動車運送業」について詳しく知りたい方は、「外国人ドライバーの就労ビザは?特定技能「自動車運送業」追加検討へ」のコラムをご覧ください。

育成就労制度のポイント

育成就労制度のポイントの画像

育成就労制度が作られることで変わる主なポイントは、以下のとおりです。

在留期間が固定になる

技能実習制度の在留期間は在留資格によって1~5年の開きがありましたが、育成就労制度の在留期間は基本3年です。3年間の育成期間中に、外国人の日本語能力・技能・知識などを特定技能1号の水準まで高めることが求められています。

転籍(転職)がしやすくなる

育成就労制度に変わると、外国人は転籍(転職)がしやすくなります。技能実習制度では、原則転籍が許可されていません。一方、育成就労制度では「同じ職場で1年以上働いている」「技能検定試験基礎級等および日本語能力A1相当以上の試験に合格する」といった条件を満たせば、転職が許可されます。

外国人にとっては職場選択の自由が生まれ、日本で働きやすくなるメリットがあるでしょう。一方で、企業にとっては育成した人材が流出してしまうリスクがあります。

日本語能力が高い人材を雇用できる

育成就労制度ができると、日本語能力が高い人材を雇用できる可能性が高まります。
育成就労制度および特定技能制度では、段階的に日本語能力の基準を決めることになりました。育成就労制度での就労開始時には「日本語能力A1(JLPTのN5など)」、特定技能1号移行時には「日本語能力A2(JLPTのN4など)」が求められます。また、特定技能2号移行時には「日本語能力B1(JLPTN3など)」が必要です。

日本語レベルを段階的に上げていく取り組みがされるため、外国人の継続的な学習が促されます。

長期的に働いてもらえる

育成就労制度は特定技能への移行を前提にしているため、長期的に働いてもらえる可能性が高まります。外国人は3年の育成期間を終え特定技能1号に移行すると、さらに5年間日本で就労可能です。1号を修了したのち2号に移行すれば、在留資格の更新に制限はなくなります。そのため、長く日本で働けるようになり、将来的には永住権を取得できる可能性もあるでしょう。

技能実習制度は働ける期間に制限があるのがネックでした。しかし、育成就労制度ができることにより、経験を積んだ外国人を長い間雇用できます。

参照元
出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議

まとめ

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育成就労制度を利用できる職種は、特定技能制度と同じものになる予定です。ただし、特定産業分野に含まれない業界への救済策として、あらたに職種が追加される可能性もあります。最新情報をチェックしておきましょう。