昨今の日本では、何十年も前に流行ったファッションが若者の間で再流行しています。そのなかでも特に個性の強い、80年代ファッションに惹かれる人もいるでしょう。80年代の日本はかつてないほどの好景気に入り、ファッションも高級なブランドや個性的な着こなしに人気が集まりました。また、アメリカ文化の影響を色濃く受けたのもこの時代です。コラムでは、80年代のメンズファッションに焦点を当て、流行したスタイルやアイテムを紹介します。
目次
時代背景がファッションにも影響した80年代
80年代は、時代背景がメンズファッションにも大きく影響した時代といえます。80年代後半の日本は、株や土地の価格が高騰し、今までにない好景気に突入しました。この景気が良かった時代を、のちに泡のように弾けて終わってしまった現象になぞらえて「バブル時代」と呼びます。バブル時代は人々がファッションに強く関心を持ち、華やかな装飾品や高級ブランド品が飛ぶように売れました。それにより、ファッションも今までの日本にはなかったスタイルが流行します。また、雑誌やテレビなどのメディアが発達したことにより、アメリカのファッショントレンドが日本に伝わってきた時代ともいえるでしょう。このように、日本の近代史のなかでも特異な時代であった80年代は、メンズファッション面での変化も大きかった時代といえるでしょう。80年代についてさらに詳しく知りたい方は「1980年代の日本を外国人向けに解説!ファッションやアニメも紹介」のコラムも参考にしてください。
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80年代メンズファッションの特徴的なスタイル4選
80年代は多様化が進み、さまざまなファッションスタイルが生まれました。ここでは、そのなかでも特徴的な4つのファッションを紹介します。
1.オールブラック!DCブランドスタイル
80年代の日本は、DCブランドと呼ばれる日本生まれの高級ブランドが一世を風靡しました。DCブランドの代表格であった「ヨウジヤマモト」「コムデギャルソン」「イッセイミヤケ」は、オールブラックの前衛的なファッションを打ち出します。DCブランドの提案するスタイルは「黒の衝撃」といわれ、ファッション業界を驚かせました。これらのブランドで全身をコーディネートしている人々は「カラス族」と呼ばれていたそうです。現代では、オールブラックのメンズファッションはお洒落として受け入れられています。しかし、当時は全身黒い服を着ている人はいなかったため、物珍しさからこのような名前が付けられたのでしょう。
2.アメリカの大学生がヒントのプレッピースタイル
アメリカの有名私立高校に通う学生達に好まれていたファッションが、プレッピースタイルです。プレッピーの語源はアメリカ東部の名門大学への進学を目指す私立校、プレパラトリー(プレップ)スクールから来ています。良家の子息を思わせるような、品のある雰囲気が特徴です。80年代当時メンズプレッピースタイルを提案していたブランドは、「ブルックスブラザーズ」や「トミーヒルフィガー」「ラルフローレン」などです。ローファーやボタンダウンシャツ、チルデンニットなどを程よく着崩すスタイルが好まれました。
3.渋谷×アメリカ=渋カジスタイル
渋カジとは、アメリカンカジュアルをベースに東京の学生の間で独自に進化したスタイルを指します。80年代当時は、渋谷にアメリカンカジュアルブランドを取り扱う店舗が多かったことから、渋カジと呼ばれるようになりました。渋カジは、先述したDCブランドブームのカウンターカルチャー(対抗文化)として生まれたといわれています。DCブランドがデザイナー発の流行である一方、渋カジは渋谷のセンター街(現:バスケットボールストリート)にいる若者から発信されました。渋カジは、時代とともに数々のスタイルに派生していったのが特徴です。初期は「リーバイス」の501デニムや「ヘインズ」のTシャツなどアメリカ製アイテムを活かしたスタイルが主流でしたが、徐々に「キレカジ」や「ハードアメカジ」などのスタイルに派生していきました。渋カジという言葉こそ使われなくなったものの、現代のメンズファッションの基本を作ったムーブメントといえるでしょう
4.オールドスク―ルヒップホップスタイル
