日本語を勉強している人のなかには、「日本にはどのようなことわざがあるの?」「面白いことわざを知りたい」という方もいるでしょう。日本にはユーモアがある面白いことわざがいくつもあります。それぞれ日本の文化や考え方と密接に関係しているのが特徴です。また、妖怪や地獄、幽霊に関することわざがあるのも面白い点といえるでしょう。ことわざを学ぶ際に、このコラムを役立ててください。
目次
- 人に関係する面白いことわざ
- 動物や想像上の生き物に関係する面白いことわざ
- 物に関する面白いことわざ
- 数に関する面白いことわざ
- 地名や建物に関する面白いことわざ
- 地獄や幽霊に関する面白いことわざ
- 面白いことわざを知って日本語の知識を深めよう
- まとめ
人に関係する面白いことわざ
日本には、人に関係する面白いことわざが沢山あります。ここで紹介するのは、家族や親戚、人名に関することわざと意味です。
家族に関する面白いことわざ
親や夫、妻などの家族に関する面白いことわざは以下のとおりです。
- 地震雷火事親父:親父とは父親のことで、世の中で恐れられているものを順に並べたことわざ
- 立っている者は親でも使え:自分が忙しいときに暇な人がいたら、誰でも良いから用事を頼めという例え
- 女房の妬くほど亭主もてもせず:女房(妻)が心配するほど亭主(夫)はもてないということわざ
- 娘一人に婿八人:一つしかない物を欲しがる人が多い状態を表している例え
- 小姑一人は鬼千匹に向かう:嫁にとって、小姑と関わるのは鬼1,000匹と対峙するように大変という例え
家族に関することわざからは、身近な人であっても恐れていたり付き合いが難しかったりする様子が感じられます。また、ちょっとした皮肉が込められているのも特徴です。
人に関する面白いことわざ
以下では、人に関する面白いことわざを紹介します。
- 江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ:江戸っ子(東京で生まれ育った人)の気前の良さを表したことわざ
- 女三人寄れば姦しい(かしましい):話好きな女性が3人も集まると騒がしくなるということわざ
- 遠くの親戚より近くの他人:緊急時に頼れるのは遠くの親戚より近くに住む他人であるという例え
- 泥棒に追い銭:物を盗んだ泥棒に追加で金銭を与えるように、損を重ねる様子を表したことわざ
- 盗人の昼寝:泥棒が夜に備えて昼寝するように、何気ない行動にも思惑があるという例え
江戸っ子や泥棒など、さまざまな人の特徴を表している面白いことわざがあります。
人名に関する面白いことわざ
日本には人名に関する面白いことわざもあります。なお、これらのことわざに出てくる名前は、現代ではほとんど名付けられません。ことわざから、日本で使われていた古い人名を知ることができます。人名に関することわざは以下のとおりです。
- 知らぬ顔の半兵衛(はんべえ):よく知っているのに知らないふりをすること、またそのような人
- 権兵衛(ごんべえ)が種まきゃ烏(からす)がほじくる:まいた種を烏が食べる様子から、無駄になることの例え
- 遅かりし由良之助(ゆらのすけ):待ちかねた状態や手遅れの状態を表すことわざ
「遅かりし由良之助」は、歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』に出てくる武士の由良之助が、主君の切腹の場に間に合わなかった話から生まれました。歌舞伎が元になっていることわざがあるのも、興味深いでしょう。
『仮名手本忠臣蔵』については、「日本の歌舞伎の特徴や歴史を解説!役者や人気の演目も紹介」のコラムでも解説しているので、ぜひご覧ください。
なお、日本にはほかにも武士にまつわることわざがあります。「日本のことわざについて知りたい!外国人に向けて歴史や使い方を解説」のコラムで紹介しているので、チェックしてみましょう。
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動物や想像上の生き物に関係する面白いことわざ
日本には、動物や想像上の生き物に関係する面白いことわざがあります。これらのことわざを知ることは、動物や想像上の生き物に対する日本人のイメージを掴むきっかけにもなるでしょう。
動物に関する面白いことわざ
以下では、犬や猫、狐といった動物に関する、面白いことわざを紹介します。
- あの声で蜥蜴(とかげ)食らうか時鳥(ほととぎす):物事は上辺だけでは判断できないという例え
- 狐を馬に乗せたよう:落ち着きのない様子や信用できないことを表すことわざ
- 大山鳴動して鼠一匹:事前の騒ぎが大きい割には結果が小さいという例え
- 鳴く猫は鼠を捕らぬ:よくしゃべる人ほど口先だけで行動しないという例え
- 豚もおだてりゃ木に登る:能力の低い人でもおだてれば実力以上に働くということわざ
日本には、「豚に真珠」「馬の耳に念仏」「猫に小判」ということわざもあります。3つとも、「価値の分からない人に立派な考えや良い物を与えても意味がない」ということわざです。動物に関することわざで同じ意味を示すものが3つもあるのは、面白い点といえます。
想像上の生き物に関する面白いことわざ
日本には、河童(かっぱ)や鬼などの想像上の生き物に関する面白いことわざがあります。河童は川や池に棲み泳ぎが得意とされる妖怪です。鬼は恐ろしい怪物で、人に危害を加えるとされています。想像上の生き物に関することわざは以下のとおりです。
- 陸(おか)に上がった河童:高い能力を持った人でも適した環境にいないと力を発揮できないという例え
