高度人材とは、一定水準以上の技能や知識を持ち専門性の高い仕事ができる外国人のことです。日本政府は、高度人材に日本で暮らすうえでのさまざまな優遇措置を設けて積極的に受け入れを進めています。
このコラムでは、高度人材や在留資格「高度専門職」の概要を解説。優遇措置の内容やポイントの計算方法も紹介しています。高度人材に当てはまる人はぜひ申請を検討してみてください。
目次
- 高度人材とはどのような人のこと?
- 高度人材に付与される在留資格「高度専門職」について
- 高度人材として日本で働くメリット
- 高度人材ポイント制の概要と計算方法
- 高度人材として日本で働く際の手続きの流れ
- 特別高度人材制度(J-Skip)について
- まとめ
高度人材とはどのような人のこと?
日本政府は高度人材を以下のように定義し、積極的に高度人材の受け入れを進めています。
- 国内の資本・労働とは補完関係にあり,代替することが出来ない良質な人材
- 我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材
専門的な技術や知識を持ち、日本経済に良い影響をもたらしてくれる外国人が、高度人材として認定されます。
日本の外国人受け入れの現状は「日本で働く外国人労働者の人数は?就労可能な在留資格も紹介」で紹介しているので、参考にご覧ください。
参照元 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制とは?」
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高度人材に付与される在留資格「高度専門職」について
高度人材の条件を満たした外国人には、在留資格「高度専門職」が付与されます。高度専門職には3つの種類があり、さらに1号と2号に分かれるのが特徴です。
3つの活動分類
在留資格「高度専門職」の活動分類は以下の3つです。
在留資格 |
区分 |
職種の例 |
高度専門職1号イ |
高度学術研究活動 |
研究者や教師など |
高度専門職1号ロ |
高度専門・技術活動 |
IT技術者や設計者など |
高度専門職1号ハ |
高度経営管理・活動 |
経営者や管理者など |
出入国在留管理庁の発表によると、2023年6月末時点で高度専門職の在留資格で日本に在留する外国人は20,877人です。そのうち、1号「ロ」を持つ外国人は15,810人と過半数を占めていました。1号「ロ」は、ITエンジニアや技術者、コンサルタントなど多くの職種が当てはまります。一般企業に勤める人が在留資格「高度専門職」を取得する場合、分類は1号「ロ」になる可能性が高いといえるでしょう。
1号と2号の違い
高度専門職1号と2号では許可される条件が異なります。まずはじめに付与されるのは「高度専門職1号」です。その後、高度人材として3年以上日本に在留し、素行や国益適合(日本の利益になるか)などの条件を満たせば「高度専門職2号」を申請できます。
参照元 出入国在留管理庁「令和5年6月末現在における在留外国人数について」
高度人材として日本で働くメリット
日本政府は、高度人材に日本に来てもらうためにさまざまな優遇措置を設けています。ここでは、高度人材として日本で働くメリットを紹介するので、在留資格「高度専門職」の取得を考えている人は参考にしてください。
在留資格「高度専門職1号」のメリット
在留資格「高度専門職1号」を取得して得られるメリットは以下の6つです。
- 複合的な活動の許可
- 5年の在留期間の付与
- 永住許可要件の緩和
- 配偶者の就労の許可
- 一定の条件のもと、親や家事使用人の帯同を許可
- 入国や在留手続きの優先処理
本来、永住権を取得するには引き続き10年以上日本に在留していなければなりません。しかし、在留資格「高度専門職1号」を持っている高度人材は、3年以上日本に在留していれば永住権取得の要件を満たせます。
在留資格「高度専門職2号」のメリット
在留資格「高度専門職2号」を取得すると、1号の優遇措置に加えて以下のメリットも受けられます。
- 無期限の在留期間の許可
- 就労に関する在留資格でできるほぼすべての活動の許可
無期限の在留期間は、在留資格「永住者」でも許可されます。しかし、親や家事使用人の帯同は許可されていません。そのため、親や家事使用人を本国から呼び寄せて一緒に暮らしている人は「永住者」ではなく「高度専門職2号」を申請したほうが良いでしょう。
高度人材ポイント制の概要と計算方法
高度人材を認定する代表的な制度に「高度人材ポイント制」があります。ポイント表の獲得点数が基準点を超えれば、在留資格「高度専門職」を得られる仕組みです。
