「映える」には、「はえる」という読み方のほかに、若者言葉・流行語としての「ばえる」という読み方もあります。これは「インスタ映え」が動詞化したもので、SNS上で見栄えする写真や撮り方を指す言葉です。「映える写真」「映えスポット」のように使います。このコラムでは「はえる」と「ばえる」の意味の違いや使い分けについて例文を交えて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 「映える」の読み方と意味
- 「映える」の語源はインスタグラムから?
- 「映える」の例文を知って実際に使ってみよう!
- 「映える」と同じように使える言葉
- 英語にも「映える」と似た意味の言葉がある
- 「映える」はもう時代遅れなの?
- まとめ
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「映える」の読み方と意味
「映える」は、通常「はえる」と読みます。漢字では「栄える(はえる)」とも書き、これは昔から使われてきた言葉です。
しかし近年、若者言葉・流行語として「ばえる」と読む、新しい使い方が出てきました。
「はえる」と「ばえる」は、同じ漢字でも意味が異なります。まずはそれぞれの意味と使い分けについて確認してみましょう。
「はえる」は「ひときわ美しく目だって見える」という意味
「映える(はえる)」は、「ほかよりも目立っていて美しい」という意味です。具体的には以下のような意味があります。
- 光に照らされて輝いている
- ほかのものと調和し、一段とよく見える。引き立って見える
- 立派に見える。目立っている
「はえる」は、基本的にまわりの景観に対して引き立って見えるという場合に使う言葉です。「栄える(はえる)」と書くこともあります。
「ばえる」は「SNS投稿に向いている写真・撮り方」という意味
「映える(ばえる)」は、若者言葉・流行語として広まった新しい読み方です。「ばえる」には「SNS投稿に向いている写真・撮り方」という意味があります。具体的には以下のような意味です。
- SNS上でひときわ目立つような素晴らしい写真や映像、撮り方
- SNS投稿にうってつけの被写体
- 高評価されそうな写真
「ひときわ目立つ/美しい」という基本的な意味合いは同じですが、「ばえる」は写真や映像、被写体に対して使われることが多いというのが特徴といえます。
「映える」の語源はインスタグラムから?
「ばえる」は、「インスタ映え(ばえ)」の動詞が独立したものです。「インスタ映え」とは、写真共有型のSNSである「Instagram(インスタグラム)」で映える(はえる)ものを意味しています。
「インスタ映え」が流行り始めたのは2017年ごろです。インスタグラム上での見栄えを意識する若者が急増し、いかに可愛くおしゃれで、カッコ良い写真を取るかが重要視されていました。インスタ映えは2017年の流行語大賞にも選ばれ、これにより世間に広く知られる言葉となっていったのです。
それから「動画映え(ばえ)」など派生的な表現が生み出され、最終的に「映える(ばえる)」が独立する動詞として使われるようになりました。そのため、「ばえる」はインスタ映えや動画映えと同じように、「SNS上で目立つ写真」という意味合いで使うのが一般的です。
しかし、近年はSNSに投稿する、しないに関わらず、見栄えする風景や写真、状況に対して「映える(ばえる)」を使うこともあります。また、SNS上のみならず、日常会話で「ばえる」を使うケースも少なくありません。
「はえる」が「ばえる」に変化したのはなぜ?
インスタグラムで映える(はえる)写真が「インスタ映え」と呼ばれるようになり、流行したのち動詞化して「映える(ばえる)」と表現され始めました。
ではなぜ「はえる」という清音が最終的に「ばえる」という濁音に変化したのかというと、日本語の連語のルールが関係しています。
そもそも「インスタ映え(ばえ)」という言葉は、「インスタ」と「映え(はえ)」が連結した言葉です。「はえ」の部分が濁音の「ばえ」に変化しています。これは連濁というルールによるものです。
「青+空=あおぞら」、「長い+靴=ながぐつ」など、二語が連結した複合語は、後ろの文字の語頭が濁音に変化することがあります。「インスタばえ」も、連語によって濁音に変化したものです。
そのため、「映える(ばえる)」という言葉は「インスタ映え」の連濁をベースとした読み方であり、基本的に「インスタ映え」の意味を含んだ言葉といえます。
「映える」の例文を知って実際に使ってみよう!