80年代は、ヒップホップ文化が広がり始めた時代です。音楽だけではなく、メンズのヒップホップファッションも大流行しました。当時のヒップホップジャンルは、のちの「ミドルスクール」や「ニュースクール」と比較して「オールドスクール」と呼ばれています。ヒップホップグループ「Run-D.M.C」のメンバーが身に着けていたアイテムが、オールドスク―ルヒップホップスタイルの定番といわれています。アイテムは「アディダス」のジャージのセットアップにスニーカーを紐なしで履くのが定番でした。また、小物は「カンゴール」のハットに金の大振りのアクセサリーが好まれていたようです。
80年代メンズファッションに欠かせないアイテム
80年代には、さまざまなメンズファッションの流行が存在しました。そして、各流行ごとに定番のファッションアイテムがあります。多くは現代でも人気のアイテムなので、聞き覚えのある方もいるでしょう。ここでは、80年代メンズファッションを語るうえで欠かせないアイテムを紹介します。
MA-1
MA-1とは、アメリカ空軍パイロットが着用していたフライトジャケットのことです。ベトナム戦争終結後に軍隊から民間に渡り、ファッションアイテムとして広まりました。アメリカ国内でのみ着用されていたMA-1が日本に広まったのは、1986年公開の映画『トップガン』がきっかけです。主演のトム・クルーズが劇中で着用していた、ワッペンを多数付けたミリタリージャケットやティアドロップ型のサングラスが大流行しました。なお、実際にトム・クルーズが着用していたのは、アメリカ海軍のフライトジャケットであるG-1です。しかし、MA-1のほうが圧倒的に手に入りやすかったため、流行したのだといわれています。現代では、ミリタリースタイルを好む男性だけではなく、カジュアルファッションを好む女性にも人気です。
ケミカルウォッシュデニム
ケミカルウォッシュとは、漂白剤と軽石を用いて色落ち加工を強く施すことです。ケミカルウォッシュ加工されたデニムは大胆な色落ちが特徴で、まだらズボンや霜降りジーンズとも呼ばれていました。バブル時代の定番アイテムでしたが、個性の強いデザインのためすぐにブームが過ぎ去ってしまったようです。しかし、現代では個性を尊重したい若者に支持され、メンズ・レディース問わずインパクトの強いお洒落アイテムとして人気があります。
紺ブレザー
紺色のブレザーは「紺ブレ」と呼ばれ、後期メンズ渋カジスタイルの人気アイテムでした。ボックスシルエットに金色のボタン、ネイビー地のかっちりしたブレザーをデニムやチノパンで着崩すスタイルが定番です。現代ではカジュアルダウンするよりも、かっちりとした雰囲気を残したスーツ風の着こなしが好まれています。
スタジアムジャンパー
スタジアムジャンパー、通称「スタジャン」は、野球選手が体を冷やさないように着用した防寒着です。60年代にアメリカから日本に伝わりました。当時はシンプルなデザインでしたが、日本国内でメッセージやワッペン付きのデザインに変わり、80年代に大流行したのです。現代でもアメリカンカジュアルスタイルの定番アウターとして人気があります。
80年代メンズファッションを取り入れるコツ
80代のメンズファッションを取り入れるコツは、現代風にデザインされているアイテムを着用することです。80年代ファッションが再流行しているとはいえ、当時出回っていた洋服や小物をそのまま着用しては、どこか時代遅れなコーディネートになってしまうでしょう。同じように見えても、現在売り出されているアイテムはシルエットや素材感が現代風にアップデートされています。まずは、現代のファッションブランドが売り出しているレトロアイテムから挑戦するのがおすすめです。もちろん、80年代当時のアイテムを古着店で探したり譲り受けたりするのも、レトロファッションの楽しみ方といえます。そのため、80年代ファッションに慣れてきてコーディネートに自信が付いたら、当時のアイテムを少しづつ取り入れていくのも良いでしょう。
現代の日本のファッションについても知りたい方には「日本のファッションの特徴は?外国人へ向けて解説!」のコラムがおすすめです。
まとめ
80年代の日本はそれまでに例を見ない好景気で、人々の気持ちが明るく前向きでした。ファッションに夢中になる人も増え、さまざまなスタイルが流行した時代です。
個性的で人とかぶりにくい80年代のメンズファッションは、当時を知らない若者に再注目されています。このコラムで当時の人気スタイルやアイテムを知って、コーディネートに取り入れてみましょう。