高度人材ポイント制とは
高度人材ポイント制は、高度人材を獲得ポイントで判断する制度です。学歴や年収、年齢などにポイントを設け、合計点数が70点以上になった外国人が高度人材に認定されます。ほかの在留資格の審査よりも基準が明確で、簡単に自身が高度人材に当てはまるのかチェックできるのが特徴です。
高度人材ポイントの計算方法
高度人材ポイントの計算は、専用のポイント計算表を用います。用紙は出入国在留管理庁のWebサイトからダウンロード可能です。
ポイントの配点はどの分野で高度人材の認定を受けるかで異なります。自分が当てはまる分野を選び、各項目の横に書かれている点数を合計していきましょう。
たとえば、「高度専門・技術分野」で計算する場合、「大学を卒業しまたはこれと同等以上の教育を受けた者」に当てはまったら10点、職歴が10年以上だったら20点です。すべての項目の合計が70点以上になれば、高度人材認定の基準を満たせます。
参照元
出入国在留管理庁「ポイント評価の仕組みは?」
高度人材として日本で働く際の手続きの流れ
高度人材として日本で働くためには、在留資格「高度専門職」の取得が必要です。ここでは、海外から手続きする場合と日本で手続きする場合に分けて、流れを解説します。
海外から手続きをする
海外から在留資格「高度専門職」を取得するためには、以下の流れで「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
- 企業から内定を得る
- 雇用契約を結ぶ
- ポイント計算表やポイントを立証する資料を用意する
- 在留資格認定証明書交付申請をする(雇用する企業が代理でしてくれる)
- 在留資格認定証明書を送ってもらい、日本国大使館や総領事館でビザ(査証)を発給する
- 日本に入国する
在留資格認定証明書交付申請は国内からでしか行えません。そのため、自身が海外にいる場合は働く予定の企業が代理で申請してくれます。
日本で手続きをする
すでに日本で暮らしており、ほかの在留資格から「高度専門職」に変更する場合は「在留資格変更許可申請」を行います。
- 企業から内定を得る
- 雇用契約を結ぶ
- ポイント計算表やポイントを立証する資料を用意する
- 住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で在留資格変更許可申請をする
- 通知が来たら再度出頭し、新しい在留カードを受け取る
在留資格変更許可申請は基本的に自分で行います。
「在留資格の申請方法や必要書類は?外国人の疑問を解決!」や「在留資格変更許可申請書はどのように書く?種類ごとに解説」のコラムでは、各種手続きについて詳しくまとめているのでぜひご覧ください。
特別高度人材制度(J-Skip)について
2023年4月から特別高度人材制度(J-Skip)がスタートしました。ここでは、特別高度人材制度の概要や認定の条件を解説します。
2023年4月からスタートした制度
特別高度人材制度(J-Skip)は2023年4月からスタートしました。ポイント表を用いる高度人材ポイント制とは違い、学歴や職歴、年収が基準を満たしていれば在留資格「高度専門職」を取得可能です。特別高度人材は、高度人材よりもさらに多くの優遇措置を受けられます。
特別高度人材の条件
外国人が特別高度人材になる条件は以下のとおりです。
- 高度学術研究活動」 および「高度専門・技術活動」分野の場合:年収2,000万円以上に加え、修士号以上を取得しているもしくは実務経験が10年以上あること
- 高度経営・管理活動」分野の場合:年収2,000万以上で、事業の経営または管理に係る実務経験が5年以上あること
上記のように、高い年収が見込まれる外国人が特別高度人材として認められます。
特別高度人材の優遇措置
特別高度人材は、高度人材ポイント制の優遇措置にプラスして以下の措置を受けられます。
- 世帯年収が3,000万円以上の場合、家事使用人を2人まで雇用可能
- 配偶者の就ける仕事や勤務時間の条件の緩和
- 永住要件の緩和(1年の在住で申請可能)
- 出入国時にプライオリティーレーンの使用が可能
プライオリティーレーンとは保安検査の優先レーンのことで、大規模空港に設置されています。
なお、特別高度人材は「高度専門職1号」で1年日本に在留すれば「高度専門職2号」に移行できます。
参照元 出入国在留管理庁「特別高度人材制度(J-Skip)」
まとめ
高度人材とは、一定水準以上の技能や知識を持ち合わせている人材のことです。日本で暮らすうえでのさまざまな優遇措置が用意されているので、条件を満たせる人はぜひ申請を検討してみましょう。