「映える(ばえる)」の例文と使い方を紹介します。「映える」はSNS発祥の言葉ですが、一般的なネット用語とは異なり、口頭でも使用可能です。友人同士の会話やチャットなどで使う機会もあるでしょう。
(例文)
「高性能なカメラを買ったので映える写真がたくさん撮れるだろう」
「この前のパーティーで撮った動画、正直かなり映える」
「あの観光地には映えスポットがたくさんある」
「話題の映えスイーツを食べに隣町まで行く」
「映える(ばえる)」は、写真自体に使うこともあれば、撮影する対象に対して使うこともあります。また、「映えスポット」や「映えスイーツ」など、「映え△△」という表現も一般的です。
なお、一般的に「ばえる」と言われる写真や風景は以下のようなものが挙げられます。
- 可愛いもの
- カラフルで色鮮やかなもの
- 海外やリゾート地のような非日常感
- 意外性のある写真
- おしゃれな構図にこだわった写真
上記のような風景や写真を見かけたら、友達や家族に「ばえる」を使ってみましょう。ただし、若者言葉で砕けた表現だと取られるため、かしこまった場面で使うのには適さない場合もあります。
次に「映える」を「はえる」と読む場合の使い方を確認しましょう。
(例文)「光に照らされて美しい」の意味
「夕日に山々が映える」
「ライトアップされた建物が夜の暗闇に映える」
(例文)「目立つ」の意味
「白い肌に映える真っ赤なルージュ」
「殺風景な部屋に置かれた花瓶がよく映えて見えた」
なお、「はえる」は基本的に周りのものと比較して使う言葉です。一方、「ばえる」は対照がなくても使えます。
「映える」と同じように使える言葉
「映える(ばえる)」と同じように使える言葉には、「フォトジェニック」が挙げられます。フォトジェニックは、「写真写りが良い」「写真映えする」という意味の言葉です。そのため、以下の例文のように「映える」と同じ使い方ができます。
(例文)
「駅の近くにフォトジェニックなカフェができたらしい」
「水平線に沈む夕日の風景が実にフォトジェニックだ」
フォトジェニックの由来は「photogenic」という英語です。しかし、海外のphotogenicは見栄えの良い人を指すのに対し、日本のフォトジェニックは基本的にモノや風景に対して使用するという違いがあります。
また、「映える(ばえる)」は写真に対して使うこともありますが、フォトジェニックは被写体に使う言葉なので使い分けに注意しましょう。
一方、「映える(はえる)」には以下のような類義語があります。
【映える(はえる)の類義語】
- 見栄えがする
- 立派に見える
- 目立つ
どれも「ほかのものに比べてより良く見える」という意味の言葉です。
英語にも「映える」と似た意味の言葉がある
「映える(ばえる)」は、「インスタ映え」に由来する近年生まれた造語です。実は英語にも近年生まれた「映える(ばえる)」に該当する言葉があるので、ここで紹介します。
instagrammable
「instagrammable」は、インスタグラムに「able」を足した形容詞です。直訳すると「インスタグラムに適する、インスタグラム向きの」という意味になります。近年できた造語で、「instagramable」とmを一つ除いて表記することもあります。
(例文)
「It is instagrammable.」(これはインスタ映えします)
「There are many instagrammable spots in this park.」(この公園にはインスタ映えするスポットがたくさなんある)
instagram-worthy(insta-worthy)
「instagram-worthy」は、インスタグラムに「worthy(価値がある)」を足した形容詞です。直訳すると「インスタグラムに載せる価値がある」という意味になります。近年できた造語で、頭文字の「i」を大文字にしたりハイフンを省いたりして表記しますが、どれも意味は同じです。
(例文)
「It is insta-worthy.」(これはインスタ映えします)
「Get Instagram-worthy shots.」(インスタ映えする写真を撮ってください)
「映える」はもう時代遅れなの?
「映える(ばえる)」「インスタ映え」は若者を中心に流行した言葉です。言葉自体はまだ使われていますが、「インスタ映えする写真を撮る」文化自体は古いと考える人もいます。
「インスタ映え」が時代遅れになった背景には、「インスタ映え」を意識する生活に疲れてしまった若者が多いのが関係しています。「映え」を求めて遠くへ出かけたり、工夫した写真を撮るのに疲れてしまったのです。
「映える」に代わって人気になりつつあるのが「チル」という言葉。「ゆっくりする、くつろぐ」という意味のスラング「chill out」を略したもので、ナチュラルで自然体な写真のことを指しています。つまり、試行錯誤して撮った非日常的な写真よりも、自分らしさやふとした瞬間を写した写真が好まれているのです。
まとめ
「映える」には、「はえる」と「ばえる」という2つの読み方があります。前者は「ひときわ美しく目だって見える」という意味、後者は「SNS投稿に向いている写真や撮り方」という意味です。
「映える(ばえる)」という言葉は「インスタ映え」に由来します。2017年の流行語大賞に選ばれた「インスタ映え」は当時のブームで、カラフルでおしゃれなSNS映えする写真を撮ろうとする風潮が若者を中心に広まっていました。そこから、SNSに投稿する、しないに関わらず、見栄えする風景や写真に対して「映える(ばえる)」と表現するようになりました。
しかし、SNS映えする写真を撮ろうと試行錯誤することに疲れた若者も多く、「ばえる写真を撮ろうとするのは時代遅れ」という意見も出てきています。近年は「ばえる写真」に代わり、ナチュラルで自然体な写真が好まれるようになってきているのです。