「国籍不問」のその先へ 留学生の新卒採用を成功させるための心構えとは?【寄稿:立命館アジア太平洋大学】

2023年07月25日
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今村佳郎 (寄稿)
立命館アジア太平洋大学 キャリア・オフィス
元メーカー人事担当者。大学職員に転職後、現在は主に4回生の就職支援、企業対応を担当。採用側と就活生支援側を知り、有効な就活マッチングを試行錯誤中。立命館アジア太平洋大学(APU)は大分県別府市にある国際大学。在校生の約半分が留学生で構成される。106か国から留学生を受け入れており、多様性あふれるキャンパスが広がる。 https://www.apu.ac.jp/home/

「人口減少時代」に突入して久しい日本。労働力不足は実感を伴うレベルで表面化し、今後は消費市場も縮小の一途を辿ると予測されています。国籍を問わず優秀な人材と出会うために、あるいはグローバルに活躍できる人材を育成するために、新卒採用の「留学生枠」を設ける企業もめずらしくありません。

そこでWeXpats bizは、在校生約6000名の半分が留学生である立命館アジア太平洋大学に寄稿を依頼。企業と留学生の橋渡しを行ってきたキャリア・オフィスの今村佳郎さんに「留学生の新卒採用を成功させるための心構え」を伺いました。

 


「国籍不問」のその先へ――留学生が日本企業に感じていること

様々な業界・企業にコロナ禍という暴風雨が吹き荒れる中で、就職活動の最前線の一つである大学では様々な変化を敏感に感じざるを得ません。顕著な例として留学生採用について企業様からのお問合せが目に見えて増えています。本学は学生の多様性を非常に重視した特殊な大学であり、約2800人の国際学生が在籍していることから、ありがたくも「グローバル採用」についてご相談をいただく機会がここ2年で急激に増加しました。

今回は「企業」と「学生」の接点である大学就職部が考えていることを、留学生寄りの立場からご説明いたします。

企業の人事の方とお話をしていて「弊社は国籍不問で学生を採用しています」という言葉をよく耳にします。グローバルな企業であることをアピールするためのフレーズかと存じますが、当の学生たちはどう感じているのでしょうか?

「この企業は働きやすそうだ!」と言葉通りにとらえる留学生もいるでしょうが、率直に申し上げますと「そんなことをわざわざ言葉にするなんて実態が伴っていない企業かも」とネガティブに捉えられかねません。

なぜなら国籍不問は外国人を採用するうえで当然の前提条件であり、留学生が考えるグローバル企業とは「すでに様々な国籍の社員がいて国際色豊か、日本的な価値観に縛られない多様性のある職場」だからです。それなのに「(国籍不問だが)顧客の多くが日本人なので敬語もしっかり使えることが望ましい」「社内のコミュニケーション、会議、資料は全て日本語」などと説明された暁には、グローバルな印象を受けるどころか、足がすくむ学生がいてもおかしくないと考えます。

とはいえ、前述したような学生の理想を叶えられる日本企業はほんの一握り。留学生の絶対数に対して投資できるコストの問題もあり、多くの企業にとって急激な改革が現実的ではないことは承知しております。学生たちも日本語能力の必要性を把握し、まずは現実に歩み寄る必要があるでしょう。

その上で、私はご相談いただいた企業の方に対して「日本語能力については一旦保留して、間口を広げて採用を始めてみませんか?」とご提案しています。

日本人じゃなくても日本人と同等の日本語力があれば採用するという意識は透けて見えます。ご事情は理解いたしますが、むしろ日本語ができる学生ほど、ニュアンスを敏感に察知してグローバルな企業に流れていくでしょう。

「日本語ができる10人の中から優秀な1人を採用する」「優秀な10人の中から日本語が上手い1人を採用する」では結果が全く変わってきます。優秀な留学生の採用に成功している企業は往々にして後者です。企業説明会の一部分だけでも英語等の言語で行っていただければ、学生が受ける印象も大きく変わるかと存じます。

まずは日本語能力による足切りを止めて、日本人の学生と同様に人柄や経験で留学生を評価していただけないでしょうか? 実際はJLPT N1以上の日本語能力が必須とお考えだとしても、それを募集要項に記載する必要はなく、書類選考や面接でご確認いただければ済む話です。その結果として「やはり日本語能力が基準に達していない」と判断したのであれば、縁が無かったと学生も納得するでしょう。留学生と企業の双方が少しずつ意識を変えてゆくことで、win-winの関係が構築できるものと信じております。

 

執筆・協力:立命館アジア太平洋大学

 


社内コミュニケーションが日本語である以上、社員に日本語能力を求めざるを得ない部分はあるでしょう。日本語の勉強にかかわらず「仕事に必要なスキルを習得するために努力できること」は新卒に求められる資質であり、その意味でもJLPTのレベルを指標として評価することは合理的といえます。

しかし合理だけで人の心は動きません。たとえ日本語が得意な学生であっても、故郷を離れて日本企業で働くことは大きな挑戦なのです。まずは留学生の感情に寄り添う形で募集を行い、日本語能力が基準に達しているかは選考の中で判断する。ともすれば「日本語は基準以下だけど採用したい」と思える学生にも出会えるかもしれません。

社内制度を急に変えることは難しくとも、まずは採用に関わる社員ひとりひとりの意識をアップデートするだけで、「国籍を問わずに選ばれるグローバル企業」に大きく近づくことでしょう。

 

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