外国人の中には、入学や就職、結婚などで始まる新生活のために引越しを考える人もいるでしょう。引越しは、賃貸やライフラインの解約など、やるべき手続きが多くあります。外国人の場合は在留カードの住所変更も行わなければならないため、混乱する人も少なくありません。そこで、このコラムでは引越しする際に必要な手続きやその窓口を紹介します。日本での引越しを考えている方は、参考にしてください。
目次
外国人が引越しをする際に行う手続き
外国人が日本で引越しする際は、同じ自治体で引っ越す場合は「転居届」、ほかの自治体に引っ越す場合は「転出届」「転入届」を役所に出さなければなりません。引越し手続きを行う人は、以下の内容を参考にして届出を行いましょう。
外国人が同じ自治体内で引越しをする場合の手続き
外国人が同じ市町村内で引越しを行う場合、日本人と同様に現住所を管轄する自治体への「転居届」の提出が必要です。自治体とは都道府県や市区町村などのまとまりを指します。実際に手続きを行うのは、市役所や区役所などの施設です。
転居届は本人または同一世帯の人物が提出すると決まっており、引越しから2週間以内に行わなければなりません。手続きには在留カードも必要なので、忘れずに持参してください。
外国人が異なる自治体に引越しをする場合の手続き
外国人が異なる県や市に引越しをする場合は、住所を管轄する自治体が変わるため、日本人と同様に「転出届」「転入届」の提出が必要です。まず、在留カードや身分証明書などの必要なものを持って引越し前の市区町村にある役所に行き、異なる自治体が管轄する地域へ移るための転出届を提出します。届出後に発行される「転出証明書」は、引越し先の役所で手続きする際に使うので保管しておきましょう。なお、住民基本台帳カードやマイナンバーカードを持っていると転出証明書の代わりになります。
次に、引越し先の役所に「転入届」の提出が必要です。転入届と転出証明書、在留カードなどを持って役所に行きましょう。転出届や転入届は引越しの前後2週間以内に届け出る必要があります。役所は開いている時間や曜日が限られるので、早めに手続きを済ませましょう。
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外国人の在留カードの住所変更は引越しから14日以内
外国人の身分証明書である在留カードは、引越し当日から14日以内に住所変更の手続きをする必要があります。在留カードの住所変更は引越し先にある役所で行えるため、「転居届」や「転入届」を提出する日に同時に手続きすると良いでしょう。住所変更の期限を過ぎてしまうと、さまざまなペナルティを受けるので気を付ける必要があります。
期限を過ぎても届出は必須
外国人が引越しをする際には、届出期限が過ぎた場合でも、在留カードの住所変更は必ず行わなければなりません。引越しから14日を過ぎたあとも、役所で在留カードの住所変更ができます。ただし、届出が遅れた理由と再発防止策を記載した文書の提出が必要です。役所の職員から今後の届出は遅れないように指導が入るので、しっかり話を聞きましょう。
届出を行わないとペナルティが科せられる
引越しから14日以上経過しても在留カードの住所変更を行わないと、最悪の場合、在留資格が取り消される可能性があります。外国人が在留資格の更新や変更をする際は、入管法が定める届出の義務を果たしているのかどうかも審査対象です。住所の変更は、入管法第19条の9第1項によって届け出が定められています。そのため、手続きを怠ると次の在留資格の更新や変更に影響があるのです。引越し後は何かとバタバタしますが、すぐに住所変更を行うのが賢明といえます。
在留カードの住所変更について詳しく知りたい方は「外国人は引っ越しの際に在留カードの住所変更が必要?提出する届出書を紹介」や「外国人留学生が在留カードの内容を変更する方法とは?」のコラムも併せてご覧ください。
参照元 出入国在留管理庁「住居地の変更届出(中長期在留者)」
外国人が引越しをする際に役所以外で行う手続き
引越しを行う際に最初に行うのは賃貸の解約手続きです。ほかにも駐車場の解約やインターネット回線の手続きをする必要があります。また、引越し業者を利用する場合は下見や見積もりなどが必要になるため、早めに連絡しなければなりません。在留カードの住所変更といった外国人特有の手続き以外にもライフラインの解約や郵便物の転送届の提出なども忘れないようにしましょう。
賃貸契約の解約
日本の賃貸の解約は、ほとんどの場合、引越しをする日の1ヶ月ほど前に管理者に申し出るように決められています。場合によっては、2ヶ月前に連絡をしなければならない場合もあるので、注意が必要です。引越し先が決まり退去のめどが立ったら、すぐに大家や管理会社、不動産会社に連絡しましょう。なお、大家や管理会社、不動産会社が退去日を月末に定めていて、借りている側が自由に日にちを決められない物件もあります。認識の違いで慌てないよう契約書にあらかじめ目を通しておき解約時の条件を確認しておきましょう。
駐車場の解約
駐車場を契約している場合は解約手続きも必要です。管理会社に連絡して解約手続きを行いましょう。駐車場の解約は、一般的に引越し予定日から1ヶ月前に連絡するように契約で決められている場合が多いようです。1ヶ月を切ってから連絡すると、翌月分の利用料金も請求される可能性が高いので注意しましょう。なお、月額制の月極駐車場だと、月の途中で解約しても日割り賃料にならない場合もあります。1ヶ月に満たない期間の賃料については、駐車場の契約書で確認しましょう。
引越し料金の見積もり・契約
引越し業者に依頼して転居を行う際は、引っ越し時に掛かる料金の見積もりを出してもらったり搬出日を決めたりする必要があります。なお、3~4月は引越しが多くなるため、見積もりの金額や搬出の日程に融通が利きにくくなることがあるので注意しましょう。希望の日時で引越しを行うために、早めに連絡して業者に予約を入れるのがおすすめです。
インターネット回線の手続き
引越し前に契約していたインターネット回線を転居先でも利用する場合、手続きが必要です。引越し先にインターネット回線がない場合、開通工事に時間が掛かるため、早めに契約先に連絡しましょう。特に3~4月は繁忙期なので予約が取りにくくなります。引越し先でもスムーズにインターネットを開通させたい人は、1ヶ月以上前から連絡しておくと良いでしょう。
ライフラインの解約
ガスや水道、電気などの解約は、それぞれを契約している企業や水道局に連絡して手続きします。手続きの時期は引越しの1~2週間前で、解約日は退去日当日にすることが可能です。引越しの1~2週間前は転居のための荷造りも忙しくなる頃なので、解約手続きを忘れないようにしましょう。なお、引越し先でスムーズにライフラインを開通させるために、解約と開始の手続きを同時に行うことをおすすめします。
郵便物の転送届提出
