日本在住の外国人は、生活面、仕事面においてさまざまな困りごとがあります。日本での生活は、日々新しい発見や気付きがあり、新鮮さや楽しさを感じるでしょう。一方で、外国人であるがゆえに文化や価値観の違いなどから問題に直面する場合も。このコラムでは、外国人が日本で困っていることや解決策を紹介します。各所の相談窓口も記載しているので、参考にして日本での生活をより豊かにしましょう。
目次
日本在住の外国人が生活面で困っていること
日本在住の外国人が生活するうえでは、さまざまな壁があります。海外の文化とは異なる点や価値観など、カルチャーショックを受ける場面も多いでしょう。ここでは、日本在住の外国人が生活面で困っていることについて解説します。
日本語
日本で生活するうえでは、必然的に日本語を使う機会が多くなります。日本語を勉強したくても日本語教室や語学学校の授業料が高いため、通うことができない人も多いようです。また、日本語を学習中であっても、学んだ日本語を使って会話する機会や相手がおらず、レベルアップに繋がらないなどの悩みを抱える人も。
仕事の時間と学校の時間が合わずに、語学学校に通いたくても通えない人は、空いた時間を利用してオンラインレッスンなどを検討してみるのも良いでしょう。また、イベントに参加したり積極的にお店の人や日本人の同僚と会話したりしてみるのも、日本語能力を高めるきっかけとなります。
住居探し
日本での住居探しは、外国人にとってはさまざまなハードルがあります。日本では、家を借りる際に多くの資金が必要です。具体的には、家を紹介してくれた人に払う仲介手数料や家を借りるための敷金、大家に支払う礼金などです。このほか、鍵の交換代金や町内会費などの出費もあります。結果的には大きな出費となるので、契約時に全部でいくらかかるのかを確認しておきましょう。また、契約前には審査があり「保証人」が必要になることも。保証人がいない場合は、保証人不要の物件を探す必要があります。外国人入居者向けの賃貸保証会社もあるので、保証人がいない場合は利用しましょう。職場からの距離や利便性、周辺環境なども考え、自分に合った住居探しをすることが大切です。
携帯電話の契約や口座の開設
携帯電話の契約や銀行口座の開設は、日本で生活するうえでは欠かせない手続きです。携帯電話会社も複数あるため、どこで契約したらいいか分からなくて困ったと感じる人も多いでしょう。今は格安スマートフォン(格安スマホ)や格安simなど携帯電話の種類もさまざまです。電気量販店では、複数の携帯電話会社を比較しながら選べ、その場での契約手続きもできます。
給与の振込などで必要な銀行口座については、勤務先の会社に確認したうえで開設を行いましょう。印鑑や在留カードやパスポートなど、口座開設に必要なものを銀行のホームページや窓口で確認してください。
病院
病気になったときに、どこの病院に行けば良いのか分からなくて困ったと感じる外国人は多いようです。日本では、大きな病院で診察を受ける際は紹介状が必要です。そのため、まずは近所のクリニックや小さい病院で診察を受けるようにしましょう。身体の不調や発熱などは「内科(ないか)」、ケガをしたときは「外科(げか)」や「整形外科(せいけいげか)」を受診します。お腹の調子が悪いときは「胃腸科(いちょうか)」、生理不順や妊娠などで受診を希望する場合は、「婦人科(ふじんか)」、子どもの病気は「小児科(しょうにか)」へ行きましょう。
災害時
日本は災害の多い国といわれています。日本在住中は地震や洪水、台風、地域によっては大雪など災害に見舞われることもあるでしょう。日本在住の外国人が災害時に最も困るのは、情報を得られないことです。家にテレビがなかったり日本語が不慣れだったりする場合は、情報収集に時間がかかります。災害の状況は「気象庁(きしょうちょう)」や「消防庁(しょうぼうちょう)」のホームページを確認してください。気象庁のWebサイトには、英語や中国語をはじめとする15言語で情報が配信されています。
そのほか、観光庁が監修している「Safty tips」という外国人向けのアプリによる多言語の情報発信も行われているので、必要な方はダウンロードしておきましょう。
子どもの学校
日本在住外国人の子どもの学校については、さまざまな問題があります。特に困ることは、言語の違いによる対人関係の困難さや学業の遅れです。日本語が分からないため、授業の内容が理解できなかったり上手くコミュニケーションが取れなかったりするケースは少なくありません。言語の壁における問題は、多方面へ影響を及ぼします。日本の公立学校では、日本語指導が必要な児童生徒に対する取り出し指導を行ったり学校生活に適応できるよう配慮したりする取り組みを行っています。入学前に公立学校のことで気になることがあれば、住んでいる市町村の「教育委員会」に問い合わせてください。
外国籍の子どもが多く在籍するインターナショナルスクールについて知りたい方は「インターナショナルスクールとはどんな学校?学費や教育内容について紹介!」のコラムも参考にしてください。
参照元
厚生労働省「「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」について」
気象庁「防災情報」
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日本在住の外国人が仕事面で困っていること
