外国人ドライバーの就労ビザは?特定技能「自動車運送業」追加検討へ

2023年11月07日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

外国人をドライバーとして雇用する企業は、増加傾向にあります。ただし、ドライバーとして働ける就労ビザ(在留資格)は限られているため、雇用時は注意しなくてはなりません。
このコラムでは、外国人ドライバーに必要な就労ビザについて解説します。また、今後追加が予定されている特定技能「自動車運送業」の内容も紹介。内容を参考にして、外国人ドライバー雇用の準備を開始しましょう。

目次

  1. 外国人ドライバーの雇用が進む自動車運送業界
  2. 外国人ドライバーに必要な就労ビザ
  3. 外国人ドライバーを雇用する際のポイント
  4. 特定技能ビザで外国人ドライバーが雇用可能に?
  5. まとめ

外国人ドライバーの雇用が進む自動車運送業界

外国人ドライバーの雇用が進む自動車運送業界の画像

トラックやバス、タクシーなどの自動車運送業界では、外国人ドライバーの雇用が進んでいます。その理由は、深刻な人手不足を解消するためです。厚生労働省の発表した一般職業紹介状況によると、2023年8月の自動車運転従事者の有効求人倍率は2.68倍でした。全職種では1.17倍なので、かなり高い数字であることが分かります。少子高齢化と不規則な勤務形態やハードな仕事内容による若者離れが要因です。

また、自動車運送業では「2024年問題」への懸念もあります。働き方改革を目指した法改正により、2024年から自動車運転業務の年間時間外労働時間が上限960時間に変更される予定です。1人当たりの稼働できる時間が減るため、その分多くのドライバーを雇用しなくてはなりません。

日本人だけで十分な人数を雇用するのは、今後難しくなってくるでしょう。そんななか、外国人労働者の受け入れを開始する企業が増えているのです。

参照元
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年8月分)について

外国人ドライバーに必要な就労ビザ

外国人ドライバーに必要な就労ビザの画像

外国人なら誰でもドライバーになれるわけではありません。ドライバー業務が許可されている在留資格(就労ビザ)を取得している必要があります。在留資格とは、外国人が日本で何らかの活動をするのに必要な資格のことです。日本では、就労に基づく在留資格を便宜上「就労ビザ」と呼ぶことがあります。
外国人がドライバーとして働く場合、身分系のビザもしくは特定技能46号ビザのどちらかが必要です。

身分系ビザ

身分系ビザに分類されるのは、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の4つの在留資格です。これらの在留資格は外国人の身分に対して付与されるため、一般的に身分系ビザと呼ばれています。

身分系ビザを持つ外国人は、就く仕事の内容に制限がありません。そのため、日本人と同じようにドライバーとして雇用できます。

特定活動46号ビザ(タクシードライバー)

特定活動46号を持っている外国人は、タクシードライバーとして雇用可能です。特定活動ビザには複数の種類があります。そのうち46号は、日本の大学で学んだ知識や日本語能力を生かして働く外国人に付与されるビザです。特定活動46号ビザのもとでは、観光客のための企画立案や通訳をかねたドライバー業務が行えます。

外国人が特定活動46号ビザを得るには、日本の大学または大学院を卒業したうえで高い日本語能力を証明しなくてはなりません。具体的には、日本語能力試験(JLPT)のN1もしくはビジネス日本語能力テストBJTで480点以上の取得が必要です。取得の条件はほかの在留資格と比較すると厳しいものの、より幅広い業務を行えます。

外国人ドライバーを雇用する際のポイント

外国人ドライバーを雇用する際のポイントの画像

外国人ドライバーを雇用したら、サービスの教育に重点を置きましょう。また、運転技術のチェックも重要です。

サービスの質を落とさないよう教育を念入りに行う

自社のサービスの質が落ちないよう、教育体制をしっかり整えてから外国人を雇用しましょう。日本のドライバーの質は、海外と比較すると非常に高いことで知られています。たとえば、配送ドライバーの場合、利用者の希望時間にあわせて荷物を配達するのが当たり前です。また、配送物も破損しないよう丁寧に運びます。一方、海外で同じ質を求めるのは難しい場合が多いといえるでしょう。タクシーやバスのサービスも、日本と海外では異なる部分があります。

上記のことから、外国人のドライバー業務に関する感覚が日本人とは違う可能性もゼロではありません。クレームやトラブルを防ぐため、入社の段階で日本で求められているサービスの質をしっかり教育する必要があります。日本人より多めに研修の時間を取り、慣れるまで丁寧に業務を指導しましょう。

運転技術のチェックをしっかりする

ドライバーを雇用するうえでは、運転技術のチェックも重要です。来日してから長く、日本で何年も運転している場合は日本人同様の確認で問題ないでしょう。しかし、日本の運転免許を取って間もない場合は注意が必要です。運転免許を取得できていても、日本人と同等の運転技術があるとは限りません。交通ルールや交通マナーは国によって異なるため、完璧に慣れるまで時間が掛かる場合があります。

社名を背負って運転してもらう以上、安全に業務ができるかのチェックは入念に行いましょう。

特定技能ビザで外国人ドライバーが雇用可能に?

特定技能ビザで外国人ドライバーが雇用可能に?の画像

2023年9月、国土交通省は特定技能に「自動車運送業」を追加すべく、出入国在留管理庁と協議していることを明らかにしました。もし追加されれば、トラックやバス、タクシードライバーとして働く外国人を受け入れやすくなります。

特定技能制度とは

特定技能制度とは、人手不足の業界(特定産業分野)での外国人受け入れを促進するための制度です。特定産業分野は、2023年10月の段階で以下の12種類あります。

介護/ビルクリーニング業/素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業/建設業/造船・舶用工業/自動車整備業/航空業/宿泊業/農業/漁業/飲食料品製造業/外食業

日本語の試験および上記のいずれかの分野の技能試験に合格した外国人には、特定技能ビザが付与されます。特定技能ビザは1号と2号の2種類があり、1号では最長5年、2号に移行すれば事実上無期限で日本に在留可能です。

特定技能に「自動車運送業」が追加されるとどうなる?

特定技能に「自動車運送業」が追加されれば、トラックやバス、タクシードライバーとして外国人を受け入れやすくなるでしょう。前述したとおり、ドライバーとして働けるのは身分系ビザもしくは特定活動46号ビザを持つ外国人のみです。それぞれ取得の条件が厳しいため、急に数を増やそうと思っても難しいといえます。一方、特定技能は比較的取得が容易なのが特徴です。専門的な学歴や実務経験がなくても試験に受かれば取得できるため、より多くの外国人がドライバーとして働ける可能性が高まるでしょう。

特定技能ビザについては「特定技能とはどのような在留資格?簡単にわかりやすく解説【2号範囲拡大】」「特定技能1号と2号の違いとは?【2023年6月に方針変更決定】」をご覧ください。

まとめ

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外国人ドライバーは今後さらに増えていくとみられます。人手不足が深刻化する前に、外国人雇用の知識をつけて準備を始めましょう。特定技能「自動車運送業」は2023年度中の追加が検討されているので、最新の状況をチェックしておく必要があります。