引越し前の住所宛の郵便物を転居先に届けてもらうには、郵便局で「転送届」を提出する必要があります。「転送届」は郵便局で直接出す以外にも郵送やインターネットでも提出できるので、自分に合った方法で手続きを行いましょう。なお、「転送届」の届出日から1年間は、引越し前の住所宛の郵便物を転居先に届けてもらえます。転送の手続きが受理されるまで3~7日ほど掛かるので、引越しをするタイミングと照らし合わせながら転送届を出しましょう。
外国人が引越しをする際に登録住所の変更が必要なもの
引越しを行う際には、クレジットカードや銀行、スマートフォンの住所変更の手続きも必要です。ここでは住所変更が必要なものや手続きの窓口を紹介するので、引越しする際に参考にしてください。
クレジットカード
クレジットカードを持っている外国人は、引越しの際に登録住所の変更手続きが必要です。住所変更手続きは電話や郵送、インターネットなどからできます。中でも、インターネットからの手続きが簡単です。なお、クレジットカード会社によって手続き方法が異なるので、契約時に受け取った約款やWebサイトで確認してください。
銀行
銀行の住所変更は窓口や電話、郵送といった方法で手続きできます。インターネットバンキングを契約している場合は、Webサイトやアプリでの住所変更が可能です。窓口で住所変更を行う場合は、本人確認書類や銀行届出印、通帳が必要になります。郵送の場合は、申込書を各銀行のWebサイトでダウンロードして印刷し記入を行い、ポストに投函しましょう。
スマートフォン
スマートフォンの登録住所の変更は、インターネットや電話、携帯電話会社の店頭でできます。Webサイトやアプリから住所変更する場合は用意するものはありませんが、店頭で手続きをする場合は本人確認書類が必要です。そのため、インターネット上で手続きを行う方が手軽でしょう。ただし、契約会社によって可能な方法が異なるため、各社のWebサイトで確認してください。
自動車
自動車を持っている場合、引越し先を管轄する運輸支局、もしくは、自動車検査登録事務所での住所変更手続きが必要です。なお、軽自動車の場合は、引越し先を管轄する軽自動車検査協会事務所で住所変更をします。手続きする際は、以下の書類や手数料がいるため、持参しましょう。
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自動車検査証(車検証)
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車庫証明(警察署による証明日から40日以内のもの)
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手数料納付書
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手数料(検査登録印紙代350円)
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印鑑
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住民票(発行から3ヶ月以内のもの)
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申請書
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自動車税と自動車取得税申告書
なお、住民票と自動車検査証に記載されている住所が異なる場合、現住所になるまでの住所が記載された書類もあわせて提出する必要があります。そのため、複数回引越した外国人が自動車の登録住所を変更する場合は、過去の住所が記載された住民票の除票も必要です。
運転免許証
運転免許証の住所変更は引越し先を管轄する警察署で行います。警察署が遠い場合は、運転免許更新センターや運転免許試験場でも住所変更が可能です。以下の書類や手数料が必要なので忘れず持参しましょう。
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運転免許証
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引越し先で発行してもらった住民票(コピーは不可で、マイナンバーが記されていないもの)
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在留カード
引越し先の住所を確認するために必要な住民票と在留カードは一つあれば良いので、どちらかを持って行きましょう。手続きすると、引越し先の住所は運転免許証の裏面に記載され、次回更新時から表面に記載されます。
車庫証明
車庫証明の正式名称は自動車保管場所証明書です。住所変更手続きは、引越し先の地域を管轄する警察署で行います。必要な書類や金額は以下のとおりです。
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自動車保管場所証明申請書および保管場所標章交付申請書
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保管場所使用権原疎明書面(自宅敷地内や自分の所有地で保管する場合)
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保管場所使用承諾証明書(保管所を借りる場合。駐車場の賃貸借契約書のコピーでも可)
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保管場所の所在地や配置図
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印鑑
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手数料
なお、申請者の住所と使用の本拠の位置が異なる場合、以下の書類が必要です。
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使用の本拠の位置における水道やガス、電気などの公共料金の領収書
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使用の本拠の位置と申請者名が記載された郵便物
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居住、もしくは、営業の実態が確認できる書面のコピー
車庫証明は自動車の登録住所を変更する際にも必要です。自分に必要な書類を準備し、手続きを行いましょう。
まとめ
外国人が日本で引越しを行う際は、賃貸の解約手続きや在留カードの住所変更手続きなど行わなければならないことが多くあります。中には期限が設けられている引越し手続きもあり、特に在留カードの変更は遅れるとペナルティがあるので注意が必要です。煩雑な手続きで混乱しないように、しっかりと計画を立てて、段取り良く引越し作業を行いましょう。