- 鬼の居ぬ間に洗濯:鬼のように怖い人がいない間に、くつろぐ様子を表すことわざ
- 銭ある時は鬼をも使う:金銭を出せばどのような人でも思いのままに使えるという例え
- 来年の事を言えば鬼が笑う:何が起こるか分からない未来の話をしても意味がないということわざ
水に棲む河童が陸に上がったり恐ろしい鬼が笑ったりと、面白さを感じることわざがあります。
「日本のことわざクイズをご紹介!あなたはいくつ分かる?」のコラムでも、面白いことわざをクイズにして紹介しています。ぜひ挑戦してみてください。
物に関する面白いことわざ
日本には、物に関することわざも多く存在しています。
- 開いた口へ牡丹餅(ぼたんもち):努力せずに幸運が訪れる様子を表したことざわ
- 勘定合って銭足らず:理論と実践が一致しない様子を表したことわざ
- コップの中の嵐:限られた範囲で起きたことで、ほかの人には影響がない様子を表したことわざ
- 金(かね)の草鞋(わらじ)で探す:根気強く探すことをいうことわざ
金の草鞋とは、金属、つまり鉄製の草鞋(日本の伝統的な履物の一種)のことです。丈夫でどれだけ歩いても壊れないことから、「金の草鞋で探す」ということわざが生まれました。
「日本語のなかでも特に難しい言葉は?外国人が知っていたら驚かれるフレーズ」のコラムでも、物に関することわざを紹介しています。チェックしてみてください。
数に関する面白いことわざ
日本には、数に関することわざも沢山あります。これらのことわざを知ることで、日本の数に対するイメージを理解する手掛かりにもなるでしょう。数に関することわざは以下のとおりです。
- 藁(わら)千本あっても柱にならぬ:藁の様に弱いものが集まっても、役に立たないという例え
- お前百までわしゃ九十九まで:100や99は年齢を表し、夫婦の長生きを願うことわざ
- 駆けつけ三杯:飲み会に遅れてきた人は罰として酒を3杯飲まされるということわざ
- 三遍回って煙草にしょ:急いで休まず注意を重ねて失敗しないようするということわざ
「三遍回って煙草にしょ」は、3度夜回りしてから煙草休憩をしようという考えから生まれたことわざです。1や2ではなく、3という数字には、念には念を入れてという気持ちが込められています。自国のことわざを思い出し、日本の数に対するイメージと違いを比べてみても面白いでしょう。
日本にはほかにも多くの数に関することわざがあります。「日本語のことわざはビジネスや日常生活に役立つ?外国人が学ぶメリットとは」のコラムでも紹介しているので、参考にしてください。
地名や建物に関する面白いことわざ
日本のことわざには、地名や建物に関する面白いものもあります。これらのことわざは、土地や建物の特徴から生まれたといえるでしょう。以下では、地名や建物、河川名に関する面白いことわざを紹介します。
- 京の着倒れ、大阪の食い倒れ:京都の人は服に、大阪の人は食に金銭を使う傾向があるということわざ
- 清水の舞台から飛び降りる:京都の清水寺から飛び降りるように、思い切って大きな決断をする例え
- 日光を見ずして結構と言うな:素晴らしい神社である日光東照宮を見たことがない人は、建築の美しさを語ってはいけないということわざ
- ルビコン川を渡る:重大な決断や行動をすることを表すことわざ
ルビコン川は、古代ローマにおいて領地の境界線であり許可なく渡ってはいけないとされていた川です。日本の地名だけではなく、海外の河川名に関することわざもあるのも面白いポイントでしょう。
地獄や幽霊に関する面白いことわざ
日本には恐れられているはずの地獄や幽霊に関することわざが多くある点も、面白さを感じるでしょう。以下では、地獄や幽霊に関することわざを紹介します。
- 聞いて極楽見て地獄:人から聞いた内容と実際見た様子に違いがあることを表したことわざ
- 地獄の一丁目:恐ろしい事態の始まりを例えたことわざ
- 地獄の沙汰(さた)も金次第:金銭を出せば、何でも思いのままにできるという例え
- 鬼籍に入る:鬼籍とは死者の名前や死亡年月日などが記された帳面であり、死ぬことの例え
- 幽霊の正体見たり枯れ尾花:怖いと思っていると、枯れた草花でも恐ろしく見えるということわざ
地獄や幽霊といった見えない存在に関することわざから、日本人の想像力の豊かさが感じられるでしょう。
日本には同じく目に見えない仏に関することわざもあります。「日本の有名なことわざと意味を紹介!よく使うことわざ 一覧から英語のことわざまで」のコラムで紹介しているので、ぜひご覧ください。
面白いことわざを知って日本語の知識を深めよう
面白いことわざを学ぶと日本語の知識が深まり、細かいニュアンスのある内容を理解したり表現したりできるようになります。そのため、日本人とコミュニケーションを取る際に役立つでしょう。相手がことざわを使った際に、内容をより深く理解できるためです。また、自分が面白いことわざを言うことで、会話が弾むきっかけになる可能性もあります。
ことわざには、現代ではあまり見聞きしなくなった単語も含めて、さまざまな言葉が使われています。初めて聞くことわざの意味を調べていくうちに、日本語の語彙も増えるでしょう。なお、ことわざを覚える際は内容をイメージすると、記憶に定着しやすくなります。
まとめ
日本には文化や思想を反映した、多くの面白いことわざがあります。家族を皮肉ったり動物で例えたり、ユーモアが感じられるでしょう。また、河童・鬼など日本特有の妖怪や地獄、幽霊などに関することわざが多い点も面白いポイントです。ことわざを読むときに想像力を働かせると、より面白さを感じられるでしょう。
ぜひことわざを学んで、日本語への理解力や表現力を深めてください。