ビジネスシーンにおいても、日本と海外では異なる面が多々あります。日本の企業文化や日本人の価値観などは、海外と違う部分もあり慣れるまでは不思議に思ったり違和感を感じたりすることもあるでしょう。ここでは、日本在住の外国人が仕事で困っていることについて解説します。
コミュニケーションの取りにくさ
日本のビジネスシーンでは、敬語や言い換え表現が多く使われています。そのため、日本語が上手く話せない外国人にとっては相手が話していることが分かりづらく、意思疎通がスムーズにいかない場合も。カジュアルな表現は知っていたとしても、上司に対する言葉と同僚に対する言葉を使い分けたりする必要があるため、日本語でのコミュニケーションの難しさを感じている人も多いようです。同僚がよく使っている言葉を覚えたり分からない表現を質問したりすることで、少しずつ理解できるようになるでしょう。
残業や職場の慣習
日本の企業の中には「上司より先に帰らない」「残業したほうが努力を評価される」という慣習が根付いている会社もあります。そのため、終業時間になっても帰宅しない社員が多く、帰宅していいのか戸惑う人も多いでしょう。残業については、会社によりルールも異なります。もし、自分だけ先に退勤する場合は「お疲れ様でした。お先に失礼します」と上司や同僚に声をかけて帰りましょう。
職場の慣習もさまざまで、始業30分前の出社や全員での清掃を慣習とする企業もあります。慣習については、実際に職場で働いてみなければ分からない部分もあるため、同僚や上司に聞いてみると良いでしょう。
通勤などの交通面
日本の都市部はバスや電車などの公共交通機関が充実しており便利です。日本の電車は、海外と比較しても時間が正確でダイヤの乱れはほとんどありません。利便性が高い地下鉄や電車は利用客も多く、ラッシュアワーの満員電車や人混みに驚く外国人も多いようです。また、駅も広く路線数も多いことから乗り換えも複雑で理解しづらいことも。家を探すときは、駅から家までの距離だけでなく、乗り換えなどで駅構内を歩く時間も考慮する必要があります。外国人向けの乗り換えアプリを利用したり、Webサイトを確認したりするなどして、分からない場合は近くの駅員に尋ねると良いでしょう。
タトゥーに対する偏見
日本は、タトゥーに対する考え方が海外ほど寛容ではありません。タトゥーは日本語では「刺青(いれずみ)」と呼ばれることもあり、かつては反社会勢力の人達が入れるものだと印象づけられていました。そのため、一定数の人はタトゥーに対して偏見を抱いている現状があります。日本社会には個人の自由であるタトゥーがまだ理解されておらず、温泉施設やプールでは利用を断られたり隠すよう求められたりすることも。また、ビジネスの場では、タトゥーが見えないように長袖を着るなど、相手や場面に応じた対応が求められる場合もあります。分からない場合は、先輩社員に相談するなどして対応しましょう。
宗教観の違い
海外では、信仰している宗教を自ら話題にすることが多い一方、日本では他人に対して宗教の話はほとんどしません。海外では、食事に誘う際に「宗教上食べられないものはありますか」と聞くこともあります。日本では、相手の宗教を尋ねるような会話は日常会話ではほとんどありません。宗教と政治とお金の話は相手のプライベートな部分なので聞くのは失礼とされています。そのため、いかなる場であっても、信仰している宗教が話題になることはほとんどないといえるでしょう。日本では、無宗教の人や神道の人が多いものの、ハロウィンやクリスマスは宗教観など深い意味はなく、イベントとして楽しんでいます。ただし、個人の宗教観については話すのを控える人が多いということを理解しておきましょう。
そのほか、日本で生活するうえでのマナーについて知りたい方は「日本のマナーを外国人にも分かりやすく解説!観光で役立つ場面別に紹介」のコラムも参考にしてください。
日本在住の外国人が困ったときに相談できるところ
外国人として日本で生活していく中で、文化や考え方の違いからさまざまなトラブルと直面することも少なくありません。ここでは、困ったときに外国人が相談できる各所窓口を紹介します。何か困ったときは、一人で抱え込まずに相談してみましょう。
- 生活面全般の相談をしたいときや相談先が分からないとき:一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR/クレア)が運営する「多言語生活相談窓口 」
- 労働条件に関する相談:厚生労働省が運営する「外国人労働者向け相談ダイヤル」
- 在留資格や就労に関する相談:出入国在留管理庁が運営する「外国人在留支援センター「FRESC/フレスク)」
- 日本で暮らすうえでの情報を得たいとき:出入国在留管理庁が運営する「外国人生活支援ポータルサイト」
紹介したサイトは、多言語で対応可能です。説明しやすい言語を選び、気軽に相談してみましょう。電話で説明が難しい場合は、窓口へ行き相談してください。
参照元
一般社団法人自治体国際化協会(CLAIR/クレア)「多言語生活相談窓口 一覧」
厚生労働省「相談機関のご紹介(外国人労働者向け)」
出入国在留管理庁「外国人在留支援センター」
出入国在留管理庁「外国人生活支援ポータルサイト」
まとめ
日本での生活は、文化や価値観の違いにカルチャーショックを受けることもたくさんあるでしょう。また、母国で過ごしていた頃とは異なり、外国人として初めて直面する問題も出てくるかもしれません。生活面や仕事面で困ったときは、周りの人に聞いてみたり、各所の相談窓口に確認してみたりすると良いでしょう。